記憶力をアップする方法5選!音楽・食べ物・ゲームを活用しよう

記憶力をアップする方法5選

生まれつきの才能がなくても、記憶力をアップすることは可能です。

「自分は昔から忘れっぽい」
「暗記に向いていない」
「年齢を重ねるにつれ、記憶力が衰えてしまった」

それは単なる思い込みかも。これから紹介する方法を実践すれば、記憶力が飛躍的に高まる可能性があります。仕事や勉強、日常生活で、多大なメリットを享受できること間違いなし。

  • 勉強したことが頭に定着する
  • 読んだ本の内容が確実に身につく
  • 仕事で必要な知識を短時間で暗記できる
  • 人の顔と名前をすぐに覚えられる
  • クレジットカードを見ずに番号を入力できる

こんなふうになったら、とてもステキですよね。それでは、記憶力をアップする具体的な方法を、たっぷりご紹介していきます。

記憶の仕組み

記憶力をアップする方法の前に、記憶が定着する仕組みを説明します。脳生理学者・池谷裕二氏などの見解を参考に、記憶を「インプット」「仕分け」「定着」という3つのステップに分解しました。

1. インプット

インプットとは、テキストを読んだり講義を聴いたりして、情報を脳に入れる段階です。視覚や聴覚を通じてインプットされた情報は、「短期記憶」として、ほんの短いあいだだけ留まります

2. 仕分け

インプットした情報を長く保存すべきかどうか、脳の左右にある「海馬」という器官が判断します。重要だとされた情報は「長期記憶」として定着しますが、そうでない情報は忘却されます。

つまり、記憶を長持ちさせるには、「これは保存する価値のある情報だぞ」と海馬に思わせればよいのです。繰り返しインプットされた情報は、「使う機会が多い=重要」と判断され、長期記憶として残りやすくなります。

3. 定着

重要だとされた情報は、「大脳皮質」という部分に移動し、いよいよ長期記憶として保存されます。海馬が「記憶の仕分け人」だとすれば、大脳皮質は「記憶の長期保管倉庫」といったところ。大脳皮質に知識を収納し、長期記憶として定着させることが、暗記作業のゴールです。

では、どうすれば記憶力をアップできるのでしょうか?

記憶の仕組み

記憶力アップに必要なこと

脳が情報を記憶する仕組みをふまえると、記憶力をアップするアプローチとして、以下のふたつが考えられます。

脳のパフォーマンスを高める

記憶には、海馬や大脳皮質といった脳の部位が関与しています。脳が正常に機能しないと、情報が長期記憶になりにくいことも。

食事や運動といった生活習慣を最適化し、脳のパフォーマンスを高めることは、記憶力アップにつながります。具体的な方法は、のちほど紹介しましょう。

効率的な勉強法・記憶法を知る

勉強や記憶のやり方を工夫することで、短期記憶から長期記憶への移行がスムーズになり、情報を覚えやすくなる場合があります。語呂合わせやストーリーをつくって覚える「記憶術」も効果的です。

それではいよいよ、記憶力をアップする方法を具体的に紹介していきます。

記憶力アップに必要なこと

記憶力をアップする方法1:食べ物を工夫する

記憶力をアップする方法には、食事で脳のコンディションを整えることが挙げられます。脳が栄養不足だと、パフォーマンスが悪くなり、情報を記憶しにくくなるかもしれません。脳を元気な状態に保つため、以下に挙げる栄養を意識して食べ物を選びましょう。

ブドウ糖

ブドウ糖(グルコース)は、脳のエネルギー源となる唯一の栄養素。脳を自動車に例えるなら、ブドウ糖はガソリンです。ブドウ糖が足りないと、脳はエネルギー不足になり、充分なパフォーマンスを発揮できない恐れがあります。

心理学者のデヴィッド・ベントン氏らは1994年、186人の女性を対象にした記憶テストの結果を報告しました。血糖値(血中のブドウ糖濃度)が約65mg/dl以下時の平均点が約9点、約113mg/dl以上時では約14点。つまり、血糖値が高い人ほど記憶力がよかったのです。

とはいえ、ブドウ糖の過剰摂取はNG。血糖値の上昇を抑える「インスリン」が大量に分泌され、眠くなったりボンヤリしたりする可能性があります。

記憶力アップを目的とした糖分補給には、糖の吸収がゆるやかな「低GI食品」を選びましょう。玄米、そば、バナナなどです。ゆっくり食べたり、食物繊維やお酢とあわせて食べたりすることでも、糖の吸収スピードを抑えられます。

