方眼ノートは情報を整理しやすいうえ、気持ちまで落ち着かせてくれるそうです。そうした効果は「勉強用に方眼ノートを使うべき理由」になるはず。詳しく説明しましょう。
1.「理解のプロセス」がスムーズになる
『国語が得意科目になる「お絵かき」トレーニング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者で、「考学舎」塾長の坂本聰氏は、「絵を見て認識できないものは、文章に変換できない。文章を読んで理解できなければ、絵にも描けない」と説明します。
坂本氏が提唱する国語トレーニングでは、「絵と文の両方で、同じ内容を表現できるようになること」を目指すのだとか。同氏は、「絵から文へ、文から絵へ」と置き換える作業を、「理解のプロセス」のレッスンと例えています。これは、国語以外の教科にも当てはまり、大人の思考術としても有用とのこと。
それならきっと、方眼ノートが最適なツールになるはず。ちょうどいい濃さで印刷されたマス目が誘導してくれるので、文字のほか、図やグラフなども配置しやすいからです。「理解のプロセス」がスムーズになるでしょう。
2.「時間の浪費」を避けられる
方眼ノートを推奨する人々の言葉を参考にすると、マス目を活かせる方眼ノートには、次のような利点があります。
- 字幅や行間をそろえやすい
- 大小の文字を整えられる(※1)
- 図形やグラフを描くのに便利
- 整理された読みやすいノートをつくれる
(※1:たとえば通常は1マスに一文字、見出しは4マスに一文字を書くなど、マス目に沿って文字サイズを変えられるのでノートが乱れにくい)
こうした利点から、方眼ノートは多様な要素が入り込んでも乱雑になりにくく、きれいに書こうとしなくてもノートが整いやすいとわかります。これは、勉強に方眼ノートを使うべき理由になるのではないでしょうか。
宅建試験対策の研修などを行なう「ナルミナスキャリア株式会社」代表の並木秀陸氏は、ノートをきれいにまとめることに時間をかけ、それで勉強している気分になっていたら “失敗する” と注意を促します。つまり、“きれいに書くこと” が目的になってしまうわけです。同氏いわく、あくまでも「ノートをとる目的は、あとで読み返した際に記憶を引き出すため」とのこと。
きれいに書こうとしなくても、なんとなく整理されてしまう方眼ノートを勉強に用いれば、時間の浪費を避けられるはず。「どうもノートの “きれいさ” が気になってしまう」という人は、ぜひお試しください。
3.「フォーマット」を取り入れやすい
世のなかには、ページを分割するノート術が数多く存在します。たとえば Walter Pauk 氏が米コーネル大学の学生らに向け開発した「コーネル式ノート術」では、1ページを「ノート・キーワード・サマリー」といった3領域に分けて使います。こうすることにより、情報の整理が容易になるのだとか。
(図の引用元:STUDY HACKER|アメリカの名門大学発! コーネル式ノート術をやってみたら驚くほど勉強が捗った話。)
一方で、フランス文学研究者の鈴木暁氏が提唱する「鈴木式6分割ノート」の場合は、見開いた2ページを6分割して、「1. 原文コピー、2. 単語・熟語、3. 調べたこと、4. 質問・疑問、5. 自分の言葉、6. 原文を手書きで写したもの」といった順番に書いていきます。不明点について調べたり考えたりしながら「精読する」のに役立つそうです。
(図の引用元:STUDY HACKER|【外出自粛】読書初心者が家で本を楽しむ方法。「6分割ノート」で精読もバッチリ!)
こうしたノート術を勉強に取り入れるなら、縦横の薄い罫線に沿って、簡単にページを分割できる方眼ノートがおすすめです。
4.「記憶領域」を機能的に働かせる
公立諏訪東京理科大学教授で脳科学者の篠原菊紀氏いわく、「勉強の成績を上げたいなら、あとで見返した際にわかりやすいよう、視覚情報を加えてノートをとるといい」とのこと。方眼ノートがそれに適しているそうです。理由は脳の働きにありました。
篠原氏によると、私たちの脳に備わっているワーキングメモリー(脳のメモ帳とも呼ばれる)には、以下のとおりデータを一時的に保存するための記憶領域がふたつあるそうです。
- 「音韻ループ」:音声情報を保持する。例えて言えば、ひたすら罫線に沿って文字を書いていくノートのとり方のイメージ。
- 「視空間メモパッド」:画像情報を記憶する。例えて言えば、文字を丸で囲む、アイコン化するなど、ビジュアルを意識したノートのとり方のイメージ。
篠原氏によれば、すでにマス目という空間情報が整い、文字もグラフも立体図も起こしやすい方眼ノートは、上記ふたつの記憶領域を機能的に働かせるとのこと。ちなみに同氏は上記の内容を、「わかりやすい勉強ノート」をとるための最適な方法として伝えています。
5.「集中」を助ける
不安・焦り・イライラで勉強に集中できないといった状況は、多くの人が経験しているのではないでしょうか。つまり、集中力の発揮には “落ち着き” が必要です。
順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏によれば、マス目がある方眼ノートなら情報を(無理なく)きれいに書けるので、書いているうちに気持ちが落ち着くとのこと。沈静効果もあるわけです。方眼ノートを使わない手はありませんね……!
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文具プランナーの福島槙子氏によると、方眼ノートの愛用者たちは、方眼罫に心地よい包容力さえ感じているとのこと。ぜひ体験してみてください。
(参考)
マネー現代(講談社)|なぜ「ノートをきれいにまとめる人」は試験に落ちるのか?勉強熱心な人の落とし穴(並木 秀陸)
マイナビおすすめナビ|方眼ノートのおすすめ26選【書きやすい】勉強やビジネスに!サイズやデザインも紹介
朝日新聞EduA|『ドラゴン桜2』桜木建二が教える 2020教育改革|絵→文、文→絵のトレーニングの効果とは?
STUDY HACKER|アメリカの名門大学発! コーネル式ノート術をやってみたら驚くほど勉強が捗った話。
STUDY HACKER|【外出自粛】読書初心者が家で本を楽しむ方法。「6分割ノート」で精読もバッチリ!
SAKIDORI|方眼ノートのおすすめ11選。ビジネスにも勉強にもぴったりなノートをご紹介
@DIME アットダイム|手帳やノートが乱雑な人は自律神経が乱れ気味?
仕事の教科書編集部編(2015),『究極のノート術』, 学研プラス.
読売新聞オンライン|方眼ノート人気 理由は“懐の深さ”?
(冒頭の手書きノート内・参考)
月桂冠 ホームページ|月桂冠総合研究所×学校法人甲南学園甲南大学 日本酒などで使われる麹菌が作る成分・デフェリフェリクリシンにがん細胞を死滅させる作用を発見
大学ジャーナルオンライン|テント内作業で創造力向上、関西学院大学がスノーピークと実証実験
関西学院大学|テント内で作業すると創造力が高まる可能性(PDF)
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