資格取得や受験のためなど、社会人にも学生にとっても勉強は欠かせません。
そんな勉強の効果を持続するために復習がとても重要なことは、ご存知ですよね。しかし、復習を欠かさずこなしているにも関わらず、思ったように成果が出ないと悩んでいる人も多いのではないでしょう?
実は、復習の効果を最大限に発揮するには“復習のタイミング”が大きく関わっていることがわかっています。科学的な根拠に基づいて最適な復習方法について考えましょう。
復習の重要性
復習の最適なタイミングについて考える前に、復習の目的をおさらいしておきましょう。
「復習をしっかりやりなさい」 これは小学生の時から誰もが耳にタコができるほど言われてきたことだと思います。それくらい復習は大切なことです。具体的な復習の効果を2つ紹介します。
1.記憶に定着させる 1885年、ドイツの心理学者エビングハウスは、無意味な文字の羅列を覚えさせ、時間の経過によってどれくらい覚えたものを復唱できるか、というテストを行いました。
これによって、学習の1日後には74%も忘れてしまうということが明らかになっています。復習しなければ、人間はあっという間に忘れてしまう生き物と言えるでしょう。このように忘れてしまったら学習したことが無駄になってしまうので、習ったことを覚えておくために復習は必要なのです。
2.理解を深める より理解を深めるためにも復習することは大変効果的です。
1度の学習で完全に理解することはなかなか難しいですよね。授業ではわからなかったところでも、自分のペースで再度見直すことによってよく理解することができます。
また、その時にはわからなかったことが一度寝かせることによってわかるようになることがあるのです。時間を置くことが内容理解につながることもあるでしょう。
勉強してすぐに復習するのは間違い!
このように、復習はとても重要なことですが、復習のタイミングによって得られる効果が異なることがわかっています。
「復習はできるだけその日のうちに」とよく言いますが、これは捉え方によっては復習の効果を半減させてしまいかねません。なぜなら、その日のうちの復習は“理解を深めるための復習”としてしかあまり効果がないからです。“記憶に定着させるための復習”としては逆効果となってしまうこともあるでしょう。
その日のうちにやらないとほとんど忘れてしまい、また1からやり直さなければならないと考えてしまう人も多いかもしれません。しかし、思い出すのに必要な記憶と、復習する際に必要な記憶は異なります。
カナダのウォータールー大学のホームページには、1時間の講義内容を復習する際、次の日に10分、1週間後に5分、1ヶ月後に2~4分の復習で記憶が戻る、と書かれているのです。このように、復習に必要な時間が短くなっていることから、復習を重ねることで忘れにくい記憶となっていることがわかります。
復習のために必要な記憶がある程度保持されていることはわかりましたが、最適な復習のタイミングはいつなのでしょうか? 2008年アメリカのグループによると、テストの得点は「学習から復習までの“期間1”」と「復習からテストまでの“期間2”」に密接な関係があることがわかっています。
復習に最も効果的なのは、期間1と期間2のタイミングが「1:5」となるタイミングで行なうこと。 つまり、学習から1ヶ月後にテストがある場合は、5日後(“期間1”は5日、“期間2”は25日)に復習をすると最も高い点が得られると期待できます。
その一方で期間1が0日、つまりその日のうちに復習すると最も得点が低いという結果が得られ、勉強してすぐに復習することは効果がないことがわかりました。
復習を繰り返すことで定着する
では、復習は1回だけでいいのでしょうか?
当然そんなことはありません。先ほど紹介したアメリカのグループの研究でも学習からテストまでの期間が長くなればなるほど、全体的に得点は落ちてしまっています。
2007年の研究によって、繰り返しの復習のタイミングを検討した結果、復習のタイミングを徐々に延ばしていくよりも定期的に学習する方が良いことがわかりました。
つまり、1年後にテストがある場合、最初の復習のタイミングが1:5となるよう60日後に復習した後、60日毎に復習していくと最も効果的に復習できるのです。1年後に入試を控えている受験生の場合、60日を1セットとして学習計画を立てると復習のタイミングを最大限に活かした勉強ができます。
*** 復習は、繰り返せば繰り返すほど効果的です。忘れてきたな、という頃を見計らって復習していけば、短時間で長期的に定着する記憶となっていきます。復習を最大限に活かせるよう、復習のタイミングを見直してみてください。
(参考) 竹内 龍人(2014), 『実験心理学が見つけた 超効率的勉強法: 復習はすぐやるな! 思い込みで点数アップ!』, 誠文堂新光社 UNIVERSITY OF WATERLOO|Curve of Forgetting|https://uwaterloo.ca/campus-wellness/curve-forgetting Cepeda, N. J., Vul, E., Rohrer, D., Wixted, J. T., & Pashler, H.(2008). Spacing effects in learning a temporal ridgeline of optimal retention. Psychological science, 19(11), 1095-1102. PRESIDENT Online|「復習4回」で脳をダマすことができる