マウントとは、「私のほうが立場が上だぞ」と、自分の優位性をアピールする行為を意味します。
「じつは私、○○大学を出てるんだけど」
「えっ、こんなことも知らないの?」
「大きなプロジェクトを任されちゃって、大変でさぁ」
こんな「マウンター」が会社や学校にいると、気分が害されがち。ムキになってやり返すわけにもいかず、悩んでいる方は多いのではないでしょうか?
マウントとはどんな行為なのか、マウンティングをしかける人の心理・特徴とはどんなものか、そして、マウントへの対処法を詳しくご説明します。
「『マウントをとる』の意味とは? 豊富な会話例ですぐわかる!」でも詳しく解説しているので、こちらもお読みください。
マウントとは
マウントとは、「私のほうが上だぞ」あるいは「お前のほうが下だぞ」と威圧し、自分の優位性をアピールする行為です。公認心理師の大美賀直子氏によると、心理学では「ディスカウント」(値引き)と呼ばれるそう。相手の価値を値引きする、という意味合いです。
- 学歴や年収をさりげなくアピールする
- プライベートが充実していることをSNSでアピールする
- 「そんなことも知らないの?」と無知をバカにする
などが、典型的なマウント。学歴や年収、仕事の実績、知識、持ち物など、さまざまなものが使われます。
マウントとは本来、サルなどの動物が弱い個体に馬乗りになり、自分の優位を示す行為。それが人間に置き換わり、現在の用法で広まりました。
マウントという言葉がはやり始めたのは、2014年頃です。火つけ役とされるのが、同年に出版された『マウンティング女子の世界 女は笑顔で殴りあう』(筑摩書房)。「肉食女子対草食女子」「都会暮らし女子対田舎暮らし女子」など、女性どうしの「マウンティング合戦」がテーマのエッセイです。
同年に放送されたテレビドラマ『ファーストクラス』でも、女性どうしの壮絶な「格づけ合戦」が描かれ、マウントとはどんな行為を指すのか認知が広まるきっかけになりました。結果として、その年に話題となった言葉を選ぶ「ユーキャン新語・流行語大賞」の2014年版では「マウンティング女子」がノミネートされたというわけです。
◆「マウントをとる」の用例
- あの人はいつもマウントをとってきてイヤな感じだ
- 年収でマウントをとられて不快な思いをした
- 私には、ついマウントをとるクセがあるから気をつけよう
マウンティングのタイプ
マウントとは具体的にどのような行為なのか、よりイメージをつかみやすくするため、6つのタイプをご紹介します。
ステータス系
まずは、社会的ステータスによるマウント。学歴や職歴、年収、仕事の実績、結婚などに加え、「異性にモテる」「プライベートが充実している」などの自慢も、広義のステータス系マウントです。
頑張って成し遂げたこと、手に入れたものを誇る気持ちは誰にでもあるでしょう。しかし、自慢をすれば「マウントをとられた」とイヤがられることがほとんど。仕事やプライベートが順調な人ほど、うっかりマウンティングしてしまわないよう気をつけてください。
◆ステータス系マウントの例
- 高学歴アピール
- 高年収アピール
- 職業・職歴の自慢
- 仕事での昇進や実績の自慢
- 能力や資格の自慢
- 居住地の自慢
- 結婚に関する自慢
- 「モテる」自慢
- プライベートが充実していることの自慢
モノ・お金系
もっているモノやお金などを自慢するのも、典型的なマウンティング。高級ブランドの服や時計、バッグ、車などの自慢がわかりやすいでしょう。「高級レストランへ行った」「海外旅行へ行った」などの「散財自慢」も、モノ・お金系マウンティングです。
◆モノ・お金系マウントの例
- 高級品の自慢
- 高級レストランへ行った自慢
- 海外旅行の自慢
- 散財・豪遊の自慢
- 高年収アピール
知識系
物知りや勉強熱心、多趣味な人が陥りやすいのが、知識系のマウント。博識なのはすばらしいことですが、聞かれてもいないのに延々とウンチクを語ったり、相手の無知をバカにしたりすれば、「知識をひけらかすイヤミな人」と思われても仕方ありません。
せっかくの知識を披露したい気持ちはわかりますが、シチュエーションには注意しましょう。
◆知識系マウントの例
- ビジネス用語アピール
- 教養・雑学アピール
- ○○通アピール
- 知ったかぶり
- 「こんなことも知らないの?」
- 「上から目線」のアドバイス
SNS系
