「右脳を鍛える」効果とは? クリエイティブになれる3つの方法

右脳を鍛える方法-01

「右脳を鍛える」とは何を意味しているのでしょうか? 「右脳が発達している人は創造性が高い」という言説を耳にしたことがあるかもしれませんね。このような話を聞くと、ふだん平凡なアイデアしか浮かばなくて困っている方は「よし、右脳を鍛えよう」と思われるかもしれません。

しかし、ちょっと待ってください。「右脳」を鍛えても、あまり効果はないかもしれません。今回は「右脳を鍛える」ことについて考えたいと思います。

そもそも「右脳」とは?

「右脳を鍛える」ということについて考察する前に、そもそも「右脳」とは何かを明らかにしたいと思います。まず、脳は脳梁(のうりょう)という深い溝を挟んで右と左に分かれていますこの右側が右脳です。

そして、右脳と左脳に関しては有名な言説があります。皆さんもご存じかと思いますが、「右脳は創造性を司っており、右脳が発達している人は創造性が高い」というものです。

しかしながら、脳科学者の中野信子さんによると、この言説は迷信に近いのだそう。中野さんはその根拠として、次のように論文を紹介しています。

右脳人間、左脳人間というのはいないのだということを示した論文があります。2010年『PLoS ONE』という雑誌に掲載されたものです。この研究では、2年間にわたって、7歳~29歳までの被験者1,000人以上の脳の神経活動を比較検討しています。
7,000以上の区域に脳の領域を分けて、そのデータ画像から右脳・左脳の機能に個人差があるかどうかということを調べたんです。メタアナリシスというのですが、この解析の結果、右脳・左脳の機能分化に有意な個人差はないということがわかりました。

(太字による強調は編集部が施した)
(引用元:logmi|脳科学者・中野信子氏が暴く「右脳人間はクリエイティブ」という俗説の嘘

右脳の能力に個人差はないため、「右脳が発達しているからこの人は○○だ」という主張は成り立たないのです。つまり、「右脳を鍛える」ことで高い創造性を獲得できるわけではないといえるでしょう。

右脳を鍛える方法-02

「右脳を鍛える」ことに効果はあるの?

先ほど紹介した通り、「クリエイティブな人は右脳が発達している」などの言説に科学的根拠はありません。脳科学者・澤口俊之氏は「『右脳を鍛える』は意味不明な文言」だとすら述べます。

「左脳と右脳を鍛えられる」とか「右脳の開発」というのは、脳科学的には意味不明ですし、私を含めた多くの脳科学者はこの言い方を聴くだけで「オカルトに近いなぁ」と思う(というか、呆れる)はずです。

(太字による強調は編集部が施した)
(引用元:Tomoe MI Academy|そろばんは子どもの地頭を良くする

とはいえ、俗にいわれる「右脳」とは、クリエイティビティや柔軟な発想ができる能力のアイコン。だとすれば、「右脳を鍛える」を「クリエイティビティを鍛える」と言い換えることは可能でしょう。そこで、「右脳を鍛える方法」として、クリエイティビティを発揮しやすくなる方法をご紹介することにします。

右脳を鍛える方法-03

「右脳を鍛える」方法1:ブルーライトを断ってリラックスする

「右脳を鍛える」――つまり、優れたクリエイティビティを獲得するにはどうすれよいのでしょうか? 神経科学者ロジャー・ビーティさんらの研究によると、「創造性の高い脳」においては3種類のサブネットワークが活発になるそうです。それぞれのサブネットワークを説明し、機能を向上させるためにはどうすればよいかを紹介してゆきます。

創造性の高い脳で活発になっているサブネットワークの1つ目が、デフォルト・モード・ネットワーク(Default mode network)です。これは、思考・関心・注意を伴わない、安静時の「基礎状態」とも呼べる脳の活動を意味します。

これは空想に耽ったり、白昼夢を見るときなどに活動的になるといわれ、独創的なアイデアを考えつくためのブレインストーミングで重要な役割を果たすと研究者たちは考えている。

(太字による強調は編集部が施した)
(引用元:WIRED|「クリエイティヴ」な人々は、脳のネットワークも“独創的”だった:研究結果

このようにデフォルト・モード・ネットワークが働くのは、何もせずにボーっとしている状態です。お風呂に入ってリラックスしたときなどにアイデアが降りてくることはよくありますよね。何もせずダラダラする時間は、創造性の高い脳を作ってくれるのです。

ただし、ダラダラするときにTwitterなどを見ることはよくありません。脳の安静状態を作るためには目を休ませることが必要だからです。精神科医の樺沢紫苑さんは次のように述べています。

脳は、キャパシティの90%を視覚情報の処理で使っているといいます。つまり、スマホ、パソコン、ゲーム、テレビなどの視覚情報を酷使する娯楽は、ものすごく脳に負担をかけるということです。

(太字による強調は編集部が施した)
(引用元:新R25|スマホを触るのが一番ダメ。精神科医が教えてくれた、脳に効く「いいダラダラ」

「右脳を鍛える」ために、目を閉じて少し休んでみてはいかがでしょう。

右脳を鍛える方法-04

「右脳を鍛える」方法2:軽い運動をする

「右脳を鍛える」のに必要な3つのサブネットワークのうち2つ目が、実行機能ネットワークです。実行機能とは、私たちが行動を選択して、行動し続けようと集中するための機能です。

実行機能とは、自己の目標に沿って行動や思考を選択・制御する能力を指す。例えば、集中したり、注意を払う必要がある時、あるいは機械的に作業したり直感に頼って行動することが困難である際に、実行機能の働きが必要とされる。

(引用元:田中圭介, 杉浦義典 (2015), 「実行機能とマインドフルネス」, 心理学評論58巻, 1号, pp. 139-152.)

