
テレビや新聞といったいわゆるオールドメディアだけでなく、インターネットを通じて多くの情報に触れる現代社会で成果を挙げるには、その情報の扱いもビジネスパーソンにとって重要なスキルと言えます。トヨタ自動車、TBS、アクセンチュアを経て戦略コンサルタントのほかにデータサイエンティストとしても活躍する山本大平さんは、まさしくデータを取り扱うプロ中のプロです。山本さんは意外にも、情報を「得る」よりも「捨てる」ことが重要だと語ります。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
【プロフィール】
山本大平(やまもと・だいへい)
戦略コンサルタント/データサイエンティスト。F6 Design 代表取締役。トヨタ自動車に入社後、TBSテレビ、アクセンチュアなどを経て、2018年に経営コンサルティング会社F6 Designを設立。トヨタ式問題解決手法をさらに改善しデータサイエンスを駆使した独自のマーケティングメソッドを開発。企業/事業の新規プロデュース、リブランディング、AI活用といった領域でのコンサルティングを得意としている。近年では組織マネジメントや人材育成といった人事領域にも注力。
膨大な情報によってもたらされる情報混乱
膨大な情報に囲まれている現代社会において、その扱いについて考えたことはあるでしょうか? 私自身は、いかに情報を得るかではなく、いかに情報を「捨てる」かがポイントになってきていると感じています。
そこにはやはり、情報量があまりに多すぎるという背景があります。ある研究によると、私たち現代人が1日に浴びる情報量は、江戸時代の1年分、平安時代の一生分に相当すると言われています。そこで起きるのが、情報混乱です。実際、多くの人がフェイクニュースに翻弄されているといった話もよく見聞きしますよね。そうした不要な情報を捨てられないために、適切な判断をできなくなるのです。
あるいはミスリードも、不要な情報を捨てられないことで起きる不具合と言えます。たとえば、影響力のあるインフルエンサーのような人が「某有名大学の研究ではこう言われていたから、こう言える」と発信したら、つい信じたくなるのが人間です。
たしかに、そのような研究があったのは事実かもしれません。でも、その研究も、外部環境の変数によってまったく異なる結果になる可能性だってあるのです。人間の社会心理の研究だったら、そもそもDNAが異なる人種間で結果が大きく変わることもあるし、少しでも外部環境、たとえば温度や湿度といった人体にストレスを与える変数の設定を変えれば人間の心理なんて大きく変わってしまいます。そこまで漏れなく実験を行なったのかというと多くの社会心理学の研究ではやっていない。そんな固定化された環境での実験結果をうのみにし「○○大学の研究によると」とそれを論拠の前提にして話す論法には、根拠なんて無いのです。
私自身、このミスリードの問題にはよく直面します。クライアントのなかにも「〇〇さんがこう言っていた」といった発言をする人がとても多いのです。その情報ソースを聞いてみると、発信者がどこの誰だかわからないYouTubeやXだと答えます。いわゆる声の大きいインフルエンサーですね。そのようなものを論拠に理屈を積み上げていっても、そもそもの論拠自体が誤っていたら適切な施策を構築できるはずもありません。
そして、情報があふれているために、自分にとって一番大事で必要な情報、エッセンスが隠れてしまっていることも問題です。アニメ映画『天空の城のラピュタ』に登場する飛行石をイメージするとわかりやすいでしょうか。大事で必要な情報が、飛行石にあたります。
その飛行石は、ラピュタという空に浮かぶ城の奥深くに、たくさんの木の根に囲まれて見えなくなっていました。ですから、飛行石を目にしようと思えば、たくさんの木の根、つまり不要な情報をどんどん捨てていかなければならないのです。

自分で直接目にしたものは、確実にファクトと言える
いまの時代に必要なのは、ファクトベースで考えるということです。そして、そうするためには「現地現物」の意識が欠かせません。
現地現物とは、私がかつて勤務していたトヨタの基本的な姿勢で、「現地で現物を見て、実態を確認しながら仕事を進めていく」ことを意味します。ネットを通じて流れてくる情報はあくまでも二次情報のため、ファクトかどうかはわかりません。でも、自分が直接目にし、触り、感じた情報なら自信をもってファクトだと言えるというわけです。
「おまえ、行って見たんか?」とよく叱られていました(笑)。
ファーストコンタクトとして、たとえばGoogleなどの検索エンジンで調べて目星をつけるのはかまいません。でも、そうして目星をつけたなら、やはり自分で確かめにいかなければならないのです。
ひとつ、エピソードを紹介しましょう。幼い子どもたちに「カニの絵を描いて」と伝えました。すると、ほとんどの子が赤いカニを描きます。おそらく、家で食べるカニは赤いからでしょう。あるいは、スーパーで売られている、すでに茹で上がった赤いカニを見ているからかもしれません。
でも、茹でる前のカニは、茶色っぽかったり黒っぽかったりするものです。子どもたちを海に連れて行ってそのカニを見せたらきっと驚くに違いありません。「カニは赤い」と信じ込んでいる子どもたちは、いわば情報に翻弄されている状態にあります。その状態を打破するには、やはり海という現地に行って自らの目でファクトを確かめるしかないのです。
もしかしたら「そんな簡単に日本海に行けない!」という反論があるかもしれませんが、ここで言う現地現物とは、可能な限りその現地に近づくことを意味します。日本海に行くのが難しかったら、水族館でもいいし、お寿司屋さんの生け簀でもいい。とにかく生きている状態のカニを自分の目で確かめに行こうとする行動姿勢のことを言っています。

他人の見解は、あくまでも「ひとつの可能性」でとどめておく
とはいえ、この時代に生きている以上、外部からの情報を絶つことは現実的ではありません。そう変わってしまったいまの時代では、スマホから接種する情報を「ひとつの可能性でとどめておく」ということです。◯◯大学の論文も「ある一定環境ではそうなった」というひとつの可能性にとどめてインプットするべきです。つまり、そこに追加される「他人の見解」まではインプットせずに無視したほうがいいと考えています。
たとえば、たいていのニュース番組では、なんらかのニュースを伝えたあと、キャスターはコメンテーターに見解を聞きます。そして、多くの人が、そのコメンテーターの見解も含めてファクトとしてインプットしがちなのです。その見解の前に伝えられたニュースまでは事実なのかもしれません。でも、それに対するコメンテーターの見解はファクトでもなんでもなく、ひとつの考えに過ぎないのです。
ですから、誰かの見解に触れたときには、「この人はこういうことを言った」という事実は受け入れつつも、その見解はあくまでもひとつの可能性としてとどめてストックしておくのが賢明です。
そうしてストックした見解が必要になったときには、もちろん現地現物のスタンスで検証してください。その見解の真偽を自らの目で確認するのです。

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清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
