勉強する時間が欲しいけれど、仕事や学校が終わったあとはクタクタで頭が働かない……そう悩んでいる人は、ぜひ朝の時間帯を勉強に充てるべきです。なぜならば、脳科学の観点では、朝は勉強に特に適した「ゴールデンタイム」とされているから。
なかには、「朝が苦手だから早起きできる気がしない」「一度、朝型勉強をやってみたけど挫折してしまった」という人もいることでしょう。しかし、ちょっとしたコツを押さえれば、朝スムーズに起きて勉強することも難しくありません。朝型勉強のモチベーションを上げるべく、朝に勉強をするメリットと朝型勉強を成功させるための3つの黄金ルールを説明しましょう。
「勉強したいとは思うのに、眠気がつらい……」という方は、「勉強したいのに眠いときの対処法8選」も読んでみてください。
朝は「脳のゴールデンタイム」! 朝に勉強をする脳科学的メリット
朝に勉強をするメリットは実にシンプル。朝が1日の中で最も脳が活性化されているからです。睡眠によって活性化が促された朝は、1日の中でも特に思考力・集中力・やる気が高い時間帯。脳科学者の茂木健一郎氏は、朝目覚めてからの約3時間は「脳のゴールデンタイム」と呼んでいるそうです。
睡眠をとることで、記憶が整理され長期記憶へと変わります。すると朝の脳は前日の記憶がリセットされるため、新しい記憶を収納したり、創造性を発揮することに適した状態になります。この脳の仕組みが、朝の時間がゴールデンタイムだと言われる理由です
(引用元:THE21オンライン|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方)
効率よく勉強や仕事をしたいと思ったら、脳のゴールデンタイムを活かさない手はありません。また茂木氏は、1日の脳の働きはハンググライダーをイメージするとわかりやすいと述べます。
朝起きた瞬間が飛び立ったときで、そのときが一番高いところを飛んでいます。つまり朝はトップスピードで仕事をこなしていくわけです。そして時間の経過とともに降下していくグライダーは、夕方に向かうにつれて仕事の効率が落ちていくのと同じ。このようなイメージでスケジュールをこなすのが脳科学的にも理にかなっています。
(引用元:同上)
また、アメリカの実業家であるアンドリュー・カーネギーは、「朝寝の時間は出費である。しかも、これほど高価な出費はほかにはない」と言います。つまり、朝ダラダラ寝る癖がついてしまうことは、時間の浪費につながる可能性があるのです。
朝型勉強ルール1:起きる方法「起き技」を身につける
朝型勉強が脳科学的に効率が良いとわかっても、「やっぱり早起きはつらい・難しい」という人は多いことでしょう。朝型勉強の最大のハードルは、眠さを克服してきちんと起きることといっても過言ではありません。無理なく起きる方法として、習慣化コンサルタントの古川武士氏は、「睡眠の質を高めて睡眠負債を溜めない」ことと「目覚めを良くする “起き技” を使う」ことを提案しています。
睡眠が不足していると、身体は強制的に睡眠に導こうとします。それはとても自然で正しい生理現象なのです。この睡眠負債を無視して起きようとするのは、借金が溜まっているのにお金を借り入れて使おうとするのと同じで原理原則に反します。多くの場合、辛すぎる朝は睡眠負債が溜まりすぎていることが原因です。
(引用元:プレジデントオンライン|朝、根性ではなく、技術で起きるコツ6)
古川氏によると、寝る前にカフェインを摂る、たくさん食べる、スマートフォンを見るといった習慣は、睡眠の質を下げるので注意が必要なのだそう。また、古川氏は “起き技” として6つの方法を提案しています。
- 太陽の光を浴び体温を上げる
- 低カロリーの缶コーヒーを飲む
- 熱いシャワーを1分間浴びる
- 15分の掃除・片付けで軽く体を動かす
- 楽しみを用意しておく(お気に入りの朝食、見たい動画など)
- テンションが上がる音楽をかける
ちなみに、先述の茂木氏も朝の日光浴を習慣にしているそうです。
なぜ私が起きたらすぐにコンビニまで行くのかいうと、戸外の太陽の光を浴びるためです。