買ったものや、飲み会・旅行の写真をSNSに載せ、生活の自慢をする人もいますよね。SNSへの投稿自体は悪くありませんが、「こんなにすごい自分を見て」という意識が強すぎる投稿は、マウンティングと受け取られても仕方ありません。「ステキな場所」を見せたいのか、「ステキな場所にいる自分」を見せたいのかは、不思議と伝わります。
マウントをとるような投稿が多く不快に感じるアカウントは、フォローを解除したりミュート(非表示)に設定したりと、なるべく目に入らないよう対処しましょう。
◆SNS系マウントの例
- オシャレなカフェの写真
- 買ったものの写真
- 読書・勉強中の写真
- 自慢話・自分語り
- 恋人の写真
遠回し系
謙遜や愚痴に見せかけた、遠回しなマウンティングもあります。たとえば、「うちは大きい会社だから、いろいろ面倒でね」。愚痴というオブラートに包んではいますが、大企業に勤めていることを自慢しているのかもしれません。
もちろん、本当に愚痴の場合もありますが、「ただの愚痴」か「愚痴に見せかけた自慢」かは、文脈や言い回しから容易にわかるはずです。
◆遠回し系マウントの例
- 「うちは大きい会社だから、いろいろ面倒でね」
→大企業で働いていることを暗に自慢している - 「プロジェクトリーダーを任されちゃって、これから大変だよ」
→会社で評価されていることを暗に自慢している - 「独身は楽でいいよね」
→既婚者であることを暗に自慢している
見下し系
自慢だけでなく、相手を見下すような言動もマウンティングです。マウントのなかでも、かなり攻撃的な部類に入ります。
◆見下し系マウントの例
- 相手の言動を否定する
- 相手を見下すような振る舞いをする
- 「上から目線」で発言する
- 相手の短所をめざとく指摘する
- イヤミや皮肉を言う
このように、マウントとは、相手より優位に立とうという意図のある言動で、あらゆる人間関係において生じうるのです。
マウントをとる人の心理
マウントとは何か理解したところで、次はマウンターの心理に迫ってみましょう。マウンターは、なぜ他人を見下したり攻撃したりするのでしょうか? 理由としては、以下の6つが考えられます。
自信がない
マウントの背景にあるのは、ほとんどの場合、自信のなさを穴埋めしたいという心理です。心理カウンセラーの石原加受子氏によると、自信がない人はマウンティングによって「格下」の存在をつくり、安心感を得ようとすることがあるそう。
「小型犬ほどよく吠える」と聞いたことがあるでしょう。弱さを自覚している犬は、せめて振る舞いだけでも強く見せることで身を守るわけです。
マウントをとる人の心理も同様。「自分はたいしたことのない人間だ」「誰かにバカにされたらどうしよう」と常に恐れているからこそ、「ナメられないように」と虚勢を張るのですね。
承認欲求が強い
マウントをとる人には、承認欲求が強い傾向も。「自分の優秀さを認めさせたい」「自分のほうが上だと知らしめたい」という欲求を満たすため、必死に自分をアピールするのです。
承認欲求は、先述した「自信のなさ」の裏返し。周囲から認められていないという不安があるからこそ、是が非でも認めさせたいという欲求も強くなるわけです。
そのほか、公認心理士の広瀬絵美氏によると、「自分に対する期待が高すぎる」人も承認欲求が強い傾向があるとか。上昇志向や向上心が強い人は、「認められたい」というエネルギーが悪い方向へ向かわないよう注意しましょう。
序列を気にしすぎる
精神科医の名越康文氏によると、マウンターは「人はみな序列を気にしており、少しでも優位に立とうとしている」という価値観なのだとか。この世のすべてを競争と解釈しているのです。
そのため、常に自分と他者を比較し、自分が劣っていると感じれば、マウントをとることで序列を高めようとします。マウンティングをしない人にとって、このような「何がなんでも上に立ちたい」心理は理解しがたいものでしょう。
シャーデンフロイデ
脳科学者の中野信子氏によると、人間には「シャーデンフロイデ」という心理があるそう。簡単に言うと、目立っている人や自分が嫉妬している人を引きずり下ろす快感です。「出る杭を打ちたくなる心理」とも言えるでしょう。
- 自分より評価されている同僚に嫉妬し、ついイジワルしたくなる
- 嫌いな芸能人がスキャンダルで失脚すると、つい嬉しくなる
……という心理が、シャーデンフロイデ。何か目立ったところのある人を見ると、「ずるい!」という心理が生まれ、攻撃したくなるのです。
