エディ・ジョーンズが語る、成功のための「日本人らしさの」活かし方

2015年のラグビーW杯で、強豪南アフリカ代表を破るという歴史的勝利を日本にもたらした、元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏。その快挙は、当時、ラグビーファンだけでなく日本中の注目を集めました。

彼が日本代表をラグビー強豪国と互角に戦えるまでに成長させることができたのは、日本人の長所を最大限に活かすことで、実力以上の力を発揮させたから。このことについて彼は、後に出版した著書の中で次のように述べています。

日本人は自分の長所に気づくことが非常に不得手だと思います。そこへ内向きでシャイな性格が加わり、「どうせうまくいくはずがない」とマイナス思考を凝り固まらせている人が、とても多いのではないでしょうか。「自分はどうせダメだ」というマイナス思考が、成功を阻んでいるのです。それを取り除きさえすれば、誰でも成功を手に入れることができます。

(引用元:エディー・ジョーンズ著(2016),『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』,講談社.)

この言葉は、私たちビジネスパーソンにとっても非常に示唆深いものです。

何か大きな壁や目標に挑もうとする時、そのハードルの高さについ諦めたくなるという人は少なくないでしょう。例えば、勝ち目のなさそうな企画コンペ、どう頑張っても打ち破れないように思えるTOEIC900点の壁、超難関一流企業への転職。エディーの教えは、そのような場面でいかなるマインドを持って目標に立ち向かえばよいのかのヒントになります。実は学校で教職に就いた経験もあるエディーの言葉は、人生計画にも役に立つものばかりですよ。

さあ、あなたもエディー流の「勝つための」心構えを身につけましょう!

いくら大きな目標でも、課題を明確に捉え努力すること

エディーは、「日本ラグビーを変えるにはW杯で勝つことがすべてだ」として、W杯での勝利に強いこだわりをみせました。

2012年に彼が日本代表ヘッドコーチに就任した当初、日本代表選手たちは「強豪チームに勝つのは無理です」というマイナス思考に陥っていたのだそう。そこで彼はまず、選手たちに「自分はどうせだめだ」という思い込みを取り払わせることから始めたのです。

「自分たちはどうせ弱い。だから強豪チームに勝つなんて無理だ」そう思っているうちは、決して勝利を手にすることなどできないということ。強豪に勝利するという目標がいくら無謀なものに思えたとしても、その目標を達成するために必要な課題を一つ一つクリアしていけば、勝利は手に入るのです。実際彼はそのようにしてトレーニングを行い、日本チームを歴史的勝利に導きました。

このことは、ラグビーだけでなくあらゆる分野に当てはめることができます。そんなことができる訳がないと思えるほど大きな目標でも、達成までにすべきことをしっかり見極め着実にこなしていけば、目標達成という「勝利」を手にすることができるはず。

大目標に挑む過程では、コンペのライバルが優秀な人材をチームに入れたとか、体調を崩してしまい数日間試験勉強ができなくなってしまった、というように、自分ではコントロールできない事態も起きるでしょう。しかしコントロール不可能なものに気を取られていては、何にも挑戦することなどできませんし、心配ほど無意味なものはありません。

目標を定め、やるべきことを決めたら、あとはゴールに向けコツコツと努力を積み重ねることが重要なのです。

成功は準備がすべて

エディーは、W杯勝利というゴールに向けての筋道を示した後は、100%の努力が必要なハードワークをこなすことを選手たちに求め続けました。そして、彼の課したトレーニングに全力で取り組んだ選手には、年齢や出身大学に関係なく代表選手への権利を与えたのだそうです。

エディーは次のように言います。

勇気とは慣れ親しんだ自分を捨てることです。

(引用元:同上)

「勝てないのが当然だ」という今までの自分の意識を捨てる勇気がなければ、勝つための努力に全力を注ぐことはできません。いくら頑張っても(あるいは頑張っているように見えても)結果が出ない人は、間違いなく、「今より良くなろう」という意識が欠けているそうですよ。

このようなエディーの教えから学べることは、目標に向けて入念に準備するという努力を怠ってはならないということ。例えばビジネスのプレゼンテーションの成否も、資料の作成、シミュレーション、想定問答の用意など、あらゆる準備をやりきれるかどうかにかかっています。成功とは、決して運や才能だけで決まるものではないのです。

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「ジャパン・ウェイ」日本人の特徴を使いこなす

エディーは日本チームを率いるにあたり、日本ラグビー独自のスタイル「ジャパン・ウェイ」を掲げました。「信頼」「結束力」「努力」という日本人の強みと、日本人ならではの小さい身体を生かし、低い姿勢で素早いプレーを行う攻撃ラグビーを磨き上げたのです。

例えば、スペインサッカーのように、パスの回数を増やして意図的にボール所有率を高めたそうです。「パス11に対してキック1の割合」がベストと分析して、1試合で最大225回のパスを回しました。南アフリカ代表のパスの回数は90回だったといいますから、日本のパス回し能力がいかに高いかが分かるでしょう。これは、欠点として見られがちな身体の小ささを逆手に取り、欠点というよりむしろ勝つための条件にしたということ。スピード、機敏さ、引き締まった身体を持つことによって、身体の小ささは欠点から長所へと変わったのです。

ビジネスパーソンである皆さん一人ひとりにも、胸を張って長所だと言える部分と、欠点だとしか考えられない部分があるでしょう。長所は堂々と自身の戦略に生かしてください。そして欠点は、どう利用すれば長所に変えられるかをよく考えるのです。

人に対して気を配り過ぎて遠慮の塊になってしまうのなら、細やかな配慮ができる点をアピールしましょう。熟考しすぎて優柔不断になってしまうのなら、慎重に物事を見極められる性格だと言うことができるはず。あなたの強みと弱みをうまく融合させて、あなたにしかない価値を生み出してください。

*** あの南アフリカ戦、誰もが引き分けのフィールドゴールを確実に狙うと思った試合最後の瞬間に、選手たちはエディーの指示に反し、自らの意思で勝つためのギャンブル(トライ)を決断しました。このとき、指示に従わない選手に対してエディーは苛立ったそうです。しかし、選手たちによるこの独断が歴史的快挙を生んだのです。

エディーは、その時のことを次のように振り返っています。

「南アフリカ戦で勝つことを諦めたのは何を隠そう、ヘッドコーチの私だったのです。」 「本当の成功は、部下がリーダーを越えた時に起こります。」

(引用元:生島淳著(2015),『ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話』,文藝春秋.)

日本人の強みを最大限に生かした効果的な練習を行わせることで、エディーは選手たちのマイナス思考を払い自信を植え付けました。このことが、エディーすらも予想しなかった選手たちの自主性を生み、世紀の番狂わせを起こしたのです。

いくら達成困難に思える壁であっても、自分の長所を的確に捉え着実に努力すれば乗り越えられる。無理だという思い込みを取り払いさえすれば、欠点は長所になり得るし自信だって手に入る。このことを、私たちはエディーの業績から学ぶことができます。

さあ、あなたはどんな強みを生かして課題に立ち向かいますか?

(参考) エディー・ジョーンズ著(2016),『ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング』,講談社. 生島淳著(2015),『ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズとの対話』,文藝春秋. Wikipedia|エディー・ジョーンズ (ラグビー指導者)

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