仕事で同じミスを繰り返しがちな人に向けて

考える女性

ビジネスにおいて、ミスを完全になくすことは理想的ですが、現実的には困難です。しかし、同じミスを繰り返さないことは十分に可能です。その鍵となるのが「なぜなぜ分析」という手法です。

トヨタ自動車から発祥したこの問題解決法は、現在多くの企業で活用されています。単に注意を促すだけでなく、ミスの根本原因を特定し、具体的な対策を立てることができます。

本記事では、「なぜなぜ分析」の実践方法と、これを用いてミスを大幅に削減した事例を紹介します。この手法を習得することで、業務の質と効率を向上させることが期待できます。

ミスを減らし、プロフェッショナルとしての評価を高めたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

なぜ同じミスを繰り返してしまうのか

なぜかいつも同じミスを繰り返してしまう……。

このようなことが続くと、上司から指導されることが増え、次第に自信を失ってしまいます。だからこそ、同じミスを繰り返すという状態はできるだけ避けたいもの。では、どうすればミスを繰り返すのを防げるのでしょうか。

東京大学環境安全研究センター特任研究員の飯野謙次氏は「『注意してください』といった精神論ではミスはなくなりません。」「正しい方法は、一度失敗したら、それをなくすための仕組みをつくること。」だと述べています。*1

ミスをしたとき、誰しも「次は気をつけよう」と思うものです。しかし、そういった気持ちだけではミスを防ぐことはできません。「どうしたらこのミスは防げるのだろうか?」と考え、具体的な予防策を打ち立てることが、同じミスを繰り返さないことにつながるのです。

しかし「ミスを防ぐ方法なんて、なかなか思い浮かばない……」と思う方も多いはずです。急に予防策を考えるのは確かに難しいのですが、ミスをした理由を少しずつ掘り下げていけば、実行可能な予防策を見つけることができます

その方法としておすすめするのが「なぜなぜ分析」です。次項では「なぜなぜ分析」について、具体例を交えながら紹介します。

パソコンで仕事をする男性

「なぜなぜ分析」とは

なぜなぜ分析とはどのような手法なのでしょうか。有限会社マネジメント・ダイナミクス代表で、なぜなぜ分析のセミナーを行なう小倉仁志氏は次のように定義しています。

ミスの原因を「なぜ?」を繰り返しながら論理的に掘り下げ、最終的に同じ失敗をなくす、あるいは失敗が起こりにくくする、失敗による被害の拡大を防ぐといった類の再発防止策(改善策)を導く手法。それが「なぜなぜ分析」である。*2

つまり、ミスが起こったとき、「なぜそのミスが起こったのか?」を繰り返し問うことで、根本的な原因を見つけ、改善するという方法なのです。たしかに、根本的な原因を見つけることができれば、予防策を考えることができます。

ちなみに、株式会社ヴィタミンM代表取締役の鈴木真理子氏によると、なぜなぜ分析は「トヨタ自動車で生まれた問題解決法で、製造過程で生じた問題の原因を突き止め、同じ問題が起こらないようにすることを目的」としています。*3

組織のしくみ改善のために使われてきた方法ですが、もちろん個人のミス防止にも役立てられます。では、自分のミスを防止するためのなぜなぜ分析のやり方を見ていきましょう。

たとえば「資料の提出が間に合わないことが頻繁にある」ということについて、なぜなぜ分析を行ないます。

・なぜ資料の提出が間に合わなくなるのか?
→資料作成に時間がかかるから

・なぜ資料作成に時間がかかるのか?
→見積もっていた時間より、時間がかかってしまうことが多いから

・なぜ見積もっていた時間と実際の作業時間にズレが生じるのか?
→それぞれのタスクにどれだけ時間をかけているか把握できていないから

今回は、3回「なぜ?」を繰り返し、原因を探りました。

その結果、「資料の提出が間に合わない」という問題の背景には「作業時間を正確に見積もれていない」という原因があることがわかりました。予防策の一例として、資料作成をするときは、資料作成に必要なタスクを書きだしたあと、タイマーを使ってそれぞれにかかる時間を計るということが考えられます。

その合計時間をスケジュールに入れて作業をすれば、締め切りに間に合わせることができます。このように、なぜなぜ分析を行なうことで、的確な予防策を見つけることができるのです。

時計

「なぜなぜ分析」を試してみた

筆者が実際になぜなぜ分析を使って、仕事のミスの軽減に取り組んでみました。筆者は記事執筆の際、「同じ誤字を繰り返してしまう」というミスを防ぎたいと考えています。以下のように「なぜなぜ分析」を行ないました。

・なぜ同じ誤字を繰り返してしまうのか?
→文章を書いているときは誤字に気づかず、あとで見直してもすぐに確認できないことが多いから

・なぜ見直しても誤字に気づかないのか?
→自分が書いた文章に慣れてしまい、特定の誤字が見落とされやすいから

・なぜ特定の誤字が見落とされやすいのか?
→自分がよく間違える言葉やパターンを把握していないから

このように「なぜ?」を繰り返し問うことで、「自分がよく間違える言葉やパターンを把握していない」ことが筆者のミスの根本原因であることが判明しました。であれば、これまでに間違えた誤字をリストにして、自分専用の誤字チェックマニュアルを作成すればいいのではないかと思いつきました。

これまで書いた記事のレビューを振り返りながら、Googleドキュメントで自分専用の誤字チェックマニュアルを作成。誤字例の先頭にチェックボックスをつけ、確認したらチェックする仕組みをつくりました。すると、同じ誤字を繰り返すことがぐっと減ったのです。

チェックリスト

「誤字をしないように気をつけよう」「見直しを丁寧に行なおう」と心がけるだけでは、ミスは減りませんでした。しかし、「これまでのミスを書き出して自分専用のマニュアルをつくり、見直しの際にはそれを使う」という具体的な予防策をとれば、同じミスは防げるのだと実感できました。

ミスに対して「なぜ?」を繰り返し問うことで、根本的な原因が明らかになるため、効果的な予防策を立てられるというのが「なぜなぜ分析」のメリットであると感じました。

***
同じミスを繰り返さないようにするには、原因を見つけ、具体的な予防策を立てることがとても効果的です。ぜひ「なぜなぜ分析」を取り入れてみてください。

※引用の太字は筆者が施した

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト