「文章がうまく書けない……」「書いても書いても上達しない……」と悩むみなさん。語彙力、足りていますか?
巧みな構成や優れた発想があったとしても、人に伝わる文章を書くには、やはり語彙力が必須です。もしかしたら、文章がうまく書けない原因は、言葉の引き出しが少なく、書きたいことを正確に描写できないことにあるのかもしれませんよ。
……などと偉そうに書いておきながら、駆け出しライターである筆者も最近、自分の語彙力の乏しさに悩んでいます。そんな姿を見かねてか、ある日編集部の人から手わたされた1冊の本。そこで紹介されていたのが、語彙力アップのための「9マス類語変換ゲーム」でした。
文章の基礎に悩む初心者の人も、さらなるスキルアップを目指す文章上手の人も、このゲームをとおして語彙力に磨きをかけていきませんか? 今回は、「9マス類語変換ゲーム」を実践して体感した効果を詳しく紹介していきます。
「9マス類語変換ゲーム」とは
今回取り上げる「9マス類語変換ゲーム」とは、伝える力【話す・書く】研究所所長の山口拓朗氏が著書『「9マス」で 悩まず書ける文章術』で紹介している、語彙力を磨くためのゲームです。
山口氏は、「類語をパッと思い浮かべ、最適な言葉を選び取ることができる人」は文章力があると述べています。そして、語彙力を磨くには、何か単語を決めてそれを類語に変換してみるというトレーニングが効果的なのだそう。
やり方は以下の3ステップ。とてもシンプルです。
- 9個のマス目を作る
- 中央のマスに、何か1つ言葉を決めて書き込む
- 周りの8マスにその言葉の類語を書き込む
実際に本の中で紹介されている例を見てみましょう。中央に「うれしい」という言葉を書き込んだとすると、「楽しい」「幸せ」「ハッピー」「愉快」「ご機嫌」といった類語が思い浮かんできますよね。それらを周りのマスに書いていきましょう。なかなか出てこなくても、せめて3つか4つは埋めてみてくださいとのこと。
ところで、なぜ「9マス」を使用するでしょうか? その理由について、山口氏は書籍の中で次のように述べています。
では、なぜ9マスを使うのか。それは、人には“枠があると埋めたくなる”習性があるからです。また、マス目を9つ使うのは、4マスや6マスでは、文章作成に必要な情報を洗い出すツールとしては少し物足りないという理由もあります。かといって12マスや16マスでは、書くのが大変そうと尻込みしてしまいます。そういう意味で、9マスは絶妙なマス目といえるのです。
(引用元:山口拓朗(2019),『「9マス」で悩まず書ける文章術』, 総合法令出版. ※太字は筆者が施した)
メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手が高校時代に、目標を管理し達成するために使っていた「マンダラート」も9マスがベースになっていたことはご存じでしょうか。
彼は、9つあるマスの中心に、目標として「ドラ1、8球団」と書き込み、それを達成するために必要な要素として、周りの8マスに「体づくり」「コントロール」「キレ」「メンタル」……と書いていました。そして、それら8つの項目それぞれを新たに中心に置き、実現のために必要な取り組みを考えて実践してきたのだそう。
大谷選手がいま大活躍している背景には、「9マス」の力があったのですね!
「プライド」の類語変換に挑戦!
それでは、9マスの効力がわかったところで、実際に「9マス類語変換ゲーム」にチャレンジしてみようと思います。
制限時間については、書籍の中に記載はなく、特に決められてはいないようです。しかし今回は、スキマ時間や文章作成の傍らに短時間でやることを想定し、5分に設定してみました。
まずは、類語や使いどころが多そうで、書籍の中でも「テーマになりそうな語」として挙げられていた「プライド」を中心に起き、残りの8マスを埋めてみます。
【所要時間】3分15秒
【感想】文脈によって意味がどう変わるかをイメージできる!
労せずに周りのマスを埋められました。その理由として大きかったのが、「プライド」は良いとらえ方と悪いとらえ方の両方ができることでした。
たとえば、「プライドが高い」という言葉は、文脈によっては「頑固で融通が利かない」という意味にも取れますし、「自分の芯があって自信にあふれている」という意味にも取れますよね。
プラスの意味の類語とマイナスの意味の類語が考えられるものは、できるだけ両方に目を向けてみると、どういう文脈でどういう意味になるのか意識でき、言葉の使い方が広がると感じました。
次は「ビジネスパーソン」の類語変換に挑戦!
