“不動の心” は身につけられる! 紙とペンで実践する『ABC理論』

「人間は感情の生き物である」とよく言います。皆さんも実際、様々なことを思いながら毎日仕事をしているでしょう。

仕事に失敗したときの「悔しさ」「腹立たしさ」、優秀な同期に対する「嫉妬」、理不尽な要求をする上司への「怒り」――。こうしたネガティブな感情が原因で、ひどく動揺してしまい、仕事が手につかなくなってしまうことはありませんか?

感情の抱き方には個人差があり、困難な出来事に対してひどく動揺してしまう人もいれば、そうでない人もいます。前者の場合、「こんなことでうろたえなければ、もっとうまくやれるのに……」と余計に落ち込んでしまうもの。逆に後者の場合は、困難を上手に切り抜け成長できる可能性が高まりますよね。この両者の違いは何なのでしょうか。

今回の記事では、動揺しやすい人がいかにしなやかな心を手に入れるかについて解説していきます。

「ABC理論」で考える、私たちの感情

突然ですが問題です。「私はがっかりしている」を英語でどういうでしょうか。英語を勉強したことのある方ならご存じと思いますが、正解は“I disappoint.” ではなく“I am disappointed.”です。

感情表現にもかかわらず、disappointという言葉は「がっかりさせる」という、自分以外を主語にとる動詞。そして、自分ががっかりした場合には、受身を使って表現することになります。「うれしい」や「おどろいた」といった言葉も同じです。このように西洋では、感情とは外からもたらされるもので、自分の心の中で生まれるものという認識はされていませんでした。

しかしながら、20世紀半ばに行われた研究の結果、それは違うということがわかります。そうして提唱されたのが、アルバート・エリス氏が提唱した「ABC理論」というものでした。A、B、CとはそれぞれActivating event(出来事)、Belief(考え)、Consequence(結果)の頭文字。これまでは、何か出来事(A)が起こったことで、何か感情を抱くという結果(C)が生じるとされていました。しかし、AとCの間に、Aを解釈してCを発生させる考え(B)があるということが提唱されたのです。

不動の心は“B”に宿る!

このことを理解するために、例を考えてみましょう。おおらかで前向きな〇田さんと、性格が生真面目で完璧主義な△山さんがいるとします。どちらも仕事熱心ですが、あるプロジェクトのマネジメントに失敗してしまいます。この二人はそれぞれ、失敗という“A(出来事)”に対し、“C(結果)”としてどのような感情を抱くでしょうか。

〇田さん: 顧客からの反応も悪く、上司にも怒られてしまった。でも、しょげてなんかいないで立ち直ろう。上司やまわりの人にも相談して、自分でも何がダメだったのかを振り返ろう。失敗を糧に成長するぞ!

△山さん: うまくいかなくて大ショック。「あのときああすれば」と思うと悔しく、自分に対する怒りも湧いてくる。「次は迷惑をかけまい」という思いを延々と引きずっては、「自分は無能だ。次のプロジェクトも失敗するに違いない」と非常に惨めな気分に陥る……。

ABCになぞらえてこれを説明しましょう。二人は同じような“A(出来事)”に遭遇します。しかしながら、最終的に全く異なる“C(結果)”を経験することとなります。これはすなわち、両者の間に“B(考え)”の大きな違いがあるということなのです。ではふたりはそれぞれどのような“B(考え)”を持っているのでしょうか。例えば次のように想定できます。

〇田さん: 一生懸命やったうえでの失敗は仕方がなく、それはむしろ成長のチャンスだ。 上司や仲間は信頼できる相手であり、真剣に相談をすればそれにこたえてくれるはずだ。

△山さん: 成功しなければ何も意味はなく、期待してくれた上司や顧客に対する裏切りでしかない。 たとえ成功したとしても、自分は普通であり、失敗するというのは無能であることの証明だ。

“B”の傾向は性格によるものだから、生まれつきで決まってしまいどうしようもない、と考える人がいるかもしれません。ですが、人が持っている信念は、ある程度は遺伝の影響があるものの、大部分が後天的な経験で決まってきます。そのため、今は落ち込みやすいという方でも、柔軟にABCのBをうまく制御することができれば、“C(結果)”として前向きな感情を持つことができるようになるでしょう。そして、そのBをコントロールする方法というのが、つづくDEなのです

ABCの続きはDE!?

ABC理論のつづき、DとEについて説明しましょう。DはDispute(反論)、EはEffect(効果)です。どういうことかといいますと、“B(考え)”に対して合理的な“D(反論)”を行い、その“E(効果)”を見るというもの。人間は誰しもスキーマと呼ばれる、出来事を自動的に解釈する認知上のフレームワークを持っています。そのスキーマが非合理的で自虐的なものを含んでいると、人は精神的にダメージを感じてしまうのです。そのダメージを軽減するためにDの反論が必要になります。

△山さんの例を再び考えてみましょう。△山さんの“B(考え)”に対して“D(反論)”をしてみます。

「失敗は上司や顧客に対する裏切りだ」という考えは、確かにそう言えなくもない部分はある。しかし失敗したからとはいえ、裏切りと呼べるほどに、相手の信用や自社の看板に傷をつけたとは考えにくいのではないか? また、たとえ今回失敗したとしても、それですべてが終わったわけではない。失敗した部分を見直して挽回するといったことは可能なはずだし、対策を講じれば同じ失敗を防げる確率は上がる。ずっと失敗し続けることなど、よほどのことがない限りないはずだ。また、「上司や仲間が軽蔑している」といった思い込みは、誰しも抱く「嫌われている」という妄想に過ぎない可能性も高い。

このように反論していくと、その“E(効果)”として、不思議と感情が穏やかになっていくほか、前向きな気持ちを抱けるようになるのです。

DとEを行う際は、頭の中だけで考えているとネガティブな感情を脱しにくいので、紙とペンを用意してABCの中身を整理しながら書きましょう。そして、論理的にそう言い切れないと思える部分があったら、そこに逐一Dの反論をしてください。劇的に自分の考えが変わるわけではなくても、継続していくことに価値があります。有効な反論ができるようになればしめたもの。精神状態をモニターした検査によると、こうした取り組みには抗うつ薬を飲んだのと同等以上の効果があるとまで言われているのです。

*** 分かりやすく説明するために、両極端な二人を例として書きました。ストレスやトラブルにいかに対処するかは、仕事の成果にも関わってきます。うまくBを制御して感情をコントロールする方法を身に付けていきたいものですね。

(参考) デビット・D・バーンズ著,野村総一郎・夏苅郁子・山岡功一・小池梨花・佐藤美奈子・林建郎訳(2004),『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』,星和書店. Counselor web|ABC理論とは|論理療法(ABCDE理論) NIKKEI STYLE|医師が明かす ストレスに強い人、弱い人の決定的違い ストレスに強くなる3つの習慣【前編】

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