◆ブドウ糖を含む食べ物

  • パン
  • 麺類
  • イモ類
  • 果物
  • 甘いお菓子 など

◆ブドウ糖の吸収をゆるやかにするポイント

  • 食べすぎない
  • 「低GI食品」を選ぶ
    (玄米、大麦、そば、全粒粉パン、バナナ、ナッツなど)
  • 酢・食物繊維とあわせて食べる
  • 時間をかけてゆっくり食べる
  • 炭水化物は最後に食べる
  • 食後に歩く

オメガ3

オメガ3は、毎日の摂取が推奨されている「必須脂肪酸」の一種。「頭がよくなる油」としておなじみの「DHA(ドコサヘキサエン酸)」も、オメガ3です。

脳の大部分は、オメガ3をはじめとする脂肪(油)でできています。脂肪の役割は、脳神経の細胞膜をうるおし、柔軟に動かすこと。脂肪が不足すれば、神経細胞のネットワークが築かれなくなり、情報伝達が滞って、記憶・学習能力の低下につながる恐れがあります。

厚生労働省によるオメガ3の摂取基準は、18~29歳の男性で1日2.0g以上、女性は1.6g以上。たったそれだけ……と思うかもしれませんが、オメガ3は限られた食材にしか含まれていないため、意識して摂取しないと不足しがちです。脳のパフォーマンスを保つため、毎日少しずつオメガ3を摂取しましょう。

◆オメガ3が豊富な食べ物

  • クルミ
  • 青魚
  • エゴマ油
  • アマニ油
  • 緑黄色野菜 など

ポリフェノール

ポリフェノールは、赤ワインなどに含まれる苦み・色素成分。細胞を酸化ストレスから守る「抗酸化作用」で有名ですね。ポリフェノールには5,000以上の種類が存在し、記憶力をアップさせる作用をもつものもあります。

記憶力増強効果があるポリフェノールのひとつが、カカオの苦み成分である「フラバノール(カカオポリフェノール)」。米コロンビア大学メディカルセンターが2014年に発表した研究によると、50~69歳の被験者がフラバノール900mgを3ヵ月間摂取し続けたところ、記憶力に深く関わる脳の「歯状回」の機能が改善したそう。記憶テストのスコアも有意に高くなりました。

また、イチゴに含まれるポリフェノール「フィセチン」にも、記憶力を高める効果が期待できます。2017年に発表された武蔵野大学の研究によると、フィセチンを経口投与されたラットの海馬で「長期増強」が起こりました。長期増強とは、神経細胞間の伝達効率が長期的に上昇することです。長期増強により、記憶が維持されやすくなると考えられています。

そのほか、ブルーベリーが含む「プロアントシアニジン」、赤ブドウやピーナッツが含む「レスベラトロール」なども、記憶力アップが期待できるポリフェノールです。

◆記憶力アップが期待できるポリフェノール食品

  • カカオ
  • イチゴ
  • ブルーベリー
  • 赤ブドウ
  • ピーナッツ

レシチン

脂質の一種・レシチンは、記憶の形成に関わる「アセチルコリン」の生成を促すため、記憶力の維持に不可欠です。社会福祉学者のフローレンス・サフォード博士らによる1994年の論文で報告された実験では、被験者に大さじ2杯のレシチンを5週間摂取させ続けたところ、記憶テストの成績が有意に上がりました

レシチンは、大豆と卵黄に多く含まれています。毎日の朝食を、納豆・みそ汁・目玉焼きという「定番」にするだけで、無理なくレシチンを摂取できますよ。

◆レシチンが豊富な食べ物

  • 大豆
  • 卵黄

記憶力をアップしたい方は、ブドウ糖・オメガ3・ポリフェノール・レシチンが豊富な食べ物を選び、脳にたっぷりと栄養を送りましょう。

記憶力をアップする方法1:食べ物を工夫する

記憶力をアップする方法2:生活習慣を改善する

記憶力をアップするには、食事以外の生活習慣を見直すことも大切です。頭の働きが鈍いと感じている方は、これからご紹介する健康的な習慣を取り入れてみてください。

運動

精神科医のアンダース・ハンセン氏によれば、運動すると「BDNF」の分泌が増え、記憶力が向上しやすくなるそう。BDNFとは「脳の栄養分」とも呼ばれるタンパク質で、神経細胞の発生・成長・維持・再生・連結を促します。

また、『米国科学アカデミー紀要』に掲載された2011年の論文では、55~80歳の被験者が1日40分・週3日のウォーキングを1年間続けたところ、海馬の容積が2%前後増加したと報告されました。運動には、記憶力アップの効果が期待できるのです。