次に、StudyHackerでおそらく最も多く使われているであろう言葉「ビジネスパーソン」をテーマに選んでみました。
【所要時間】4分50秒
【感想】言葉の内包するイメージを具体的にできる!
非常によく使う言葉ではありますが、案外苦労しました……。しかし、実際にやってみて大きな収穫だったのは、「ビジネスパーソン」に含まれる人たちのイメージがより具体的になったということです。
たとえば、「OL」のAさんは、大企業の受付をしていて、上司のパワハラに脅かされているかもしれない。「セールスマン」のBさんは、息子の学費のために一生懸命汗水たらして訪問営業をしているのかも。「社畜」のCさんは、資格を取ってもっと待遇の良い仕事に転職したいと考えているかも。いろいろな姿が想像できます。
山口氏は、書籍の中で「文章=読む人へのプレゼント」と述べています。まさに、自分が文章というプレゼントをわたすべき相手を想定することが、文章をつくるうえでは欠かせません。コラムやPR文、売り場のポップなど、不特定多数の人に向けて文章を書く人は、ターゲットとなる人をより具体化するのに活かせそうです。
最後は「訴求力」の類語変換に挑戦!
最後は、企画書をつくったりプレゼンをしたりするうえで頻出の言葉のひとつである「訴求力」をテーマに選び、挑戦してみることにしました。
【所要時間】時間切れ……
【感想】難しい言葉の平易な言い換えをストックできる!
これはなかなか難しく、すべて埋めることはできませんでした……。
専門的な言葉や読み手が聞きなれない言葉を、どのようにわかりやすくするかというのは、文章を書くうえで大切なスキルですよね。同じ業界内の人とのやり取りの中では、それほど問題はないかもしれません。しかし、自社のウェブサイトに載せる文章のように、事業内容や理念を一般の人にわかりやすく伝えなければならないものであれば、できるだけ平易な言葉に言い換えたほうがより伝わるはず。
仕事上なにげなく使っている言葉ほど、このゲームを活用して、平易な言い換えをストックしておくのもいいかもしれませんね!
類語辞典の併用でさらに効果アップ!
山口氏は、今回の「9マス類語変換ゲーム」とは別の方法として、インターネットの類語辞典で言葉をチェックするだけでも語彙力アップに有効だと述べています。そこで、制限時間内に埋まらなかった「訴求力」について、類語辞典(※日本語シソーラス 連想類語辞典)を使って残りを埋めてみることにしました
☆をつけたのが、類語辞典から引いた言葉です。時間いっぱい集中して考えたぶん、調べて出てきた言葉への納得感が高まり、記憶に残りやすい気がしました。時間に余裕があればぜひ、ゲームのあとに類語辞典を引いてみるのもおすすめです。
***
制限時間を設けつつ、余裕があれば埋まらなかった場所を類語辞典で調べて埋めてみるという実践の仕方が、スキマ時間で簡単にできて効果が高いと感じました。
9マスを用意するだけでいい手軽さが、このトレーニングの強み。みなさんもぜひ活用して語彙力を高め、文章力にさらなる磨きをかけてみてください!
【こちらもあわせてお読みください!】
「文章が書けない」を根本解決できる『9マス自問自答法』がすごい。すべては “書く前” に決まる!
(参考)
山口拓朗(2019),『「9マス」で悩まず書ける文章術』, 総合法令出版.
NEWS PICKS|大谷を怪物にした花巻東高校の「目標達成用
新R25|単語を覚えるだけじゃダメ。語彙力を鍛える方法を言語学者に聞いてきた
【ライタープロフィール】
月島修平
大学では芸術分野での表現研究を専攻。演劇・映画・身体表現関連の読書経験が豊富。幅広い分野における数多くのリサーチ・執筆実績をもち、なかでも勉強・仕事に役立つノート術や、紙1枚を利用した記録術、アイデア発想法などを自ら実践して報告する記事を得意としている。