勉強がうまくいっている人がその理由について語るとき、「スキマ時間に勉強しているから」という話がしばしば聞かれます。
たとえば、資格・勉強コンサルタントで、800以上もの資格をもつ資格取得家の鈴木秀明氏はそのひとり。また、東大入試や司法試験といった数々の難関試験を突破してきた山口真由氏(信州大学特任教授)も、「スキマ時間の活用にはかなりこだわっている」と明かしているのです。
そんな彼らのように、スキマ時間に勉強するといいとは知っていても、実際にはSNSのチェックやゲームにスキマ時間を費やしてしまう……という人が少なくないはず。
そこで今回の記事では、スキマ時間にすんなりと勉強を始められるようになるコツを3つご紹介します。多忙で勉強時間を確保しづらいビジネスパーソンのみなさんにおすすめの内容です。ぜひご一読ください。
1. スマートフォンの電源を切る
スマートフォンの通知にいちいち反応してしまい、勉強する気が起きない……。これに心当たりがある人は、スキマ時間には思いきってスマートフォンの電源を切りましょう。メールやSNSの通知がいっさいこなくなれば、集中が途切れることなく、たった5分のスキマ時間でも勉強が前に進むはずだからです。
脳科学者の中野信子氏は、スマートフォンに届く通知が脳に与える影響について、『東洋経済オンライン』の記事でこう解説しています。
- 脳はもともと、ひとつのことに集中しにくいシステムになっている。
- その目的は、生命や子孫に重大な危機をもたらしかねない「異常を検知」できるようにするため。
- 大脳の内側面にある「帯状回」という部分が、視覚や聴覚を通して得た情報に異常がないかをチェックする役割を担っている。
中野氏によると、集中力を高めるには、「帯状回を刺激しない」つまり「脳が散漫にならない」環境をつくることが一番だそう。メールやSNSの通知は、帯状回を刺激して集中力を妨げる大きな要因のひとつなので、「インターネットを切ってしまうこと」が効果的だと述べています。
「でも、SNSを少し見るぐらいいいのでは……?」とは考えないほうがいいようです。中野氏によれば、「少しSNSを見ただけで脳が『SNSモード』になり、元の集中状態に戻るのに30〜40分」もかかりかねないとのこと。
また、弁護士の荘司雅彦氏は著書『すぐに結果を出せるすごい集中力』において、読書を邪魔する刺激のひとつが、スマートフォンの通知であるとしています。その例として挙げられているのが、「読書中にLINEの通知が来たので、返信してから読書に戻る」というシチュエーションです。中断された読書を再開するとき、「活字を追っていた最中より、はるかにパワーが必要」になるとのこと。
ですから、ひとたび脳がスマートフォンに気をとられたら、そのスキマ時間を勉強に活かすことは困難だと言えるでしょう。
あなたがもし「昼休みの残り5分で勉強しよう!」と思い立ったら、まずはスマートフォンの電源を切りましょう。それでもスマートフォンが気になる場合は、サッと引き出しなどに入れてしまうのもいいかもしれません。中野氏によると、注意を引くものが視界にあるだけで集中力が落ちてしまうそうです。
少しでも時間があればスマートフォンを触ってしまうという方は、ぜひお試しください。
2. 勉強内容をあらかじめ決めておく
スキマ時間ができて初めて「さて、何をしよう?」と考えるようだと、勉強以外のことをしたくなったり、ただボーっとしただけでスキマ時間が終わったりしてしまうかもしれません。そうならないためには、あらかじめ「何を勉強するか」を決めておくと効果的です。
社員研修事業を行なうイントランスHRMソリューションズ 代表取締役の竹村孝宏氏は、こう述べています。
スキマ時間をムダにしてしまうのは、事前に「スキマ時間に何をするか」が決まっていないからです。つまり、スキマ時間を使うための態勢が整っていないということ。事前にスキマ時間を使って何をするのかを決めていないと、結局、時間をムダに過ごしてしまいます。
(引用元:日経クロステック|スキマ時間を効果的に活用するコツ)※太字による強調は編集部にて施した
具体的には、
- 5分でできる作業
- 10分でできる作業
- 30分でできる作業
を決めておけば、スキマ時間を即活用できるようになるそうです。
ちなみに、冒頭でご紹介した山口氏は、「4分あれば読書をする」「6分あればパソコンを開いて論文を書く」ようにしているとのこと。
たとえば、以下のような「スキマ時間用の勉強リスト」をつくっておくのはいかがでしょう?