とはいえ、激しい運動は逆効果。ハンセン氏によると、マラソンのような過酷な運動はストレスを生み、記憶力の低下を招くそう。ランニングであれば30分以内に収めるべきだそうです。

また、ハンセン氏によると、運動の種類によって記憶力アップの効果が異なるのだとか。ゆるい負荷を継続的にかける「有酸素運動」は、新しい情報を記憶する「暗記力」のアップに有効です。ランニングやウォーキング、ダンス、体操など、負荷が軽く持続的な運動を習慣にしましょう。

一方、強い負荷を瞬発的にかける「無酸素運動」は、記憶どうしを結びつける「連想記憶力」を高めるそう。連想記憶力とは、人の顔と名前を一致させるのに必要な能力です。人の顔と名前を一致させるのが苦手な方は、腕立て伏せやスクワットを行ないましょう。

◆運動で記憶力をアップするポイント

  • ストレスを感じない程度に留める
  • 新しいものを覚えたいなら、有酸素運動
  • 記憶どうしを結びつけたいなら、無酸素運動
  • 両方の運動を取り入れるのがベスト
  • 両方は難しければ、有酸素運動がベター

睡眠

記憶力を保つには、充分な睡眠が必要です。睡眠は、記憶が定着するのに不可欠なプロセス。睡眠時間を削っての勉強が非効率的であることは、もはや常識です。

学術雑誌『Child Development』に掲載された1998年の論文では、成績のよい生徒ほど平日の平均睡眠時間が長いとわかりました。生徒たちの成績と平均睡眠時間の関係は、以下のとおりです。

  • A評価:7時間22分
  • B評価:7時間21分
  • C評価:7時間4分
  • D評価:6時間48分

最も成績がいいグループの平均睡眠時間は7時間22分、最も成績が悪いグループでは6時間48分と、30分以上の差がついています。また、『NeuroImage』誌に掲載された2012年の論文では、平日の睡眠時間が長い人ほど海馬の容積が大きいと報告されました。

では、どれくらいの睡眠時間を確保するべきなのでしょうか? 精神科医の三島和夫氏によると、必要な睡眠時間には個人差があるため、日中に眠気で困らないかどうかで考えるのがいいそうです。職場や学校で睡魔に襲われがちなら、睡眠不足の可能性が大。睡眠時間を増やしましょう。

夜間の充分な睡眠だけでなく、記憶力アップには昼寝も効果的です。心理学者オラフ・ラール氏らは、被験者に30個の単語を覚えさせ、1時間後にテストを行ないました。テスト前に昼寝をしたかどうかによって、平均点が変わったそうです。

  • 昼寝をしない→約7点
  • 6分程度の昼寝→約8点
  • 36分程度の昼寝→約9点

数分~数十分間の仮眠には、記憶力アップの効果が期待できるのです。

ストレス解消

記憶力の維持には、ストレスをためないことも大切です。精神科医の朝田隆氏によれば、強いストレスを感じると「コルチゾール」というホルモンが多く分泌され、海馬に作用して記憶力の低下をもたらすそう。

精神科医のTomy氏によると、ストレスを解消するには自分に合った方法を見つけることが大切だそうです。ある人はランニングでストレスを解消できても、運動嫌いの人には逆効果かもしれません。自分の性格や好みをふまえ、最適な方法を選択しましょう。

◆ストレスを解消する手段

  • 声を出して笑う
  • 好きな音楽を聴く
  • マッサージやエステに行く
  • いい香りを嗅ぐ
  • 身体を動かす
  • たっぷり寝る
  • 家にこもってドラマを観る
  • 深呼吸・瞑想をする
  • お気に入りの場所でゆっくり過ごす など

運動・睡眠・ストレス解消の3つを意識して、記憶力アップを図りましょう。

記憶力をアップする方法2:生活習慣を改善する

記憶力をアップする方法3:記憶術を実践する

記憶力を手軽にアップする手段のひとつが、記憶術。活用すれば、効率的に知識をインプットできます。特別な才能もハードな訓練も必要ありません。「ちょっとしたコツや工夫」だと考えてください。

たとえば、数学の授業で教わる「ルート2=1.41421356」。そのまま覚えるのは難しくても、「ひとよひとよにひとみごろ(一夜一夜に人見頃)」と語呂合わせすれば、すんなり暗記できますよね。

ちょっと工夫するだけで、記憶作業にともなう負担を大幅に減らせます。記憶術講師・椋木修三氏の『記憶力30秒増強術 大量に正しく一瞬で覚えるコツ』(成美堂出版、2002年)より、主な記憶術をご紹介しましょう。

