一流は「メンタル管理」もすごかった。イチローが “打率を見ない” 深いワケとは?

各界の “一流” たちの「メンタル管理術」01

  • ストレスを抱えやすい
  • ちょっとしたことで落ち込みやすい
  • モチベーションが安定しない

こういった「メンタルのブレ」に振り回され、仕事の生産性が落ちることもあるもの。そんなときは、各界の “一流” たちの「メンタル管理術」をまねてみるといいかもしれません。この記事で紹介する4つの思考法が、あなたのメンタルを整え、強くしてくれるはずです。

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

星野佳路氏「3ない主義」

高級ホテルチェーン・星野リゾート代表の星野佳路氏は、2017年3月に公開されたインタビュー記事のなかで、「3ない主義」を掲げていると語っています。「3ない」とは、以下の3つ。

  • 出たくない会議には出ない
  • 会いたくない人には会わない
  • 行きたくない会食には行かない
(「NIKKEI STYLE|星野佳路 「3ない主義」でストレスを軽減」より)

この3つの「ない」を守ることにより、星野氏はストレスを感じる機会を減らしているそうなのです。

精神科医で禅僧の川野泰周氏は、「やりたくないこと」を避ける必要性について、こう述べています。

ストレスとは、「理性」と「感情」がぶつかって、負荷がかかったときに生まれる精神的、心理的軋轢(あつれき)です。

言い返したいのに言い返せない……。
やりたくないのにやるしかない……。

このように理性と感情が一致しないと、「葛藤」が生まれます。このような状況が続くと、体調不良にもつながっていきます。

(引用元:プレジデントオンライン|やりたくない事をやり続けると病気になる

「やりたくないこと」を避けるのは、心身の健康を守る意味でとても大切なことと言えるのです。

もちろん、「やりたくない仕事は一切やらない!」という働き方は誰にでもできるものではないでしょう。上の「3ない」を見て、「こんな極端なことは、星野氏だからできることだ」と感じた人は多いかもしれません。

しかしアレンジ次第では、星野氏のような「3ない主義」を実践することは可能です。たとえば、

  • キャパオーバーになる頼まれ事は引き受けない
  • 休日、疲れているなら無理に出歩かない
  • 断っても支障のない会食には行かない

こんなふうに自分なりの「3ない」を決めておけば、仕事や日常生活のなかのストレスを減らすことができるのではないでしょうか。

各界の “一流” たちの「メンタル管理術」02

前田裕二氏「Must→Can→Will」

「やりたくないこと」を避けられれば一番いいのですが、特に仕事に関しては、現実には避けられないことも多いもの。そんな、どうしてもやらざるをえない「やりたくないこと」によるストレスを減らすには、それを積極的に楽しんで「やりたいこと」に変えてしまう、という手もあります。

そんな働き方を実践しているのが、SHOWROOM株式会社代表取締役社長の前田裕二氏です。

前田氏は2021年に行なわれたトークイベントのなかで、「ワクワク」という感情を働くモチベーションの源泉にしていると明かしています(参考「YOUTRUST|SHOWROOM代表・前田裕二さんにここでしか聞けない“すごい質問”してみた【ユートライブ】イベントレポート」)。

そのワクワク感を、前田氏は「『楽しくていつまででもしていたい、寝るのが惜しい』状態」と表現しています。大好きな趣味に熱中しているときのような感情でしょう。そんなワクワク感で仕事に臨めるようになれたら、ストレスを大幅に減らせるのはもちろん、何よりとても幸せなことですよね。

ではどうすれば仕事に「ワクワク」を感じることができるのでしょう? そのキーワードとして前田氏は、「Must」「Can」「Will」の3つを挙げています。

各界の “一流” たちの「メンタル管理術」03

まず「Will」は「やりたいこと」。先述の、自分が「ワクワクすること」がこれに当たります。この「Will」の源泉になるのが「Can=できること」。そして「Can」は「Must=やらなけければならないこと」をこなすことで増えていく――というのが、前田氏の考えです。

たとえば、何か新しいスキルを覚えると、それを使ってみたくてウズウズしませんか? そのように、何かが「できる」ようになると、自然と「やりたい」気持ちが芽生えるもの。また、「やるべき」として与えられた仕事に誠実に取り組むうち、できることが増えていった経験は誰にでもあるはずです。前田氏はスポーツ選手が上達していく過程を例に挙げていますが、社会人のパソコンスキルにも、プレゼンスキルにも、同じことが言えるのではないでしょうか?

