【実践】京大式カードで解決する|読書ノートが続かない人のための実践ガイド

開いた状態で置かれている本

「読書をしても肝心の覚えたかったところをいつも忘れてしまう……」
「読書ノートを作っても、面倒でノートを見返さない……」読書をするうえで上記の悩みに直面していませんか? 読書内容をしっかり覚えられる記憶力があれば……と思う人も少なくないはず。

▼京大式カードのポイント
・B6サイズの手軽さで、すきま時間に復習可能
・1テーマ1枚で必要な知識にすぐアクセス
・24時間以内の復習で記憶の定着率アップ
・自分の考察を書き加えて知識が深まる

本記事では、こうした特徴をもつ「京大式カード」の活用法と実践例をご紹介します。ビジネス書から専門書まで、読書の効果を最大化するテクニックをお伝えしましょう。

読書内容を定着させるには「要約」と「復習」

本を読む行為は受動的なものです。ですが、本の内容を定着させるためには「受動的な読書」から「能動的な読書」へ変える必要があります。そこで重要なのが「要約」「復習」です。

なぜ、「要約」が必要なのでしょう? 教育心理学専門の学術雑誌「Educational Psychology Review」に掲載された研究報告(2014)では、5つの実験を通して、要約作業の効果が記されています。その興味深い効果は次の2点。

  • 要約することで、記憶の定着に効果が見込める
  • 要約すれば、どれだけ学べたのかを把握できる*1

そもそも、文章を理解できなければ要約はできません。要約は「読み解く→自分で解釈する→情報の取捨選択をする→自分の言葉で言い換える」の過程を経て、初めて完成するもの。つまり、脳を十分に活用するため、記憶に残りやすいのです。

ただ、研究報告によると、要約がもっとも効果的な学習法とは言えないようです。復習と要約を比較しても、要約のほうが優れた効果があるとは判明していません。*1 であるなら、要約と復習を組み合わせれば、より効果が期待できるのではないでしょうか。

昭和大学客員教授で脳内科医の加藤俊徳氏は、人間の脳は何かを覚えることが不得意であり、忘れることがほとんどだと述べます。加藤氏が根拠として引用するのが、ドイツの心理学者エビングハウス博士による実験結果です。

被験者に意味のない単語を10個覚えてもらい、時間の経過とともにどれくらい忘れたかを調べると以下の結果が判明したのです。

結果は、記憶力に自信がある人もない人も、1時間後には半分忘れていました。24時間後には7つ忘れ、48時間後には8つの単語を忘れていました。

つまり、単純に考えれば1日後には7割、2日後には8割の量を忘れていることになります。この実験では「意味のない単語」でテストしたため、特に自分の知らない分野の勉強をする際に同じ現象が起こると言えるのではないでしょうか。

ですが、「復習を繰り返す」ことで記憶の忘却を防ぐことができます。前出のエビングハウス博士の実験によると、

1回復習すると7個、2回復習すると9個まで覚えていることができ、復習によって記憶の定着率が上がることが示されています。

2回の復習でほとんどの単語をリカバリーできたのです。この結果から加藤氏は、「まずその日のうちに復習する」ことを勧めています。*2 記憶が薄くなりかけたうちに、知識を塗り重ねるイメージで復習を繰り返すのが大切なのですね。

手の上に脳が浮かんでいるイメージ

「読んでも覚えていない」を解決する「京大式カード」とは

これまでの内容をふまえて、勉強用の読書に役立てたいのが「京大式カード」です。京大式カードとは、B6サイズのカードに情報を記録して整理するというもの。元京都大学教授の民俗学者・故梅棹忠夫氏が、1969年に上梓した著書『知的生産の技術』(岩波新書)のなかで「京大式カード」と紹介しました。もともとは、調査研究での情報を記録するために、考案されたものなのです。*3

京大式カードの特徴は、

  • コンパクトなB6サイズのカードおよびノート
  • カードごとにふさわしいタイトルをつける
  • 出典を明記する *4

普通のノートと違うのは、ノートにすべての内容を詰め込むのではなく、情報ごとにカードを分けて記入するところ。たとえば、ファイナンスの本であれば、「フリーキャッシュフロー」「WACC」「レバレッジ効果」……と、それぞれのテーマごとに、1枚のカードを使うイメージでしょうか。