本来シャーデンフロイデは、社会において「不当な利益を得ている人」を排除するため、私たちの心理にプログラムされたのだとか。それが悪い方向に作用してしまっているのですね。
集団内での立ち位置を確かめたい
ひと昔前、先輩や上司は絶対的な存在であり、少しでも意見すれば厳しく𠮟られるような雰囲気がありました。それに比べ、昨今の上下関係はかなりゆるいもの。部下が上司に意見し、上司が部下に気を遣うことも珍しくなくなりました。上下関係に縛られすぎない「フラットな組織」が良しとされる風潮が広まっていますよね。
そんなフラットさが、マウンティング流行の背景にあるのでは――脳科学者・茂木健一郎氏はそう指摘します。上下関係がゆるいということは、自分がどの程度「偉い」のか、集団のなかでどれくらいの位置なのか曖昧だということ。部下や後輩に立場をおびやかされるかも、という不安が生まれやすい状況でもあるのです。
そんな不安を解消するためにマウントをとることで、自分の「偉さ」や「優位性」を確認したがる人が増えた、というのが茂木氏の説。すべてのケースにあてはまるわけではないでしょうが、一理あるように思えますね。
主導権を握りたい
人間関係を有利に構築するため、戦略的にマウンティングする人もいます。「自分のほうが上」「あなたは下」とアピールすることで威圧し、思い通りに物事を進めようとするのです。
- 相手を従わせたい
- わがままを通したい
- 一目置かれる存在になりたい
……という目的でマウントをとってくる人が周囲にいたら、意図的であるぶん、かなり厄介ですね。
なお、間接的にマウントをとる人は「マニピュレーター」と呼ばれることも。一般的なマウントとは少し違い、「さりげなく罪悪感を与えてくる」「親切を装って攻撃してくる」といった気づかれにくい方法で他者を威圧し、支配しようとします。詳しく知りたい方は、「マニピュレーターとは? 絶望的状況に追い込まれる前の対策5つ」をご覧ください。
マウントをとられやすい人の特徴
できることなら、マウントとは無縁の暮らしを送りたいものですよね。マウンティングによる被害を回避するため、「マウンターに狙われやすい人」の特徴を押さえておきましょう。
反撃しない
反撃をしてこない大人しい人は、マウンティングのターゲットにされやすくなります。
- 気が弱くて言い返せない
- 事を荒立てないよう、あえて言い返さない
- 控えめな性格で、自己主張が苦手
……という人は要注意。「この人には何を言っても平気」と認識され、マウンターから精神的に搾取され続けてしまうかもしれません。
前出の中野氏によれば、マウンティングが日常的に続くと「洗脳」に近い状態になり、マウンターとのあいだに支配関係が生まれてしまう場合もあるのだとか。「カモ」と認定されてしまう前に、早く手を打つことが大切です。
目立っている
「シャーデンフロイデ」の項で述べたとおり、集団のなかで目立っている人は、マウンティングなどの攻撃を受けやすい傾向があります。会社で言うと、
- 社内で評価されている人
- 上司や同僚から人気がある人
- 能力や外見に恵まれている人
などは、ほかの人の嫉妬心や嗜虐心を刺激し、ターゲットにされるかもしれません。とりわけ目立っているわけではない人物でも、マウンターが個人的に嫉妬し、攻撃対象になる場合も。
立場が同じか下
前出の中野氏によれば、身近な人物ほどシャーデンフロイデを抱きやすいのだそう。たとえば、メジャーリーガーの大谷翔平選手が3億円の年棒をもらっていてもなんとも思いませんが、友人の給料が多ければ「悔しい!」と感じるかもしれません。そのため、
- 同じ課の同僚
- 親しい友人
- 年齢が近い人
- 同性の人
- 職種や立場が似ている人
といった、「身近」で「自分と同じような人」にほど、マウントしたくなると考えられます。
ライバル意識自体は悪くありません。実直な人なら、「悔しいからもっと頑張ろう!」と奮起し、自分自身を磨くモチベーションになるでしょう。
しかし、マウンターは自分を高めて相手を追い越すのではなく、「相手を引きずり降ろそう」「自分が上だとアピールしよう」という方向にばかりエネルギーを注ぎます。自己成長の観点からも、マウントとは不毛で虚しい行為なのです。
あなたもマウントしてない? マウンター気質をチェック
ここまで「マウントされやすい人」の特徴を見てきましたが、マウントとは自覚しないまま、あなたも誰かに不快感を与えているかもしれません。