イメージ・ストーリー法

キーワードからストーリーをつくる記憶術を、「イメージ・ストーリー法」と呼びます。たとえば、以下に挙げる5つのキーワードを覚えるなら、それぞれをつなげて物語をつくりましょう。

  • パソコン
  • 緑茶
  • イノシシ
  • マスク

パソコン緑茶をかけたら、画面からイノシシマスクをつけて飛び出し、の木に突っ込んでいった。

こうすれば、最初の「パソコン」を思い出すだけで、残り4つを連想できます。

ポイントは、各キーワードの姿形を思い浮かべ、ストーリーを映像としてつくり上げること。姿形をイメージしにくい抽象的なキーワードの場合は、具体的な物に置き換えましょう。

  • 経済→1万円札
  • ブランディング戦略→ルイ・ヴィトンのバッグ

イメージ・ストーリー法は、人の名前を覚えるのにも有効です。「大橋さん」なら、その人が大きな橋の上に立っている様子をイメージすることで、頭に残りやすくなります。

基礎結合法

「基礎結合法」は、覚えたい情報を、自分が絶対に忘れない情報(基礎)にひもづける記憶術です。わかりやすい例は、身体のパーツへのひもづけ。身体の部位をトリガーにして、情報を思い出せるようになります。

  • の上にパソコンが乗っている
  • 緑茶を持っている
  • お腹イノシシがしがみついている
  • ひざマスクが結ばれている
  • からの木が生えている

「基礎」とする情報は、明確に記憶できているならなんでもOKです。

  • 自宅の間取り
  • 近所の街並み
  • 職場の風景
  • 日本地図 など

筆者の場合、鳥羽博道『ドトールコーヒー 「勝つか死ぬか」の創業記』(日本経済新聞出版、2008年)の内容をドトールの店内と結びつけてみたところ、楽に覚えられました。

  • 壁紙←色彩心理学に基づき、「母性愛」を感じさせるクリーム色で統一
  • キッチン←従業員の負担を減らすため、徹底的に機械化
  • 看板←ドトールとは「医者」の意。創業者が滞在していたブラジルの地名に由来

本の内容を人に伝えるときは、ドトール店内の風景を思い浮かべるだけで知識が取り出せます。

数字変換法

数字を記憶するなら、意味のある言葉に変換しましょう。有名なのは、「794→鳴くよ」のような語呂合わせ。しかし、数字によっては変換しづらく、汎用性が低いのが欠点です。たとえば784だと、「ナヤヨ」「ナハシ」のように無意味な音にしかなりません。

そんなときにおすすめなのが、前出の椋木氏が推奨する、数字を50音表に対応させるテクニック。以下のルールに従い、数字を言葉に置き換えます。

1→アイウエオ
2→カキクケコ
3→サシスセソ
4→タチツテト
5→ナニヌネノ
6→ハヒフヘホ
7→マミムメモ
8→ヤユヨ
9→ラリルレロ

12なら、「アカ」「イカ」「ウキ」「オケ」などと変換できます。どんな数字でも、意味のある言葉に変えられそうですね。慣れれば、数字と50音をスムーズに行き来できるようになります。

12857436のように長い数字の場合、12・85・74・36と区切り、「イカ(12)が屋根(85)に上り、(74)をかついで祖父(36)に投げつけた」と文をつくりましょう。

短期間で簡単に記憶力をアップしたい方は、ご紹介した記憶術を試してみてください。

記憶力をアップする方法3:記憶術を実践する

記憶力をアップする方法4:記憶のコツ・テクニックを知る

記憶力をアップするには、ほかにもさまざまな学習テクニックがあります。いくつかご紹介しましょう。

アウトプット

記憶を定着させやすいのは、アウトプットという行為です。カナダ・ウォータールー大学による2017年の研究では、以下に挙げる4つの方法で被験者に単語を学ばせました。

  • 声を出して読む
  • 黙って読む
  • 自分が読んだ録音を聞く
  • ほかの人が読んだ録音を聞く

確認テストの成績が最も高かったのは、声を出して読んだグループ。つまり、インプットよりアウトプットのほうが学習に効果的だったのです。本を読んだりセミナーに参加したりして学んだ内容は、そのままにせず、アウトプットしてみましょう。

◆アウトプットの例

  • 人に話す
  • 文章にまとめる
  • 図や表を作成する
  • SNSやブログで発信する

初頭効果・親近効果

心理学者の多湖輝氏は、特に覚えたいことを勉強時間の最初と最後にインプットするよう推奨しています。

最近観た映画を思い出してみてください。冒頭や終盤の記憶ほど鮮明で、中盤は曖昧ではありませんか? アルファベットの順番も、「ABCDEFG……」と「……XYZ」の部分が覚えやすいはずです。このように、最初の部分が記憶に残りやすいのを「初頭効果」、最後が記憶に残りやすいのを「親近効果」といいます。

