「先が見えず、出口のないトンネルにいるように感じる」
「自分の感情に振り回されて、いつも自己嫌悪……」
「ストレスに耐えられない。そんな自分を責めてしまう」
落ち込んだり、焦ったり、イライラしたり……。このような状態が続くと、心が疲れて、仕事に集中できなくなってしまいますよね。
一方でまわりには、仕事ができていつも余裕がある人もいるもの。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、現在はエグゼクティブコーチとして活動する大嶋祥誉氏によると、「マッキンゼーの先輩」などの仕事ができる人は「例外なく感情が安定し」ていたそう。(カギカッコ内引用元:プレジデントオンライン|何が起きても平常心…マッキンゼーのエリートが実践する「些細な問題で悩まなくなる」4つの基本原則)
自分も気持ちにゆとりをもちたい。ストレスに振り回されない、安定した心が欲しい――そんなあなたのために、マッキンゼー出身の一流コンサルタントが実践するストレスマネジメント法を、筆者の実践を交えて紹介していきます。心を疲れさせずに仕事に打ち込むための参考にしてみてください。
1.「空・雨・傘」思考で「根本問題を解決」する
仕事が思うようにいかなくて悩んだり、焦ったり、イライラしたり。感情が乱れているときほど、私たちは表面的な問題にばかり目が奪われがちです。そんなとき、感情を乱れさせる根本原因はなんなのか――この点を見落としている可能性があります。
たとえば、あなたがいくらこなしても減らない仕事にストレスを抱えているとしましょう。仕事をひとつでも多くこなすために残業したり、休日を返上したりして対応するのは、“仕事が終わらない” という表面的な問題に対応しているに過ぎません。
というのも、もしかすると、あなたの多忙の背景には以下のような原因が潜んでいるかもしれないからです。
- 上司が、あなたの抱えている仕事量を把握しないまま、仕事を振っている
- 慣例となっているだけで本当はやらなくてもいい業務が、あなたの仕事をひっ迫させている
仕事が多すぎる理由をつきとめれば、仕事を減らすための具体的な対策をとれるようになります。仕事が減れば、ストレスも解消されますよね。つまり、根本の原因がわかれば、感情の乱れに対する解決法も自然と見えてくるのです。
前出の大嶋氏は、マッキンゼーにいる、どんな状況でも平常心で仕事できる人の特徴として、「悩みを『解決すべき問題』」としてとらえる力が高いと述べています。問題としてとらえれば、あとはその問題を解決すればよいだけ。
逆に、「感情の乱れは、内在している問題を明確にすることができていない」ことの表れなのだとか。
そこで有効になると大嶋氏が語るのが、マッキンゼーで実際に行なわれている「『空・雨・傘』の思考」です。空・雨・傘の意味はそれぞれ以下のとおり。
「空」⇒「現状がどうなっているか」=「事実」
「雨」⇒「現状が何を意味するのか」=「現状の解釈」
「傘」⇒「意味合いから、では何をするのか」=「解決策」
つまり、現状をふまえると何が言えるのか、そしてどうすべきなのか――を考えるという思考法なのですね。
(ここまでの大嶋氏の解説について、カギカッコ内引用元:同上)
筆者はこれまで、資格試験の勉強をするなかで、「勉強が思うように進んでいない」と感じて不安感に支配されてしまうことがよくありました。振り返ってみると、感情の背後にある問題を正しく認識しようとしておらず、ただ漠然と不安な気持ちになってしまっていたようです。
そこで以下のように、資格試験勉強の不安をどう解決するか、空・雨・傘の思考で考えてみました。
空(現状)⇒ 来年に控えている資格試験の範囲がかなり広いのにもかかわらず、勉強が思うように進まない。そのため、不安を感じている。
雨(現状が意味すること)⇒ すきま時間に勉強しようと思っても、仕事が長引いてできないことが多い。スケジュールの読みが甘く、やりたいこととできることの整合性がとれていない。
傘(解決策)⇒ 時間をしっかり確保できる日とそうでない日とで、勉強の量・やり方を変える。
空・雨・傘の思考を実践してみると、「時間を確保できない日はどういう勉強をするか考える」というように、いまできることが明確になりました。新たな道筋が見え、一歩踏み出せたように感じます。
今回筆者は、空・雨・傘の思考を “勉強にまつわる不安” について実践しましたが、もちろん、“仕事のストレス” などに置き換えることもできるでしょう。
感情の乱れは抱えている時間が長ければ長いほど、肥大化していくもの。手をつけられなくなる前に、空・雨・傘の思考で問題の根本をクリアにしてみてはいかがでしょうか。
2.「日記」をつけて「感情の傾向」をとらえる
仕事や勉強にいつでも打ち込めるように感情を安定させたいなら、自分はどんなときに感情が乱れやすいのかを知ることは有効なはずです。
「こんな出来事があると、自分は動揺しやすい」
「毎年この時期には、感情の波が激しくなる」
このように自分の感情の乱れの傾向がわかれば、「意識的にリラックスタイムをとろう」「仕事を詰め込みすぎないようにしよう」などの対策が事前にとれるからです。