- 5分空いたら……単語を暗記する
- 10分空いたら……テキストを読む
- 30分空いたら……問題集を解く
そうすれば、「電車が来るまであと10分か。じゃあテキストを読もう」と、すぐに勉強できるはずです。何をしようかと悩んだり、ボーっとして時間を潰してしまったりすることはなくなりますよ。
3. 勉強に必要なものを常に手元に用意しておく
「スキマ時間に勉強しよう」と思っても、そのタイミングで手元に勉強道具がなければ意味がありません。スキマ時間を確実に勉強に充てたいなら、手が届きやすいところに勉強道具を用意しておくことも大切です。
心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏は、著書『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』で、やるべきことをおっくうがらず「すぐやる」ためには、「スタンバイ状態」をつくっておくとよいと説いています。
佐々木氏の言う「スタンバイ状態」とは、道具が全部そろっていて、その行動が即できる状態のこと。スキマ時間の勉強に当てはめるなら、テキスト、問題集、ノート、筆記用具などが、いつスキマ時間が発生しても必ず手元にある――そんな状態でしょう。
たとえば、以下のような「スタンバイ」の仕方が考えられます。
- 家で、お風呂が沸くのを待つ時間に勉強するなら……
単語帳をテーブルの上などに置きっぱなしにしておく。 - 外出先で、電車や友人を待つあいだに勉強するなら……
テキストなどをバラバラにして必要なページだけを持ち歩く
ふたつめの「テキストをバラバラにして持ち歩く」というのは、トレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏が推奨するスキマ時間の活用法。分厚いテキストや問題集でも、10~20ページにまで薄くすれば、断然持ち運びがしやすくなるからです。
さらに、心理的にもメリットがあるそう。
バラすことは思いがけない“副作用”があります。それは、勉強することのハードルが下がることです。分厚いテキストや問題集を目の前にしていたときと、バラして薄くしたものを目の前にしている今とで、あなたの気持ちを比較してみてください。今のほうがテキストや問題集を手に取りやすくなり、ページをめくるのが楽になっていませんか?
(引用元:All About|隙間時間を活用した勉強の4つのコツ!1日5分でもOKの暗記術とは)
分厚い教材を前にうんざりしている人には、特にぴったりと言えるでしょう。
「時間が空いたけど、手元に勉強道具がないからいまは勉強しなくてもいいや……」となりがちな人は、ぜひ試してみてくださいね。
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ご紹介した方法でコツコツと勉強し、スキルアップできたらすてきですね。スマートフォンばかり眺めて過ごしている同僚と差をつけることができるかもしれませんよ。
(参考)
STUDY HACKER|「“スキマ時間” もむしろ積極的につくろう!」 資格Hacker 鈴木秀明のシカクロード for StudyHacker【第19回】
STUDY HACKER|東大首席・山口真由さんが「4分」あればどこでも本を読む深い理由
東洋経済オンライン|「机にスマホ置く人」ほど集中力が続かない理由
プレジデントオンライン|カフェで仕事や勉強をしないほうがいい…東大卒弁護士が断言する「結果の出る場所」の2大条件
日経クロステック|スキマ時間を効果的に活用するコツ
佐々木正悟(2011),『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』, 中経出版.
All About|隙間時間を活用した勉強の4つのコツ!1日5分でもOKの暗記術とは
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。