初頭効果と親近効果を勉強に活かしましょう。徳川将軍の場合、第1代家康と第15代慶喜が記憶に残りやすいもの。第8代吉宗のことを覚えたいなら、勉強時間の最初か最後にしましょう。

感動

「人は頭でなく心で記憶する」という言葉があります。意外な事実を知って「へぇ!」と感嘆した、先生の話に感銘を受けて涙が出た……そんな「感動」をともなう経験は、記憶に刻まれやすいものです。

『Nature Neuroscience』誌に掲載された2016年の論文によると、感情をゆさぶる画像を見せられた被験者は、直後の出来事を鮮明に覚えている傾向があったとのこと。「すごいなぁ!」「嬉しいなぁ!」……そんな感動を見いだしながら勉強に取り組むのが、成長への近道なのです。

動画やマンガなど、感情が動きやすいメディアを利用するのも有効。TEDで公開されている情熱的な講義や、『マンガで学ぶ○○』など、エンターテイメント性のある教材を活用すると、勉強に「感動」の要素を付加できます。

先述の実験からもわかるように、「感動」の内容は勉強と無関係でもOK。ドラマを観て感動し、感情がたかぶった状態で勉強を始めることにも、記憶力の強化が期待できます。

◆勉強に「感動」を取り入れる例

  • 勉強内容に感動や驚きを見つける
  • TEDで講義を観る
  • 学習マンガを読む
  • その他、エンターテイメント性の高い教材を使う
  • ドラマなどで感動を味わってから勉強する

チャンク化

大量の情報を記憶するときに便利なテクニックが、「チャンク化」。情報を小さくまとめ、覚えやすくします

チャンク化の身近な例が、電話番号です。電話番号は、ハイフンで3つのブロックに区切られています。0362731553と羅列するより、03-6273-1553としたほうが見やすく、覚えやすいですよね。ひとかたまり当たりの情報量が絞られるので、認知の負担が減るわけです。徳川将軍の場合も、第1代~第4代を「前期」、第5代~第10代を「中期」、第11代~第15代を「後期」と分割するだけで、一気に覚えやすくなった感じがしませんか?

製品のスペックを覚える場合、たとえば冷蔵庫なら「サイズ」「冷蔵機能」「冷凍機能」という具合に細かく分類しましょう。普通に覚えるよりずっと記憶しやすくなります。

音楽

単純な暗記の場合、好みのBGMを流して勉強するのがおすすめです。

好きな音楽を聴いているとき、脳内では「ドーパミン」という神経伝達物質が分泌されます。精神科医の樺沢紫苑氏によると、ドーパミンは脳の海馬や側頭葉に作用し、記憶・学習能力を高めるそうです。

また、医学博士の藤本幸弘氏によると、脳は単純作業に飽きやすいため、音楽を聴いて刺激を送ることが有効なのだとか。ただし、歌に気をとられないよう、母国語の曲は避けるべきだそうです。そして、曲を聞き取ることに意識が向かないよう、新しい曲ではなく慣れ親しんだ曲を選びましょう。

なお、藤本氏が暗記の際にすすめている音楽は以下のとおりです。

ショパン:夜想曲全集 (SHM-CD)

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記憶しない

重要性が低い情報は記憶しないことも大切です。前出の多湖氏によると、不要な記憶は必要な記憶を邪魔してしまうそう。本当に必要な情報を厳選して覚え、脳の容量を節約しましょう。

  • 今週の予定
  • 知人の誕生日
  • 帰りに店で買いたいもの
  • 帰宅後にやりたいこと

……などの情報はメモに書き出し、暗記しなくていいようにしましょう。情報を取捨選択することが、記憶力アップのカギです。

記憶力をアップする方法3:記憶術を実践する

記憶力をアップする方法5:ゲームでトレーニング

記憶力をアップしたいなら、ゲームでトレーニングするのも手です。楽しみながら記憶力を磨けるアプリケーションやカードゲームをご紹介します。

DNB

「DNB」(iOSAndroid)は、メンタリストDaiGo氏が監修したゲームです。臨床心理学における記憶テストとしてメジャーな「n-Back課題」をベースにつくられました。

n-Back課題の基本は、n回前に提示された情報を答えること。「2回前のアルファベットを答える」というルールなら、「E→A→J→D」という順で提示されたとき、「J」と言われたら「E」と答えます。ワーキングメモリ(一時記憶)の訓練になる作業です。