📝 効果的な京大式カードの書き方

1 タイトルのつけ方
  • 後で探しやすい具体的な言葉を選ぶ
  • 章のタイトルそのままではなく、内容を端的に表現
  • 関連カードがある場合は番号や記号をつける
2 カードの構成
上部: タイトル、著者名、書名、ページ数
中央: 本文の要約(箇条書きや図解を活用)
下部: 自分なりの解釈や疑問点
3 要約のコツ
  • 文章は短く簡潔に
  • 図や表で視覚的に表現
  • キーワードを強調
  • 余白を活用して後から書き足せるように

1枚のカードにひとつのテーマをまとめる必要があるため、前項で説明した「情報を要約をする」必要があります。同時にB6サイズのノートをやや大きめの暗記カードと考えれば、どこでも持ち歩けますし、手軽に復習もできると言えるでしょう。

ノートを開いて書き込んでいる様子

勉強用の読書に「京大式カード」を活用してみたら

試しに筆者が京大式カードを、勉強用の読書に活用した実践例を紹介いたしましょう。

👉 京大式カード作成の良い例・悪い例

× 悪い例

タイトル:デザイン思考について

デザイン思考とは、デザイナーが物事を考えるときの考え方のことで、具体と抽象を行き来しながら、革新的なアイデアを生み出すプロセスである。デザイン思考は5つのステップで構成される。それは共感、問題定義、創造、プロトタイプ、検証である。まず共感では...(延々と本文をコピー)

  • ✗ 本文をそのまま写している
  • ✗ キーワードが埋もれている
  • ✗ 自分の考察がない
良い例

タイトル:デザイン思考の5ステップ

[特徴]
• 具体⇄抽象を行き来
• 革新的アイデア創出
• 反復的プロセス

[5つのステップ]
1. 共感:ユーザー理解
2. 問題定義:本質的課題
3. 創造:アイデア出し
4. プロトタイプ:形にする
5. 検証:改善点発見

[考察]
論理思考との併用で効果的?

  • ✓ 箇条書きで簡潔に
  • ✓ 構造化して整理
  • ✓ 自分の考えを追記
💡 実践のポイント
  • 要点を3~5個に絞り込む
  • 図や矢印を使って関係性を示す
  • 必ず自分なりの疑問や気づきを書き添える

‟京大式カード”とはいえ、用意したのはB6サイズのダブルリングノート。ノートならパラパラとめくりながら読めるため、移動中でも復習できると考えました。罫線は横ですが——

横向きに置いたノート

ノートを上記のとおり、横向きに使います。理由は横幅があれば、図を描きやすいと考えたため。

選んだ本は「デザイン思考」(日本経済新聞出版)。ロジカルシンキングを学んだあとだったため、対照的なデザイン思考を勉強し、思考のパターンを掘り下げようと考えました。

「デザイン思考」(日本経済新聞出版)の表紙

京大式ノートにまとめたい箇所は付箋を貼っています。まずは論理思考とデザイン思考の違いに関してノートにまとめたのがこちら。

ノートにまとめた様子

本では約1ページを埋める文章で説明されていましたが、両方の特徴を箇条書きにして並べてみると、その違いが視覚的にわかります。論理思考を「具体」とし、デザイン思考を「抽象」とするのなら、具体と抽象を行き来するイメージで両方を使いこなすのでは? と、筆者の考察が膨らみました。

「B6サイズ」に情報を圧縮すれば、効率的に覚えられる

これまで読書ノートを作成しても、振り返って読むことが少なかった筆者。しかし、京大式カードの実践を通じて、このB6サイズならではの価値に気づくことができました。その具体的なメリットを、3つの観点からご説明しましょう。

💡 B6サイズで実現する効率的な学習法

1 情報の取捨選択力が磨かれる

限られたスペースだからこそ:

  • 本当に重要な情報を見極められる
  • 無駄な情報を削ぎ落とせる
2 ピンポイントの復習が可能に

テーマごとに整理されているため:

  • 必要な知識にすぐアクセス
  • 短時間で効率的に復習
3 知識が深まる仕組み

余白があることで:

  • 自分の考察を書き加えられる
  • 理解が深まり知識が定着

まとめ: B6サイズという「制約」が、かえって効率的な学習を可能にしています。情報を厳選し、テーマごとに整理し、自分の考えを加えることで、確実な知識の定着へとつながるのです。

 

***
読書ノートを作成するのは遠回り……と思っている人でも、京大式であれば気軽に取り組めるのではないでしょうか。要約と復習を組み合わせて、ぜひ読書で成長しましょう!

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト