読書で語彙力がつくって本当? 読むだけでいいの?

読書で語彙力がつくって本当?

「読書をしなきゃ」という思いはあるものの、忙しかったり読む気になれなかったりして、本から遠ざかっていませんか? そんなあなたは、読書のメリットをあらためて確認すれば、読書欲を刺激できるかもしれません。

読書のメリットのなかでも「語彙力の向上」に的を絞り、その根拠や、語彙力向上につながる読書のコツをご紹介します。

読書で語彙力は高まるのか?

「読書で語彙力が高まる」という定説は、多数の科学的根拠によって裏づけられています。

一例として、カナダの心理学者キース・E・スタノビッチ氏らによる1991年の論文では、小学4~6年生の子どもの語彙力、スペリング、一般常識などのスコアが「知っている本のタイトル数」と相関関係にあると示されました。本のタイトルを多く知っている、読書量の多い子ほど、語彙が豊かだったのです。

なぜ読書をすると語彙力が高まるのでしょうか? 「たくさんの言葉に触れることで語彙が増える」のは当然として、ほかにもさまざまな理由が考えられます。

特に言語学習を研究する心理学者・猪原敬介氏らによる2012年の論文をもとに、「共起情報」に着目した説をご紹介しましょう。共起情報とは、「どの単語とどの単語が同じ文脈で出現しやすいか、もしくは出現しにくいか、という情報」です。

「メタバース」という単語は、「仮想空間」「オンライン」「アバター」などの単語とセットでよく使われますよね。これが共起情報です。

共起情報は、言葉の意味や用法を学習するときの手がかりになります。たくさん読書をして共起情報が豊かになれば、言葉を連想したり言い換えたりする力が高まり、豊富な語彙を柔軟に使いこなせるようになるのです。

以上の内容をまとめると、

  1. 語彙を増やせる
  2. 共起情報を豊かにできる

というふたつの理由で、読書は語彙力向上に役立ちます。

テレビの視聴にも学習効果はあるでしょう。しかし同論文によると、テレビ音声の大部分は「高頻度語」で構成されているそう。

テレビで使われる言葉の多くは、すでに知っているため、語彙を増やす助けにはなりにくいのです。新しい語彙や高度な語彙を身につけたいなら、本や新聞など、活字に触れるのが一番ですね。

読書で語彙力は高まるのか?

ここからは、語彙力向上につながる読書の方法・コツをご紹介しましょう。

読書で語彙力を高めるコツ1:調べながら読む

基本ではありますが、本に知らない単語が出てきたら、辞書やインターネットで調べるのを習慣化してください。

言語学者の石黒圭氏は、「語彙の量×語彙の質」で語彙力が決まると言います。語彙力を高めるには、知っている言葉の数を増やす必要があるのです。

本で知らない言葉が出てきたら、スルーせずにしっかり調べ、きちんと意味を理解する。当たり前かつ地道な作業を繰り返し、語彙を少しずつ増やしていきましょう。

読書で語彙力を高めるコツ2:いろいろなジャンルを読む

前出の石黒氏によると、語彙を増やすには「いろんなジャンルの本に挑戦」するのが必要だそう。ビジネス書だけ、歴史の本だけ、小説だけ、と特定のジャンルばかり読んでいては、語彙が偏ってしまうためです。

  • 普段は手に取らないジャンルの本
  • 話題の本
  • 本屋で目に留まった本
  • 「少し難しいな」と感じる本

にも果敢に手を伸ばしてみましょう。

読書で語彙力を高めるコツ2:いろいろなジャンルを読む

読書で語彙力を高めるコツ3:フィクションを読む

ビジネス本のようなノンフィクションはお好きですか? 「フィクションなんて読んでもムダじゃないの?」と考えているかもしれませんね。

フィクションとは “ウソ” のお話であるため、「実用性」の点ではノンフィクションに劣るかもしれません。しかし、フィクションには、ノンフィクションにはない効用があるのも事実です。

元外交官で作家の佐藤優氏は、その効用を「 “行間” や “言葉の綾” を読みとる力」が養われることだと指摘しています。

ノンフィクションの場合、内容は「論理」に従って進むのが基本。言葉の論理的なつながりを理解する「論理的思考力」さえあれば、十分に理解できます。

しかしフィクションだと、言葉の使い方は論理を超えています。川端康成『雪国』の「夜の底が白くなった」という比喩を理解するには、「夜の底→闇に包まれている大地」「白→雪」と連想する必要がありますよね。

フィクションに親しめば、このような「論理の枠を超えた言葉の使い方」に触れられ、柔軟な語彙力を養えます。こういったタイプの語彙力は、相手の言葉の裏を察したり、繊細に言葉を選んだりする、日常的なコミュニケーションで必須です。

