エビデンスとは?ビジネスでの意味や使い方をわかりやすく解説

エビデンスとは何か簡単にわかる!「エビデンスが欲しい」と言われたら?

エビデンス(evidence)とは、「根拠」や「証拠」といった意味合い。近年はビジネス用語としても使われる言葉です。

ビジネスシーンでは、主張に根拠が求められるもの。根拠に基づいていることは「エビデンスベース」と呼ばれます。たとえば、医療業界における「EBM(Evidence-Based Medicine)」とは、科学的根拠などを十分に把握したうえで治療法を検討することです。

今回は、「エビデンス」という言葉の使い方や、「ファクト」との違いをわかりやすく解説しましょう。「よく耳にするけど、エビデンスって何?」と思っている方の参考になれば幸いです。

エビデンスとは? ビジネスでの基本的な意味と使い方

エビデンスとは、意見の客観性・正当性を主張するのに欠かせないものです。「根拠はありませんが、健康にいいですよ」という宣伝を聞いて、買いたくなる人はいませんよね。どんなにいいアイデアでも、裏づけとなるエビデンスを示せなければ、主観的な思いつきの域を出ないのです。

エビデンスに基づく判断は「エビデンスベースド(※)」と呼ばれます(※エビデンスベースト、あるいはエビデンスベースとも)。「もっとエビデンスベースドで考えよう」「その意見はエビデンスベースドじゃないね」などの使い方があるので、覚えておきましょう。

エビデンスとは? ビジネスでの基本的な意味と使い方

エビデンスとファクトの違い

エビデンスとは何かより正確に理解するため、近い言葉である「ファクト」と比べてみましょう。両者はどう違うのでしょうか?

ファクトは「事実」という意味です。エビデンスには「主張や仮説を立証するための材料」というニュアンスがありますが、ファクトにはこうした価値判断がともないません

たとえば、「昨日Aさんは岐阜にいた」というのは単なるファクト。しかし、「昨日Aさんは岐阜にいた。だから犯行は不可能だ」と主張の根拠になる場合はエビデンスです

したがって、「Aさんが無実であることのエビデンス」という言い方はできますが、「Aさんが無実であることのファクト」とは言えません。このように、エビデンスとファクトはニュアンスや用法が異なるので、正しく使い分けましょう。

エビデンスとファクトの違い

エビデンスに基づく考え方1:「なぜなら」「たとえば」を口癖にする

エビデンスとは何か理解できたところで、ここからは、エビデンスベースで思考・交渉できるビジネスパーソンになるための方法をご紹介します。

ビジネスコーチのウィリアム・A・ヴァンス氏によると、意見を表明するときは、「なぜなら」「たとえば」という接続詞を使って補足する習慣をつけるのがよいそう。

  • 「なぜなら……」→理由を提示
  • 「たとえば……」→具体例やデータ(エビデンス)を提示

こうすれば、意見の説得力が増しますよね。以下の例をご覧ください。

【主張】このサプリメントを飲むと、腸内環境が整います。
【理由】なぜなら、1粒当たり1,000億個もの乳酸菌が含まれているからです。
【具体例】たとえば、アンケート調査だと、95%の顧客が便秘の改善などの効果を実感できたそうです。

「なぜなら」「たとえば」を使うことで、“サプリメントを飲むと腸内環境が整う” という主張の説得力が増しているのがわかるでしょう。企画書などを書くときも、「なぜなら」「たとえば」という接続詞を意識することで、エビデンスベースな仕事ができるはずです。

エビデンスに基づく考え方1:「なぜなら」「たとえば」を口癖にする

エビデンスに基づく考え方2:データを探す

上述したように、根拠や具体例を提示することで、エビデンスベースドな主張ができます。普段から「エビデンス」を意識して仕事をしましょう。

立命館アジア太平洋大学の学長である出口治明氏は、物事を判断する際に「エピソード」から受けた印象を信用せず、数値的・科学的なデータを調べることを推奨しています。

たとえば、「福岡出身のAくんは気前がいい」というエピソードだけで「福岡県民は気前がいい」と判断するのは早計です。仮説が正しいか確かめるには、統計などの「エビデンス資料」にあたる必要があります。この場合、県民性に関するアンケートや贅沢品の消費量調査などが考えられるでしょう。

こうした「エビデンス主義」を徹底した例として出口氏が挙げるのが、世界的IT企業のGoogle。Googleは人事評価において、評価される社員の国籍や顔写真、年齢・性別といった情報を伏せているそう。評価する側の偏見や個人的な印象を排除し、純粋な実績(エビデンス)だけをもとに評価を下そうとしているのです。

エビデンスに基づく考え方2:データを探す

エビデンスに基づく考え方3:ピラミッドストラクチャーを使う

エビデンスを固めるのに役立つのが、『マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書』(SBクリエイティブ、2013年)の著者でコンサルタントの大嶋祥誉氏が紹介している「ピラミッドストラクチャー」です。

ピラミッドストラクチャーとは、主張とエビデンスを、ピラミッド型に配列するフレームワークのこと。以下の図が、ピラミッドストラクチャーの例です。

エビデンスベースで考えるのに役立つピラミッドストラクチャー

(画像引用元:STUDY HACKER|資料作成4つのコツ。パワーポイントで資料が作れる!

ピラミッドの最上部に位置する「ミネラルウォータービジネスに参入すべき」というのが主張です。その下には、主張を支える3つの理由があり、その3つの理由は8個のエビデンスによって支えられています。

ピラミッドストラクチャーを用意しておけば、自身の主張をエビデンスベースで説明しやすくなりますよ。たとえば、「ミネラルウォーター市場に参入して、本当に利益が出るのか?」と上司に聞かれたら、2段目の左にあるブロックをもとに「市場成長率が高いので、十分利益を見込めます」と答えられます。「市場成長率が高いのは確かなのか?」と追求されても、その下にある3つのエビデンスを示せば、納得してもらえるでしょう。

ピラミッドストラクチャーをつくれば、主張の裏づけとなるエビデンスが可視化されるため、スキのない緻密な提案を練ることができるのです。

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エビデンスとは、意見に説得力をもたせてくれるもの。企画や提案がなかなか通らずお困りの方は、ご紹介した「エビデンスベース」を実践してみてくださいね。

(参考)

コトバンク|エビデンス
コトバンク|ファクト
eduview|「エビデンスベースト」が日本の教育を変える〜中室牧子氏に聞く
東洋経済オンライン|日本人はなぜ「論理思考が壊滅的に苦手」なのか
ITmedia エンタープライズ|残念にならないプレゼン――ピラミッドストラクチャーを使う
ウィリアム・A・ヴァンス, 神田房枝(2017),『「答え方」が人生を変える あらゆる成功を決めるのは「質問力」より「応答力」』, CCCメディアハウス.
高城幸司(2013),『人事コンサルタントが明かす「ムダ」のない仕事のやり方 努力が正しく評価される80のヒント』, 学研パブリッシング.

【ライタープロフィール】
佐藤舜

大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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