「情報まみれ」は脳と心を確実に疲れさせる。癒やすには “これ” を半分にするといい

川野泰周さん「自分が疲れていることに気づけない原因と対処法」01

きちんと休みもあるし、そこまでハードに働いてはいない。なのに、「よくわからないけれどなんだか疲れている……」。あなたも、もしかしたらそんな状態にあるかもしれません。

ただ、マインドフルネスに詳しい精神科医・禅僧の川野泰周(かわの・たいしゅう)さんは、「そういう人はまだまし」と言います。川野さんが心配しているのは、自分が疲れていること自体に気づいていない人」が増加中だということ。みなさん自身はどうでしょうか?

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

原因不明の体調不良は、「脳疲労」が原因かもしれない

脳疲労を蓄積している状態については、大きくふたつの段階があると考えています。ひとつが、「よくわからないけれどなんだか疲れている」人。原因がわからないまま漠然とした疲れを抱え込んでいる人です。

でも、そういう人はまだいいほうなのかもしれません。原因はわからないものの、「自分が疲れている」ということは自覚できているからです。じつはそれすらできずに、危険な状況に陥るまで頑張り続けてしまう人もいるのです。それは、「自分が疲れていること自体に気づいていない」人。このようなケースでは、身体の疲労ではなく脳の疲労がよく見られます。

私も日々の精神科診療を通じて、そういう人が増えていることを強く危惧しています。疲労しきってしまった脳からの「SOS」として、身体にさまざまな症状がすでに出ているにもかかわらず、その根本的原因が脳疲労にあるとは考えることができない人たちだからです。

たとえば、胃がもたれていることは自覚していて内科を受診したとしても、胃そのものには異常がなかった。あるいは、原因不明の頭痛があるからとMRI検査を受けても異常はなかった。そんな経緯を有する人がとても多くなりました。それらの原因が脳疲労にある場合なら、それも当然のことです。胃薬やめまい止めの薬をいくら飲んでも脳疲労はとれませんから、症状が改善するわけもありません。そうして、どんどん脳疲労を蓄積させてしまっている人が増えています。

脳の疲労は、心の疲労とも言うべきものです。その疲労をどんどんため込んでしまえば、身体だけでなく心にもさまざまな症状が表れることになります。場合によっては疲労が過度に蓄積してうつ状態を発症し、満足に働けなくなってしまうこともあるのです。

ですから、もしみなさんのなかに「原因不明の体調不良がある」人がいるなら、「もしかしたら、脳疲労がたまっているのかもしれない」と疑ってほしいのです。もちろん、体調不良があるのならそれぞれの症状に合った診療科も受診すべきですが、それでも異常が見つからないときは、脳疲労に原因があると考えてみるのもひとつの手段です。

川野泰周さん「自分が疲れていることに気づけない原因と対処法」02

 

脳疲労軽減のため、情報にあふれている状態を手放す

このように脳疲労をため込んでしまっている人は、いくら身体を休めても症状はなかなか改善しません。肉体疲労と脳疲労はまったくの別物だからです。もしそういう状態がご自分にも思いあたるようでしたら、まずは脳疲労をとることを考えましょう

そのための方法となると、私が専門のひとつとするマインドフルネスなど多くの対処法がありますが、ビジネスパーソンのみなさんにはまず情報にまみれた状況を手放すことをおすすめします。

コロナ禍以降、リモートワークが急速に広まりました。もちろん、リモートワークには多くのメリットもあります。ですが、私の立場からするとやはり大きな危険性も潜んでいます。それは、情報過多による脳疲労の増大です。

じつは、そもそも自分の脳に疲労が蓄積していることを気づけない原因のひとつが、この情報過多にあります。自分の外側から入ってくる情報が多くなればなるほど、その処理のために脳の注意資源を多く使わなければならない状態に陥ります。そうして、自分の内側、つまり自分の心や身体がどういう状態にあるのかを見つめるために使える脳の注意資源が不足し、適切に疲労をとることが難しくなる。結果として、脳が疲労するという構造が垣間見えるのです。

