ヒヤリ・ハット活動とは、結果として大事には至らなかったものの、「うわッ、危なかったー!」と思わず言ってしまうようなヒヤリとした体験、ハッとした体験を集めて、ミス防止につなげることです。
主に医療や交通、製造現場などで行なわれている活動ですが、オフィスにおいてもヒヤリ・ハッとすることはたくさんあるはず。
そこで今回は、さまざまなビジネスパーソンが体験したヒヤリ・ハットや、行政機関がまとめた事例、筆者の体験などをもとに、在宅勤務を含んだオフィスのヒヤリ・ハット事例を挙げ、それぞれの対策案を紹介します。
【1】顧客へのメール送信でヒヤリ
特定の顧客にあてた個人データを含むメールを、関係のない顧客にも送りそうになってしまった。
これは、個人情報保護委員会(PPC)がまとめたヒヤリ・ハット事例のひとつ。複数の顧客の連絡先を、メーリングリストの1グループとして登録していた場合の事例ですが、そうした背景がなくても注意が必要です。
【対策案】
- 第三者が承認してからメール送信される、上長承認機能を使う(メール誤送信対策ソフトまたはサービス)
- ポップアップ画面で、送信先や添付ファイルをチェックしてから送信できる機能の活用(メール誤送信対策ソフトまたはサービス)
- 送信取り消し機能を使う(たとえばGmailなら最大30秒まで取り消し可)
【2】パスワードを忘れてヒヤリ
株式会社ワン・パブリッシングが運営する「GetNavi web」には、セキュリティ対策で定期的にパスワードが変わる会社で働く、とあるマネジメント職の体験が紹介されています。
会社の決まりで定期的に変更されるパスワードは、自分では決められないランダムな文字列なので、覚えきれず、わからなくなってしまった。そのため、PCを起動できずに業務が遅れた。
ヒヤリ・ハット事例として挙げているので、なんとか無事だったと思われますが、さぞヒヤヒヤしたことでしょう。
【対策案】
- パスワードが変わるたび、ネットワークにはつながっていない、ロック機能つきのデジタルメモに記録する
- パスワードが変わるたび、手書きでメモ帳などに記録し、鍵のかかる引き出しに保管
- パスワード入力ではなく、顔や指紋などの生体認証を取り入れる
【3】メールの途中送信でヒヤリ
メールの文章をザッと書いたあと、推敲しようとした矢先に送信してしまった。内容的には問題なかったが焦った。
これは筆者の体験ですが、背景には、コピーした文言をショートカットキー「Ctrl+V」で貼りつけたあと、Ctrlキーを押したまま改行してしまい、意図せず送信のショートカットキー「Ctrl+Enter」を押してしまった流れがありました。このヒヤリ・ハット以降は、次を実行しているので安心・安全です。
【対策案】
- メールを完璧に書き終わるまで宛先を入力しない
- テキストエディターなどで完璧に書きあげてからメールに貼りつける
【4】マウスを床に落としてヒヤリ
PCを移動する際にワイヤレスマウスを床に落としてしまった。一時的に動作がおかしくなったが、すぐに直ったのでホッとした。もしも壊れていたら、タッチパッドが苦手なので、その日の仕事はけっこう大変だっただろう。
これも筆者の体験ですが、Q&Aサイト(Yahoo!知恵袋など)にも同様の事例があり、「マウスを落とした」で Google 検索すると、ほかのユーザーがよく検索している関連キーワードとして、「マウス 落とした 反応しない」「マウス 落とした クリックできない」が下方に現れます。体験者は多数!
