「休むのは今の年始の時期ぐらい。2019年の仕事が本格的に始まったら、平日休日関係なくバリバリ働こう」 こんなワーカホリック気味の人は要注意です。
なにかと “忙しいこと” が美徳とされてきた日本ですが、多くの人が薄々勘づいているように、効率的な仕事・創造的な仕事をするうえで「休み」は必要不可欠です。どんなに忙しい一流ビジネスパーソンであっても、休息の時間をしっかりとっているのは確かな事実。年が明け、仕事に対する気持ちが前のめりになりがちな今の時期だからこそ、休むことの大切さをもう一度確認しておきませんか?
「休まない」は弊害だらけ
イリノイ大学心理学教授アレハンドロ・レラス氏の研究によれば、長時間ひとつのタスクを行なうことはフォーマスの低下につながってしまうのだそう。また、ここ数年のさまざまな研究でも、休まずに働き続けることのデメリットは証明されています。しかし、その事実を突きつけられてもなお、バリバリ働きたがるあなたは「多忙中毒」かもしれません。Forbesでライターとして活躍するリサ・クエスト氏は、「多忙中毒」かどうかを図る質問として以下の6問を用意しています。
自分の日々の生活をどう形容する? とても忙しくばたばたしていて、物事をこなすだけで終わってしまう、と言いたくならないか。 忙しいと、どういう気持ちになる? 1日中、次から次へと物事をこなすことに喜びを感じるか。 1年間に取得する休暇の平均日数は? 付与される休暇を使い切っていない、あるいはトムのように全く使わないということはないか。 プライベートな時間の典型的な過ごし方は? 他の予定や作業を詰め込まず、ゆっくり腰を下ろしてリラックスし、本や雑誌を読む時間があるか。 友人や家族が、あなたの「多忙自慢」を聞くのにうんざりしている? 自分が取り組んでいる活動について次々とソーシャルメディアに投稿していないか。友人や家族に、自分の活動について話すことはあるか。自分がいかに忙しいかを話したら、相手にあきれた表情をされたことはあるか。 「調子はどう?」と聞かれたときの返事は? 「忙しい!」と答えることが多くないか。
(引用元:Forbes JAPAN|増加する「多忙中毒」忙しさ自慢をやめるべき理由)
以上の項目に多く当てはまった場合、あなたは「多忙中毒」の可能性があります。多忙中毒とは、仕事をすることによるアドレナリンの分泌で快感を得ている状態のこと。「仕事熱心でいいじゃないか」と思いたくなりますが、不安や鬱、頭痛、心臓病、睡眠障害、ついには記憶障害、集中力低下といった健康問題を引き起こす危険性が、そこには存在しています。休暇の大切さを認識していながら、不思議と休暇を取れていない場合は、注意する必要があるでしょう。
不規則な睡眠は多くの悪影響を引き起こす
NHK国民時間調査によれば、1970年以降、日本人の睡眠時間は年々減少傾向にあるのだそう。確かに、仕事が忙しくなると、まっさきに削られるのは睡眠時間ですよね。しかし、睡眠不足は私たちにさまざまな悪影響を及ぼします。虎の門中村康宏クリニック院長の中村康宏氏は、睡眠不足が引き起こす悪影響として以下を指摘します。
1. 生活習慣病の温床 2. 免疫機能が低下する 3. 肥満になりやすくなる 4. 脳の老化・認知機能の障害 5. ウェルネス(健康感)や生活の質の低下
これら5つはどれも絶対に看過できないものですが、具体例として、仕事に直結しそうな「脳の老化・認知機能の障害」を取り上げてみましょう。
睡眠時間が短いと脳の老化が目に見えて早くなると報告されています。その研究によると、睡眠時間が1時間短くなると、脳にできる隙間が1年毎に0.59%拡大し、脳が縮んでいくことが判明しました。それに伴い、認知機能は1年ごとに0.67%低下するとしています。 さらに、睡眠不足や睡眠の質が低いと、判断能力が低下するリスクが50%高まることがわかっています。判断能力が落ちると、計画能力、意思決定能力、問題解決能力、抽象的思考能力が落ちます。アメリカでは、CEOなど企業役員が睡眠に重きを置いていることは良く知られている事実ですが、この事実が裏付けとなっています。
(引用元:サライ.jp|それでも貴方は寝ないのか?「睡眠不足」の危険すぎる悪影響5つ ※太字は編集部にて施した)
とはいえ、「寝正月を過ごして充分に寝たから、しばらくは大丈夫」「自分は休暇に寝溜めするタイプだから問題ない」と思われる方も多いのではないでしょうか? しかし、睡眠過多も睡眠不足と同じくらい健康リスクを増大させます。
中国の北京協和医院やカナダのマックマスター大学など各国の研究者が、世界21カ国の成人11万6,000人以上に関するデータを分析したところ、心臓血管疾患の健康リスクと死亡リスクが6時間以下の睡眠不足において上昇するだけでなく、睡眠時間が8~9時間で5%、9~10時間で17%、10時間以上で40%というように、じつは睡眠過多によっても心臓血管疾患のリスクが上昇することがわかりました。
睡眠不足も睡眠過多もNG……。不規則な睡眠は、私たちの仕事力も健康も阻害するのです。
休息の質、どう上げればいいのか?