自分の感情の乱れを客観的にとらえる方法としては、日記がおすすめ。
マッキンゼー・ヘルス・インスティテュート共同リーダーのジャクリーン・ブラッシー氏と、マッキンゼー・アンド・カンパニー シニアパートナーのアーロン・デ・スメット氏は、日記を書くことで「自分の感情的反応に気づきやすくな」り、「自分の感情を制御することが可能になる」と述べています。(カギカッコ内引用元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|変化が最も必要な時、過去に縛られずに前進するための方法)
筆者も、「100年日記」というアプリで日記をつけています。1年前の今日、2年前の今日という具合で読み返すことが可能。「この時期はいつも落ち込んでいる」「いつも似たような状況で悩んでいる」というように自分の傾向に気づくのに役立っています。
日記がストレスマネジメントに役立つことは、2018年にペンシルベニア州立大学で行なわれた研究でも明らかになっています。その研究によれば、「週に3回、1回15分を日記を書くことに費やした被験者は1カ月後、不安が減り、回復力が高まった」のだそう。(カギカッコ内引用元:Business Insider Japan|専門家がアドバイス! ストレスを和らげる、シンプルかつ効果的な15の方法)
日記には、感情の傾向がわかり、感情の乱れに対する事前の対策がとりやすくなるだけでなく、不安の軽減にも役立つのですね。
ただ、1回15分と聞くと「結構時間かかるな......」と感じてしまったり、そもそも日記を継続できるかどうか不安になったりする人もいるでしょう。
そんなふうにハードルを感じてしまう人も安心してください。日記に費やすのは、短時間・短期間でもいいのです。ブラッシー氏とスメット氏も、ストレスマネジメントのための日記は「ごく短期間でもよい」と言い、「記述の積み重ねを通じて、何らかのパターンが見えてくるだろう」と述べています。(カギカッコ内引用元:前出の「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」記事)
また、短時間で日記を書くなら「3行日記」がおすすめ。自律神経研究の第一人者であり、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏が紹介しているもので、「怒りやいらだちの感情を整理」できるそうです。
筆者も実践したことがあるのですが、以下のポイントについて1日たった3行書くだけでよいので、5分以内で気軽に取り組め、続けやすいというメリットがあります。
(1)今日、一番イヤだったこと
(2)今日、一番うれしかったこと
(3)明日の目標
(カギカッコ内含む引用元:東洋経済オンライン|イライラ・怒りが減る「1日3行日記」のすごい効果)
実際に、筆者が書いた3行日記がこちらです。
この3行日記、じつは書き出す順番にも意味があります。
嫌だったことを書き、嬉しかったことに目を転じて、明日の目標を書くという流れは、「何にストレスを感じたのかを知」ったあと、「気持ちを切り替え」て、「未来に目を向けてすっきりした状態で1日を終える」という流れを構成しているのです。(カギカッコ内引用元:同上)
それぞれの行ごとに、筆者が実践してみて感じたメリットがありました。以下のとおりです。
- 1行め:ストレスの正体に気づくことができ、前出の「空・雨・傘」思考での問題解決への足がかりとなる
- 2行め:この行に書き込むために、嬉しいことを探しながら1日を過ごせる
- 3行め:設定した目標を意識して1日を過ごせるので、前日よりもよりよく過ごせたように感じる
さらに、毎日自分の気持ちを振り返ったことで感情の変化に気づきやすくなり、「知らないうちにストレスがたまった」と感じることも減りました。
「ストレスは我慢するもの、我慢できない自分が悪い」と自分を責めてしまう人は、日記で自分の感情を整理してみると、解決の糸口が見えてくるかもしれません。
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一流ビジネスパーソンのストレスマネジメント法は、私たちでも取り入れられるものであることがわかりましたね。本記事が、ストレスで心が疲れると感じているみなさんの参考になれば幸いです。
プレジデントオンライン|何が起きても平常心…マッキンゼーのエリートが実践する「些細な問題で悩まなくなる」4つの基本原則
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|変化が最も必要な時、過去に縛られずに前進するための方法
Business Insider Japan|専門家がアドバイス! ストレスを和らげる、シンプルかつ効果的な15の方法
東洋経済オンライン|イライラ・怒りが減る「1日3行日記」のすごい効果
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。