マウンティング癖を自覚するのは、かなり困難です。参考までに、マウンター気質を診断できるチェックリストを筆者が作成してみました。下記の質問に、YESかNOで答えてください。YESの数が多いほど、マウンターの傾向が強くなります。
- 自慢話や苦労話が多い
- 人にすぐアドバイスしたくなる
- 批判や悪口が多い
- 人に弱みを見せられない
- SNSに近況を投稿することが多い
- 有名ブランドの品が欲しくなる
- 他人と自分を比較して一喜一憂することが多い
- さえない友だちといると安心する
- 負けず嫌いだ
- 人からいじられるとイラっとする
あてはまる項目が多かった方は、マウントとは自覚せずに相手を傷つけている恐れがあるので、日頃の言動を振り返ってみましょう。
マウントへの対処法
マウントとはじつに不快なものですが、露骨に反撃すればトラブルになりかねず、厄介ですよね。以下では、同僚や友人にマウントをとられたときの賢い対処法をご紹介しましょう。
「スルー言葉」で受け流す
マウンティングされたときは、さらりと受け流すのが基本。怒りやいらだちを覚えるかもしれませんが、正面から相手にしてはいけません。
怒って言い返したりすれば、マウンターの思うツボ。「しめしめ、悔しがってるぞ」と喜ばせてしまうかもしれません。そもそも、低レベルな「マウンティング合戦」に応じること自体、時間や労力の大きなムダです。
とはいえ、無抵抗にマウンティングを受け入れては、マウンターを調子づかせてしまう危険があります。マウンティングを受け流しつつ、「私はあなたを相手にしていませんよ」とそれとなく伝えるのが大切です。
そこで使えるのが、精神科医の樺沢紫苑氏が提唱する「スルー言葉」。「へぇ」「そうなんですね」のように、「あなたの話に興味がありません」と伝えられる、表面上は無害な言葉です。
◆スルー言葉の例
- 「へぇ」
- 「そうなんですね」
- 「なるほど」
- 「それはよかったですね」
- 「そういう考え方もありますね」
スルー言葉は、反撃の手段ではありません。「あっ、反撃された!」と相手を怒らせてはもとも子もないので、なるべく感情を押し殺し、無関心に徹した表情、声のトーンを意識しましょう。
もちろん、目上の人に「へぇ」などと言うのは、さすがに失礼です。相手との関係を考えつつ、最適なスルー言葉を選んでください。
ほめて懐に入る
もうひとつ樺沢氏がすすめているのが、「相手の懐に入る」というテクニック。「すごい」とおだてたり「教えてください!」と頼ったりして、マウンターから仲間と認識してもらいます。
マウンティングの背景にあるのは、自分の優位を相手に認めさせたいという心理。「あなたのことを認めていますよ」と示せば、マウンターの心は満たされるので、マウントが少なくなるはずです。
◆懐に入る言葉の例
- 「すごいね!」とほめる
- 「教えてください!」とアドバイスを求める
- 「○○してくれませんか?」とお願いする
マウンターに負けたようで少し悔しいかもしれませんが、このうえなく平和的な解決策とも言えます。特に上司・先輩など、対立するとデメリットしかない相手におすすめ。うまく打ち解ければ、「やめてくださいよ」「イヤです」と言ってもカドが立たない関係になれるかもしれません。
「牽制球」を投げる
前出の中野氏がすすめているのが、言葉の「牽制球」を投げること。「マウンティングしないでくださいよ(笑)」という具合に、遠回しにチクリと指摘する方法です。
目的は、「あなたのマウンティングを不快に思っています」というメッセージを、あくまで冗談として伝えること。気の弱いマウンターなら、こうしたひとことでドキッとし、引き下がってくれるかもしれません。
◆牽制球の例
- 「マウンティングしないでくださいよ(笑)」と冗談めかして指摘する
- 「傷つくなぁ」とやんわり不快感を伝える
- 「根にもちますよ?」と軽い調子で言う
ただし、投げるのはあくまで「牽制球」。相手を攻撃するような「デッドボール」ではいけません。語尾に(笑)をつける感覚で、冗談というオブラートに包むのがポイントです。
伝え方を間違えれば、本格的なトラブルに発展するばかりか、あなた自身がマウンターになる恐れも。さじ加減が難しい上級者向けのテクニックですから、会話力に自信がある方のみ試してください。
イエス・バット法
