勉強や仕事に集中したいときは、波の音をはじめとする環境音をBGMにするのがおすすめ。完全な無音状態では、ちょっとした物音が耳につきやすくなり、気が散ってしまうことがあるためです。
しかし、カフェのさざめきや雨音など、邪魔にならない程度の適度なBGMは、周囲の雑音を打ち消し、勉強への集中力をUPさせてくれます。特に、自然音には「1/fゆらぎ」という特殊なリズムが含まれているため、リラックス効果も大です。
今回は、波の音が勉強用BGMとして適している理由や、波の音を流したいときにおすすめの音楽集、ツールをご紹介します。
波の音で勉強がはかどる理由
波の音をはじめとする自然音が、勉強用BGMとして適している理由は、「マスキング効果」「1/fゆらぎ」のふたつです。
マスキング効果
音響工学の研究者である辻村壮平氏によると、マスキング効果とは、物音が互いにかき消し合う現象。たとえば、カフェは多種多様な物音で満ちており、ひとつひとつの物音が識別しづらいため、場合によっては集中力が高まる環境だと考えられています。
反対に、しんと静まりかえった部屋では、せき払いなどちょっとした物音でも大きく聞こえるため、注意が散漫になりやすいもの。また、辻村氏によれば、静かな空間だと、自分が出す物音が周囲の迷惑にならないかと気になってしまいます。そのため、脳の容量が無駄に消費され、集中力が下がりやすいそうです。
三井住友建設技術開発センターが2010年に報告した実験でも、波音や小川のせせらぎをオフィスで流したところ、完全な無音状態と比べ、話し声が気になりづらくなるという結果でした。勉強には、適度に音がある環境が適していると言えそうです。
BGMのなかでも、波の音・鳥のさえずり・カフェの雑踏といった環境音は、歌詞つきの音楽やメロディーのはっきりした曲と比べて気が散りにくいため、作業のお供として最適です。なお、歌詞つきの音楽が勉強用BGMに向いていない理由については、「音楽で勉強に集中できる4つの理由。『ながら勉強』に効果はあるのか?」をご覧ください。
1/fゆらぎ
波の音が勉強への集中を助けてくれるもうひとつの理由が、「1/fゆらぎ」です。
1/fゆらぎとは、自然音などに含まれている、規則性と意外性が適度に混じり合った特殊な波形(リズムのゆらぎ方)のこと。物理学者・武者利光氏によると、1/fゆらぎは人体にも含まれているため、1/fゆらぎを感じると身体が共鳴し、癒やされるそうです。
1/fゆらぎの身近な例は、心臓の鼓動。心臓は、機械のように正確に脈打っているわけではありません。鼓動の間隔がやや長くなったり短くなったりと、心臓のリズムには微妙な「ゆらぎ」があるのです。そのゆらぎ方が解析されたところ、1/fゆらぎだったそうですよ。
波音のような自然音も同様です。自然音は不規則で、つかみどころがないように思えますが、やはり人間の脈拍と同じ1/fゆらぎの法則を見いだせるとのこと。波の音などの自然音をBGMに使うと、1/fゆらぎによるリラックス効果が得られ、快適な気分で勉強に取り組めるわけです。
波の音を聞きながら勉強する方法
波の音が勉強への集中を助けてくれるとはいえ、海辺で勉強するわけにもいきませんよね。波の音や水のせせらぎを勉強用BGMにしたいときは、以下の方法がいいでしょう。
動画投稿サイトを利用する
YouTubeをはじめとする動画投稿サイトで「波の音」「自然音」などと検索すると、多くの録音がヒットします。「作業用BGM」として使えるよう、何時間にもわたる動画もありますよ。自分に合った動画を探してみるといいでしょう。
波の音が聞ける動画の一例をご紹介します。
音楽ストリーミングサービスに登録する
「Spotify」「Apple Music」「Amazon Music Unlimited」などの音楽ストリーミングサービスでも、波の音を流せます。たとえば、Spotifyで聞けるものだと、以下のようなアルバムや曲がおすすめです。
- 「波の音 自然音の癒し」:波の音やクジラの鳴き声
- 「Hawaii Ocean Waves 24 #1 -Noon to 03pm-」:ハワイの砂浜で収録。波音や現地の人の話し声
- 「ネイチャーカフェ(〜波のハーモニー〜)」:海辺の波や風の音
アプリをダウンロードする
波の音や水音を流せるスマートフォン向けアプリケーションは多数あります。入眠時に使える「スリープタイマー」など便利な機能も備えているので、自然音を利用する機会が多い方は、以下のようなアプリケーションを試してみるといいでしょう。
波の音を勉強BGMとして流したい方は、上で挙げた動画投稿サイトや音楽ストリーミングサービス、スマートフォン向けアプリケーションを活用してみてくださいね。
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波の音には、周囲の余計な物音を遮断し、勉強の効率を高めてくれる効果があります。勉強がはかどらないときは、波の音を流してみてはいかがでしょうか。
(参考)
オトナンサー|波音や雨音などの“環境音”が「作業効率上がる」「雑音は必要」と人気、効果はある?
小林秀彰・嶋田泰・赤尾伸一(2010),「オフィス空間へのサウンドマスキングの適用に関する研究」, 三井住友建設技術開発センター報告.
三宅晋司・村田厚生・神代雅晴(1989),「1/fゆらぎと快適性」, 人間工学, 25巻Supplement号, pp.230-231.
FUTURUS|人間を生かし、 名曲をも生み出す 「1/fゆらぎ」の謎【前編】
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。