とはいえ、「語彙力を養うならノンフィクションよりフィクション」と断言できるわけではありません。「フィクションで語彙力が高まる」というデータも、「ノンフィクションで高まる」というデータもあるためです。

「フィクション」「ノンフィクション」とひとくくりにしても内容はさまざまですし、調査の仕方も異なるためでしょう。結論としては、「フィクションだから」「ノンフィクションだから」といった偏見をもたず、あらゆるジャンルの本に手を出してみることが大切です。

読書で語彙力を高めるコツ3:フィクションを読む

読書で語彙力を高めるコツ4:アウトプットする

グロービス経営大学院経営研究科で副研究科長を務めた村尾佳子氏は、「話す」「書く」というアウトプットも、語彙力を高めるうえで重要だと述べています。

本で出会った語彙を自分のものにしたいなら、本の内容や感想をアウトプットすることを習慣づけるようにしましょう。本の内容を自分の言葉で言い換えたり、新しい語彙を使って感想を述べたりすることで、語彙力が鍛えられます。

村尾氏は、SNSやブログの活用をすすめています。「他者に読まれている」というプレッシャーから、「正しい言葉を使おう」「もっといい表現はないかな」と意識できるそうです。

  • 本の感想・要約をSNSやブログに投稿する
  • 本の感想・内容を人に話す
  • 気に入った文章をメモする

などの手段で、読書から得たものをアウトプットしましょう。

>>読書記録の書き方6選×おすすめアプリ6選

読書で語彙力を高めるコツ4:アウトプットする

読書で語彙力を高めるコツ5:「要約」と「敷衍」をする

本の内容をアウトプットする方法として、前出の佐藤氏がすすめる方法をご紹介しましょう。

その方法とは、読んだ本の「要約」と「敷衍(ふえん)」。佐藤氏は読解力を磨く方法として推奨していますが、語彙力のトレーニングにもなるので、ぜひお試しください。

要約は、「文章の重要な部分を抽出して短くまとめる」作業。段落の要点となる文章を抜き書きするのがコツだそうです。

一方の敷衍とは、「文意はそのままに、より詳しく、理解しやすいように言葉や表現を変えながら話を広げること」。内容を自分の言葉でかみ砕いたり、解説を加えたりする作業です。

佐藤氏によると、敷衍は自分の言葉を使った表現行為であるため、豊富な語彙力や表現力が必要なのだそう。

  1. 要約した内容を自分なりの表現に書き換える
  2. 行間を読み取り、詳しく説明する

という具合に、敷衍を進めましょう。例として、芥川龍之介『蜘蛛の糸』を筆者が要約・敷衍しました。

【要約】

ある日お釈迦さまは、地獄にいる罪人・カンダタに情けをかけ、蜘蛛の糸を垂らしてやった。しかしカンダタはほかの罪人たちを出し抜き、自分だけ助かろうとしたので、バチが当たり糸が切れてしまった。

【敷衍】

ある日お釈迦さまは、地獄にいる罪人・カンダタに情けをかけてやることにした。というのもこのカンダタは生前、蜘蛛の命を助けてやるという善行を働いたことがあったからだ。たった一度のこととはいえ、蜘蛛を「かわいそう」だと憐れんだことがある男。性根にはいい部分も残っているのかもしれない。そうお釈迦さまは期待したのだろう。そしてお釈迦さまは……(略)

(下線部は、行間を読み取っての説明)

要約&敷衍のトレーニングを積み重ねれば、語彙力や表現力、読解力を磨いていけます。

***
読書によって語彙力を高めるには、ご説明した5つのポイントをふまえ、コンスタントに読書を続けてください。「月に○冊」と目標を決め、活字に触れる習慣をつけましょう。

(参考)
Cunningham, A. E. and K. E. Stanovich(1991), "Tracking the unique effects of print exposure in children: Associations with vocabulary, general knowledge, and spelling," Journal of Educational Psychology, Vol. 83, No. 2, pp.264–274.
猪原敬介・楠見孝(2012),「読書習慣が語彙知識に及ぼす影響―潜在意味解析による検討―」, 認知科学, 19巻, 1号, pp.100-121.
新R25|単語を覚えるだけじゃダメ。語彙力を鍛える方法を言語学者に聞いてきた
佐藤優(2021),『読解力の強化書』, クロスメディア・パブリッシング.
猪原敬介・内海彰(2016),「読書におけるジャンルと語彙力の関連についてのコーパス分析」, 日本認知心理学会発表論文集, 日本認知心理学会第14回大会, p.66.
Literas 論理言語力検定 公式サイト|「第1回 現代人の語彙に関する調査」結果速報
グロービスキャリアノート|語彙力を鍛えるには量と質が大事!語彙力を高める4つの方法
青空文庫|芥川龍之介 蜘蛛の糸

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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