【対策案】
- 予備のマウスを用意しておく
- マウスがあってもときどきタッチパッドを使い、少しずつ慣れておく
- 小物収納ポケットをPCに貼りつけ、そこに入れて持ち運ぶ
- 衝撃に強いマウスにする
- 薄型マウスにして持ち運びやすくする
【5】タイムカードの不具合でヒヤリ
在宅勤務の際に、勤怠管理ソフトで顔写真つきのデジタル打刻をしようとしたら、急に写真が起動しなくなり、操作しているうちに勤務開始時間ギリギリになってしまった。
これも筆者の体験です。筆者の場合はPCの更新プログラム実施後に、この現象が起こりました。
【対策案】
- 常に始業時間の30分前には、正常に動作するか確認しておく
- PCの更新プログラム実施後は、設定が変わっている場合があるので、1時間前には動作確認しておく
- 正常に機能しそうにない場合は、早めに勤務開始状態であることを上長に報告し、遅刻と判断されないようにする
【6】引き出しにつまずいてヒヤリ
次の事例は、職場のあんぜんサイト(厚生労働省)にも挙げられている、よく知られた事例です。税理士・税理士事務所所長の中村太郎氏も、“一度は見た光景” として紹介しています(経営課題解決型メディア「THE OWNER」内)。
机の一番下の重い引き出しを開けたまま忘れ、不意に立ち上がって移動しようとしたとき、引き出しにつまずいて転倒しそうになった。
【対策案】
- 用事が済んだらすぐ引き出しを閉める習慣が身につくまで、机の上に「引き出しは閉めた?」などと目立つように書いておく
- 引き出し内に派手な色のテープを貼ったり、香り袋を入れたりしておく(視覚と嗅覚への刺激で「開いている」と認識させる)
【7】ケーブルに足を引っかけヒヤリ
立ち上がって移動しようとしたとき、ケーブルに足を引っかけてPCが落ちそうになった。その際に飲み物もPCに倒れそうになり、危うく水没させそうになった。
上記のケーブルに足を引っかける事例は、「GetNavi web」編集部が挙げているものですが、その際の「飲み物でPC水没の危機」は筆者の体験です。ヒヤリというより、血の気が引きました。
【対策案】
- ケーブルが動線に入り込まないよう工夫(できるだけ壁側に)
- ケーブルに目立つ色のマスキングテープを貼っておく
- 貼ってはがせる誘導ステッカー(矢印)を床に貼り、安全な経路を示しておく
- 落下の衝撃にも負けない、丈夫なPCを選ぶ
- 仕事中の飲み物はペットボトルか水筒(漏れ出ないフタつき)限定
【8】メモを紛失してヒヤリ
上司からの頼まれ事をメモした紙を紛失してしまった。用事自体は簡単なことだったので記憶できていたが、もっとたくさん頼まれていたら忘れていた。
電子機器開発事業を行なうワコムが「メモに関するアンケート(※)」を実施したところ、さっと書いたメモがどこかに行ってしまった、あるいはノートのどこに書いたかわからなくなってしまった経験がある人は6割以上いたそうです。ちなみに上記は、筆者がかなり前に体験したヒヤリ・ハットです(※20~50代の男女360人が回答。実施はアンケートコミュニティの「アンとケイト」)。
【対策案】
- 紛失しやすいメモではなくノートや手帳に書いて、最新のものには付箋で目印をつけておく。
- 手書きメモを保存できる、デジタルメモパッドなどに書く
その他のヒヤリ・ハット
ほかにも、こんなヒヤリ・ハット事例があります。前出のGetNavi web や、個人情報保護委員会(PPC)が挙げた事例を参考にしました。
- 情報収集中に怪しいサイトを開きそうになり、慌ててページを閉じた
⇒危険なサイトへのアクセス前にブロックしてくれるセキュリティソフトをインストール - 在宅勤務中、ちょっと目を離したすきに家族がPCを使っていた
⇒大事なファイルは非表示に設定する
⇒ログインパスワードを設定し、席を立つときは以下ショートカットキーで必ず即ロック
【Mac】control + command + Q で即ロック
【Windows】Windowsキー + L で即ロック - 顧客にメールでイベント案内を送る際、BCCではなくCCに宛名を入力して送信しそうになった
⇒大量のメールアドレスを指定した場合、アドレスがBccに強制変換されるサービスを取り入れる
いろいろと気をつけましょう!
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職場に潜むヒヤリ・ハット事例(オフィス版)と、対策案を紹介しました。よろしければ参考にしてくださいね。
(参考)
GetNavi web ゲットナビ|富士通FMVなら「ミライセキュリティ」「タフネス」で安心! ビジネスパーソンに直撃レポート! 私のPCヒヤリハット体験
株式会社 日立ソリューションズ・クリエイト|リスクを低減! パスワードの適切な管理方法
THE OWNER|ハインリッヒの法則活用で重大事故を防ぐ!よくある3つの間違いを解説
個人情報保護委員会 - PPC (PDF)|個人情報保護法 ヒヤリハット事例集
アスピック|今すぐできる対策も!メール誤送信防止ツール10選と9機能
職場のあんぜんサイト(厚生労働省)|ヒヤリ・ハット事例(転倒)
Wacom|どこに書いたか6割の人は忘れている?メモの実態
メール誤送信対策の決定版 CipherCraft/Mail|上長承認
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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