「社会人10年目」のその後のキャリアを分けるもの。 “当事者意識ゼロ” では相当危ない

河野英太郎さん「社会人10年目のその後のキャリアを分けるもの」01

社会に出て「10年目」。一定の経験を積み、仕事の流れも会社や業界のことも見えてくる時期です。このことはもちろんビジネスパーソンとしての大きな成長と言えますが、『10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という著書を上梓した、株式会社アイデミー取締役執行役員 事業本部長COOの河野英太郎(こうの・えいたろう)さんは、「10年目頃の過ごし方次第でその後のキャリアは大きく変わる」と語ります。そして、そのキャリアを分けるものは、仕事に対する当事者意識なのだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

若手気分が抜けない中堅社員の行き着く先は「痛いミドル」

社会人は、新人を経て「10年目」頃になると、会社から求められる役割が大きく変わってきます。その役割とは、実質的に会社を動かす人です。

10年目の社会人は、大卒なら32歳、大学院卒なら34歳になる年であり、多くの経験を積みつつもまだ体力もあって、現場でもしっかり動ける時期です。けれども、リーダーを任されることもある。現場のことはもちろん、会社の上層のことも見えてくるポジションであるために、肩書としては上の人はいくらでもいますが、10年目くらいの社員こそが「実質的に会社を動かす人」なのです。

そして、この10年目頃の時期の過ごし方が、のちのキャリアを大きく分けます。具体的に言うと、私が「痛いミドル」と表現する人になるのか、あるいは組織を引っ張っていく「改革者」になるのか、その分岐点となるのです。

10年目の社会人は、若手でもなければベテランでもない中堅社員という位置づけです。でも、そういう立場にありながら、自分自身を若手に定義づけている人もいる。そういう人は「当事者意識」に欠けており、会社の問題点などに対して「自分は若手だからその責任はない」という認識をもちます。

そのため、これまでの経験から会社や業界の問題点が見えているにもかかわらず、「うちの会社ってこういうところが駄目だよな」と、同僚や後輩を相手に文句を言うこともよくあります。それはただの「愚痴」に過ぎません。せっかく問題点が見えていても、愚痴をこぼしているだけでは会社をよりよい方向に導けるはずもないでしょう。

それなりに経験もあって年齢的にも30代になっているのに、気持ちだけは若手のままで仕事に対しては無責任……。そういう人は、その先40代になっても50代になっても同じように周囲に愚痴をこぼしているだけだと思います。まさに、「痛いミドル」という表現が適しているように思いませんか?

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問題解消に向けて実際に行動できる「改革者」となれ!

一方、ただ愚痴をこぼすのではなく、「こうあるべきだ」と解決策を口にする人もいます。それは愚痴ではなく「評論」と言えるでしょう。でも、実際に行動することがなかったら、無責任に外部から解決策を提案しているだけの「評論家」に過ぎません。

そこで実際に行動できる人こそが「改革者」であり、本当の意味でのリーダーになりうる人です。

もちろん、「痛いミドル」と「改革者」のどちらになるべきかは言うまでもないでしょう。前者は、会社や業界、あるいは目の前の業務にある問題点に対してただ愚痴をこぼすだけ。それらを解消するといった成果を挙げることはできませんから、会社から大きく評価されるようなこともありません。

一方の「改革者」の場合は、問題点の解消に向けて実際に行動できるので、たとえば大幅なコストカットといった成果を挙げることができます。そういう人材を会社が重用するのは明らかです。

あるいは、仮にその「改革者」の考えが会社の方針と合っていなかったとしても、実際に行動できるというバイタリティーはビジネスパーソンにとって大きな武器です。その人が勤務先の会社と合わなかった場合にも、活躍できる場はその会社以外にいくらでも見つかるでしょう。

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仕事に「自責」の意識をもち、問題解消に向けた1歩を踏み出す

みなさんは、「痛いミドル」予備軍になっていないでしょうか? 「痛いミドル」になるか、「改革者」になるかを分けるのは、先にも触れた「当事者意識」です。あるいは、仕事に対する意識が「自責」か「他責」かの違いと言ってもいいでしょう。

会社や業界に対して、「こういうところがおかしい」「こういう問題点がある」と感じるのは、成長の証や兆しと言えます。経験が浅い若手には見えない部分が見えてきたということだからです。

でも、そのときにただ愚痴をこぼして終わってしまっては、「痛いミドル」一直線。そこには、「自分ではない誰かが問題を解消してくれるだろう」という「他責」の意識が働いています。

そうではなく、ぜひ「自責」の意識を強くもってください。それがあれば、「自分にできることはないか」「自分だったらこうする」、さらに「自分にやらせてほしい」のように、問題解消に向けた行動の1歩を踏み出すことができます。

解消するのは、ほんの小さな業務の一部にある問題点だってかまいません。そうして、実際に自発的に動いて問題点を解消した経験が、「自分にはこういうことができるんだ!」という自信となり、「自責」の意識をさらに強めていくでしょう。ひいては、みなさんが「改革者」に近づいていけるのです。

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【河野英太郎さん ほかのインタビュー記事はこちら】
ポテンシャルを発揮しまくれる人は、“あの言葉” を口癖に仕事をドライブさせている。
怒りをぶつけまくる迷惑な人は「メンタルの自己分析」ができていない。
最高に優秀なリーダーは、部下の前で必ず “暇そうにする” という法則。
10年目社会人が抱えがちな「モヤモヤ」を解消するための、たった2つの大切なこと
若手でもベテランでもない「中堅」こそ勉強すべきこと。10年目は “これ” を学ぶのが理想

【プロフィール】
河野英太郎(こうの・えいたろう)
1973年10月14日生まれ、岐阜県出身。株式会社アイデミー取締役執行役員 事業本部長COO。株式会社Eight Arrows代表取締役。グロービス経営大学院客員准教授。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年までのあいだ、日本アイ・ビー・エムにてコンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門長、AIソフトウェア営業部長などを歴任。2017年には複業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に就任。2019年、AI/DX/GX人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。現在、取締役執行役員 事業本部長COOを務める。著書に『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)、『本当は大切なのに誰も教えてくれないVUCA時代の仕事のキホン』(PHP研究所)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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