毎日の仕事に追われ、プレッシャーやストレスを感じることは珍しくありません。時には「もう限界だ」「逃げ出したい」と思うこともあるでしょう。
それでも、多くの人の心の奥底には「やりがいのある仕事がしたい」「生き生きと働きたい」という願いがあるはずです。本記事では、そんな思いを抱える方々に向けて、日々の仕事に幸福感をもたらす3つの簡単な習慣をご紹介します。
これらの習慣を取り入れることで、仕事への向き合い方が変わり、より充実した毎日を過ごせるようになるかもしれません。
過去の試練で、幸せに気づく
毎朝起きてから家を出て、会社に到着するまでのあいだ、あなたはどんなことを考えていますか? ネガティブな考えにとらわれてはいないでしょうか。もしそうであれば、毎朝、仕事に行く前に、ひとつだけポジティブなことを考えてみてください。
「今日は同僚とランチを楽しみにしている」「昨日のミーティングは和やかな雰囲気だった」など、どんなに小さいことでもいいのです。こうした毎日の習慣が、仕事に対するモチベーションを高め、幸福感を向上させるかもしれません。
ペンシルベニア大学のウェブサイト Penn LPS Online には、あらゆるシーンで人は幸福、希望、喜びや思いやり、そして感謝といったポジティブな感情によって成長するとあります。それに関連する研究報告についても言及されていました。*1
research shows that experiencing positive emotions on a regular basis may also improve mental health, reduce stress, and enhance resilience, teamwork, creativity, and problem-solving abilities.
(研究によれば、ポジティブな感情を定期的に経験することで、メンタルヘルスが向上し、ストレスが軽減され、レジリエンス、チームワーク、創造性、問題解決能力が高まる可能性がある)
(※和訳は筆者が補った)
つまり、朝のほんの少しの時間を使って、ポジティブなことを一つ思い浮かべるだけで、その日の過ごし方が大きく変わる可能性があるのです。
しかし、ポジティブなことを考えるのが難しいと感じる方もいるでしょう。そんな方には、過去に乗り越えた困難を振り返り、現在の幸せに気づく方法をお勧めします。
例えば、うまくいかなかったプレゼン、受け入れられなかった提案、保留になった企画など、過去の苦しかった経験を思い出すことで、今の平穏な日々のありがたさに気づけるかもしれません。
さらに、そのときに支えてくれた人々を思い出したり、困難を乗り越えた自分を誇りに思ったりすることで、普段は気づかない幸せに目を向けられるかもしれません。
この方法を、ぜひ一度試してみてください。きっと新しい発見があるはずです。
感謝し合って、相互に利益
最近、職場で誰かに感謝を伝えたり、逆に誰かから感謝されたりしましたか? 感謝の言葉を交わすことで、職場の人間関係が良くなり、より前向きな気持ちで仕事に取り組めるものです。「助けてくれてありがとう」や「ご指摘いただき感謝します」など、シンプルな言葉でも十分効果があります。
具体例をお話しましょう。筆者の知人は、日頃から上司に「いつもサポートありがとうございます」と感謝の言葉を伝え続けていました。すると、あるとき、その上司から「君の努力には本当に感謝しているよ」と声をかけられたのです。さらに驚いたことに、その後、重要な案件を任されるようになったそうです。
このような効果は、科学的にも裏付けられています。東京女子大学の正木郁太郎准教授が、仕事における感謝の影響を調査したところ、興味深い結果が明らかになりました。*2
showed that both expression and receipt of gratitude had a positive effect on work engagement and contextual performance
(感謝を表すことと受け取ることの両方が、仕事への意欲と職場でのパフォーマンスによい影響を与えることが示されました)
(※和訳は筆者が補った)
このように、感謝を表現することは、伝える側にも受け取る側にも良い影響を与えるのです。結果として、職場の雰囲気が向上するのは間違いないでしょう。
人前で感謝を伝えるのが恥ずかしい、または難しいと感じる方には、カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授、ソニア・リュボミアスキー氏が提案する「感謝日記」がおすすめです。
