「勉強したくない」はもう卒業! “やる気がなくても勉強したくなる” 科学的アプローチ。

勉強しなくちゃいけないのはわかっているけど……勉強なんてしたくない!

定期テストが控えている中学生・高校生も、志望校に合格したい大学受験生も、資格試験が間近に迫っている社会人も、きっと一度は悩んだことがあるはずです。

誰だって、つらい勉強をするよりも、ゲームをしたりテレビを見たりしているほうが楽しいですよね。でも、誰もが分かっている通り、勉強は避けては通れないもの。ならば、「勉強したくない!」からはもういい加減卒業しなければいけません。

そうは言っても自分は意志が弱いし……、と思っている人でも大丈夫。科学的に効果のあるテクニックを使えば、精神論に頼らなくても勉強できるようになりますよ。

勉強したくない人でも勉強したくなる、効果的なテクニックをまとめてご紹介します。

勉強したくないのはなぜ?

私たちは、どうして「勉強したくない」と思ってしまうのでしょうか。ここではその理由を、勉強のプロセスに沿って考えてみることにしましょう。勉強したくない状況を、大きく分けて以下の3パターンに分類します。そしてそれぞれのパターンから、勉強したくなるような効果的なアプローチを探っていきます。

1. 勉強をスタートする気が起きないから「勉強したくない」

そもそも勉強に取り掛かれないのがこのパターンです。勉強なんて嫌だし、だいいちやる気が起きない。だからどうしても勉強への一歩を踏み出せない。これに当てはまる人は、どうにかして勉強に着手する必要があります。

2. どうにか勉強には取り掛かれるが、勉強が楽しくないから「勉強したくない」

一応勉強は始めてみるけど、楽しいと思えず、勉強したくなくなるのがこのパターン。せっかく勉強に着手できても、勉強は嫌だ、勉強なんてしたくないという思いにとらわれるのはもったいないもの。このパターンの人は、勉強を楽しめるようになることが目標となります。

3. 勉強を続けたくないから「勉強したくない」

しぶしぶ勉強はしてみるが、また次も勉強したいかといえばそうではない。そうなってしまうと、勉強をスタートする気が起きないから勉強したくない、という状況に逆戻りしまいます。大切なのは、「次も勉強しよう」と思えるようになることです。

ではここからは、それぞれのパターンにおいて、どうすれば「勉強したくない」状況から脱することができるかを解説していきます。

1. 勉強を始めたくなる方法

ではまず、勉強したくない人でも勉強にとりかかれるようになる方法を紹介しましょう。

1-1. 勉強したくなる環境を整える

あなたが勉強に着手できないのは、今いる環境が、実は勉強には向いていないからかもしれません。いくつかのことに注意して、勉強したくなる環境を整えるところから始めてみましょう。

自分の部屋

勉強道具が揃っていてリラックスすることもできる、最も勉強の拠点にしやすい場所のひとつですね。自室を「勉強したくなる部屋」に変えたいなら、まずマンガやゲームなど勉強の邪魔になるものを視界に入らない場所に片づけるか、家族に預けてしまいましょう。スマートフォンはたとえ電源を切ったとしても手元には置かないように。米テキサス大学の研究から、電源が切られたスマートフォンが近くにあるだけで注意力が散漫になることが分かっています。

また、やる気をもたらす効果が期待できる赤色を、部屋のインテリアや勉強道具に取り入れるのもおすすめ。無気力で勉強したくない、という状況から脱することができるでしょう。

室温調整も重要です。誰も暑い・寒い部屋で勉強したくはありませんよね。効率よく勉強できるのに適した室温は22~24℃です(参考:生産性を上げたければ「温度」と「湿度」に気を配れ!? 最適な作業環境を徹底的に考察してみた。)。

リビング

どうしても自分の部屋では勉強したくないのなら、リビングに移動しましょう。家族が見ているという緊張感、家族からの応援があれば、勉強したくないなどとはもう言ってはいられません。