心理術に関して多くの著書があるメンタリストのロミオ・ロドリゲスJr.氏が紹介しているのが、「イエス・バット法」。まずは「yes」と肯定したあと、「but」と否定的な意見を述べる会話テクニックです。
たとえば、「学生時代、部活の県大会で優勝したんだ」とマウンティングされたら、「それはすごい! でも、全国大会で負けたのは残念だったね」と言ってみましょう。自慢話が成立しなくなり、相手にチクリとダメージを与えることができます。
◆イエス・バット法の例
- 自慢された
→「それはすごい! でも、全国大会で負けたのは残念だったね」 - 自慢された
→「それはすごい! でも、自慢しなければもっとカッコよかったね」 - 批判された
→「ありがとう! でも、もっと優しい言葉で教えてくれたら嬉しかったな」
先に「すごい!」「ありがとう!」と相手を肯定するので、言葉の「毒」を中和できます。批判的な印象を弱めつつ、きっぱりと伝えたいときに役立つでしょう。「この人にマウンティングしても気持ちよくない」「反論されるのが怖い」と認識させられれば、それ以上マウントをとってこなくなるはず。
とはいえ、相手との関係や伝え方によってはカドが立ってしまうので、これも上級者向けテクニックです。
「嫉妬しているだけ」と笑い飛ばす
心理カウンセラーの大嶋信頼氏によると、足を引っ張ってくる相手には「ああ、この人は自分に嫉妬しているんだな」と笑い飛ばすくらいの姿勢がいいそう。「マウンターは私に嫉妬しているんだ」と断定すれば、マウントをとられても動揺しにくくなり、心の平穏が保たれます。
マウンティングされると、まじめな人ほど「自分は劣っているのでは」「自分が悪いのでは」と考え、深く落ち込んでしまうもの。マウンターの言葉をいちいち真に受けては、心がすり減り、ストレスがたまるばかりです。
「相手が正しいのでは?」などと考えず、自分の快・不快を優先してください。マウンティングに惑わされやすい方は、これくらいの構えでいたほうが楽になるでしょう。
距離を置く
マウンターとはなるべく関わらないのがベストです。顔を合わせず済む方法や、距離を置く術はないか、いま一度検討してみてください。
職場だと、距離をとるのは困難かもしれません。それでも、なるべくすれ違わないようにしたり、仕事の担当を代わってもらったりすれば、マウンターから遠ざかることができます。
特に、パワハラ・モラハラに近い悪質なケースでは、ガマンせず誰かに相談することを考えましょう。
◆職場にマウンターがいるなら
- 廊下などで会わないよう注意する
- 仕事の担当を代わってもらう
- 部署の異動や転職を考える
◆友人・知人にマウンターがいるなら
- 誘いを断り、会わないようにする
- 飲み会などではなるべく遠くに座る
- SNS上でブロックやミュートに設定する
雑談を避ける
マウント癖のある同僚とは、雑談もなるべく避けてください。相手が好む話題に踏み込まなければ、自慢話の頻度が減るはず。マウンターが食いつきたくなる「エサ」を与えないようにするのです。
公認心理士の石上友梨氏によると、特にプライベートな話題はマウンティングにつながりやすいそう。たとえば、「恋愛」の話題だと、恋人とどこへ行ったというような話になり、「趣味」の話題では自慢やウンチクが始まるかもしれません。
また、「仕事論」のような個人的思想に関する話題も、マウンターの「エサ」になる可能性が高いので、なるべく避けるべきでしょう。
◆マウンティングにつながりやすい話題
- 恋愛
- 趣味
- 私生活
- 仕事論
自分の価値基準を明確にする
前出の中野氏によると、マウンターに振り回されないためには、「自分が本当に求めているものは何か」という価値基準を明確にしておくべきだそう。
たとえば、年収が高いことを自慢されたとします。相手のほうが年収が高いのは事実なので、敗北感を覚えるのも無理はありません。
しかし、「年収が高いほうが偉い」というのは、あくまで相手の価値基準。肝心のあなたは、どう考えているでしょうか? 「高年収が本当にうらやましいのか」と自問し、自分の心を客観視してください。
あなたが「お金なんか、そこそこあればいいよ」という価値観なら、年収でマウントをとられたところで、いらだつ必要はありません。逆に、本気で年収を高めたいなら、マウンティングされた怒りを努力のモチベーションに昇華できるでしょう。
マウンターの価値基準に振り回されるのではなく、自分はどうなれば満足なのか、自分は何を求めているのかという「自分軸」で考えると、マウンティングを受けてもそれほど動揺しないはずです。
