瞑想嫌いでも大丈夫! ビジネスパーソンのための"超"実践的マインドフルネス

深呼吸をする女性

「マインドフルネスが流行っているらしい。でも、ヨガのポーズをとったり、長時間瞑想をしたりするのは抵抗があるな……」

ヨガや瞑想を取り入れる人が増えたとはいえ、スピリチュアルなイメージからこのように躊躇しているビジネスパーソンもいるのではないでしょうか。

しかし、マインドフルネスの効果は、科学的にも証明されています。その効果のひとつである集中力の向上は、ビジネスパーソンならぜひ注目したいところ。

本記事では、マインドフルネスをオフィスでも簡単に実践できる方法をご紹介します。

マインドフルネスを取り入れるべき理由

マインドフルネスとは?

マインドフルネスと聞くと、座禅やヨガ、瞑想をして頭を空っぽにするといったイメージがありますが、正確にはどういうものなのでしょうか。

マインドフルネス研究の第一人者である、早稲田大学人間科学学術院教授の熊野宏昭氏は以下のように述べています。

私が学生に講義する際には「今の瞬間の現実に常に気付きを向けて、その現実をあるがままに知覚する。そして、それに対する思考や感情にはとらわれないでいる心の持ち方、ありよう」と伝えています。*1

現代社会を生きる私たちの頭の中は、絶え間ない思考と感情の渦巻きに満ちています。その多くは、明日への計画や過去の出来事の振り返りなど、現在の瞬間とは直接関係のないものです。

実際のところ、目の前の状況や課題に完全に集中できている時間は、意外なほど少ないかもしれません。私たちの意識は、気づかぬうちに現在から離れ、過去や未来へと向かってしまうのです。

そこで、あえていまの状態だけに目を向け、それをただ受容する——たとえば呼吸であれば、「うまく腹式呼吸ができていない」などと評価を下したり、「そういえば来週の仕事の段取りをしないと」などほかのことを考えたりするのではなく、「吸う、吐く、吸う……」といまの状態に集中すること。これが本来のマインドフルネスです。

この状態になるための手法として、座禅・ヨガ・瞑想などがあります。

マインドフルネスの効果

では、マインドフルネスな状態——つまり、この瞬間に目を向け、ただフラットな状態でいるようになると、どのような効果が期待できるのでしょうか。

脳科学を専門とする、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏は、マインドフルネスな状態になることで、「脳にある『ワーキングメモリ』の容量が拡大します。これにより、記憶能力が向上するほか、感情のコントロールができるようになり、心の安寧を保ちやすくなります。また、疲労感を軽減することもでき」ると述べています。*2

記憶力の向上、感情のコントロール、疲労感の軽減など、かなり具体的な効果があるのですね。これらの効果が得られれば、仕事も勉強もいままで以上にはかどりそうです。忙しいビジネスパーソンこそ、マインドフルネスを生活に取り入れたほうがいいことがわかりますね。

とはいえ、ポーズをとって瞑想をする、ということに抵抗感がある方もいるのではないでしょうか。たしかに瞑想はマインドフルネスを実践する手法として最適です。

しかし、もっとカジュアルに、マインドフルネスを日常生活に取り入れる方法もあるのです。次項では、その方法をふたつご紹介します。

リラックスするビジネスパーソン

1. デスクに向かったまま、正しい姿勢で呼吸をする

マインドフルネスの実践方法の中で、最も手軽に取り組めるのが呼吸法です。この簡単でありながら効果的な方法について、予防医学研究者で公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事の石川善樹氏が興味深い見解を示しています。

石川氏が提唱する「マインドフルネス呼吸」の効果は目覚ましいものがあります。実践することで「集中力がトータルに底上げ」されるだけでなく、「EQ(心の知能指数)」まで高まるというから驚きです。*3

ここで注目すべきは、マインドフルネスの恩恵を受けるために、必ずしも瞑想やヨガなどの特別な実践が必要ないという点です。呼吸を意識的に整えるだけで、十分な効果が得られるのです。

では、忙しいビジネスパーソンが日常的に取り入れられる呼吸法とは、どのようなものでしょうか。石川氏は、デスクワーク中にも実践できる呼吸法を提案しています。ただし、その際の姿勢が重要なポイントとなります。

効果的な呼吸法を実践するためには、デスクに向かうときの座り方を以下のように調整することをおすすめしています。

1. 椅子の高さ
両肩に力を入れてからストンと落とす。肘を90度曲げて小さく〝前へ倣え〟をし、前腕が床と平行でデスクに乗るようにする

2. 座り方
椅子に深く腰掛け、骨盤を立てて坐骨で座り、脊柱の真上に頭を乗せる

3. 視線
5度ほど視線を下げたとき、PCのディスプレイの上から3分の1のラインが視線の先にくるようにする(*3)

マインドフルネス呼吸のときの姿勢

このように、デスクに向かうときの姿勢を調整し、ゆっくり呼吸を行なうだけで、マインドフルネスな状態をつくりだすことができます。これなら、会社でも自然に実践することができそうです。

おすすめの実践タイミングは、集中力が切れてきたとき。同氏は「思考が拡散してきたと気づいたら、呼吸数をカウントして意識をシフト」することで、集中力が高まると述べています。(*3)

たとえば仕事中に、関係のないことを考え始めたり、イライラしていると感じたりしたら、思考が拡散してきたサイン。

上記の方法で姿勢を正して、ゆっくり呼吸を行ないましょう。呼吸数を数えながら呼吸を続けることで、「ただ呼吸している」といういまの状態に集中しやすくなり、マインドフルネスな状態をつくることができます。

2. 歩行瞑想法を取り入れる

瞑想というと、座って目を閉じ、呼吸を繰り返すイメージがありますよね。しかし、歩きながら瞑想をする「歩行瞑想法」も存在します。

歩行瞑想法とは、「日常生活で必ず行う“歩く”といった動作を取り入れた瞑想」のこと。 *4

歩くことなら、毎日行なっている読者の方も多いはず。比較的取り入れやすいのではありませんか? 臨床心理士の古川潤弥氏が、歩行瞑想法のやり方について紹介しています。

1. 肩の力を抜き、深呼吸をする
肩をもち上げてストンと落とす動作を数回行ない、その後、立ったまま深呼吸する

2. 足裏の感覚を意識を向けて歩く
足裏に意識を向けながら歩く

3. 歩きながら体の動き、パーツに意識を向ける
「地面から足が離れる感覚」「筋肉と関節を使って足を出す感覚」「筋肉と関節を使って足を下げる感覚」「地面に足がつく感覚」の4つに集中して歩く*4

少し複雑そうに見えますが、要するにリラックスした状態で、「右足が着いた」「左足を上げた」「左足がついた」などと歩くことだけに意識を向けて歩き続ければいいのです。これなら、通勤中や気がついたときにすぐ行えます。

歩く人

歩行瞑想法の効果について、同氏は以下のように語っています。

歩行瞑想をすることで,前頭葉と扁桃体の調整機能が活性化されることによって,不安・ストレスが生じてもその感情を一旦置いておくことや,ストレスがあるけど別のことに意識を向けることができるようになると考えられます。つまり,不安・ストレスがありながらも仕事や勉強に集中できるということです。*4

ビジネスパーソンにとって、不安やストレスはつきもの。 それでも仕事や勉強を進めていかなくてはなりません。歩行瞑想法を取り入れることで、不安やストレスがあっても、それに負けずに目の前のことに取り組めるようになるのです。

***
マインドフルネスな状態を意図的につくり出せれば、仕事や勉強の集中力が格段にアップしますよ。自分に合う方法を取り入れてみてください。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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