リモートワークとなると、オフィスに出勤していたときならちょっとした会話ですんでいた用事についても、メールやチャットツールを介して行なうことになります。みなさんのなかにも、リモートワークになってメールやチャットの数が激増した人もいるのではないですか? そういう方は、外側からの情報の処理に脳が追われている状況が想定されるのです。

川野泰周さん「自分が疲れていることに気づけない原因と対処法」03

禅寺が開いている坐禅会に参加してみる

ですから、まずは「情報にまみれた状況を手放す」ことを考えてほしいのです。リモートワークではパソコンを使うことは避けられません。一方、個人で使うスマートフォンはどうでしょう? ただでさえリモートワークでパソコンを使う時間が増えているのに、さしたる目的もなくスマートフォンをいじり続けている人も多いのではないでしょうか。

iPhoneには「スクリーンタイム」という、iPhoneを使っていた時間を把握するための機能があります。Androidにも同様の機能をもつアプリはたくさんあります。それらを使って、まずは自分が1日にどれくらいスマートフォンを使っているのかを把握しましょう

そして、その時間を、わかりやすい基準として「半分」にすることを目標にしてみてください。SNSやニュースサイト、動画共有サイトなどを見る回数を減らしたり、見る時間帯を決めたりするだけでもスマートフォンを使う時間は大きく減らせるはずです。

そうするうち、いかに自分が無駄な時間の使い方をしていたかにも気づけると思います。そのことに気づいたら、その時間をもっと自分の脳——つまり、心を癒やすために使ってみてはどうでしょうか?

私は禅僧ですから、一個人としては坐禅に取り組んでもらえるととても嬉しいなと思います。じつは最近、私自身も坐禅のすばらしさをあらためて認識しました。住職になってからは、自分のお寺の坐禅会で指導をさせていただきながら短い時間坐ることが多いのですが、先日、九州の有名な禅寺でゆっくりと時間をかけて坐禅をさせていただいたところ、心がパーッと晴れて軽やかになっていくのを実感しました。

いまは、一般の人たちに向けて坐禅会を開いている禅寺も少なくありません。ぜひみなさんにも、心の迷いが晴れていくような体験を味わっていただきたいと思います。

川野泰周さん「自分が疲れていることに気づけない原因と対処法」04

【川野泰周さん ほかのインタビュー記事はこちら】
“精神科医の禅僧” が教える「脳が疲れる2つの原因」。現代は “脳に悪いこと” が多すぎる。
「疲れすぎた脳」が休まる最高の習慣はあるのか? 精神科医の禅僧に聞いてみた。
やっぱり「書く習慣」は最高だった。脳が疲れた現代人こそペンと筆を持つべき理由。
なぜか疲れている理由は脳にあり。“精神科医の禅僧” が説く「脳疲労」を防ぐたった1つの習慣
脳疲労が続く人は「自己肯定感」が低い。高めるための第一歩は “この事実” に気づくこと

精神科医がすすめる 疲れにくい生き方

精神科医がすすめる 疲れにくい生き方

  • 作者:川野 泰周
  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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【プロフィール】
川野泰周(かわの・たいしゅう)
1980年生まれ、神奈川県出身。精神科・心療内科医。臨済宗建長寺派林香寺住職。2005年、慶應義塾大学医学部医学科卒。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2011年より建長寺専門道場にて3年半にわたる禅修行を行なう。2014年末より臨済宗建長寺派林香寺の住職となる。現在は寺務のかたわら、都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。うつ病、不安障害、PTSD、睡眠障害、依存症などに対し、薬物療法や従来の精神療法と並び、禅やマインドフルネスの実践による心理療法を積極的に導入している。また、ビジネスパーソン、医療従事者、学校教員、子育て世代、シニア世代など幅広い対象に講演活動も行なう。『半分、減らす』(三笠書房)、『精神科医がすすめる 疲れにくい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)、『集中力がある人のストレス管理のキホン』(すばる舎)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『人生がうまくいく人の自己肯定感』(三笠書房)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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