◆自問自答の例
- 高年収を自慢された
自問:高年収が本当にうらやましいのか
自答:いや、お金ならそこそこあればいい
→お金やモノのマウンティングに動じなくなる - 高年収を自慢された
自問:高年収が本当にうらやましいのか
自答:そのとおり、もっとお金が欲しい
→マウンティングされた怒りが努力のモチベーションに昇華される
以上、マウンターへの8つの対処法をご紹介しました。繰り返しになりますが、マウントとは正面から戦わず、不毛な争いを回避することを第一に考えてください。
マウントに関するおすすめ書籍
マウントとは何か、どう対処すればいいのかをもっと知りたい方は、以下の本も参考にしてみてください。
『自分を傷つけずに不毛なマウンティングをかわす力』
心理カウンセラー・塚越友子氏が、マウンティング回避術を教えてくれる一冊。「接客のプロ」であるホステスの経験も交えた、実践的なコミュニケーション・テクニックを学べます。
- いちいち張り合ってくる人への対応
- イヤミな上司への対応
- SNSで「リア充アピール」してくる人への対応
- 価値観を押しつけてくる親・親戚への対応
……など、あらゆる状況が想定されており、マウンターに言い返す具体的なフレーズも豊富。マウンティングにお悩みの方は、ぜひ一読してみてください。
『あなたの心を操る隣人たち』
人を意のままに操ろうとする「マニピュレーター」への対処法を解説した、『あなたの心を操る隣人たち』。著者は、パーソナリティ障害研究の専門家ジョージ・サイモン氏です。
- いつもは優しいのに、ときどき攻撃してくる
- 正義・モラルを盾に、悪者扱いしてくる
- 「天然」のふりをして、危害を加えてくる
……など、ずる賢く遠回りにマウントをとってくるのが、マニピュレーターの厄介なところ。マウンターの「毒性」をさらに強めたような存在です。人間関係の主導権を握ろうとする人に困っていたり、すでに主導権を握られて逆らえない状態になっていたりする方には、本書が役立つでしょう。
『マウンティング女子の世界 女は笑顔で殴りあう』
漫画家の瀧波ユカリ氏、エッセイストの犬山紙子氏による対談形式のエッセイ。冒頭で述べたとおり、マウンティングという言葉が広まるきっかけになった作品です。
身近なマウンターを「親友型」「カウンセラー型」などと独自に分類し、その怖さと滑稽さを本音で語っています。マウンターの実態を知りたい方、「あるある!」と共感してストレスを解消したい方、マウントとの戦い方を知りたい方などは、本書に発見があるでしょう。
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マウントとは、相手の足を引っ張るだけの不毛な行為。貴重な時間や労力をマウンターに奪われないよう、ご紹介したテクニックや本をぜひ活用してみてください。
コトバンク|マウンティング
All About|自慢話に「No!」…マウンティングする人への対処法
コトバンク|マウンティング女子
Reme|マウンティングの心理とは?3つの事例から対処法を臨床心理士が解説
Reme|承認欲求が強い…特徴や原因・3つの対処法って?臨床心理士が解説
タウンワークマガジン|会話でマウンティングしがちな人の心理とその対処法(名越康文)
幻冬舎plus|ロザン×中野信子「シャーデンフロイデは、社会を守るために必要な感情なんです」
プレジデントオンライン|マウンティング女子がマウンティングするワケ
新R25|“キレ”なければ搾取される。脳科学者・中野信子が語る「キレることの重要性」
ダイヤモンド・オンライン|精神科医が教える「攻撃されたときの大人な対応」
ダイヤモンド・オンライン|「マウンティングしてくる残念な人たち」へ復讐する方法
Dybe!|「職場の迷惑な人たち、どうしたら?」 脳科学者・中野信子さんに対処法を教えてもらった
ダイヤモンド・オンライン|嫌いな人がみるみる減っていく心理テクニック
THE21オンライン|不愉快な相手をピタリと黙らせるテクニック6
THE21オンライン|「ずるい人」を寄せつけない方法
ウートピ|リア充にも優しくなれる「メタ認知」とは? 脳科学者と心理学者が教える、SNS疲れしない方法
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。