「DNB」は、n-Back課題のゲーム性を高めたもの。次々と提示されるアルファベットの種類だけでなく、表示場所も暗記しなければならず、難易度は高めです。シンプルなゲームですが、とても頭を使うので、ぜひチャレンジしてみてください。

限界記憶Lv99

「限界記憶Lv99」(iOSAndroid)は、4×4のパネルが光った順番を記憶するシンプルなゲーム。瞬間的な記憶力をトレーニングできます。

99個以上のステージが用意されており、ついやり込みたくなってしまいます。記憶力を鍛えたい方はもちろん、ハマれるゲームを探している方にもおすすめです。

神経衰弱

おなじみの「神経衰弱」は、トランプの数字・記号・位置を何枚分も記憶し続けるゲームです。ルールはシンプルですが、脳をかなりハードに使います

実際にトランプを使うのはもちろん、スマートフォンでも遊ぶことが可能です。「トランプ・神経衰弱」(iOSAndroid)では、1人・2人・コンピューター対戦という3つの遊び方が用意されています。

ナンジャモンジャ

「ナンジャモンジャ」は、カードに描かれたキャラクターに名前をつけて覚えるゲームです。山札の一番上をめくり、初登場のキャラクターなら好きな名前をつけます。次にそのキャラクターが登場したとき、名前をいち早く思い出して答えた人が、場のカードをすべて獲得します。最も多くのカードを得た人が勝者です。

「ナンジャモンジャ」では、未知のキャラクターと名前をセットで記憶するため、高度な記憶力が問われます。パーティーで盛り上がる人気のカードゲームでもあるので、お友だちや家族と楽しんでみてください。

ぽぺぷぴっぱ

神経衰弱の要領で楽しめるのが、「ぽぺぷぴっぱ」というカードゲーム。ひらがなが1文字ずつ書かれたカードを伏せて広げます。プレイヤーはサイコロを振り、目の数だけカードをオープン。書かれたひらがなを組み合わせて単語をつくれたら、そのカードを獲得できます。単語にならなければ再びカードを伏せ、次の人の番です。

「単語をつくる」というミッションがあり、単純にゲームとしておもしろいのが「ぽぺぷぴっぱ」。普通の神経衰弱に飽きた方、楽しく記憶力をアップしたい方は、ぜひトライしましょう。

記憶力アップの方法が学べる本

最後に、記憶力アップの方法を学べるおすすめの書籍をご紹介します。

『走れば脳は強くなる』

トレーニング科学の専門家・重森健太氏による『走れば脳は強くなる』。ランニングが脳に与えるメリットや効果的な走り方を解説しています。

重森氏によれば、現代人は身体を動かす機会が少なく、身体的な刺激に乏しいため、脳の衰えるリスクが高いのだとか。脳のコンディションを保つには、積極的な運動が必要なのです。

運動すると、筋肉から脳に刺激が伝わり、記憶力、集中力、計画力、判断力などが高まるそう。脳の血行が促進されるのもメリットです。

『走れば脳は強くなる』を読めば、運動は脳にどんな効果をもたらすのか、どんな運動が効果的なのか、バッチリ理解できます。運動不足を自覚している方は、ぜひ手に取ってみてください。

走れば脳は強くなる

走れば脳は強くなる

  • 作者:重森健太
  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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『世界のピークパフォーマーが実践する脳を操る食事術』

『世界のピークパフォーマーが実践する脳を操る食事術』の著者・石川三知氏は、フィギュアスケートの荒川静香選手、サッカーの長友佑都選手など、トップアスリートをサポートしてきたスポーツ栄養士です。プロの知見から、脳のパフォーマンスを最大化する「食事術」を多数紹介しています。

『脳を操る食事術』は、記憶力だけでなく、脳機能全般を扱っています。「プレゼンテーションの前日」「残業で疲れたとき」「アイデアを出したいとき」など、シーン別の具体的な食事術が満載。『脳を操る食事術』を読むだけで、脳にいい食事のとり方をマスターできますよ。

『記憶力を強くする』

脳科学者・池谷裕二氏による『記憶力を強くする』は、記憶の入門書。記憶システムの基本と、脳科学の知見に基づいた記憶力の高め方を学べます。

『記憶力を強くする』では、海馬、シナプス、長期増強など、記憶に関わる脳の仕組みがひととおり解説されています。子どもでも楽しめるように書かれた「ブルーバックス」シリーズなので、小難しい話が苦手でも安心して読めますよ。