図書館

自室やリビングはどうも勉強に適さないと考える人や、もともと一人住まいの人は、図書館に行くといいですね。図書館には勉強を邪魔するものが無いうえ、ミラーニューロンの働きが期待できます。

ミラーニューロンとは脳内にある、共感能力を司る神経細胞のこと。他人の行動を見るだけで自分が行動しているかのように脳を反応させる働きをします。図書館では周りの人はみな勉強していますよね。その人たちを見ているだけで、脳は自分も一生懸命勉強しているかのように感じるため、勉強したくなるというわけなのです。

1-2. 勉強したくなる脳をつくる

「勉強したくない!」状態から一歩でも抜け出すために、脳のコンディションを整えて勉強したくなるモードに切り替えましょう。

側坐核を活性化させる

側坐核とは、脳内でやる気・快感・報酬に関係する部分。ここを活性化させることでやる気を生み出し、脳を勉強に向かわせましょう。効果的なのが、「作業興奮」を利用することです。

側坐核という場所は、行動によって刺激されるところ。行動を起こすことで側坐核が刺激され活性化すると、快感ややる気をもたらす神経伝達物質のドーパミンが分泌され、徐々に意欲がわいてきます。この状態のことを「作業興奮」と呼びます。

勉強においても、この作業興奮を利用しましょう。勉強したくない気持ちをぐっと抑えて、ほんの10分だけのつもりで勉強をしてみてください。難しい勉強をする必要はありません。少し頑張ればできる程度の、優しめの問題でいいのです。そうすると、いつのまにかもっと勉強したい気持ちになっているはずですよ。

また、側坐核は、好きな音楽によっても刺激することができます。カナダ・マギル大学の研究チームによると、好きな音楽を聞くことで側坐核が活性化し、ドーパミンが分泌されるのだそう。勉強したくないなと思ったら、好きな音楽を聞いて自分を奮い立たせるのはいかがでしょうか。そのうえで作業興奮も組み合わせれば、相乗効果でより勉強したくなることでしょう。

脳の運動系を刺激する

脳神経外科の専門医である医学博士・築山節氏によると、やる気を導き出すのには運動が効果的なのだそうです。口や足、手を動かすと、脳の表面中央付近にある運動系機能を刺激することになり、そこに至るまでの脳全体の血流が良くなります。

築山氏が勧める運動は、ウォーキング(足を動かす)、部屋の片づけ(手を動かす)、そして挨拶(ひと言プラスしたもの)と音読です。

部屋の片付けは手の運動であると同時に、前頭葉が司る選択、判断の機能を強化。挨拶にひと言を付け加えることは、単に口を動かすだけではなく、前頭葉を使い言葉を組み立てる、耳を使い情報を取得するといった脳の活性化に繋がる。音読には、脳の入力→情報処理→出力という要素が連続的に含まれているので、適度な脳の刺激に向いている

(引用元:PRESIDENT Online|【1】「脳とやる気」1秒で勉強意欲に火がつく法

特に音読は手軽にできるため、とりあえず勉強を始めるのに最適で、作業興奮も期待できます。英単語や参考書、暗記系の教科書などを、とりあえず10分音読してみてください。勉強したくなるはずですよ。(参考:勉強嫌いも関係ない! 京大生おすすめの『とりあえず音読』勉強法のすごいメリット

2. 勉強を楽しくする方法

せっかく勉強を始めることができても、勉強自体が楽しくなければ、勉強したくなくなってしまうもの。ここからは勉強を楽しめるようになるコツを紹介しましょう。

2-1. ご褒美で勉強を楽しくする

「頑張って勉強すればご褒美が待っている」。このようにご褒美を意識すると、脳内では報酬系(ドーパミン神経系)が刺激され、ドーパミンが分泌されます。ドーパミンは快感・やる気につながる物質ですから、「どうにか勉強を始めてみたけど勉強が楽しくない、勉強したくない」というときは、ご褒美を用意すれば勉強が楽しくなり、意欲が増すでしょう。

