「仕事に行き詰まっている……」
「現状に漠然とした不安があるけれど、どう改善したらいいかわからない」
そんな悩みのある人は、思考を頭の外へアウトプットして情報整理しませんか?
この記事では、シンプルに図式化するメソッドを紹介します。 筆者の実践例とあわせて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。
問題の原因を把握して改善する「因果関係図」
同じやり方で仕事をし続けるうち、結果が出にくくなった経験はありませんか? 業務がルーティン化してしまうと、問題を見逃して改善が遅れるかもしれません。
そのような現状を打開するのに有効なのが「因果関係図」で、「ものごとを論理的に分解しながら,原因となり得るものを漏れなく考えて掘り下げていく」ものです。(カギカッコ内引用元および参考:日経クロステック|発想を引き出すチャート ITの現場改善で役立つ「図解七つ道具」(2)プロセスのどの部分が根本的な問題だったのかを把握して、それを改善するために使われます。
「問題の構造分析」には「絞り込み」と「深掘り」が大切で、それに役立つのが因果関係図だと述べるのは、組織能力開発コンサルタントで、株式会社インヴィニオ代表取締役の土井哲氏。
原因の可能性を幅広く考え,本当の原因を見つける「絞り込み」がまず重要になる。
さらに,原因は階層構造になっているのが普通なので,その点にも注意してほしい。(中略)このように問題が階層構造になっているのであれば,原因を深掘りして根本原因を突き止めて対処すべきだ。
(カギカッコ内および枠内引用元:同上 ※太字は編集部が施した)
多くの場合、原因と結果は一直線で結びつくのではなく、複数の原因によって問題が引き起こされています。その原因の原因まで把握できるのが、因果関係図というわけです。
ここで、実際の例を見てみましょう。筆者は現在、「仕事の進みの遅さ」を課題に感じているため、因果関係図を作成してみました。
作成した図にはまず、「机の上に誘惑が多い」「作業工程をよく考えていない」などを原因として挙げました。これらは一因ではありますが、さらに深掘りしてみると、何層かにわたって原因が連なっていることが判明したのです。
因果関係図を作成する際、「いったん頭のなかではできるだけ漏れのないように選択肢を考える」と話す土井氏。まず、自分が原因だと疑っている事柄を思いつくままに書き出してみてください。それらを整理してつなげていく過程で何が根本的な原因なのかが自覚できますし、ブレインストーミングのような発想の広がりも期待できますよ。
現状を打開したいと考えている人は、因果関係図を使って問題の根本原因を把握し、改善へつなげてくださいね。
課題と可能性を見つける「ビジネスモデル図解」
自社の停滞の原因を探り、戦略を整理したいと考えているなら、「ビジネスモデル図解」を作成してみてはどうでしょうか。これは、事業において、人やモノがどの役割で、どんな関係で結ばれているのかを図式化して、誰もが理解できるようにしてくれるものです。(引用元および参考:近藤哲郎・沖山誠(2020),『ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた』,note.)
ビジネスモデル図解を考案したビジュアルシンクタンク「図解総研」代表理事の近藤哲朗氏、理事の沖山誠氏は、この図を作成するメリットについて、次のように述べています。
ビジネスモデルが図解できるようになると、どんな職業の人も実務に役立てることができます。自社サービスを図解することで会社の強みや弱みがわかり、新たな課題やビジネスチャンスを見つけやすくなりますし、取引先に自社サービスの図解をすることで契約がスムーズにいくこともあるかもしれません。学生であれば、自分が就職したい業界・企業への理解が進むでしょう。
(引用元:近藤哲郎・沖山誠(2020),『ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた』,note. ※太字は編集部が施した)
ビジネスモデル図解を使えば、誰でも自社が利益を生み出す仕組みを把握できるというわけですね。同じチーム内でメンバーの認識を合わせることも可能でしょう。
近藤・沖山両氏によると、ビジネスモデル図解には他人に伝えやすくするための3つのルールがあるのだそう。
- 「主体は3×3の9マスで構成する」
- 「モノ・カネ・情報の流れを矢印で説明する」
- 「説明しきれない部分」は補足する
(カギカッコ内引用元:同上)
それでは、手順をひとつずつ詳しく見てみましょう。
1. 「主体は3×3の9マスで構成する」
主体とは「ビジネスにおける重要な関係者・モノ」、つまり「利用者、事業、事業者」を指します。上段=利用者、中断=事業、下段=事業者を書き込みます。どの立場から、どの立場の人に自分たちのサービスを提供したいのかを明確にすることが、この過程では重要です。
2. 「モノ・カネ・情報の流れは矢印で説明する」
矢印は、主体と主体のあいだにある「重要な関係性」を指します。1で記入した利用者、事業、事業者のあいだに矢印を書き入れ、それぞれの関係性を表します。お金なら「¥」、モノなら「○」「□」といったように、どんな関係性で結ばれているのかをマークでつけ足しましょう。
3. 「説明しきれない部分」は補足する
最後に、補足として「主体や矢印だけでは描ききれない重要な情報」を書き込みます。
(以上、カギカッコ内引用元および参考:同上)
以上のルールを守りながらビジネスモデル図解を作成してみると、事業にどんな人間やモノが携わっていて、それらはどういった関係で結びついているのかがひとめでわかるようになります。
自社だけでなく同業他社のビジネスモデルも書き、ふたつの事業を比較するのもいいでしょう。転職を考えている人なら、現職と転職先との比較や履歴書作成のヒントになります。ぜひ試してみてください。
「ビジネスモデル図解」を実践! 興味のある会社を分析してみた
最後に、より具体的な実践を行ってみましょう。
現在、大学院で文学や文化を勉強していて、就職先として出版社に関心がある筆者。今回は、ビジネスモデル図解を用いた企業分析をしてみることにしました。A社とB社のビジネスモデルを比較し、どちらが自分に合っているのかを調べます。
まず、A社は業界でも大手の企業です。扱うジャンルも小説に限らず、マンガやゲーム雑誌などさまざま。幅広い年齢層を顧客にもち、それぞれの客層に合った広告を出しています。また、メジャーな文学賞の顕彰事業など、文化推進活動にも力を入れています。
対するB社の規模は小さく、個人出版物を多く手がけています。A社と比較するとかなり顧客層が絞られ、大きな広告会社や印刷会社を経由しないのが特徴といえます。
同業種であっても、会社によってビジネスモデルに違いがあるのがよくわかりました。筆者はこの分析を通して、下記のような予測ができましたよ。
- 複数の事業に同時に関わりたいのであればA社
- 小さくても自分のやりたいことに集中したいのであればB社
筆者同様、この図解で企業分析を行なう際は同じ業種の2社を比較するようにしましょう。あまりにかけ離れた業種では、相違点を見つけられないからです。逆に、この図解を用いれば、一見似たように見える同業他社であっても、思わぬ違いに気づくことができるはずですよ。
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今回の記事では、問題の原因究明やに事業の現状改善に効果のある図式化メソッドを紹介しました。現状に行き詰まったときには、ぜひ試してみてください。
日経クロステック|発想を引き出すチャート ITの現場改善で役立つ「図解七つ道具」(2)
近藤哲郎・沖山誠(2020),『ビジネスの仕組みがわかる 図解のつくりかた』, note.