仕事や勉強がどうにもはかどらないと困ってしまう……。誰にでも、そんなときがありますよね。
「それなら、とりあえずToDoリストをつくればいいじゃない」なんて、何度も聞いたアドバイスでしょう。そんなの知ってるし、聞き飽きていると言いたくもなるはず。
でも、今回ご紹介するのは、ただのToDoリストではありません。朝のゴールデンタイムを利用して、項目別に分かれたToDoリストを作成するのです。項目別に分かれたToDoリストは、言うなれば思考を整理するためのリスト。そんなリストを時間帯を変えてつくるだけでも、まったく効果が違うのです。
なぜ項目別に分かれたToDoリストが思考整理リストになるのか、なぜ朝だと効果が違うのか、その理由と根拠、具体的なやり方を、筆者自身の実践例も交えながら丁寧に解説していきます。
「ToDoリスト=思考整理リスト」であるワケ
ToDoリストを思考整理リストだと考える理由は、頭のなかの言語化に加え、タスクを洗い出して優先順位を決めるプロセスが、思考整理に役立つと考えられるからです。
株式会社コンパス代表取締役で「思考の整理家」の鈴木進介氏はこう言います。*1
todoリストの鍵は
思考の整理から。思考の整理は
タスクの”仕分け”から。
これを受け、頭に浮かんだToDoリストがありました。それは、精神科医の樺沢紫苑氏が考案する「集中力のギアが上がるToDoリスト」です。
このToDoリストには以下の項目があり、各項目について3つまで書けるようになっています。
- 「AM」……午前中に行なうタスク
- 「PM」……午後に行なうタスク
- 「毎日」……日々行なうタスク
- 「スキマ」……10分以内で終わるタスク
- 「遊び」……終業後にしたいこと、趣味や娯楽、家族や友人と過ごす予定
- 「その他」……緊急度も重要度も低いタスク、追加の仕事
これなら記入する時点で、必然的に仕分けが行なわれるはず。
「ToDoリストを朝に書く」のがいいワケ
ちなみに、こうしたToDoリストは夜よりも「朝」に書くのがおすすめです。なぜならば、朝は脳とからだが効率よく機能し、集中力とやる気を最大化できる時間帯と言えるからです。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は午前中の時間帯を「動のゴールデンタイム」と名づけ、「午前中は自律神経のバランスが最も整った時間帯で、ブレインワークがはかどることがわかっている」と説明。じつは、朝にこうした神経伝達物質の働きがあるといいます。*2
- ドーパミンが大量に分泌して中枢神経(記憶や認知作用をつかさどる)が強化→ブレインワークのポテンシャルUP→やる気スイッチON
- アドレナリンも大量に分泌→興奮状態になり集中力が向上
また、前出の樺沢氏は「夜のドーパミンと違い、朝のドーパミンは1日の活力になります」と言い、朝にToDoリストを書くことを推奨しています。なぜならば、夜にはこんなリスクがあるからです。*3
- 明日のことを考えると不安になる可能性→寝る前に不安や心配がよぎると睡眠に悪影響
- 明日のことを考えてワクワクする可能性→興奮系のドーパミンが出て睡眠を妨げる
睡眠不足は仕事や勉強の大敵。パフォーマンス低下の原因となるはずです。
しかも、立命館大学テクノロジー・マネジメント研究科教授で、脳神経科学研究者の枝川義邦氏は、次のように述べています。*4
ドーパミンが多量に分泌される状態のときは、通常容量が限られているワーキングメモリの容量が大きくなるともいわれています。ということは、仕事により集中しやすくなるでしょう。
そのような時間帯ならスッキリとした頭で優先順位を見直すことができ、1日の流れを的確に決められるはず。その結果、1日を効率的に進める土台が整えられるのではないでしょうか。
これらの内容をふまえ、筆者もToDoリストは朝の時間帯に書こうと決めました。もちろんその際のToDoリストは、前出の樺沢氏考案の「集中力のギアが上がるToDoリスト」です。
朝の「ToDoリスト=思考整理リスト」の実践
なお、樺沢氏は「集中力のギアが上がるToDoリスト」をパソコンで作成して印刷し、目につく場所に置くことを推奨しています。
しかし、プリントアウトのたびにコンビニに行かなければならないなど、毎日印刷するのが困難だという人もいるでしょう。その場合は枠組みなしですべて手書きにするか、もしくは前出のフォーマットだけを複数枚印刷し、内容のみ手書きすればいいかもしれません。
では、さっそく始めていきましょう。原則として、最も集中したいタスクを1行目に書きます。
そして、集中力を要するタスクや、緊急度・重要度が高いタスクがひとめでわかるよう印をつけます。高い集中力を要するタスクは★、重要度が高いタスクは◎といった具合です。
終了したタスクは赤いペンで線を引いて消します。また、追加のタスクが入った場合は「その他」の項目に手書きで書き加えます。
ToDoリストを使用して半日経過すると、下のようになりました。
実践の感想と、ふたつの検証方法
今回の実践で、たしかに仕事の効率や生産性が向上したことを実感できました。いつもより短時間でタスクを完了できたからです。
ただし、それは朝に「ToDoリスト=思考整理リスト」を作成した効果だけでなく、午前中がゴールデンタイムであることをふまえ、難易度が高いタスクを午前中にスケジューリングしたことも大きく影響していると思われます。
今後はそうした実感だけでなく、効果を俯瞰できるよう、検証方法をふたつ考えてみました。よろしければ試してみてください。
- 朝に書くToDoリストを使った日と、使わなかった日の、タスク達成率(完了したタスク数 ÷ リストに書いたタスク数 × 100)を比較。
┗(結果例)使った日のタスク達成率90%、使わなかった日のタスク達成率70% - 朝に書くToDoリストを使った日と、使わなかった日の、タスク中の中断回数(集中力が途切れた回数)を画線法で素早く記録し、パッと見て変化がわかるようにする。画線法は下の写真のTally Marksや、正の字など。
意外と役立つ「スキマ」のToDoリスト
ちなみに、10分以内で終わるタスクを書く「スキマ」の欄はかなり役に立ちました。ちょっとした時間ができたときにToDoリストを見ては「そうだ、いまのうちにこれをやっておこう」となり、時間を無駄にすることが少なくなったのです。
スッキリとした頭で、的確なリストを作成できた影響もあるかもしれません。いずれにせよ、「スキマ」欄の記入もお忘れなく!
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今回ご紹介したように、ToDoリストは、単なるタスク管理のツールではなく、頭のなかを整理し、一日の行動を効率化するための「思考整理リスト」として活用できます。また、それを脳が元気な朝の時間帯に作成すれば、仕分けや優先順位なども的確に判断でるでしょう。一日の終わりに振り返ることで、リストの効果を実感できるはずです。
*1 note|鈴木 進介 | 思考の整理家®|todoリストの未消化で悩むのは、思考が整理できていない証拠です!
*2 PRESIDENT Online|自律神経の名医が「午前中はメールを読むな」と断言するワケ
*3 PRESIDENT Online|「やることリスト」をスマホに書いてはいけない…脳メモリを解放し、絶対的集中状態に入る「TO DO」活用法
*4 PRESIDENT Online|時間の浪費をゼロにしたい…最新科学が解明した「脳を100%活用する方法」とは
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。