1日の勤務時間のうち28%が「メール業務」に奪われている――そんな衝撃的な事実が、大手コンサルティング会社であるマッキンゼーの調査により明らかになりました。
時間に換算すると、1日あたり2時間半ほどがメールに充てられている、ということになります(※マクロミルの調査より、日本人の平均労働時間を8.9時間とする。休憩時間は除く)。メールを1本返信するくらいならほんの数分程度ですが、その数分が積み重なれば、映画『アベンジャーズ』をまるまる1本観られるほどの時間になってしまうのです。
メール業務に割かれる時間は必要コストだからしょうがない? いえ、そんなことはありません。ちょっとした工夫をいくつか組み合わせることで、メールによるロスタイムは大幅に減らすことができるのです。メール対応による時間ロスを減らすノウハウを4つご紹介しましょう。
1. シングルタッチ・ルール
まず1つめに紹介するのは、シングルタッチ・ルール。シングルタッチとは、「一度読んだメールには二度と触らない」という意味。つまり、昔のメールをムダに読み返すのはやめよう、というのがシングルタッチ・ルールの本質です。
新しく届いたメールに目を通しているとき、つい既読の古いメールにも目が行き、「はて、このメールは何だったっけな?」と読み返してしまうことがあるでしょう。それに、すでに読んだメールが受信ボックスに入ったままでは、どれが必要なメールなのか判断する時間も生じてしまいます。
過去のメールを読み返すことによる時間のムダをなくすためには、「読んだメールは必ず削除するか、フォルダ分けする」ことを徹底してください。確認したメールを消したりフォルダに分別したりすることで、受信フォルダは常に、未読メールだけが入っている状態に保たれ、同じメールを2回以上読むことがなくなります。
時間管理術などを提案する「ゼルバナ」創立者のマット・プラマー氏によると、このシングルタッチ・ルールによって、1日におよそ27分もの時間が節約できるそうです。
2. フォルダ分けは2つだけに
あなたはメールをいくつのフォルダに分けていますか? 20~30、あるいはそれ以上、という方もいるでしょう。でも、フォルダが多くなればなるほど、「さあ、このメールはどこに分類すべきか?」と迷う時間が多くなり、余計な時間がかかってしまいます。
前出のプラマー氏は、フォルダを「たった2つ(!)」だけに絞ることを推奨しています。2つのフォルダとは、「アーカイブ」と「リーディング」です。
1つは、受信トレイに到着したときに一読したものの、さらに対応を要するメール用だ(いわゆる「アーカイブ」)。もう1つは、後日、読みたくなるかもしれないメール用だ(いわゆる「リーディング」)。
(引用元:ハーバード・ビジネス・レビュー|メールに費やす時間を大幅に削減する5つの方法)
前章「シングルタッチ・ルール」と合わせると、新しいメールを読んだ後のアクションは、
- 「アーカイブ(後で対応)」フォルダに入れる
- 「リーディング(後で読む)」フォルダに入れる
- 削除する
のたった3択だけになります。何十ものフォルダからメールの移動先を選ぶのに比べれば、ずっと時間短縮になるのが明らかでしょう。
でも、必要なメールを探すときに困るのでは、と思われるかもしれません。フォルダを2つに絞ることへの懸念に関してプラマー氏は、「そもそもフォルダから手動でメールを探すのが時間のムダ」と考え、メールを探すときには必ず検索機能を使うことを推奨しています。あとで見やすいようにメールを多数のフォルダに分類するという几帳面さが、かえって業務を煩雑にしてしまっているのです。
3. 通知を切り、まとめてメールチェック
次に紹介するのは、「メールの通知を切り、その代わり1時間に一度だけメールチェックする」という方法です。
メールが届くたびに画面に通知が表示されるよう設定している人も多いはず。もちろん通知機能は、瞬時にメールを返すには優れた機能です。でも、時間の節約という観点から見ると、ムダを生んでいます。
イギリスのラフバラー大学の研究によると、タスクを中断したあとに元通り再開するまでには、なんと64秒もの時間を要するそうです。つまり、通知を見て、メールを開く時間がほんの1、2分だったとしても、さらにプラス1分の時間が浪費されてしまうということ。そしてプラマー氏によると、ビジネスパーソンは1日に平均15回もメールのチェックをしているのだとか。
1日に10回以上もメールボックスをチェックする習慣を、1時間に一度だけまとめてチェックするというルールに変えると、およそ6回分の手間を省くことができます(8.9時間労働の場合)。時間にすれば、21分を削減することになるそうです。
とはいえ、メールチェックの回数を減らすのは少し不安ですよね。返信を1時間に一度だけにするということは、メールの相手を最大1時間待たせてしまうということ。でもご安心ください。相手を待たせるかもしれないという不安について、プラマー氏は次のように述べています。
では、40分にも満たない時間内に返信が届くことを、大多数の人は期待しているのだろうか。答えは「ノー」だ。実際、1時間もしないうちに返信を期待する人の割合は、顧客・クライアントの場合は11%、同僚の場合は8%にすぎない。
(引用元:同上 ※太字は筆者が施した)
顧客パフォーマンス向上の方法を提案するトイスター・パフォーマンス・ソリューションズ社が、1,200人を対象に行なった調査では、1時間後にメールを返信すれば89%の顧客は満足する、という結論が得られています。業種により例外はありますが、「すぐに返信しなければ!」と焦る必要は、それほどないようです。
4. 余計なメールはきちんとブロック
皆さんの受信フォルダには、迷惑メールやセールスメール、興味のないニュースレターなど、不要なメールが混ざっていませんか? メールの効率化に関するサービスを提供しているセインボックス社のデータによると、日々送られてくるメールのうち62%は不要なものなのだそう。
不要なメールがしょっちゅう送られてくると、まず「このメールが必要かどうか?」を判断する手間が生じてしまいます。加えて、届いた不要なメールを開いたり削除したりするとなれば、さらに時間が取られてしまうでしょう。
これらのメールを読むのに1件当たり15~20秒をかけ、1日に4分超を消費している。メール1件を削除するだけでも平均3.2秒かかり、合計すると1日に3分超を要することになる。
(引用元:同上 ※太字は筆者が施した)
前章でも述べた通り、受信ボックスは次に読むべきメールだけが入っている状態が理想です。したがって、
- 迷惑メールをきちんとブロックする
- 利用していない定期メールの配信を止める
といった手続きをこまめにすることで、受信ボックスを見やすいものにしておきましょう。
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ビジネスパーソンの基本であるメール。最も簡単に使いこなせるツールだからこそ、意外と侮ってしまいがちです。
- シングルタッチ・ルール
- フォルダ分けは2つだけに
- 通知を切り、まとめてメールチェック
- 余計なメールはきちんとブロック
上記4つのコツを心がけ、ワンランク上のメール環境を作っていきましょう!
(参考)
McKinsey & Company|The social economy: Unlocking value and productivity through social technologies
市場調査メディア ホノテ by Macromill|現状の労働時間に2人に1人は満足!東京23区の正社員に労働時間調査を実施
ハーバード・ビジネス・レビュー|メールに費やす時間を大幅に削減する5つの方法
Loughborough University Institutional Repository|The cost of email interruption.
Toister Performance Solutions, Inc.|How Fast Should a Business Respond to an Email?
Sane Box|We’ve scoured the earth for studies on email overload and interruptions. Here’s what we found.
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。