斜め読みとは? 素早く情報収集する基本テクニックを解説

斜め読みとは1

斜め読みとは、文章を最初から最後まで全部読むのではなく、小見出しや重要な点にだけ着目する速読法のこと。「雑な読み方」というイメージがあるかもしれませんが、情報の全体像や要点を短時間でつかむのに効果的な読み方です。

斜め読みを読書や勉強にうまく取り入れると、理解のスピードや効率をアップできますよ。本稿では、読書・勉強に斜め読みを取り入れるメリットと、斜め読みの方法をご紹介します。

斜め読みとは

小学館の「デジタル大辞泉」によると、斜め読みとは「全体の流れをつかむために、細かい部分は所どころ飛ばして早く読むこと」です。本や文章の全体的な流れを把握することを目的としているので、「適当に飛ばしてなんとなく読む」こととは根本的に異なるのですね。

では、斜め読みは「速読」とどう異なるのでしょうか? 同じく「大辞泉」によれば、速読の意味は「普通よりも速く読むこと」。速く読む方法には、とにかくページを一定の速さでめくりつづけたり、文章を理解するスピードを鍛えたりなど、いろいろなものがありますよね。斜め読みも、速く読む方法のひとつだといえるでしょう。

つまり、斜め読みとは、速読の一種なのです。

斜め読みとは2

斜め読みのメリット

斜め読みを読書や勉強に活用すると、以下の3つのメリットが期待できます。

理解しやすくなる

同じ本を何度も斜め読みすると、冒頭から時間をかけて読み込んでいくよりも、内容を理解しやすくなるといえます。

学習法の研究・指導を行なうトレスペクト教育研究所所長・宇都出雅巳氏によると、本の内容を理解したいなら、時間をかけてじっくり読むより、わからない箇所を飛ばしながら何度も斜め読みをするほうが効率的なのだそう。本の内容がわからないときは、理解に必要な前提知識が欠けている場合が多いため、いくらじっくり読んでも「報われない努力」になってしまうとのことです。

そのため、まずは斜め読みをして本の全体像・要点を把握してから再読するほうが、よりスムーズに内容を理解できるわけですね。参考書を使って勉強する場合も、まずは斜め読みで全体像を把握し、そのあとで細部の理解に努めるほうが、効率的だといえるでしょう。

内容が頭に残りやすい

斜め読みでは、自分が興味をもっている部分や理解できる部分だけを読んでいくので、内容が頭に残りやすくなります。

『自分で考えるための勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2013年)、『一気にわかる世界史』(日本実業出版社、2016年)などの著書がある秋田総一郎氏によると、無理して本を読み通したとしても、内容がほとんど頭に残らず、読んだ時間が無駄になってしまうことが多いのだそう。たしかに、せっかく頑張って本を読破したものの、振り返ってみると何も覚えていなかった……という経験は、よくありますよね。私たちは、つい「本の内容を一字一句漏らさず理解しよう」と考えてしまいますが、効率の悪い読み方をしているのかもしれません。

秋田氏によると、多くの本は、最初から順番に読まなくても十分理解できるように書かれているのだそう。必要な情報を効率よく得たいときは、あえて斜め読みをするのも戦略なのですね。

読める文章が増える

読むスピードが上がった結果、限られた時間で多くの文章が読めるようになるのも、斜め読みの大きなメリットです。

1冊ずつじっくり読む普通の読み方だと、1冊読むのに丸1日、場合によっては何日もかかってしまいます。しかし、気になる箇所だけを斜め読みすれば、1日で数冊の本に目を通すことも可能になるので、より多様な情報に触れられます。そのうえ、斜め読みした本のうち、時間をかけて熟読すべき本を吟味することもできるのです。

それに、情報収集ツールとして新聞を購読している場合、紙面の全文章を毎日読むことは非現実的です。斜め読みしたうえで、特に重要だと感じたり、強く興味をひかれたりした記事のみ熟読することが必要とされます。

1冊の本を深く読み込むことも大事ですが、「広く浅く」斜め読みすることにも、多くのメリットがあるわけですね。

斜め読みとは3

斜め読みの方法

では、どうすれば斜め読みができるのでしょう? 先述の宇都出氏が開発した「高速大量回転法」というやり方をご紹介します。

1. 目次を読む

まずは「目次」を読むのがコツです。宇都出氏によると、目次には本の情報が集約されているため、読めば本全体の構造をつかめるのだそう。5~10回ほど読み、著者が何を主張しようとしているのか、どんな構成になっているのか、しっかりと頭に入れましょう。

2. 前書き・後書きを読む

次は、前書き(序文)と後書き(後記)を読みましょう。目次と同じく、本の全体像をつかむのに役立つからです。前書きにはテーマや構成、後書きには結論やまとめなど、本の核心が記されていることが多いため、前書き・後書きから読むことで、本の論旨を先取りできるのです。

3. 見出しを読む

いよいよ本文ページに入ります。まずは、見出しに注目しましょう。見出しだけをパラパラと拾い読みしていき、理解できそうな箇所、気になる箇所などがあれば、本文にも目を通します。わからないところや読む気が起きない箇所は、気にせずどんどん飛ばしていきましょう。

4. 詰まったら目次に戻る

見出し・本文を読み進めていて、理解が滞ったり、読む速度が遅くなったりする感覚を覚えたら、目次ページに戻りましょう。宇都出氏によると、このような場合は、脳の「ワーキングメモリ」がいっぱいになっているのだそうです。

ワーキングメモリとは、脳がインプットした情報を一時的に蓄えて処理する能力。宇都出氏によると、ワーキングメモリの容量はとても小さく、すぐにあふれてしまうため、情報は欲張らずに少しずつインプットしていくのが大事なのだそうです。

5. 3と4を繰り返す

目次を再読したら、また見出しと本文の読める部分だけを拾い読みし、行き詰まったら再び目次に戻る……というように、3と4を繰り返しましょう。何度も記憶が重ね塗りされるうち、ワーキングメモリに蓄積した一時的な知識が定着していき、その定着した知識が土台となって、本の細部を理解する手助けをしてくれます。

宇都出氏は、読書について「ジグソーパズル」という例えを紹介しています。ジグソーパズルで遊ぶときは、まず、わかりやすい模様のピースを見つけ、それを核としてほかのピースをどんどんつなげていきますよね。それと同じく、本の要点やわかりやすい箇所を足がかりとし、そこから理解を広げていくというのが、高速大量回転法という斜め読みの極意なのです。

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斜め読みを活用すれば、インプットの効率・質を高められるのだ、とおわかりいただけたと思います。読書や勉強の効率が悪い気がする……とお悩みの方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

(参考)
秋田総一郎(2013), 『自分で考えるための勉強法』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
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【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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