みなさんは普段、本をどのくらい読んでいますか? 仕事や勉強で忙しく、なかなか読書する時間が取れないという人は多いのではないでしょうか。
しかし、実は「忙しくて時間がない」は読書ができないことの理由にはなりません。それだけでなく、仕事を大事にしたい人こそ本を読むべきなのです。そのわけと、忙しい中でもどうすれば読書できるのかをお伝えします。
忙しい人ほど本を読んでいる
楽天ブックスが2018年、ビジネスパーソンを対象に、起業や副業の経験の有無と読書時間について調査を行ないました。それによると、1日の読書時間が15分未満の人の割合が、起業経験者は30.3%、副業経験者は27.7%と3割前後だったのに対し、いずれも経験していない人では45.8%と半数近くに上っていました。また、1日に1時間以上読書する人は、起業経験者が14.5%、副業経験者が19.1%に対し、いずれも経験していない人では10.2%。ビジネスに貪欲で、起業・副業を経験している人のほうが、読書時間が長いという結果だったのです。
さらに「Business Management Degree」がまとめたところによれば、1日30分以上の読書をしている人の割合が、富裕層は88%であるのに対して年収3万ドル以下ではたったの2%でした。中でも、マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ氏は読書家として有名ですね。多忙な中で年に50冊、1週間に1冊のペースで本を読み続けていて、自身のブログでもこう語っているそう。
新しいトピックについて学ぶ方法として、今でも読書が好きだ。子どもの頃から、平均週1冊のペースで読書しつづけてきた。スケジュールが詰まっていて多忙なときでも、読書のための時間を多く捻出するようにしている。
(引用元:cafeglobe|お金持ちの共通点は熱中と読書。たとえばバフェットとゲイツ)
起業や副業で多忙なはずのビジネスパーソンや、経営者などとして実績をあげ富を築いてきた富裕層の人々。こうした忙しい人でも読書している人は多い、いやむしろ、忙しい人ほど読書しているのです。本からは膨大な知識、そして語彙力や表現力を得ることができることは、あえて言うまでもないこと。彼らは読書によって得たものを仕事にも活かしているのだと考えることができそうです。読書が仕事にとってプラスになるなら、仕事を大事にしている人こそ読書習慣をつけるべきだと思いませんか?
読書するのにまとまった時間はいらない
では、忙しい人はどうすれば読書の時間を取ることができるのでしょうか。ビジネス書を多数執筆し、月20~30冊も本を読む大の読書家でもある精神科医の樺沢紫苑氏は、自身の著書にこう書いています。
「読書したいけどその時間がない」というのは、読書ができない人に最も多い「言い訳」です。 (中略) 私は月30冊本を読みますが、全てスキマ時間だけで読んでいます。
(引用元:樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版.)
忙しいから本を読めない、というのは逃げだということ。まとまった時間がなくても本は読めるものなのです。
実際に樺沢氏が読書に充てているスキマ時間は、ほとんどが移動時間、つまり電車に乗っている時間と電車を待っている時間だそう。オウチーノの2015年の調査によると、首都圏・近畿圏のビジネスパーソンの平均通勤時間は片道約45分。つまり、多くのビジネスパーソンの日常には、移動時間という名のスキマ時間が1日につき約1時間半も発生しているのです。
他にも、飲食店で食事が出てくるまでの時間、人と会う約束の待ち時間など、スキマ時間はいくらでも見つかるもの。たいていの人は、このようなスキマ時間にはスマホを扱ってしまうと思います。しかし樺沢氏は、スマホをそもそも持っていないそうで、電車の中での時間をスマホで潰してしまうことがありません。皆さんに「スマホを手放せ」とまでは言いませんが、スキマ時間のスマホと読書、自分にとってどちらが有益か考えてみてください。
「スキマ時間だからこそ集中できる」読書術
さらに樺沢氏は、スキマ時間での読書を有意義なものにするため、以下のような読書術を実践しています。
・読了までの制限時間を決める
樺沢氏は本を読む際、まず「今日1日でこの1冊を読み切る」という目標を決めているそう。読了目標を設定して制限時間を決めると、脳が緊迫した状態になり、ノルアドレナリンという脳内物質が分泌されます。ノルアドレナリンは長期記憶の形成を促す物質。つまり、読書中にノルアドレナリンが分泌されると、読んだ内容が記憶に残りやすくなるのです。「1日1冊」が大変だと思う人は、最初のうちは「3日で1冊」など、自分のスピードと分量に合った目標を決めてみてください。
・「15分の読書」を繰り返す
また樺沢氏は、15分の有効活用を勧めています。その根拠のキーワードとなるのが「初頭努力・終末努力」。心理学で、作業をする時に初めと終わりで特に集中力が高まる現象のことです。
仮に60分通して読書をし、初頭努力と終末努力が起きるのが最初と最後の各5分だとすると、集中力の高い時間は60分中たった10分。残りの50分は集中できていない状態で読んでいることになります。一方15分の読書では、初頭努力・終末努力が各5分ならば、読書時間の3分の2は高い集中力を維持できます。15分を4回繰り返しトータル60分読書すると、集中力の高い時間は合計40分。続けて60分読むより大幅に効率的なのです。
東京大学薬学部教授で脳研究者の池谷裕二氏の実験でも、短時間の集中を繰り返すことが効果的だとわかっています。中学1年生を、60分連続して学習するグループと15分の学習を休憩を挟んで3回するグループに分け、学習後にテストをおこなったところ、15分学習×3回のグループのほうが好成績を残しました。2グループの脳波を計測すると、60分学習グループは徐々に集中力が低下していたのに対し、15分学習×3回グループは休憩時間に集中力が回復し、高い集中力を保っていたのだそうです。
スキマ時間では本に集中できないと決めつけてはいけません。むしろ、スキマ時間だからこそ集中して読めるのです。
読書のエンジンをかける工夫
とはいえ、これまで読書をしてこなかった人が、いきなりスキマ時間で読書する習慣をつけるのは難しいと思います。せっかくスキマ時間があっても、ついついスマホを触ってしまう人が多いでしょう。
そんな読書ビギナーのために、スキマ時間に何よりも読書をしたくなるような工夫をご紹介します。
・買ったその日に読む
読書術についての本も執筆している哲学者の小川仁志氏が勧めるのは、買ったその日に読むことです。本に対するモチベーションは、その本を読もうと思って買ったその日がピーク。ピークのうちに読み始め、数日中に読み切ってしまいましょう。読書へのモチベーションが高ければ、無理せずともどんどん読みたくなるはずですよ。反対に、そのうち読もうと思って置いておくと、モチベーションが下がって結局読まないままになってしまいます。
・本はすぐ取り出せる場所に
もう一つ小川氏が提案する工夫が、本を常に取り出しやすい場所に入れて持ち歩くことです。せっかく本を持ち歩いても、鞄の底に忍ばせるだけでは、どうしてもスマホのほうに手が伸びがち。本は鞄の中身の一番上や外ポケットに入れ、いつでも手に取りやすくしておきましょう。本が身近になれば、スマホより先に本を手に取る習慣がだんだん身についてきます。
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忙しいことを理由に本を読んでいなかったみなさん。スキマ時間を有効活用して、忙しいからこそできる読書をしてみませんか?
(参考)
樺沢紫苑(2015),『読んだら忘れない読書術』,サンマーク出版.
小川仁志(2016),『7日間で成果に変わるアウトプット読書術』,リベラル社.
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