(引用元:THE21オンライン|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方)
起き技はすべて実践する必要はなく、できるものを複数組み合わせるだけで充分です。日光浴しながら近所に缶コーヒーを買いに行くのも良いですね。
また、最初から長時間の勉強を目標にしないことも挫折しないコツです。いきなり毎朝1時間の勉強をノルマにするのではなく、最初は15分からなど短い時間から始めて少しずつ伸ばしていくようにしましょう。
朝型勉強ルール2:暗記ではなく、計算問題や文章作成をする
勉強が捗ったという達成感があると、翌朝に向けてのモチベーションも高まりますよね。そのためには、時間帯ごとに適した勉強内容があることを知っておくと良いでしょう。脳科学者の篠原菊紀氏によると、暗記系の勉強は記憶が定着する夜に行なうほうが向いているのだそうです。
記憶の定着は眠っている間にされるので、単語を覚えるなど単純な記憶作業は夜、寝る前にするほうが向いているかもしれません
(引用元:All About|「朝勉強」のススメ~朝は勉強のゴールデンタイム~ )
一方で、朝は計算問題を解いたり、文章を書いたり、テキストや本などを読んで興味がある分野の知識を深めたりするのに向いています。また篠原氏によると、朝は暗記したものをアウトプットするのにも適した時間帯なのだそうです。
朝は英会話学校など、覚えたことをアウトプットできる学習がおすすめ
(引用元:同上)
朝を暗記の時間に費やしていた人は、勉強内容を変えてみると成果がアップするかもしれませんよ。
朝型勉強ルール3:勉強場所にこだわる
いつも自室のデスクで勉強している人は、勉強場所を変えてみましょう。朝型勉強なので、日光浴も効率的にできる場所が特におすすめです。自宅内であれば、大きな窓があるリビングで勉強すると良いでしょう。外で勉強する場合は、カフェやファストフード店、自習室などを活用するのがおすすめです。
場所を変えて勉強することは、脳に適度な刺激を与えて良い影響をもたらします。それは「エピソード記憶」です。エピソード記憶とは、経験と周囲の環境がリンクすることで残る記憶を指します。たとえば、「この英語テキストを読みながら、カフェの新作メニューを試した」「このレポートを書いた日は、窓から大きな雲が見えた」といったものです。
エピソード記憶の良いところは、長期的な記憶として脳に定着することにあります。医学博士で作家の米山公啓氏は、学んだことに空間をタグ付けすることが記憶の定着に一役買っているとしています。
場所の記憶は鮮烈に残るので、上手に活用してほしいですね
(引用元:プレジデントオンライン|記憶力が悪く効率が悪い。どう覚えるべきか)
外での勉強も、職場や学校に近い場所であれば負担になりません。それどころかラッシュの時間帯を避けられるので、一石二鳥とも言えるでしょう。最近では、早朝からオープンしている自習室や、朝活をサポートするカフェなども増えています。さっそく探してみましょう。
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時間が足りないから勉強できないと思っていた人も、朝スムーズに起きられるようになったら、想像以上に時間にゆとりがあることに驚くでしょう。毎日少しずつでも朝型勉強を続ければ、資格試験の合格も夢ではなくなります。早起きは難しい、朝の勉強は続かないという先入観を捨てて、さっそく朝型勉強を始めてみましょう。
文 / かのえかな
(参考)
THE21オンライン|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方
プレジデントオンライン|朝、根性ではなく、技術で起きるコツ6
All About|「朝勉強」のススメ~朝は勉強のゴールデンタイム~
NIKKEI STYLE|朝時間を2倍有効活用 朝やるといいこと、悪いこと
プレジデントオンライン|記憶力が悪く効率が悪い。どう覚えるべきか