仕事から帰ったらスーツのままソファに沈み込み、しばらくテレビをボーっと見る。適当に夕食を済ませたら再びダラダラ。ドラマを見ているうちに遅い時間になってしまったので、シャワーを浴びて寝る……。多くのビジネスパーソンにとって、よくある帰宅後の過ごし方ではないでしょうか。
でも、いつまでもこんな過ごし方をしていたら、あなたの仕事力を今以上に上げることはできないかもしれませんよ。
有能なビジネスパーソンは、夜の時間を大事にしている
上に挙げたような「ダラダラした帰宅後の過ごし方」は、決してオーバーなものではありません。ジェイアール東海エージェンシーの調査(2015年)によると、20~60代のビジネスパーソンが仕事から帰宅した後に習慣的に行う行為のトップは、「テレビを見る」で92.1%。次が「録画番組・DVDを見る」で59.8%でした。「テレビを見る」人の割合はどの年代も同程度でしたが、「録画番組・DVDを見る」人の割合は年代が若いほど高く、20代で72.5%。若手ビジネスパーソンの多くは帰宅後の時間をテレビの前で過ごしている、ということがうかがえます。
それとは対照的に、一流のビジネスパーソンの中には、夜の帰宅後の時間を大事に過ごしている人が多くいるようです。
・星野佳路氏(星野リゾート代表)
星野氏は、健康のために1日15,000歩あるくことを日課にしていて、昼のうちに7,000歩、夜に1~1時間半ほどかけて残りの8,000歩をあるくのだそう。経営者は会食などで夜も忙しそうに思えますが、星野氏はストレスの原因になる夜の会食は断り、その分の時間を散歩にあてているといいます。また、散歩をしているといいアイデアがよくひらめくのだそうですよ。
・柳井正氏(ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長)
朝6時半ごろには出社して仕事を始めるという朝型の柳井氏。帰宅時間も15~16時と早いのだとか。そんな柳井氏の夜の過ごし方として、ある関係者の方が以下のように語ったそう。
「夜、柳井さんが社外の人と食事をするのは月に1、2回だけ。それ以外は家に直行し、食後は独りで会社のことを考える。読書が大好きで、ドラッカーの本を愛読している」
(引用元:NEWSポストセブン|SBの孫氏とユニクロ柳井氏 人付き合いに対する考え方は対照的)
また、柳井氏は仕事でストレスを抱えると眠れない性格であるそうで、そのようなときには寝る前にデスクで現状の問題点を整理したり、問題解決までの工程表を作ったりして、ストレスをクリアにしてから寝るそうです。
・世界の名だたる経営者たちも……
読書家として知られるビル・ゲイツ氏は、夕食後は毎晩食器洗いをしてから、寝る前に1時間読書しているそう。食器洗いの習慣は、Amazon.comのCEOジェフ・ベゾス氏も同じ。また、ハフィントンポストの創業者アリアナ・ハフィントン氏は、良質な睡眠をとるために入浴やハーブティーなどでリラックスすることを重視しています。フェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグ氏や、グーグルCEOサンダー・ピチャイ氏のように、家族との交流を大事にしている人も多くいるようです。
夜19時半以降を、翌日の仕事力アップのための時間に!
一流と呼ばれる人たちの夜時間の過ごし方を見てきましたが、上に挙げたような過ごし方はなんら特別で難しいことではないように思えませんか?