また、脳科学だけでなく行動科学(人間の行動を科学的に分析する学問)の観点からも、ご褒美には効果があると言えます。行動科学に基づくと、人は行動に対するご褒美があると、その行動を繰り返しやすくなります。「ご褒美が欲しいから行動する→行動したことによってご褒美が手に入る→またご褒美が欲しいから行動する」というサイクルが生まれるのです。

ポイントは、結果ではなく「勉強した」という事実に対してご褒美を用意するということ。「試験で合格できたら」ではなく、「○時間勉強したら」自分にご褒美をあげるのです。特に、勉強をしたくない気持ちが強いうちは、30分勉強したら好きなチョコレートを一粒食べる、5ページ進んだら10分ゲームをする、といったように小さな行動にちょっとしたご褒美を用意するといいでしょう。

2-2. ノート術で勉強を楽しむ

勉強が楽しくないのは、勉強なんて単調でつまらないものだ、と思い込んでいるからかもしれません。ならば、ノート作りをちょっと楽しんでみるつもりで、ユニークな勉強法を試してはいかがでしょう。

付箋ノート勉強法

勉強するとき、大学ノートやルーズリーフに直接書き込むのがよくあるノートの使い方ですが、最近は見た目のユニークなノート術が流行っているそう。それが、付箋をノートにペタペタ貼って作る「付箋ノート」です。

やり方は簡単で、カラフルな付箋に情報を書き込み、ノートに貼るだけ。付箋を自由に並び替えて情報を整理できるので理解が深まりますし、重要度別や暗記の必要性など目的・内容によって付箋を色分けすれば、ひとめで見やすいノートになります。

そして何よりのメリットは、ノート作りが楽しめること。付箋は、色だけでなく柄や形の異なるさまざまな種類がありますし、見た目のカラフルさ、華やかさからSNS映えします。ノート作りが楽しみになれば自然と勉強したくなりますね

インスタで話題の「付箋ノート」を京大生の私も試してみた。これは勉強に効くこと間違いナシ!

青ペン書きなぐり勉強法

もうひとつユニークなノート術が、「ノートに青ペンで書きなぐる」という勉強法です。ノートを取るとき、普通なら黒のシャープペンシルを使い、間違えたところは消しゴムで消しつつ、重要なところの色を赤や青などに変えますよね。しかしこのノート術では、すべてを「青ペン」で、しかも「書きなぐり」ます。

青ペンに期待できる効果は2つ。1つ目は青色を見ると脳内にセロトニンが分泌されること。セロトニンには、ストレス軽減やポジティブ思考をもたらす働きがあり、青を用いることで落ち着いた精神状態で勉強することができます。2つ目は、ペンを使うと間違いを消さずに残しておくことになるということ。問題を解いたり、漢字や英語のつづりを書いたりして間違えたとき、消しゴムで消してしまうと間違えたという事実は消し去られてしまいますが、ペンならば間違えた事実が残ります。間違えたという体験と共に強く記憶に刻み込まれるので、勉強効果が上がるのです。

そして、このノート術では、とにかく書きなぐります。書きなぐるので、インクを消費します。すると、ノートは青い文字でびっしりになり、インクが空になった青ペンがどんどんたまっていきますね。自分がどれだけ勉強したかが目で見て分かるので、達成感が生まれ、どんどん勉強したくなるのです。

東大生オススメ! 『青ペン書き殴り勉強法』はモチベーションにも効果あり。

3. 勉強を続けたくなる方法

「どうにか勉強してみたけど、やっぱり勉強したくないな」と思ってしまうのはもったいないもの。次も勉強しよう、勉強を続けよう、と思えるようになるために、勉強を続けたくなる方法を解説していきます。