この実行機能を担っているのは、脳の前頭前野です。したがって、前頭前野の機能を向上させることで、創造性の高い脳を作ることができます。筑波大学の征矢英昭さんらの研究チームは、「簡単な運動が前頭前野の実行機能を向上させる」と報告しています。

筑波大学体育系・征矢英昭教授らの研究チームは、2014年に、短時間(10分程度)の軽運動(ウォーキング・ヨガ・太極拳など)が、前頭前野の実行機能を向上させると明らかにしています。

(引用元:Study Hacker|同じミスばかりの人は「前頭前野」を鍛えなさい。“10分散歩” と “紙の辞書” が脳に効く。

休憩時に10分間だけ社内や近辺をウロウロしてみるのもいいかもしれませんね。ちょっと体を動かすことが「右脳を鍛える」ことにつながります。

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「右脳を鍛える」方法3:マインドフルネスをやってみる

「右脳を鍛える」ためのサブネットワークのうち、3つ目が顕著性ネットワークです。

「顕著性ネットワーク」とは、重要とみなされた出来事に注意を集中させ、人がそれに関わる行動を成し遂げるようにすることのできる結合ネットワークだ。

(引用元:WIRED|「ゲーム依存の人の脳」が得意なこと、苦手なこと

つまり、顕著性ネットワークは、ボーっとしている脳の状態(デフォルト・モード・ネットワーク)から、1つの行動に集中した状態(実行機能ネットワーク)へと切り替える働きを持つのです。

では、顕著性ネットワークの機能を向上させるためには、何を行えばよいのでしょうか? これまでに行われてきた研究によれば、マインドフルネスによって顕著性ネットワークをつかさどる領域の脳構造に変化が現れたのだそう。そのことから、東京学芸大学の心理学者である関口貴裕さんは、マインドフルネスによって、制御性ネットワークの機能を向上させているのではないかと考察しています。

マインドフルネスは、「今この瞬間に気づくこと」を指します。禅僧であり、精神科医でもある川野泰周さんは、次のようなマインドフルネスのやり方を紹介しています。

  1. 椅子に浅く腰掛けるか、床にあぐらや座禅の姿勢で楽に座る。
  2. 呼吸は口でも鼻でも、自然に行えるほうを選択する。
  3. 目は半眼で、数メートル先の床を見るようにする。
  4. 2、3回深呼吸する。
  5. 息を吸って吐く様子を客観的に観察する。難しい場合は、胸やお腹が呼吸に応じて動くのを感じる。

川野さんによれば、マインドフルネスの所要時間は決まっていないのだそう。大事なのは繰り返して、習慣化していくことです。忙しいときは、ひと呼吸だけでも行ってみてはいかがでしょうか。「右脳を鍛える」ため、マインドフルネスを始めてみましょう。

***
「右脳を鍛える」いうのは非科学的な表現だけれども、クリエイティビティを鍛えることは可能であり、そのためには3種類のサブネットワークを活性化する必要があることを紹介しました。サブネットワークを活性化させるには、以下の3つの方法がおすすめです。

  1. ブルーライトを断ってリラックスする
  2. 軽い運動をする
  3. マインドフルネスをやってみる

ぜひ試してみてくださいね。

(参考)
Study Hacker|同じミスばかりの人は「前頭前野」を鍛えなさい。“10分散歩” と “紙の辞書” が脳に効く。
Study Hacker|なにかを「じっと見つめる」だけ!? たった10秒で集中力を取り戻す “びっくりするほど簡単な” 方法
logmi|脳科学者・中野信子氏が暴く「右脳人間はクリエイティブ」という俗説の嘘
Tomoe MI Academy|そろばんは子どもの地頭を良くする
WIRED|「クリエイティヴ」な人々は、脳のネットワークも“独創的”だった:研究結果
新R25|スマホを触るのが一番ダメ。精神科医が教えてくれた、脳に効く「いいダラダラ」
筑波大学|お知らせ・情報|注目の研究|短時間の軽運動で記憶力が高まる! ~ヒトの海馬の記憶システムが活性化されることを初めて実証~
読むらじる。|実践!マインドフルネス① 「呼吸瞑想」
関口貴裕(2015),「マインドフルネス・トレーニングは実行機能の何を変えるのか:―田中・杉浦論文へのコメント―」, 心理学評論58巻, 1号, pp.153-159.
田中圭介, 杉浦義典 (2015), 「実行機能とマインドフルネス」,心理学評論58巻, 1号, pp. 139-152.
Byun, Kyeongho, Kazuki Hyodo, Kazuya Suwabe, Genta Ochi, Yosuke Sakairi, Morimasa Kato, Ippeita Dan, and Hideaki Soya. (2014), “Positive effect of acute mild exercise on executive function via arousal-related prefrontal activations: An fNIRS study,” NeuroImage, Vol. 98, pp. 336-345.
Hasenkamp, Wendy, and Lawrence Barsalou. (2012), “Effects of Meditation Experience on Functional Connectivity of Distributed Brain Networks,” Front Hum Neurosci, Vol. 6, No. 38, pp. 1-14.

【ライタープロフィール】
村瀬裕一
早稲田大学先進理工学部生命科学科所属。松本深志高校出身。大学では細胞の微小管について勉強している。学内有数の出版サークルに所属し、雑誌制作にかかわる。

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