生活の中で交渉しなければいけない場面は数多くあります。「仕事で取引先の人と交渉する」というのが「交渉」と聞いた時の一般的なイメージですが、上司に休みを取らせて欲しいとお願いする、残業を断る、といったことも交渉にあたります。また、家族の間で仕事をやめたい、始めたいといったことを交渉したり、欲しいものを買っていいか交渉したりといったプライベートなことも交渉です。
こうした日常のさまざまな場面で直面する交渉で、相手にも嫌な思いをさせずに自分の希望を通すためにはどうしたらいいのでしょうか。
交渉は「Win-Win交渉」で
交渉と聞くと交渉したどちらかが負けて、どちらかが勝利するというケースを思い浮かべるかもしれません。これは「Win-Lose交渉」と呼ばれます。しかし、仕事でもプライベートでも、お互いが満足できる「Win-Win交渉」を成立させた方が、お互いに気持ちが良いはずです。 たいていの場合は交渉終了後もその相手と関係が続いていく場合が多いので、どちらか一方が打ち負かして気まずくなることのないように、交渉の際は「WIn-Win交渉」を心がけましょう。
ここで気を付けなければいけないのは、気兼ねしたり相手のことばかり考えて、自分が先に折れようとしてしまうことです。その場では丸く収まったように思えても、その後自分の中でもやもやを抱えることになったり、相手もあなたに対して馬鹿にするような気持ちや不信感を持つような結果になりかねません。Win-Winはあくまで対等な関係であることをお忘れなく。
Win-Win交渉のために重要な下準備
では、「Win-Win交渉」はどうすれば可能になるのでしょうか。まず、自分の中で、自分がどうしても通したいことを考えておくことが必要です。 自分の中で自分の要求があいまいなままだと、いざ交渉となった時に相手の威圧感に負けてしまったり、相手に悪いのでは、と意見を引き下げてしまったりしがちです。こうしたことを避けるためにも、自分の気持ちを固めておくことが重要です。を踏むことが重要です。
次に、相手の望むことを考えます。自分の条件を出してばかりでは、当然交渉はうまく行くはずもありません。自分がこの要求をした時に相手が望んできそうなことをいくつか考えておきましょう。この二つを考えたら、相手と自分の現状を把握して、自分のゴールと相手のゴールを設定しましょう。重要なのは、交渉のゴールは「合意」であると思い込まないことです。
女性管理職育成コンサルタントや交渉トレーナーとして活躍されている小早川優子さんは、以下のように述べています。
交渉のゴールは必ずしも合意ではなく、お互いの利益が最大化すること。合意しなければいけないと思い込む「合意バイアス」にかかってしまうと、不利な状況でも合意してしまう場合があります。
[引用元:日経DUAL|「復帰後は定時で帰りたい」 上司との交渉の進め方|【育休ママ、パパの「交渉」お悩み座談会~職場編~】 日々の交渉は「準備」と「ウィンウィンの発想」]
合意バイアスに注意して、お互いの利益が最大となるように、自分と相手のゴールを設定しましょう。
交渉本番―「Win-Win交渉」のために気を付けるべきこと
「Win-Win交渉」では、一つのものを取り合うのではなく、新しい要素を持ってきて、お互いにほしいものを取る、という形が、お互いの利益の最大化に一番つながりやすい形だと小早川さんは言います。
「時間」は限られているので取り合いですよね。でも、仕事の要素には「質」や「スキル」もある。時間をもらう代わりに、自分の得意分野で返すという方法もあるんです。例えば「私は夕方5時までしか仕事ができませんが、代わりに新人を教育します。自分の仕事を5時以降は新人に担当させて、成長する機会にします」という提案。悪と見られがちな不在を使って別の価値を会社に与えるという交渉の仕方です。
[引用元:同上]
このように、自分の要求はひとつの視点から見ると相手に不利益となるかもしれなくても、別の視点から見れば相手にとっても利益を生むような形で決着をつけることができれば、「Win-Win交渉」は成功だと言えます。また、こうした自分の要求を伝える際に、その分相手にはこんなメリットを与えられるという提案をするということを繰り返していくことで、相手との交渉において信頼関係を築いていくことができるようになります。 「この人の要求なら、のんでも損はない」と思ってもらえるようになれたら、その後の交渉や関係自体も居心地の良いものになるでしょう。
気をつけたいのは、代替案を出そうと必死になるあまり、自分がうまくできるかわからないような案を提案してしまったり、大口をたたいて安請け合いしてしまったり、軽はずみに嘘をついてしまったりすることです。結局自分の立場が悪くなり、相手との関係性にも亀裂が入る恐れがあります。実現可能な代替案を提示し、嘘も方便とはいえ、うしろめたくなるような嘘は避けるようにしましょう。
*** いかがでしたか。 自分の要求がどうしても相手には通らなさそうな時でも、準備をしっかりし、伝え方を工夫すれば誠意が伝わってお互い納得のいくゴールを見つけられるはずです。今、交渉しなければいけなくて気が重い、という人は、ぜひ準備から交渉本番までのこの流れを試してみてくださいね。
引用・参考サイト 日経DUAL|「復帰後は定時で帰りたい」 上司との交渉の進め方|【育休ママ、パパの「交渉」お悩み座談会~職場編~】 日々の交渉は「準備」と「ウィンウィンの発想」 Allabout|話し方・伝え方/説得する・納得させる話し方 人生は交渉の連続?! 交渉の時の話し方