3-1. 勉強にとりかかる面倒くささをなくす

「勉強するのには大きな決心が必要だ」と思ってはいませんか? 毎回覚悟しないと勉強できないようでは、勉強したくなくなっても不思議ではないですよね。そこで、わざわざ決心しなくても勉強が始められるようにしましょう。

そのために、勉強前のルーティンをつくることをお勧めします。「これをやったら勉強する」というように、勉強とセットで必ず行うことを決めておくのです。熱いお茶を飲んだら勉強する、ストレッチをしたら勉強する、といったようなルーティンを身に付ければ、「勉強したくない」と思う暇もなく勉強を始められるでしょう。

3-2. 勉強の目的を再確認する

「勉強なんかしたくない」と思ったとしても、本当は勉強しなければいけないことは頭の中ではわかっているはず。ならば、自分はどうして勉強しなければならないのか、勉強の目的は何なのかを、一度見直してみましょう。

例えば、「大学受験で合格することを目標に勉強しなければいけないが、勉強したくない」のだとしたら、学校見学に行くなどして目標への思いを新たにしましょう。これによって、ミラーニューロンが活性化し、自分もその大学で学んでいるかのような気分になります。勉強への意欲がわいてくるはずです。脳科学者の中野信子氏によれば、ミラーニューロンは文章を読むだけでも活性化するので、志望校のホームページやパンフレットなどを見ることでも効果は期待できます。

また、自分の目標を紙に書き出し、部屋やデスクのどこかに貼っておくか、手帳などに挟んで持ち歩き時々見返すのも良いでしょう。脳科学者の篠原菊紀氏はその効果を次のように説明しています。

(「絶対合格!」などと書いた紙を机に貼ることは)「スローガンの刷り込み効果で、効率アップも期待できる」(中略) 「常に目に入る場所では集中を殺いでしまいますが、視野角から外れた場所に貼ればたまに目に入り、サブリミナル効果が表れます」

(引用元:PRESIDENT Online|勉強のお悩み別解決法[効率アップのコツ]

3-3. 勉強の記録をつける

勉強を習慣化するには、勉強記録を付けることも効果的です。記録をすると、自分がどれだけ勉強したかが目で見て分かるだけでなく、続けていることを確認できて自信にもつながります。記録をつけたいから勉強する、というサイクルに入れれば、勉強が続くようになりますよ

StudyHackerのおすすめは、楽しく記録できる「ぬりえ勉強法」。用意するものは方眼紙とカラフルなペン。15分勉強するごとに1マス、科目ごとに色を変えながら塗っていきます。勉強するたび記録がたまり、鮮やかな勉強記録が残せます。これなら勉強したくなりますね。

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勉強していれば誰でも、時には勉強したくなくなるもの。そういう時は、ここで紹介したテクニックを試してみてください。これでもう、「勉強したくない」自分からは卒業できるはずです。

(参考)
StudyHacker|「勉強のやる気の出し方」完全解説。やる気がなくてもやる気は出せる!
PRESIDENT Online|勉強のお悩み別解決法[効率アップのコツ]
PRESIDENT Online|脳が目覚める3ステップ講座
PRESIDENT Online|【1】「脳とやる気」1秒で勉強意欲に火がつく法
StudyHacker|勉強嫌いも関係ない! 京大生おすすめの『とりあえず音読』勉強法のすごいメリット
PHP Online 衆知|脳科学から見えてきた!やる気を高める4つの方法
Wikipedia|報酬系
StudyHacker|人間だって動物だもの。勉強を続けたくなる『報酬システム』のつくりかた
DIAMOND online|成果が出ない人もヤル気にさせる「ごほうび」の威力とは
茂木健一郎 (2007), 『脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」』, PHP研究所.
StudyHacker|インスタで話題の「付箋ノート」を京大生の私も試してみた。これは勉強に効くこと間違いナシ!
StudyHacker|東大生オススメ! 『青ペン書き殴り勉強法』はモチベーションにも効果あり。
東洋経済ONLINE|頭がいい人は、なぜ「青ペン」を使うのか?
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