しかし「そうは言っても休めない!」と叫びたくなる方もいるかもしれませんね。そこで、短い時間でも効果的に休むためのコツをまとめてみました。
1. 午前中から分散して短い休憩を取る
ベイラー大学経営学部のエミリー・ハント氏とシンディ・ウー氏による、週5日の勤務に就いている22~67歳の男女95人を対象に行なった調査によれば、1日平均2回強の休憩を取り、しかも午前中の半ばに休憩を取ることが、仕事の能率を上げるうえで重要であることがわかりました。
この研究は、昼休みまで待つのではなく、短い休憩を分散して複数回取ることが効果的であることを示しています。オフィスの外へ出て散歩をする、ストレッチをするなど、リフレッシュ方法は何でもかまいません。“細かく休憩を取る” ことを心がけるようにしましょう。
2. たった1分でも仮眠する
睡眠不足による作業効率の低下は先ほど指摘したとおりですが、その対策として「仮眠」は効果的です。実際、NASAが睡眠について行なった実験によれば、昼に26分間の仮眠を取ることで、認知能力が34%上昇し、注意力も54%上がったと言います。また、先ほど紹介した、カナダのマックマスター大学などの研究でも、仮に睡眠時間が6時間以内であったとしても、仮眠を取ることで心臓血管疾患にかかる健康リスクが低下することが示されています。
しかし、そうはいっても仮眠を取る時間さえ取れない方も少なくないでしょう。そんな方のために「1分仮眠法」を紹介します。これは、『脳も体も冴えわたる1分仮眠法』で知られる睡眠専門医の坪田聡氏が広めた仮眠法です。しっかりと寝るのではなく、ウトウトとした状態で行い、脳を休ませるのがポイントです。
まず椅子の背もたれにもたれかかり、あごを少し引いて首を安定させます。上体は起こしたままで、両手は胸の前で組むか、椅子の肘掛けや机の上に乗せてください。膝や足首は90度に曲げ、足の裏はしっかりと床につけます。よりリラックスしたい場合は、ネクタイを緩めたり、腕時計を外したりすると良いでしょう。
(引用元:editeur|デスクや電車内で行える「1分間仮眠術」で男の眠気を解消)
また、どうせ行うのならば効果的なタイミングも選びましょう。企業向けに睡眠のオーダーメイドソリューションを提供するニューロスペースの小林孝徳氏によれば、仮眠は眠さのピークが訪れる前、具体的には起床から6時間後を目安に行うと効果的だと言います。逆に、それ以上の時間が過ぎた睡眠のピーク以降の仮眠は、パフォーマンスが低下することがあるので注意しましょう。
3. 休憩時間はモバイル機器の通知・電源を切る
Forbesの調査によれば、アメリカのビジネスパーソンが休暇を取らない最大の理由は「恐怖感」によるものだと語っています。それを受け、アメリカのキャリア情報サイトのグラスドアは次のような見解を示しています。
利用可能なテクノロジーのおかげで、私たちはこれまで以上に休暇を取りやすくなったように思えるかもしれない。だが、テクノロジーのおかげでいつでも連絡が取れるようになったおかげで、結局はどこにいようと連絡が取れる(仕事ができる)ということになってしまったのではないだろうか
(引用元:Forbes JAPAN|仕事を休まない米国人、最大の理由は「恐怖感」)
そこで効果的なのは、たとえ短い休憩時間の間でも、モバイル機器の通知や電源を切ることです。インディアナ大学の心理学者リール・ジア氏による心理実験でも、仕事から「距離」を感じるようなときに、仕事に関する新しいアイデアが浮かび上がりやすくなることが示唆されています。
われわれは、環境が人間の創造性を縛ることを、あまりにも忘れがちだ。仕事上の問題と常に「近い」距離を保っていたり、電話や電子メールに休まず反応していたりすると、われわれの精神は、ある種の型にはまってしまう。物事に別の考え方は存在せず、これこそが常に正しいやり方だと思い込むようになる。
(引用元:WIRED.jp|休暇をとってデジタルから「非接続」になると、創造性を取り戻せる:研究結果)
たとえひとときでも、仕事から離れる時間を設けることは、創造性を高めるうえで効果的です。仮眠や短い休憩のときだけでも、モバイル機器の電源を切るよう心がけてみてはいかがでしょうか。
*** かつては「働き続けること」を美徳とする時代が長く続きました。しかし、休息を取らず働き続けることはデメリットしかありません。一流のビジネスパーソンは、休息の取り方も一流です。適切に休むことで、効率よく仕事を行ないましょう。
(参考) ScienceDaily|Brief diversions vastly improve focus, researchers find Forbes JAPAN|増加する「多忙中毒」忙しさ自慢をやめるべき理由 NHK放送文化研究所|2015年 国民生活時間調査(PDF) サライ.jp|それでも貴方は寝ないのか?「睡眠不足」の危険すぎる悪影響5つ Forbes JAPAN|睡眠と健康の関連性を再確認 不足も過多も要注意 IRORIO(イロリオ)|仕事中の休憩は午後より午前中に取ったほうが効果的との研究結果 ダイヤモンド・オンライン|NASAも認める「昼寝」の驚くべき効果 editeur|デスクや電車内で行える「1分間仮眠術」で男の眠気を解消 NIKKEI STYLE|パフォーマンスの上がる昼寝のコツ 正解はどっち? Forbes JAPAN|仕事を休まない米国人、最大の理由は「恐怖感」 WIRED.jp|休暇をとってデジタルから「非接続」になると、創造性を取り戻せる:研究結果