小説やエッセイなどであれば、内容を楽しみながら読むこと、じっくりと感じ入りながら読むことこそが読書の醍醐味です。感情が動かされやすいので、記憶に残りやすいのではないでしょうか。
一方でビジネス書や実用書などの場合は、感情が介入しないので、即座に実践でもしない限り内容を忘れてしまいがち。
もし「せっかく有益な本を読んでも、すぐに内容を忘れてしまう」とお悩みならば、本からの学びを生かす手助けとなる「読書ノート」がおすすめです。筆者が実際に読書ノートを試して感じた効果や、おすすめのアレンジ方法などを紹介します。
「読書ノート」で重要なポイント
読書ノートとは、「あの本は、どんな内容だったかな?」「うーん、これは何かで読んだぞ。えーっと、何だっけ……? 忘れちゃった!」といった状況を改善してくれる、読んだ本について記録するノートのことです。ベストセラー『情報は1冊のノートにまとめなさい』の著者である奥野宣之氏は、
- 日付
- タイトル
- 一言の感想
を書いておくだけでも、読書ノートの効果はあると断言しています。難しいものではないことは確かですね。フランス文学者で評論家の鹿島茂氏も、どんなかたちでもいいので、読書の痕跡を残したと感じられる工夫が大切だ、と述べているそうです。
読書ノートで重要なポイントは以下の3つです。
- 気負わず始めてしまうこと
- 自分が続けやすい方法で書くこと
- 自分が書ける分量だけ書くこと
なぜならば、読書ノートは続けることで価値が生まれるから。つまり、継続できる読書ノートであることが、最重要ポイントなのです。
「読書ノート」の効果
なぜ、どんなに簡単なものでも、読書ノートを書き、継続することが重要なのでしょう。その理由は、読書ノートの効果に現れています。
- 備忘録になる
- 情報の鮮度や、時流の認識力を高める
- 記憶が定着しやすい
- 書くと自分の考えを整理できる
- 要点を押さえて効率よく読書できる
簡単に説明しましょう。
1.備忘録になる
「もう本の内容を忘れてしまった」と思っても、書きとめておいた内容を目にすると、連鎖的に記憶がよみがえってくる場合が多くあります。
2.情報の鮮度や、時流の認識力を高める
読書ノートに本の発行年月日を書いておくと、情報の鮮度を確認できます。読書ノートを継続することで、いつどんなことが流行していたのか、大まかにとらえることもできるでしょう。
3.記憶が定着しやすい
米パデュー大学のカーピック博士は、「入力を繰り返すよりも出力を繰り返すほうが、記憶の定着がよい」と明らかにしています。読書ノートを書くことは、出力の回数を増やすことにほかなりません。
4.書くと自分の考えを整理できる
読書ノートの内容がほとんどが引用だとしても、たった一言「筆者はおそらく〇〇〇と考えたのでは?」などと思ったことを書き足そうとするだけで、思考は働きます。まさにそのとき、思考の整理が行なわれるのだとか。
5.要点を押さえて効率よく読書できる
奥野宣之氏は、「自分にとって重要なことにフォーカスすること」が読書ノートを書くコツだと述べています。重要なこと以外の不要な情報は、思い切って捨ててしまうのがいいそう。逆をいえば、アンテナを張って本を読むので、要点が目につきやすくなるといえます。
「読書ノート」の書き方
読書ノートに決まった書き方はありませんが、最もシンプルな書き方をまとめると、こうです。
- 本の基本情報を書く
- 印象に残った言葉や表現を書く
- 意見や感想を書く
以上をもとに、筆者も「自分が継続できる読書ノート」を開発してみます!
「読書ノート」をやり始めてみる
筆者が今回、読書ノートにチャレンジするために選んだのはこの本です。
リクルート社時代に社内勉強会で、数字に関する人気講座の講師をしていた中尾隆一郎氏が著した、『「数字で考える」は武器になる』です。「数字」が苦手な筆者だからこそ、この本によって「数字」に対する見方が変わり、読書ノートで本からの学びを生かせることを期待して選びました。
使うのは、汎用性の高い普通のセミB5サイズのノートと、A4サイズのレポート用紙。100円ショップで購入可能です。
こんな風に使い分けます。
- セミB5サイズのノート:読書ノート本番
- A4サイズのレポート用紙:ラフな内容の書き出し
次に、奥野宣之氏が「自分にとって重要なことにフォーカスする」とアドバイスしていたので、まずは、この本を読む目的から先に書くことにします。
営業職でも管理職でもない、数字が苦手な筆者の場合、この本を読む目的は以下のとおり。
- 数字で考えるとは、どういうことか?
- なぜ、数字で考えるといいのか?
- 数字が苦手な人間が数字で考えるようになるには、どうしたらいいのか?