感謝日記とは、リュボミアスキー氏らの研究で幸福度を高める効果が確認されたメソッドです。具体的には、週に1回、過去1週間を振り返り、感謝したことや有難く思ったことを5つ書き出すというものです。
この方法の有効性は、別の研究でも裏付けられています。10週間にわたり週1回、感謝できることを5つ書き出す実験を行ったところ、参加者の楽観性や満足度が向上し、周囲との絆も深まったそうです。
リュボミアスキー氏によると、「人の幸福度は遺伝が50%、環境が10%を占め、残りの40%は自分の行動で決まる」とのこと。つまり、幸福度の40%は自分でコントロールできる可能性があるのです。*3
そこで筆者も、1週間を振り返り実践してみたところ――
たった1度の試みで、忘れていた感謝の記憶を思い出すことができました。また、感謝すべき体験だと思っていなかった体験が、じつは感謝すべきものだったととらえ直すこともできたのです。
そして、次の機会に恩を返したいなど、力が勝手に湧いてくる感覚もありました。 この感覚こそが幸せに動く感覚で、逆に義務感などで自分を半強制的に動かすような感覚は、不幸せに動くのではないかと思います。
ちなみに、この感謝日記は週に数回行なうより、週1ペースのほうが効果を生むとのこと。そうなる理由は、前者に飽きや面倒な感覚が伴うせいではないかと推察されています。*3
プレッシャーやストレスに悩んでいるならば、ぜひ週1で始めてくださいね。
瞑想アプリで、心のリセット
瞑想は、多くの人が一度は試みたものの、継続が難しいと感じる習慣の一つかもしれません。実は筆者自身も、その経験があります。
しかし、瞑想にはストレス軽減、集中力向上、創造性の増進、心の安定など、日々幸せに働くための素晴らしい効果があると言われています。これらの恩恵を考えると、何とか習慣化したいものですね。
実際のビジネス現場でも、瞑想の効果が認められています。例えば、ハーゲンダッツなどの有名ブランドを展開するアメリカのゼネラルミル社では、社内で瞑想プログラムを実施し、注目すべき成果を上げています。具体的には以下のような効果が報告されています。*4
employees who participated in the program reported a 7% increase in productivity and a 20% decrease in stress.
(プログラムに参加した従業員は生産性が7%向上し、ストレスが20%減少したと報告されている)
瞑想に再挑戦しようと思われた方には、瞑想アプリやYouTubeの動画を活用することをお勧めします。これらを使って、ガイド付きで毎朝または仕事の前後に数分間だけ実践してみるのはいかがでしょうか。初心者の方でも取り組みやすい方法だと思います。
筆者自身、瞑想スタジオに通った経験もありますが、日常的に続けるには、自宅で手軽に実践できるこうした方法が最適だと感じています。ぜひ、試してみてください。
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以上、幸福感を持って仕事に取り組むための3つの簡単な日常習慣をご紹介しました。仕事のプレッシャーやストレスに悩む方々に、少しでもお役立ていただければ幸いです。これらの習慣を取り入れることで、より充実した職場生活を送れるようになることを願っています。
※引用部分の和訳は筆者が補った
*1: Penn LPS Online|The science of happiness at work: How positive psychology can increase productivity
*2: J-STAGE|The effects of gratitude in the workplace on work engagement and contextual performance: An examination using response surface analysis
*3: PRESIDENT WOMAN Online|週に1回行うだけで幸福度が爆上がり…心理学の実験が導き出した"週3だと効果なし"のシンプルな習慣
*4: Mind is the Master|Does meditation increase productivity?
Shinya
大学では経済学を専攻。集中力があり、長時間、長期間にわたって勉強し続けることが得意。現在は、資格試験に向けて効率的な勉強法の情報を収集中。心理学にも関心があり、コミュニケーション力の向上を目指してさまざまなメソッドを学び、実践している。