共通しているのは、一日をリラックスして終えることと、ストレスを翌日に持ち越さないこと。ですから、私たちも「夜時間を有意義に過ごさなければ」と難しく考える必要などまったくありません。今ダラダラ過ごしている時間のうち半分でも、彼らがしているような行動に置き換えることはできそうですよね。
そこでStudyHackerが提案するのが、「“帰宅後の19時半”から始める夜のルーティン」です。
ジェイアール東海エージェンシーの調査(2015年)によると、ビジネスパーソンの退社時間として最も多いのは18:00。そして、転職サービスのdodaの調査(2018年)に基づき算出したビジネスパーソンの一日あたりの残業時間は、もっとも少ない場合でも約40分(※1)。さらに、不動産関連の情報提供事業を行なうオウチーノの調査(2015年)によれば、ビジネスパーソンの平均通勤時間は約45分。
これにより、ビジネスパーソンが19時半には家に帰ることを想定し(※2)、帰宅後に行なうべき3つのルーティンをご提案します。
※1. 調査対象となった124職種中、最も残業が少ない上位10職種の月残業時間を平均し、それを20日(1ヶ月あたりの勤務日)で割って算出。 ※2. 実際には個人差がありますので、ご自身のケースに当てはめ直してお考えください。
実践したい夜のルーティン1. 「1日のリセット儀式」
順天堂大学医学部教授で自律神経研究の第一人者・小林弘幸医師は、「帰宅したら1日をゆっくりとリセットするべきだ」と言います。その目的は、心身ともにじゅうぶん休息し翌朝を気持ちよく迎えること。疲れが取れた状態ですっきり目覚めれば、その日の仕事のパフォーマンスを良いものにできます。
小林氏によると、帰宅後すぐにソファに座り込んでしまうのは良くない行動。ソファにいると血流が滞ってしまうため体がすっきりせず、なおさら動きたくなくなって疲労感が倍増してしまうのです。
ですから、帰宅したらソファに座るかわりに、テキパキと動いて「1日のリセット儀式」をしましょう。例えば小林氏は、帰宅後コップ1杯のミネラルウォーターを飲み、靴・スーツの手入れをして丁寧に片付け、ごみ捨てや郵便物処理、翌日の予定や持ち物の確認をするという流れで、30分ほどかけて1日をリセットしているのだそう。これが、翌日への意欲の源泉になるのだと言います。
リセット儀式を終えたら、食事と入浴をします。小林氏が勧めるのは、夕食を就寝の3時間前までに、入浴を夕食後1時間以上あけて就寝の約1時間前に済ませること。これが、副交感神経を優位にしリラックスモードで気持ちよく眠りにつけるためのベストタイミングなのだそうですよ。ぜひお試しください。
実践したい夜のルーティン2. 「ToDoリストの作成」
自分なりの儀式によって1日をリセットしたら、翌日のToDoリストを作成しましょう。理由は2つ。しっかり眠るためと、翌日の朝一番からテンポよく仕事を始められるようにするためです。
・ToDoリストは、安眠のために有効。
小林氏は、翌日の仕事に関する心配事を抱えながら布団に入ってしまうと、交感神経が優位になりスムーズに眠りにつくことができなくなると言います。また、新規事業推進や人材育成事業などを手がける新産業開発研究所代表取締役で、ビジネス関連の著書が多い坂戸健司氏も、寝る前にToDoリストを作る目的について次のように述べています。
目的は“しっかり寝るため”。これに尽きます。明日のことが気になって、布団の中で何時間も悩むなどして、頭が仕事モードのままではぐっすりと眠れません。そこで寝る前に万全準備をすると不安や悩みも消えます。
(引用元:@DIME|こんなにたくさんメリットが!デキる人は寝る前に「ToDoリスト」を作っている!?)太字は編集部にて施した
・ToDoリストは、翌朝の仕事力アップに効果的。
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、1日の予定は前日のうちに組んでおくべきだと言います。集中力が高くパフォーマンスを発揮しやすい朝の時間からトップスピードで仕事を始めるには、何をするべきかを前日のうちに決めておく必要があるからです。
そして、数々の自己啓発本の著者で世界的に有名な経営コンサルタントのブライアン・トレーシー氏によれば、寝る前にToDoリストを作っておくと、睡眠中無意識のうちに脳の中でリストの内容が精査されて、翌朝自然とリストに関するひらめきが浮かぶのだそう。これは、睡眠中に情報を整理するという脳の働きによるものと言えますね。
柳井氏が寝る前にデスクに向かい、仕事の問題点をすっきりさせるようにしているのも、これらのメリットがあるからだと言えるでしょう。ToDoリストの作成は、1日のリセット儀式にもぴったりですから、ぜひ実践してみてください。
実践したい夜のルーティン3. 「読書」
多くの成功者たちが読書を習慣にしているように、みなさんも寝る前の少しの時間を読書にあててみませんか?
