若手でもベテランでもない「中堅」こそ勉強すべきこと。10年目は “これ” を学ぶのが理想

河野英太郎さん「若手でもベテランでもない中堅こそ勉強すべきこと」01

社会人だからこそ勉強しなければならない——。多くの人が新人の頃から、先輩や上司に口酸っぱく言われてきたことでしょう。ただ、社会に出て「10年目」頃となった中堅社員は、そのあいだに得た知識や経験によってある程度スムーズに仕事を進められるようになるため、学びの手を緩めてしまいがちです。

『10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)という著書を上梓した、株式会社アイデミー取締役執行役員 事業本部長COOの河野英太郎(こうの・えいたろう)さんが、中堅社員だからこそ実践すべき学びを解説してくれます。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/玉井美世子

中堅社員の学びのポイントは「アンラーン(un-learn)」にある

新人と、経験を積んで「10年目」頃となった中堅社員では、「学ぶべきこと」も違うと考える人も多いかもしれません。しかし、ビジネスパーソンとして同じ時代に生きることを思えば、新人であっても中堅社員であっても学ぶべきことの内容そのものに大きな違いはありません。

ただ、中堅社員には学びに関して大きなポイントがあります。それは、アンラーン(un-learn)することです。これは、「学ぶ」を意味する「ラーン(learn)」に「否定」「反転」を意味する接頭辞「アン(un)」がついていますから、一度ゼロにリセットして「学び直す」ことを意味します。

なぜこのことが重要になるかというと、10年のあいだに積み上げてきた知識や経験が、逆に成長の邪魔をすることにもなるからです。

プレゼン資料を作成するソフトというと「PowerPoint」が定番ですが、PowerPointを使うことに固執してしまったとしたらどうなるでしょうか? たとえば、時代が変わって「Googleスライド」がプレゼン資料作成の定番となったとき、「PowerPointをずっと使ってきたから」とGoogleスライドの使い方を学ばなかったとしたら、その人は時代の流れのなかに置いていかれることになるでしょう。

これはあくまでもひとつの例ですが、中堅社員にはなまじ知識や経験があるがために学びを止めてしまうこともあるのです。

ちなみに私の場合は、今年から公文式で数学を学び直しています。長いブランクのあいだに頭のなかに張ったクモの巣を取り払って、因数分解などを必死に毎日やっているのです(笑)。私は文系の人間でしたので、理系の人のレベルにまで達したいと思っています。

というのも、たとえば新たにプログラミング言語を学ぶにも、そのベースにあるのはやはり数学だと考えているからです。もちろん、プログラミング言語習得以外にも数学を活かせる場面は数多くあるに違いありません。自分の将来を見越して、50代も近づいてきたいま、あえて数学をアンラーンしているわけです。

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「実践」という経験を積んできたいまこそ、「理論」を学ぶ

また、中堅社員としては、ここでいったん立ち止まってビジネスに関する「理論」をあらためて学ぶのもいいかもしれません。

もちろん理論を学ぶことは若手にとっても有用なことですが、10年ほどの「実践」という経験を積んできた中堅社員だからこそ、「あ、この理論はあのときの仕事に当てはまることだな」と合点がいくことも多いでしょう。「理論と実践を行き来する」ことで、よりスムーズに理論が頭に入っていきますし、その学びはより深いものになります。

そういう意味では、若手時代に理論を学んだ中堅社員が、理論をアンラーンすることもいいでしょう。多くの実践を積む前に理論を学んだときには気づかなかったことに、いまなら気づけたり、理解しきれなかったことをしっかり理解できたりすることもあるからです。

コロナ禍になって以降、たとえばオンラインでMBAを取得できるようなビジネススクールも増えています。多忙な社会人でも勉強をしやすい環境がどんどん整ってきているのです。それをチャンスととらえて、中堅社員のみなさんには、いまこそビジネスの理論を学んでほしいと思います。

ただ、注意してほしいのは、仕事につながらないことをとにかく勉強する、いわば「学びのプロ」のような人になってはいけないということ。学び自体が趣味であるなら話は別ですが、ビジネスに関する学びは、やはり「実践」につながるものであるべきです。どれだけ理論の勉強を積み重ねても、それを活かすことができなければその学びには意味がありませんからね。

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多くの人がいま学ぶべきことは、「プロジェクト・マネジメント」

では、社会に出て10年頃となったビジネスパーソンのみなさんが学ぶべきことを最後にお伝えしましょう。ただ、これはなかなか難しいことです。なぜなら、業種や職種、あるいは時代によって学ぶべきことは大きく違ってくるからです。

業種や職種を問わずに学ぶべきこととなると、人によっては「ロジカル・シンキング」を挙げるかもしれません。ひと昔前なら、「会計・英語・IT」が、ビジネスパーソンが学ぶべき「三種の神器」とも言われていました。

業種や職種を問わず学ぶ意味があることで、そしていまの時代を考えた場合、私の答えのひとつはプロジェクト・マネジメントになるでしょうか。

プロジェクト・マネジメントとは、「プロジェクトを構成する計画立案・日程表作成・進捗管理等を含めた、プロジェクトを成功させるための活動全般」のこと。要は、「物事をうまく進めるために絶対に欠かせないもの」です。

先の話ではありませんが、せっかく学びによって得た知識も、実践に、そして成果につながってこそ意味があります。そして、知識や経験を世のなかのためにいかに役立てられるかは、物事をうまく推進させるプロジェクト・マネジメントの力にかかっていると言えます。もし、「何を学んでいいかわからない……」という人がいたなら、ぜひ参考にしてみてください。絶対に無駄な学びにはならないと私が保証します。

河野英太郎さん「若手でもベテランでもない中堅こそ勉強すべきこと」04

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【プロフィール】
河野英太郎(こうの・えいたろう)
1973年10月14日生まれ、岐阜県出身。株式会社アイデミー取締役執行役員 事業本部長COO。株式会社Eight Arrows代表取締役。グロービス経営大学院客員准教授。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年までのあいだ、日本アイ・ビー・エムにてコンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門長、AIソフトウェア営業部長などを歴任。2017年には複業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に就任。2019年、AI/DX/GX人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。現在、取締役執行役員 事業本部長COOを務める。著書に『社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)、『本当は大切なのに誰も教えてくれないVUCA時代の仕事のキホン』(PHP研究所)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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