いつも身につけているのは高級腕時計にハイブランド物のスーツ、SNSを見れば有名レストランの豪華ディナーの写真や海外の高級リゾートホテルの写真がずらり……。このように、世の中にはひと目でお金持ちだとわかる人がいます。自分もいつかはそうなりたい、とにかく年収を上げてお金持ちになりたい、これこそが仕事へのモチベーションだというビジネスパーソンもいることでしょう。しかし、大きな成功を収めている一流の中には、意外と倹約家が多いことをご存知でしょうか。
ニューヨーク州立大学のトマス・スタンリー氏とウィリアム・ダンコ氏の調査によると、億万長者の半分は140ドル以上の靴を買ったことがないのだそう。1ドルを110円とした場合、1万5,000円以上の靴は買ったことがないという計算になります。同様に、235ドル以上の腕時計を買ったことがない億万長者も少なくないのだそうです。“お金持ち=高級品ばかり身につけている” というイメージがある人にとっては、意外に映るかもしれません。
彼らにとって、お金は権威や成功を強調するためのものではありません。お金を使わない一流たちの、シンプルだけど「深い!」と唸らせるお金に対する考え方を、3つの例から説明しましょう。
ココイチ創業者 宗次徳二氏の場合
“ココイチ” の愛称でおなじみ、カレーハウスCoCo壱番屋の創業者・宗次徳二氏は、7,800円の腕時計を愛用し、シャツは980円の既成品を着用しているのだそう。新社会人が買う腕時計の相場は1万~2万円とされていますから、いかにリーズナブルなものを身に着けているのかが伺えます。そんな宗次氏は、自ら「贅沢には興味がありません」と言います。その理由がこちらです。
自分の贅沢のためにどれほどお金を使っても、最後には空しさが残るだけでしょう。しかし助け合いのためにお金を使えば、私たちはともに温かい気持ちになることができ、額面の何倍もの価値を生み出します。
(引用元:プレジデント・オンライン|ココイチ創業者「シャツは980円で十分」 ※太字は編集部が施した)
宗次氏は、どのような助け合いでお金を使ったのでしょう。例のひとつが、クラシック音楽を通じた社会貢献です。宗次氏は2007年に開館したクラシック音楽専用の宗次ホールを開設し、さらには愛知県の小・中・高校のブラスバンド部へ楽器の提供を行なっています。社会から受けた恩を独り占めせず、いま困っている人に手を差し伸べたいというのが、宗次氏のお金の使い方です。
その恩を、ひとり占めするわけにはいきません。今、食べるものがない、医者に行けない、学校に通えない。そんな困っている人に手を差し伸べる。それは寄付ではなく、人として当然の「助け合い」だと私は考えます。寄付だと思えば「余裕ができてから」と先送りしてしまいがちですが、助け合いなら、今すぐ必要なことですから。
(引用元:同上)
53歳で経営を退いた宗次氏ですが、現役当時は朝5時前に出社し、3時間かけて1000通以上のお客様アンケートに目を通していたのだそう。こうしたお客様への誠実な対応も成功者に導いた要因と言えるでしょう。
Microsoft共同創業者 ビル・ゲイツ氏の場合
Microsoft共同創業者であり、米長者番付では24年間にわたり首位を維持していたゲイツ氏。世界が知る大金持ちでありますが、ゲイツ氏の素顔は倹約家であったことは有名です。そんな彼が出張するときの移動手段は、エコノミークラスでした。
理由は実にシンプルで、到着する時間は同じなのだから無駄なお金をかける必要はないというものです。しかも、これはマイクロソフト社の方針として義務づけられており、ゲイツ氏のみならず社員もエコノミークラスで出張していました。行きたい場所へ移動する……このシンプルな目的が達成できれば良いので、そこに余計なコストをかける必要はないというわけです。
ゲイツ氏も、贅沢には見向きもしない人物なのだそう。そして資産は慈善事業に使われ、夫人とともに貧困地域に足を運び、ひとりでも多くの人の生活の質を高める活動を行なっています。2015年には、夫人とともに「フォーブス400サミット・オン・フィランソロピー」会議でフィランソロピー部門の特別功労賞も受賞しました。ハーバード大学ビジネススクール教授のウィリアム・カー氏は、ゲイツ氏の慈善事業について次のように述べます。
ゲイツは、後半生のキャリアをフルタイムでフィランソロピーに費やしている。他のビリオネアを牽引し、先頭に立って社会貢献への賛同を呼びかけている