では、これらを意識して読書開始です!
「読書ノート」をやってみた!
筆者がビジネス書や実用書を読む際は、どんどん本に線を引き、内容をザザザッと書き出しています。A4サイズのレポート用紙に書いていくのです。
この段階では考え抜きません。ビビッときた言葉や文章を書き出すだけ。ほぼ自分でしかわからないような殴り書きでよしとします。
そして、あれこれ試行錯誤した結果、セミB5サイズのノートの場合、罫線を頼って次のようなレイアウトで書くことにしました。
- 基本情報(枠外+3行)
- 目的(5行)
- 印象(22行)
- まとめ(5行+枠外)
まずはノートの左上に、日付と「1. 本の基本情報(タイトル、著者名、出版社名、発行年月日)」を書き、先述した「2. 目的」を書き込んでいきます。
うまい具合に当てはまったので、「What・Why・How」のかたちを採用することにしました。
次の「3. 印象」については、A4レポート用紙に殴り書きした内容を少しまとめながら、自分の言葉で書いていきます。確認のため本をパラパラめくってもいいし、必要ならば書き直してもよしとしますが、ここでは考え込みません。
頭を疲れさせずに、感覚的に必要なもの、不要なものを振り分けながら枠内に書いていきます。枠内に入らなければ切り捨てます。
そして、とうとう「4. まとめ」に入ります。
筆者の場合は目的の「What・Why・How」に返答するかたちにしてみました。プラス「★全体的にまとめた言葉」です。ここでやっと、読んだ内容を思い出しながら、印象や書き殴ったラフを見ながら、再度本をパラパラとめくりながら、少しだけ考えをめぐらせます。
ただし、決して深くは考えこみません。読書ノートは継続してこそ価値が生まれるので、負荷がかかることはいっさい避けましょう。
これで完成です!
「読書ノート」をやってみた感想
本を読み進めている途中、時おり数字の具体的な活用例を難しく感じ「うーん」と立ち止まってしまうこともありましたが、目的を思い出しては先を急ぐ意識が生まれ、ずいぶんと助けられました。自分にとって重要なことにフォーカスすることが、いかに大切か実感できます。読書ノートに限らず、基本的なことかもしれませんね。
今後、読書ノートを継続していくことで「備忘録になる」「情報の鮮度や、時流の認識力を高める」「記憶が定着しやすい」といった効果を感じることでしょう。
ちなみに、たった1冊分の読書ノートをつくっただけでも強く感じたのは、以下の効果です。
- 書くと自分の考えを整理できる
- 要点を押さえて効率よく読書できる
なお、筆者独自の読書ノートフォーマットを開発するためにかけた時間は「1.5時間」ほど。ラフな書き出し(レポート用紙3枚)を含めた、自分にとって重要なことだけにフォーカスした読書時間が「5時間」ほど。読書ノートの作成は「1.5時間」ほどでした。つまり、
- 初回の学びの時間はトータル「8時間」
- フォーマットができれば以後はトータル「6.5時間」
- 読書時間を別と考えれば「1.5時間」
- ラフを書き出した時間30分ほどを加味するとトータル「2時間」
- 不慣れを30分ほど差し引いて結局は「1.5時間」
となります。本の価格は「¥1,600+税」なので、何とも効率がいい、お金のかからない学びではないですか。
ちなみに、『「数字で考える」は武器になる』を読み、読書ノートでまとめた内容は、
- 数字で考えるとは、「数字+想像力+思考法」である。
- 数字で考えることがいいのは、問題が明確になるから、適切に判断できるから、人の信頼を得られやすいから。
- 数字で考えるようになるには、いろいろと数字で表現、気がついたら四則演算。企業の売り上げや統計など数字のストックを増やす。
全体的な感想は
この本は、数字の活用について、感覚的に学べる本です。
となりました。皆さまも、ぜひお試しください!
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今回読書ノートを書くにあたって、目的を明確にする、ランダムに書く、まとめを簡潔に書く、といった部分は、浅田すぐる氏が提唱する「20字インプット学習法」を大いに参考にさせていただきました。『“紙1枚” で学びが圧倒的に深まる! 「20字インプット学習法」がすごい』 で実際にやってみた内容を紹介しているので、よろしければ一緒にご覧くださいね。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|読書は1冊のノートにまとめなさい[完全版]|なぜ、読書ノートは続かないのか?継続できる簡単で効果的な3つの方法
ブックオフオンラインコラム|読書ノートの作り方・書き方【実例紹介】
STUDY HACKER|これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディア|『読書記録ノート』の作り方・書き方とは?おすすめの読書管理アプリも徹底解説!
中尾隆一郎著(2019),『「数字で考える」は武器になる』,かんき出版.
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。