要するに「目の前の仕事に真剣に取り組んでいれば、そのうち楽しくなってくるよ」ということ。もっと短く「Must→Can→Will」と論理立てて考えればいいんだと思えば、やる気が出てきそうですよね。

「仕事がつらい、つまらない」とお悩みなら、ぜひ前田氏流の考え方を取り入れてみてください。目の前にある仕事の価値を見つめ直してみましょう。

各界の “一流” たちの「メンタル管理術」04

イチロー氏「加点主義」

元メジャーリーガーのイチロー氏は、自分のバッティング成績を測る指標として、「打率」より「ヒット数」を重視していたことで知られています。

臨床スポーツ心理学者で『イチロー思考―孤高を貫き、成功をつかむ77の工夫』の著者でもある児玉光雄氏は、

「打率ではなく、こうしたヒット数に重きを置いていることにこそ、イチローが常にハイレベルなモチベーションを維持していることの秘密がある」

(引用元:日本経済新聞|スポーツを科学する イチロー、4000安打生んだ「逆転の発想」

と指摘しています。

「ヒット数÷打席数」で導かれる打率は、ヒットを打てなければ下がってしまう指標です。しかしヒット数は違います。ヒットを打つだけ右肩上がりに増えていき、停滞することはあれど、下がることは決してありません。

つまり、イチロー氏がヒット数を重視したのと同じ「加点主義」の評価方法なら、「成績が下がって落ち込む」ということがないため、モチベーション管理に好都合なのです。

経営学者の高橋潔氏も、 “悲しみ” などのネガティブな感情では「不安が掻き立てられ、気持ちが萎えてしまい、前向きな行動を取れなくなってしまう」とし、ポジティブな感情をもたらす加点主義で評価するのが望ましいとの見解を示しています。(参考「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|内なる力を引き出すモチベーションという名の船の旅」)。

私たちの仕事や勉強にももちろん、この加点主義を応用できるでしょう。たとえば営業職の場合、時期によって上下しうる「成約 “率” 」ではなく、累計の「成約 “数” 」を見る。「入社してから成約を100件もとれたぞ。次は200件を目指そう!」――こんな加点主義の考え方なら、成績が落ちたり人と比べたりしてヘコむリスクが少なく、前向きな気持ちで仕事に臨めるようになるはずです。

  • 営業成績を見るなら……
    「成約率」ではなく「累計の成約数」を見る
  • 仕事の進捗を測るなら……
    「未達成率」ではなく「達成率」を見る
  • 勉強の実力を測るなら……
    「解けなかった数」ではなく「解けた数」に注目する

各界の “一流” たちの「メンタル管理術」05

シリコンバレーのエリート「失敗、大歓迎!」

シリコンバレーで活躍するエリートたちは「失敗許容力」が高い――そう分析するのは、ポジティブサイコロジースクール代表でレジリエンス(ストレス耐性)研修の専門家・久世浩司氏。

久世氏は、失敗許容力について以下のように説明しています。

 失敗許容力とは、「自分の失敗をしなやかに捉え、受け入れる能力」を示します。自分の周りで起きた出来事を現実的に認識し、柔軟に解釈し、合理的に考えることができる人がもつ心理的資源です。

 失敗許容力のある人は、柔軟な自信を内面に持っています。失敗により落ち込むことはあっても、心が折れることなく、すぐに立ち直ることができるのです。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|なぜ、シリコンバレーには根拠なき自信家が多いのか?

物事に果敢にチャレンジし続けたり、失敗を恐れず革新的なことを生み出したりするには、この失敗許容力が大切であることがわかりますね。

そして、シリコンバレーには「『建設的な失敗』の価値がより高く評価される、起業家を育む文化がある」と久世氏は解説。失敗許容力の高さが、シリコンバレーが成功し続ける秘訣のひとつだったのです。

そんな、自信にもイノベーションにもつながる失敗許容力を養うには、どうすればいいのでしょうか? 

アメリカの臨床心理学者エレン・ヘンドリクセン氏による、「失敗を許す」ためのアドバイスを参考にしてみましょう。それは、失敗したときに起こりうる「最悪のこと」について自問するというものです(参考「Harper's BAZAAR|米・心理学の専門家が教える、「自信」を持つためのシンプルな5つの方法」)。

たとえば、社内でプレゼンテーションを行なった際に、緊張して言葉に詰まってしまったとします。「最悪のこと」としては、内容を部分的に聞き取ってもらえず、説得力が損なわれてしまう……といった事態が考えられるかもしれませんね。しかし、たとえ言葉に詰まった部分がいくつかあったとしても、それがプレゼンテーションのすべてを台無しにするわけではないでしょう。「自分は緊張に弱く、人前で話すのが苦手なのだ」と認識することができれば、次の機会までに緊張を緩和させるための対策を練ることもできますね。

ヘンドリクセン氏は、次のように述べています。

「最悪のシナリオが、実はそれほど悪くないことが多いのです。自分のベストである必要はありません。ありのままの自分でいいのです」

(引用元:Harper's BAZAAR|米・心理学の専門家が教える、「自信」を持つためのシンプルな5つの方法

「それほど最悪な事態ではない」と失敗した自分を受け入れることによって、失敗を学びに変え、挑戦を続けることができるのではないでしょうか。

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メンタルがもろい、安定しないという方は、上記4パターンの「メンタル管理術」をヒントにしてみましょう。

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