(引用元:Forbes JAPAN|「慈善活動のカリスマ」ビル・ゲイツに学ぶ究極のリーダー像)
投資のリスクが高いために民間企業が手を出せず、政府も有効な手を打つことができない難病の撲滅にもリスクを恐れず投資できるのが、ゲイツ氏の慈善事業というわけです。またニューヨークの起業家、ラッセル・サーダーは、ゲイツ氏の慈善事業には次のような影響力があると述べます。
「ゲイツは自分だけでなく、他の富裕層をフィランソロピーに巻き込むという『ムーブメント』を巻き起こしている」
(引用元:同上)
富裕層が自己満足のために上辺の慈善事業を行う風潮をなくし、真に役立つ慈善事業を広めようという変化が、世界では起こっているのです。
世界で3番目の富豪 ウォーレン・バフェット氏の場合
アメリカの投資家であり、世界で3番目(※)の富豪ともいわれるウォーレン・バフェット氏のお金の使い方は、思わず親近感を抱いてしまうほど庶民的です(※2019年2月に確認)。その一例を並べてみましょう。
- スマートフォンではなく折り畳み式携帯電話(ガラケー)を使っている
- 散髪代は18ドル
- 朝食はマクドナルド、3.17ドル以上の注文はしない
- マクドナルドでクーポンを利用したことがある
投資の神様とまでいわれるウォーレン・バフェット氏が、クーポンを使ってファストフードを購入する姿は意外に思えるかもしれません。ウォーレン・バフェット氏も贅沢を好まず、口座からお金を引き出すことよりも貯金をして増やすことを好むといわれています。しかし、お金を惜しまずに使う場面もあります。ひとつは、本です。
ウォーレン・バフェット氏は読書を愛し、1日の80%の時間を本や新聞を読むことに費やしているそうです。また、500ページにおよぶ財務資料にも細かく目を通しているのだそう。そんな彼は、読書について次のように述べます。
「知識は、複利のように積み上がっていく。誰でもできることだが、皆さんの多くはやらない」
(引用元:BUSINESS INSIDER JAPAN|著名な成功者8人が強調する「読書のパワー」)
自分のために惜しみなく大金を使うときは、見た目を派手に着飾るものではなく、内面を豊かにするものを選ぶことが、成功者となった理由でしょう。
そして彼がもうひとつお金を惜しまず使っていることが、慈善事業です。バフェット氏は2000年以降、460億ドル以上のお金を慈善事業に寄付しており、世界で最も多額の寄付をする慈善家のひとりとしても知られています。また、存命中または死後に資産の半分以上を慈善活動に寄付することを誓約する「ギビング・プレッジ(寄付誓約)」にも署名していることでも有名です。ギビング・プレッジはビル・ゲイツ夫妻と始めた慈善活動。貧困削減、難民支援、災害救助、国際保健、医学研究などの支援に役立てられています。
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大きな成功を収めた人が共通して持つ、お金に対する考え方は2つ。ひとつは、お金の使い方にメリハリをつけること。ブランド品や高級品をそろえることはしませんが、使うべきときには惜しみなく大金を使います。もうひとつの共通点は、大金を使うのは自分のためではなく人のためであることです。これは宗次氏の言葉にあった「自分が受けた恩をひとり占めするわけにはいかない」に集約されるでしょう。
彼らのような大規模な慈善事業を突然始めることは難しいとしても、募金活動に協力したり、震災復興のために地元の人たちが作ったものを購入したりといったことならできるはずです。彼らのお金の使い方を学ぶことが、真の成功者になる第一歩となるかもしれません。
文 / かのえかな
(参考)
Business Journal|「成功している人」「一流の人」に共通する、お金が貯まる“お金の使い方”
プレジデント・オンライン|ココイチ創業者「シャツは980円で十分」
Forbes JAPAN|「慈善活動のカリスマ」ビル・ゲイツに学ぶ究極のリーダー像
BUSINESS INSIDER JAPAN|ビル・ゲイツが “天才” であることを示す13のエピソード
BUSINESS INSIDER JAPAN|思った以上? 世界で3番目の富豪、ウォーレン・バフェット氏の質素なお金の使い方
BUSINESS INSIDER JAPAN|著名な成功者8人が強調する「読書のパワー」
Forbes JAPAN|バフェットの「寄付戦略」について知りたい4つのこと