人間らしさが武器になる。AI時代のコミュニケーション戦略

キーボードを操作する人の手元

「AI時代の到来で、自分の仕事がなくなってしまうのでは…」

「リモートワークで、同僚とのコミュニケーションがうまくいかなくて…」

こんな不安や悩みを抱えていませんか?

実は、これらの課題を解決する鍵が"対人スキル"の向上にあります。

なぜ今、対人スキルが重要なのでしょうか? どうすれば効果的にスキルアップできるのでしょうか?

本記事では、AI時代を生き抜くために欠かせない対人コミュニケーション能力について、 その重要性と実践的な向上テクニックを探ります。

対人スキルを磨くことが、なぜいま重要なのか?

リモートワークの普及により、直接的な人との関わりが減少しています。しかし、皮肉にも、この"AI化"が進む時代において、"対人スキル"の重要性が従来以上に高まっているのです。

株式会社Nicoli代表取締役の原田修佑氏は、この状況について次のように指摘しています。

AIが多くの業務を自動化し、より効率的にする一方で、人間独自の感情や思考を理解し、共感する能力はAIには真似できません。こうした対人コミュニケーション能力は、職場での信頼関係の構築、創造的なアイデアの発展、チームワークの強化に不可欠です。*1

この見解は、日常のコミュニケーションシーンでも実感できます。例えば、忙しそうな同僚に「何か手伝えることはある?」と声をかけた際、言葉では「大丈夫」と返答されても、表情や様子から本当の状況を察知できるのは人間ならではの能力です。

また、何気ない会話から生まれる創造性も人間の特徴といえるでしょう。

「次の会議の資料作成に苦戦していて…」 「Aさんが似たような資料を作っていたよ。参考にしてみては?」

このような何気ない会話から生まれるアイデアや協力関係は、現在のAIでは再現が難しい人間特有の相互作用です。

オフィスで人々が雑談している様子

名古屋大学大学院教授の東中竜一郎氏は、対話システムの研究者として、AIの限界について興味深い見解を示しています。

AIは「聞いたことがない質問には答えられないし、意味を汲み取ることもできない」と東中氏は指摘します。*2

この見解は、人間のコミュニケーション能力の独自性を浮き彫りにしています。私たち人間は、これまでの経験や培った価値観を基に、相手の気持ちを汲み取り、コミュニケーションを通して信頼関係を築くことができます。これこそが、人間ならではの強みといえるでしょう。

このような人間特有の能力が、現代社会において対人スキルが重視される根本的な理由となっています。

では、この貴重な対人スキルを向上させるには、具体的にどのようなコミュニケーション術が効果的なのでしょうか。以下では、実践的なテクニックをいくつかご紹介します。

実践的なコミュニケーション術1:あなたから質問する

コミュニケーションに苦手意識を持つ人は、往々にして受動的な態度になりがちです。相手からの話題提供を待ったり、質問への応答に終始したりすることはありませんか?  しかし、このような一方通行の会話では、相手に負担をかけ、深い信頼関係を築くことは困難です。

そこで重要になるのが、能動的に質問をすることです。

元東洋大学教授で社会心理学者の安藤清志氏は、「相手の質問を待つよりも、失敗を恐れずに自分から行動を起こすこと」の重要性を説いています。同氏は特に、「ニュースや雑誌で取り上げられている時事ネタ」を話題として推奨しています。*3

実際、時事ネタは会話の糸口として効果的です。例えば、「最近のオリンピックで注目している競技は?」 といった質問から始めれば、相手の興味や経験について掘り下げることができます。

また、天候のような中立的な話題も有効です。「昨日の大雨で通勤に影響はありましたか?」 といった質問から、相手の生活状況や健康面の話題へと自然に展開できるでしょう。

こうした些細な会話の中から、地域の情報交換や健康に関するアドバイスなど、思わぬ方向へ話が発展することもあります。

時事ネタや身近な話題から質問を投げかけ、相互理解を深める機会を作ることで、コミュニケーションの幅を広げることができるのです。

歩きながら談笑するふたりのビジネスパーソン

実践的なコミュニケーション術2:相手をほめる

仕事ができるのに、なぜか話しかけづらい雰囲気の同僚や部下はいませんか?  そういった人は、能力は高くても周囲との信頼関係を築きにくく、結果的に評価が低くなってしまう可能性があります。

このような状況を改善し、対人関係を円滑にする効果的な方法の一つが、相手を褒めることです。褒められると純粋に嬉しいものですし、「もっと頑張りたい」という前向きな気持ちも生まれます。

褒め方にはいくつかあります。直接口頭で伝えるのはもちろん、「いつも仕事が早くて助かっているよ!」 といったメッセージをリモートワーク時のチャットに織り交ぜるのも良いでしょう。

しかし、シャイな人にとっては直接褒めるのが難しいこともあります。そんな場合は、第三者を通じて褒める方法も効果的です。

例えば、「◎◎さんはいつも丁寧に仕事をしてくれるので、本当に頼りになるんだ」と他の人に話すのです。この話を聞いた人が「△△さんがあなたのことを褒めていたよ」と◎◎さんに伝える可能性があります。

直接褒められるのが嬉しいのは言うまでもありませんが、第三者から伝えられる褒め言葉も同様に効果的です。このような間接的な褒め方は、褒めた人と褒められた人の間に新たな会話のきっかけを生み出し、職場全体のコミュニケーションを活性化させる可能性もあります。

会議中に上司が部下を褒めている場面

実践的なコミュニケーション術3:相手の気持ちを考える

かつて筆者は自身のコミュニケーション能力を過大評価していました。しかし実際は、ただ一方的に話すだけで、真の対話ができていなかったのです。このような一方通行の会話は、相手の時間を無駄にし、興味のない話題では退屈さを生むだけでなく、関係性を悪化させる可能性があります。

真に効果的な双方向のコミュニケーションには、「相手の心理や気持ちを考える」ことが不可欠です。人材育成のコンサルタントである羽鳥丈太氏(アルー株式会社)は、相手を考慮した会話のために重要な3つのポイントを挙げています。*4

  1. 相手の状況を確認する 忙しい時の話しかけは迷惑になります。対面では相手の様子を観察し、リモートでは「今、少しお時間よろしいでしょうか?」と確認するのが良いでしょう。その際、予想される所要時間も伝えると親切です。
  2. 相手に合わせて話す 相手の知識レベルや専門性に応じて、話し方を調整することが大切です。例えば、IT専門家でない人には専門用語を避け、逆に詳しい人には基本的説明を省くなどの配慮が必要です。
  3. 相手のニーズを正確に把握する 「ただ話を聞いてほしい」のか、「具体的なアドバイスが欲しい」のか、相手の真のニーズを理解することが重要です。誤解すると、的外れな対応になり、相手の印象を悪くする可能性があります。

これらのポイントを意識することで、相手の立場に立ったコミュニケーションが可能になり、より良好な関係性を築くことができるでしょう。 *5

窓際で腕を組む女性

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ぜひ、本記事で取り上げたコミュニケーション術を、リモートでも対面でも試してみてくださいね。

※引用部分の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。

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