学んだ内容をノートにまとめても、次に見返したときには忘れている……。せっかく時間をかけてノートをつくっても、記憶に残らなければムダになってしまいます。
「ほかの人はどうやってノートをとっているんだろう?」「もっと効率的なノートの取り方があるはずでは?」そんなふうにお考えの方も多いのではないでしょうか。実際、ノートの取り方は人それぞれ。箇条書きにする人、マインドマップを使う人、色分けする人など、さまざまな工夫を凝らしています。
しかし、勉強内容を本当に定着させるには、見聞きしたことをただ書き写すだけでは不十分です。情報を整理し、自分の理解として深めていく必要があるのです。
そこで今回は、世界最高峰の教育機関であるハーバード大学で推奨されている「一次記録」と「二次整理」にわけたノートのとり方をご紹介します。この方法は、効率的な情報の記録と、深い理解・記憶の定着を両立させる画期的なノート術です。
ノートの紙面の使い方やメモをとるときのポイント、書く時間を短縮するための技術など、実践的な方法をお伝えしながら、なぜこの方法が効果的なのかも詳しく解説していきます。
- ハーバード流ノート術の考え方:一次記録と二次整理
- ハーバード式ノート術の実践方法
- 一次記録:その場でスピーディに書く技術
- 二次整理:後から関連付け・要約・質問を付加して理解を深める
- ハーバード式ノート術で時短と記憶定着につながった!
ハーバード流ノート術の考え方:一次記録と二次整理
色を分けたりスペースを区切ったりと、ノートをとるときのルールは人それぞれ。ハーバード大学では、ノートをとるときのポイントとして以下の3つをすすめています。*1
- 講義やディスカッションの流れに沿ってメモをとる
- 授業のノートを定期的に見直す
- レッスン中や復習中に質問を書き留める
このハーバード式ノート術の特徴は、講義中の「一次記録」と、あとからの「二次整理」という二段階方式にあります。特に二次整理は、学習内容の定着を助ける効果が期待できるのです。
作業療法士の菅原洋平氏によると、学習内容を「自分の言葉に変換する」ことで、「エピソード記憶」として残りやすくなるといいます。エピソード記憶とは、「感覚、感情、思考がほかの記憶と結びついて記憶され」たものです。*2
たとえば、旅行の思い出は、景色や食事などに抱いたさまざまな感情とともに記憶している人が多いでしょう。同じように、学習内容を自分の言葉で整理し、疑問点や重要ポイントをメモすることで、より深い記憶として定着するのです。
ただし、講義中に内容を理解しながら自分の言葉に直すのは難しく、大切な情報を聞き逃してしまう可能性があります。そのため、まずは講師の言葉やテキストの内容をそのまま一次記録として書き、後から自分なりに二次整理を行なうという手順が効果的です。
ハーバード式ノート術の実践方法
一次記録と二次整理を行ないながら、理解を深めるノート術としておすすめなのが「コーネル式ノート術」です。コーネル式ノート術では、ノートを3分割して使います。*3
今回は、アメリカのジェームズ・マディソン大学がすすめる方法で、実際にWebデザインの勉強をしながらノートづくりをしてみました。使うノートの指定はないため、A5サイズのルーズリーフで実践しました。
コーネル式ノート術では、次の手順でノートを分割します。*3
- 下から罫線5~6本分をあけて横線を引く
- ノートの左側から約5センチのところに、縦線を引く
- ページの上部に日付やトピックなどを記入する
右側の大きなスペースは一次記録、左側と下のスペースは二次整理に使用します。3つのスペースをつくった状態で、勉強に取りかかりましょう。
一次記録:その場でスピーディに書く技術
講義中やテキストを読んでいるときなどは、右側の一次記録スペースだけを使います。ジェームズ・マディソン大学が挙げる一次記録のポイントは、「完全な文章を使用しない」こと。つまり、必要に応じて略語を使いながら、スピード重視で情報をメモすべきだといいます。*3
この短時間でメモする技術について、『情報は1冊のノートにまとめなさい』などの著書をもつライターの奥野宣之氏は「よくメモすることは記号化」することをすすめています。たとえば、ミーティングでのメモは「M」、アイデアは「ア」といった具合です。*4
筆者はテキストを読みながらメモをしました。具体例を「Ex」、重要だと感じたポイントを「P」と記号化しながら、箇条書きを意識して一次記録を行ないました。
奥野氏は、記号を取り入れるメリットは速く書けることと、目印になることだと述べています。情報量の多いノートでも、記号を目印に目的のメモを見つけられると言います。*4 これは、あとから行なう二次整理や、復習のときにも役立ちそうです。
二次整理:後から関連付け・要約・質問を付加して理解を深める
一次記録ができたら、内容を忘れないうちにノートを見返して二次整理を行ないましょう。まずは左の列に、重要なポイントや人物名などを抜き出して書き込みます。*3
筆者はこのとき、エピソード記憶を残すために疑問点も追記しました。目印として「Q」の記号もつけています。
最後に、一番下のスペースを使って、その日勉強したことを要約します。ここでは、先に述べたとおり「自分の言葉に置き換える」ことを意識し、勉強内容をまとめました。完成したノートは、以下のとおりです。
ハーバード式ノート術で時短と記憶定着につながった!
ハーバード式ノート術を取り入れた結果、一次記録と二次整理のどちらにもメリットを実感することができました。
一次記録で感じたのは、勉強時間の短縮です。これまでは、完全な文章でメモをしていたため時間がかかっていました。そのせいで、テキストをどこまで読んだかわからなくなったり、講座や動画教材で遅れてしまったりと時間のロスが生まれていました。しかし、記号化を交えながら短い文章で書いたことでメモにとられる時間が減り、勉強時間を短縮できたのです。
その分、あとの二次整理に割ける時間も増えました。二次整理では、自分の言葉で要約をしたことで理解が深まった実感があります。内容を理解していなければ要約ができないので、わかるまでノートを読み込んで復習をして、自分でかみ砕く作業が学習を深めることにつながったのだと思います。
約1週間おいてからノートを見返しましたが、きちんと内容を思い出すことができたことも印象的でした。ノートを見返すときに、左側に用語、下に要約と情報が整理されていため記憶しやすかったのです。用語の確認には左側の列を、概要をおさらいしたいときは要約を見るなど、試験勉強の復習にも活かしやすそうだと感じました。
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一度書いたら終わりではなく、ノートを見返して情報を整理することで学びの質が向上します。記憶が定着せず悩んでいる人は、ぜひハーバード式ノート術を取り入れてみてください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 HARVARD UNIVERSITY|Note-Taking
*2 東洋経済オンライン|仕事が速い人はパソコンより「紙」を使う理由
*3 Learning Toolbox|CORNELL NOTES
*4 ダイヤモンド・オンライン|50万部売れた情報整理術 今すぐ使える効果的な7つの記録法
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。