脳にまつわる小話も豊富で、エッセイのように楽しく読み進められます。記憶力を高めたい方はもちろん、脳の仕組みに興味がある方も、ぜひ手に取ってみてください。

『ホイホイ記憶術』

『ホイホイ記憶術』は、心理学者・多湖輝氏のベストセラー。「より速く、より多く、より確実に」情報をインプットするコツが110個も紹介されています。

多湖氏によると、記憶がスムーズに定着する「法則」をつかみさえすれば、記憶力が飛躍的に高まる可能性があるそう。外国人にとっては難解な日本語を、われわれが自然に習得できたように、膨大な情報をインプットできる素質を誰もがもっているそうです。

  • 関連事項をかたまりとして覚える
  • 制限時間を決めて覚える
  • 空腹時や食事直後の暗記は避ける

……など、紹介される方法は具体的で実践しやすいものばかり。大量の暗記をこなさなければいけない方は、『ホイホイ記憶術』からヒントを得られるでしょう。

ホイホイ記憶術

ホイホイ記憶術

  • 作者:多湖輝
  • ゴマブックス株式会社
Amazon

『ハーバード式 最高の記憶術』

『ハーバード式 最高の記憶術』の著者・川﨑康彦氏は、ハーバード医科大学の研究員として12本もの論文を発表したそう。その成功は、医学の知識を応用した記憶テクニックに支えられていたとのことです。

医学博士らしいテクニックのひとつが、神経伝達物質の利用。エピソード記憶力を高めるアセチルコリン、記憶の定着を促すオキシトシンなど、記憶に関係する6種類が紹介されています。そのほか、

  • 記憶が定着しやすい勉強テクニック
  • 身体コンディションの整え方
  • 脳疲労を減らす方法
  • 外国語の学習法

……など、具体的なテクニックが満載。高度で専門的な記憶力アップ法をお求めの方は、ぜひご一読ください。

ハーバード式 最高の記憶術

ハーバード式 最高の記憶術

  • 作者:川﨑 康彦
  • きずな出版
Amazon

『一度読むだけで忘れない読書術』

本の内容を記憶したい方におすすめなのが、『一度読むだけで忘れない読書術』。世界記憶力選手権グランドマスターの池田義博氏が、「イメージドリブン」という読書法を紹介してくれます。

イメージドリブン読書法とは、内容を映像化・図式化しながら読み進める方法。マスターすれば、一度読んだだけで内容を記憶に留めやすくなり、読書スピードを飛躍的に高められるのだとか。せっかく読んだ本の内容を忘れがちな方は、イメージドリブン読書法を実践し、記憶力アップを図りましょう。

一度読むだけで忘れない読書術

一度読むだけで忘れない読書術

  • 作者:池田 義博
  • SBクリエイティブ
Amazon

『記憶力30秒増強術 大量に正しく一瞬で覚えるコツ』

入門書としておすすめなのが、『記憶力30秒増強術 大量に正しく一瞬で覚えるコツ』。本記事で紹介したイメージ・ストーリー法、基礎結合法、数字変換法をはじめ、主要な記憶術を網羅しています。

著者の椋木修三氏は、「記憶の達人」として数多くのメディアに出演した人物。記憶パフォーマンスの種明かしや、番組制作の裏話を披露しつつ、記憶術の基本を教えてくれます。

『記憶力30秒増強術』には、

  • 英単語を覚える
  • 時刻を覚える
  • 人の顔と名前を覚える

……など、日常生活で役立つコツが盛りだくさん。「時刻を指の関節で記憶する」など、目からウロコのアイデアが満載です。

記憶力30秒増強術 ――大量に正しく一瞬で覚えるコツ

記憶力30秒増強術 ――大量に正しく一瞬で覚えるコツ

  • 作者:椋木修三
  • パンローリング株式会社
Amazon

『世界最強 記憶術 場所法』

場所法とは、身近な場所に情報をひもづけて覚えるテクニック。「玄関=徳川家康」「キッチン=徳川吉宗」という具合です。『世界最強 記憶術 場所法』では、場所法の極意を豊富な例や図解で学べます。

世界最強記憶術 場所法

世界最強記憶術 場所法

  • 作者:平田直也
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
Amazon

記憶力をアップする方法をもっと学びたい方は、ご紹介した書籍もヒントにしてみてください。

***
記憶力をアップする方法について、「脳を元気に保つ」「正しい勉強法・記憶術を知る」というふたつの方向から解説しました。仕事や勉強、日常生活のために記憶力を強化したい方は、ご紹介したテクニックやゲーム、書籍をご活用ください。

(参考)

