ボランティアで脳が育つ。「ありがとう」が得られなくてもボランティアするべき脳科学的理由。

自分から進んで無償の社会活動を行う「ボランティア」は、労働力や知識、物資などを、“相手に与える”印象を持つ方が多いかもしれません。しかし、実際には“与えられる”もののほうが多いようです。今回はボランティアを掘り下げ、科学的視点を含めた「ボランティア精神がビジネスパーソンに与えるもの」を探ります。

ボランティアはすぐ目の前のことから

ボランティアといえば、行方不明の男児を発見した尾畠春夫さんがつい先日話題になりましたね。ボランティアに人生を捧げ、被災地では配慮のため「暑い」「寒い」という言葉をいっさい口にせず、道具や食事、寝泊まりする場所も自己完結型で活動する尾畠さんは、スーパーボランティアという呼び名にふさわしい方です。

尾畠さんの生きざまをマネるのは難しいですが、ボランティア自体はすぐ目の前のことからできるもの。

周囲に目を向けてみれば……、家の周辺を掃除するついでに少し範囲を広げて掃除をする人、トングを持ち、自分が住む街のゴミ拾いをする人々がいます。なぜ日本はどこの国よりも街がきれいなのか? それは、ボランティアと呼ばれる人々に加え、そう呼ばれないほど目立たず行動する人々が存在しているからです。

買いものや、階段の上り下りで困っている高齢者、電車の券売機で困っている外国人などに“ひと声”かける。風で倒れたスタンド看板や自転車を元に戻す、道路の石ころを(はじくと危ないので)端に寄せるなど、ちょっとした身近なことがボランティアになるはずです。

ボランティアはリーダーシップにもかかわる

マンション管理組合や、町内会などで何か役割を頼まれた際、それを引き受けるのもボランティアのひとつです。田中公認会計士事務所所長の田中靖浩氏によれば、そうしたボランティアは「柔らかいリーダーシップ」を鍛えるそう。「柔らかいリーダーシップ」とは、権力をともなう立場だけに頼らない、いかなる場でも活かされる柔軟なリーダーシップです。

世界最大の会計事務所 Deloitte Touche Tohmatsu が実施した2016年の調査によれば、採用に影響力を持つ立場にある人の80%が、「積極的にボランティアを行なう者は、リーダーシップの役割に、より早く順応する」と考えているそう。

もちろん、職場で困っている同僚、先輩、上司を、ちょっと助けるだけの行為もボランティアです。また、災害支援などの肉体労働をともなうボランティアだけではなく、専門家が行う知識・技能的なボランティアもあります。

ボランティアが与えてくれるもの

ではここから、「ボランティアが与えてくれるもの」を探っていきましょう! 当然お金やモノは得られません。状況によっては「ありがとう」という言葉も得られない場合もあるでしょう。では、いったい何を与えてくれるのか? それは次の4つです。

1.理解系脳番地が鍛えられる

MRI(磁気共鳴画像)を用いて1万人を超える人々の脳を見てきた医学博士の加藤俊徳氏は、地域ボランティアに参加することで「理解系脳番地」が鍛えられると述べています。

理解系脳番地とは、加藤氏が提唱する、120の脳番地を機能別にくくったなかのひとつ。「与えられた情報を理解し、将来に役立てる」機能をもつこの番地は、脳左右の頭頂葉にあるそう。

地域ボランティアでこの番地が鍛えられる理由は、自分が住む地域と何かしらかかわりを持つことで、「今日はごみが多い」「人の流れが多い」など、わずかな変化にも敏感になるから。そうした気づきが理解系脳番地の刺激になるのだそうです。

2.前頭葉が活性化する

脳生理学者の有田秀穂氏によると、ボランティア活動は下垂体後葉からオキシトシンというホルモンを分泌させるのだそう。

このホルモンは人とのつながりによって活発に分泌されますが、人間の実行機能(思考や行動を制御する認知システム)をコントロールする、脳の前頭葉前部皮質内(※)にある神経ネットワークを刺激するのだとか。(※前頭葉の前側の領域)

ボランティアを行った高齢者の脳を6か月間にわたり観察した研究においても、認知機能にかかわる脳の前頭葉が活性化したといいます。

3.ストレス・脳疲労を軽減

また、ボランティア活動で他人を癒やす行為は、セロトニン神経を活性化するそうです。その神経は情報伝達物質のセロトニンを分泌するもので、セロトニンはストレスの緩和に深くかかわる物質です。

なおかつ先述したオキシトシンは脳疲労を解消してくれるのだとか。したがって、ボランティア活動は、ストレスや脳疲労の緩和に役立ついうわけです。

4.リーダーシップが身につく

ボランティアにはマニュアルがないので、状況に合わせて必要なこと・すべきことを自分で考えて、柔軟に行動しなければなりません。また、「これをやったら終わり」ということも決まっていないので、そのときの状況や、自分の体力、体調、スケジュールを考慮したうえで、休憩・終了などの判断が必要です。

同じようにボランティアを行う人々が周囲にいれば、社会的地位や年齢関係なく、同等に接して意見やアドバイスを聞いたり、逆に伝えたりしていく必要があります。最大の目的は、少しでもボランティアの対象になる方々の助けになることなので、何よりもそのために最善をつくすわけです。そうした行動で、田中氏が伝えている「柔軟なリーダーシップ」が身につくはずです。

*** ほんのちょっとしたことからでも、ボランティアを始めてみませんか?

(参考) 講談社|現代ビジネス | 酒も飲まず、貯金もゼロ…スーパーボランティア尾畠春夫さんの生き様(週刊現代,齋藤 剛) nounow (ノウナウ)|ボランティア活動が認知症予防になる可能性 NewSphere|ボランティア文化は職場環境を良くし、従業員のキャリア形成にも役立つ デロイト調査 NIKKEI STYLE|会社では得難い? 柔らかいリーダーシップが転職左右 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|険悪な議論を建設的に:「オキシトシン」の分泌がカギ 有田秀穂(2016),『「老脳」と心の癒し方』,かんき出版. 有田秀穂(2011),『育脳の技術』,主婦と生活社. 加藤俊徳(2010),『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』,あさ出版. 藤原佳典, 杉原陽子, 新開省二(2005),「ボランティア活動が高齢者の心身の健康に及ぼす影響 地域保健福祉における高齢者ボランティアの意義」,52巻4号,p. 293-307.

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