読書をたった6分間するだけで、ストレスが減りリラックスできる効果があるのだそうです。以下の研究結果がそのことを示しています。
イギリス、サセックス大学の研究チームが、どのような活動がストレスの軽減に役立つのかについて調べる実験を行いました。活動の種類別に、心拍数の低下や筋肉の緊張緩和の程度を調べ、ストレスの軽減度合いを計測したのです。 その結果、音楽鑑賞が61%、コーヒーを飲むことが54%、散歩をすることが42%、ゲームが21%の軽減効果を見せた中、読書は68%とおよそ7割ものひときわ高いストレス軽減効果を持っていることが分かりました。
(引用元:StudyHacker|6分の読書でストレス7割減! 読書でストレスが消える “ワケ” と “コツ”)
ストレスに満ちた現実から離れ本の内容に没頭できることから、読書はストレス解消に役立ちます。寝る前のリラックスタイムには、ぜひ読書をしましょう。たった6分間でよいのならば、読書家でない人にとっても取り組みやすいはず。それに、実際に6分読めばもっと読み続けたくなるかもしれませんね。
本を読むのならば、仕事に活かせそうなビジネス書に挑むより、自分が好きだと思える本、楽しめる本を読んでください。『最強の働き方』などのベストセラー書籍の著者、ムーギー・キム氏によれば、一流の人ほど「楽しく活字に親しむ習慣を持っている」のだそう。優秀なビジネスパーソンは、自己啓発書やかたい内容の本ばかりでなく、小説など娯楽的要素の強い本も大いに楽しんでいるようです。
帰宅後のリラックスタイム。読書で一日を締めくくるなら、自分が心から楽しめる本を読みたいものです。
*** 仕事から帰ったら、夜の時間はじゅうぶんにリラックスした気持ちで過ごしましょう。心身の疲れを取り、ぐっすり眠って最高の朝を迎えてください。それが、翌日のハイパフォーマンスにつながるはずですよ。
(参考) 株式会社ジェイアール東海エージェンシー|ビジネスパーソン・ウォッチング調査 vol.9 ビジネスパーソンの「ゆう活」に関する調査 2015 ~ 仕事終わりにショッピングや映画、習い事などに取り組む人は60%、特に金曜日が盛ん~ PHP Online衆知|星野リゾート・星野佳路 いくつになっても柔軟な発想を忘れない NIKKEI STYLE|星野佳路 「3ない主義」でストレスを軽減 NIKKEI STYLE|「いつも心は折れそうだけど」 柳井正氏の自分論 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(上) NEWSポストセブン|SBの孫氏とユニクロ柳井氏 人付き合いに対する考え方は対照的 BUSINESS INSIDER JAPAN|成功者11人が寝る前に行う、驚くほど普通なルーティン PRTIMES|ビジネスパーソンの通勤時間実態調査 doda|15,000人の残業時間ランキング StudyHacker|帰宅後の過ごし方が翌日のパフォーマンスを左右する。心身に十分な休息をもたらす「リセット法」【小林弘幸『カリスマの言葉』第6回】 DIAMOND online|不眠は食事・入浴を「いつするか」で解消できる @DIME|こんなにたくさんメリットが!デキる人は寝る前に「ToDoリスト」を作っている!? StudyHacker|最高の仕事をするための、「“朝15分だけ” メールを見ない」という習慣。 StudyHacker|6分の読書でストレス7割減! 読書でストレスが消える “ワケ” と “コツ” StudyHacker|夜の過ごし方でバレる「二流止まり」の人。なぜ二次会に行きたがる人は出世できないのか?