【実践】ビル・ゲイツの「攻めの読書術」を試してみた

読書している女性

「多読しても、成長している実感が得られない……」
「本を読んでも、内容をすぐに忘れてしまう……」
このように、読書習慣はあっても、その効果に疑問を感じている方は多いはず。

では、真の成功者たちは読書をどのように活用し、自己成長につなげているのでしょう。本記事では、その答えのひとつとして、マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ氏の読書術を紹介。筆者も実際に勉強用の読書で試してみました。

【この記事の要約】

  • マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツ氏の読書術「本にメモを書き込む」方法を紹介
  • 本にメモを書き込むことの効果は「精緻化」と「情報を一箇所にまとめられる」こと
  • 「攻めの読書術」を実践してみたら、「理解/集中」の度合がわかった

ビル・ゲイツの「攻めの読書術」とは?

マイクロソフト創業者であるビル・ゲイツ氏の名前を知らない人はいないでしょう。成功者としても慈善家としても知られている彼は、年間50冊の本を読む読書家でもあります。

彼の知性を支えているのは「攻めの読書術」。それは、本に直接メモ書きをする方法です。ゲイツ氏は、本に直接メモ書きすることによって、本当に注意して読んでいるかどうかを確認できると語ります。

Particularly if it's a nonfiction book, are you taking in new knowledge and sort of attaching [it] to knowledge you have? For me, taking notes helps make sure that I'm really thinking hard about what's in there.

(特にノンフィクションの本を読むとき、新しい知識を自分の持っている知識に結びつけていますか? 私の場合、メモを取ることで、本の内容をしっかり考えているかどうかを確認できます)*1 ※和訳は筆者が補った

つまり、本に残すメモの量は、読書への集中度と理解度を示すバロメーターとなると言えるでしょう。

メモしながら読書している様子

「本に直接メモをとる」方法が効果的な理由

読んだ本の内容をノートに記録する「読書ノート」を実践している方は多いかもしれません。たしかに読書ノートは本の要点をまとめたり、印象に残った箇所を記録したりするのに便利な方法ですが、ビル・ゲイツ氏の「攻めの読書術」には、特有のメリットもあります。ふたつに分けてご紹介しましょう。

「精緻化」によって学習内容が定着する

ひとつは、「精緻化」です。一見、難しい言葉に思えますが、認知心理学の専門家、大阪大学名誉教授の三宮真智子氏によれば、精緻化とは「自分の過去経験やすでに自分が知っていることと関連づける」こと。*2

具体例を挙げましょう。「初頭効果」という言葉があります。これは、最初の印象で物事の好き嫌いを判断してしまう傾向のことです。たとえば、筆者は小説や映画を楽しむ際、最初に何かの事件が起きる、いわゆる起承転結の「転」から始まるような作品に惹かれます。そのような作品は、次の展開が気になり、優先的に鑑賞してしまうのです。これは、初頭効果が働いている例と言えるでしょう。

このように、新しく学んだ概念を自分の経験や既存の知識と結びつけることで、身近に感じられるようになります。三宮氏も、このような精緻化を行なうことで、学習内容が「理解しやすく忘れにくく」なると語ります。*2

前項でビル・ゲイツ氏が述べていた、「新しい知識を自分の持っている知識に繋げる」ことがまさに精緻化と言えるでしょう。直接本に書き込む「攻めの読書術」であれば、本を読んだ瞬間に思い浮かんだ自身の経験を忘れずに書き留められる——つまり精緻化することができるのです。

情報を一箇所にまとめられる

ふたつめの利点は、「情報を一箇所にまとめられる」ところです。

金沢工業大学客員教授、文筆家の山本貴光氏は、以前ノートに読書のメモをとっていたところ「本文とメモがバラバラ」で、「泣き別れたメモ書き」が多かったのだそうです。試行錯誤の末、たどり着いた方法が「本に直接メモを書く」こと。

いろいろ試した揚げ句、本の余白に書くのが一番だ、と最もシンプルなやり方に辿り着きました。本自体がどこかへ行かない限りは書いたことも残るので、探し物をするうえでもこのやり方が効率的なんですよ  *3

もちろん、図書館で借りた本にはメモ書きはできません。でも、勉強用に購入した本なら、直接書き込んでしまうほうが、一冊の本に情報も自分の考えも収めることができます。ノートを用意する必要も、書き写す手間も省けるので、経済的にも効率面でも理にかなった方法と言えるのではないでしょうか。

これらのメリットを考えると、「本に直接メモをとる」方法は、より深い理解と内容の定着を促す効果的な読書法だと言えます。

本の上にペンが置かれている

ビル・ゲイツの読書術を勉強用の読書に活用してみた

実際に、ビル・ゲイツ氏の読書術を勉強用の読書で試してみました。選んだ本は「CFO思考」(ダイヤモンド社)。思考術に関して学びを深めたいと思っていたところ、書店で見つけた本です。CFO思考とは、筆者にとって目にしたことも聞いたこともない新しい分野です。

「CFO思考」(ダイヤモンド社)の書影

考察や疑問点を分けるために、次のように色分けして実践します。

  • 気づきや考察→青ペン
  • 疑問点→赤ペン

日頃、図書館の本を中心に読む筆者。そのため、本に直接メモを書くことには抵抗があり、慣れないものの……スペースがとれる上下の余白に、新しい知識に関しての簡潔なメモを記入しました。

書籍に書き込んだ様子

筆者にとって新しい分野であるため、あまりメモを充実させることはできませんでしたが、実践するうちに本に書き込むことにためらいがなくなりました。

実践後のページ全体像

あとで見返せば、「考えたこと/疑問に感じたこと」など、読書中の自分の思考を振り返ることができそうです。

読書に対する集中具合がわかる!

ビル・ゲイツ氏の「本に直接メモをとる」方法を実践すると、自分の「集中度/理解度」がはっきりわかります。なぜなら、本にメモを書き込む際には、新しい知識と自分の経験や知識をつなぎ合わせる必要があるからです。

最初、筆者は読みながら「考察や気づきが思い浮かばない……」と感じていました。おそらく、慣れない分野の本なので読んでも理解度が追いつかなかったのでしょう。しかし、本を読み進めるにつれて、著者の意見や本の内容を掴めるようになると、メモの量が少し増えました。これは、慣れない分野の本に慣れて集中力が高まった証拠だと思います。

何より「本に直接メモを書き込む」読書術には、本一冊のみで完結するメリットがあります。ノートに自分の考察を書き写す必要がないため、読了した本一冊を読み返せば、本の内容と同時に自分の考えや気づきが見られるのです。

注意点は、「本は余白が限られている」こと。今回筆者は、行間にメモをとるのではなく、上下の余白にメモを書き留めました。それでも、スペースに限りがあるため、メモの内容はよりコンパクトにまとめたほうがいいでしょう。

***
成功者の読書術は意外とシンプルなもの。「読書とメモ」を重ねていけば、あなたの知性も高まるはずです。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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