プレジデントオンライン|「復習4回」で脳をダマすことができる
茂木健一郎(2019),『脳HACK大全』, PHP研究所.
e-ヘルスネット|ブドウ糖
農畜産業振興機構|砂糖は脳を活性化する
Bendon, David, Pearl Y. Parker, and Rachel T. Donohoe (1996), "The supply of glucose to the brain and cognitive functioning," Journal of Biosocial Science, Vol. 28, No. 4, pp.463-479.
NIKKEI STYLE|食後のウトウト…何とかしたい! 眠気防ぐランチ術
Sweeten the Future|受験生にとって糖は親友?! 効率的に糖をエネルギーとして活かす方法とは?!
カリフォルニア くるみ協会 公式サイト|認知機能・脳活
NHK健康|健康には必須脂肪酸「オメガ3」「オメガ6」が重要!油選びのコツ
林浩平(1971),「脳神経の脂質」, 油化学, 20巻, 10号, pp.745-754.
e-ヘルスネット|不飽和脂肪酸
厚生労働省|脂質
だいずデイズ|小山浩子先生コラムvol.6 脳に大切な脂肪のおはなし
コトバンク|ポリフェノール
Columbia University Irving Medical Center|Dietary Flavanols Reverse Age-Related Memory Decline
He, Wen-Bin, Kazuho Abe, and Tatsuhiro Akaishi (2017), "Oral administration of fisetin promotes the induction of hippocampal long-term potentiation in vivo," Journal of Pharmacological Sciences, Vol. 136, No.1, pp.42-45.
脳科学辞典|記憶固定化
ダイヤモンド・オンライン|ブルーベリーを食べるとなぜ記憶力は高まるのか
ClinicalTrials.gov|Investigating the Acute Effects of Flavonoids in Blueberries on Cognitive Function.
Research @ Texas A&M|Compound found in red grapes and peanuts may prevent memory loss
樺沢紫苑(2016),『脳を最適化すれば能力は2倍になる 仕事の精度と速度を脳科学的にあげる方法』, 文響社.
日本生理学会|041.海馬内アセチルコリンによる神経興奮性の調節とシナプス伝達の長期増強の亢進
Safford, Florence and Barry Baumel (1994), "Testing the Effects of Dietary Lecithin on Memory in the Elderly: An Example of Social Work/ Medical Research Collaboration," Research on Social Work Practice, Vol. 4, No. 3, pp.349-358.
東洋経済オンライン|物覚えの悪い人が知らない記憶のカラクリ
AFPBB News|適度な運動で海馬の容積が増加、米研究
甲南大学|第1回「睡眠と記憶について/基本的な睡眠とは」
Wolfson, Amy R. and Mary A. Carskadon (1998), "Sleep Schedules and Daytime Functioning in Adolescents," Child Development, Vol. 69, No. 4, pp.875-887.
Taki, Yasuyuki, Hiroshi Hashizume, Benjamin Thyreau, et al. (2012), "Sleep duration during weekdays affects hippocampal gray matter volume in healthy children," Neuroimage, Vol. 60, No. 1, pp.471-475.
NHK健康|6~8時間が理想?睡眠不足解消につながる適切な睡眠時間とは
Lahl, Olaf, Christiane Wispel, Bernadette Willigens, et al. (2008), "An ultra short episode of sleep is sufficient to promote declarative memory performance," Journal of Sleep Research, Vol. 17, No. 1, pp.3-10.
もの忘れの教室|「もの忘れ」とその原因
リクナビNEXTジャーナル|【精神科医に聞く】あなたにピッタリなストレス解消法はどれ?上手なストレスとの付き合い方は?
椋木修三(2002),『記憶力30秒増強術 大量に正しく一瞬で覚えるコツ』, 成美堂出版.
鳥羽博道(2008),『ドトールコーヒー 「勝つか死ぬか」の創業記』, 日本経済新聞出版.
Forrin, Noah D. and Colin M. MacLeod (2017), "This time it's personal: the memory benefit of hearing oneself," Memory, Vol. 26, No. 4, pp.574-579.
多湖輝(2015),『[新版]ホイホイ記憶術』, PHP研究所.
齊藤勇 監(2016),『本音を見抜く心理学』, 新星出版社.
Ars Technica|Emotions drive stronger memories of later, unemotional events
Tambini, Arielle, Ulrike Rimmele, Elizabeth A. Phelps, et al. (2016), "Emotional brain states carry over and enhance future memory formation," Nature Neuroscience, Vol. 20, pp.271-278.
NIKKEI STYLE|マジカルナンバー7は記憶の番号 仕事情報は塊で把握
AFPBB NEWS|好きな音楽にワクワクする原因はドーパミン、カナダ研究
タウンワークマガジン|集中力アップや暗記力向上に効果的!? 勉強にオススメのクラシック音楽
University of Michigan News|A brain training exercise that really does work

【ライタープロフィール】
佐藤舜

大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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