何か感動したことがあったとき、ただ「感動した」という言葉だけで済ませていませんか?
感銘を受けた際に出てくる素直な表現ではありますが、近年ではそのような「便利すぎる言葉」に対して苦言を呈する人も少なくはありません。

他にも、少し前に話題となった「神ってる」や、すっかり定着した様子の「ヤバい」という言葉にも同様に、その用途の広さによる便利さの反面、使用上の問題が付きまとっているようです。その問題とは、言葉を使っている自分自身でも“分かった気”になって終わってしまうこと。

しかし、そのような言葉に慣れてしまうと肝心なときに「何て表現すれば良いんだろう……」という局面に陥ってしまうことも少なくありません。そのような事態に陥らないためにも、ちょっとした注意をすることで、自分の言葉でスマートに何かを表現できる人間になることが大切です。

便利な言葉はどこが危険?

「便利な言葉」に共通するところは、その言葉が文脈によってさまざまな意味を広く内包できるという点です。人間は、そのように「何となく据わりの良い表現」を見つけてしまうとそれによって安心してしまう性質があります。そしてそこに、言葉の落とし穴が存在するのです。

『「言葉にできる」は武器になる。』の著者、梅田悟司氏は、そのような「コミュニケーションを成立させる言葉」とは別に、「自分の思考を深めるための言葉」を大切にする必要性を説いています。自分が普段何を考えているかを冷静に思い返せば、そこには必ず言葉による「掘り下げ」が存在しているはずです。

便利な反面意味の広すぎる言葉に慣れてしまうと、この「掘り下げ」が十分に進められず、結果として思考が“散らかった”状態のままで放置され、その分判断力や創造力は鈍ってしまいます。このように便利すぎる言葉に頼ってしまい、結果として思考力の低下を招いてしまう傾向は、アウトプット能力の減衰が原因かもしれません。

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アウトプットの持つ意味

情報を仕入れる「インプット」の方ばかりに注目してしまいがちですが、実はそれを出力する「アウトプット」には、インプットにも勝るとも劣らない大きなメリットが存在しています。

アウトプットを行うことは、記憶の整理に大きな役割を果たすのです。
何かをぼんやりと感じたとき、それをきちんと言葉に変えてアウトプットを行わなければ、その感覚は忘れ去られてしまいます。一方でそれを「どんな感覚だったのか」ときちんと言葉で整理してやると、情報が整理されて記憶にとどめておくことができます。

例えば、映画を観たときでも、「良かった」「感動した」で終わらせず「頑なだった主人公がようやく自分のやりたいことを見つけ、過去のしがらみを振り払って一歩を踏み出せたことに大きな成長を感じ、人間は変わることができるのだと勇気をもらった」というような表現を試みることは可能ですよね。「何が/どうしてそんなに感動的だったのか?」という問いかけを挟んでみることで、このような説明は簡単に出てくるでしょう。

言語化をして情報を整理することで何となく把握している状態よりも、正確に複雑な物事について思考することが容易になるという「思考の整理」という効果もアウトプットにはあります。言葉にしてみることで「あのシーンも、ラストの感動に繋がってるんだ!」というように、作品の理解も深まるかもしれません。

また、インプットして何となく把握しているという状態では、理解不足や誤解があってもそれに気づくことが非常に難しくなってしまうため、アウトプットすることで確認することができるでしょう。

例えば、誰かに勉強を教えているとき、理解してもらうために言葉を探して初めて「ここはこういうことだったのか!」と気付いたり、「自分はここが理解できていない」と発見した経験が、一度くらいはあるのではないでしょうか。「分かったつもり」を許さない言葉の厳しさが、むしろ問題発見の強い味方になってくれるのです。

さらに、アウトプットを試みることによって、より繊細、複雑な物事についての表現を模索し、それにより表現力だけではなく分析能力が向上するというメリットもあります。
例えば、何かで悩んでいるとき、ああでもないこうでもないと考えるだけではなく、自分は何を考えているのか、きちんと言葉で説明しようと試みてみます。そうすることで初めて自分が何を考えていたのか、どうして悩んでしまっていたのか気付くことができるようになります。

紙に書き出してみたら悩みを解決する糸口が見えた、ということもあるでしょう。表現してみるということはそれだけ物事を深く理解することに繋がるのです。そのようなアウトプットがインプットと対になって、初めて勉強や思考が有効な価値を持つことができるようになります。

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アウトプットのトレーニング

では、アウトプット能力を鍛えるにはどうすればのでしょうか?

アウトプット能力は、使わなければ衰えてしまいます。だからこそ、何かを感じたというときにそれを言葉で表現してみるということを心がけましょう。「映画を見た」「本を読んだ」「風景がキレイだった」といったときの感想を詳細に表現してみる訓練をするのです。

このときに「感動した」「刺激を受けた」というような表現を避け、きちんと「何にどう感動したのか」「どのような点が、どういう意味で刺激になったのか」ということを表現することを意識しましょう。重要なのは「どうしたか」「何があったか」ではなく「なぜ」「どのように」という説明の部分なのです。

自分自身の経験や心情、感覚というものを、ありきたりな言葉や慣用句を避け、独自の言葉で表現できないか挑戦してみます。それを日常的に繰り返していれば、自分の中の言語に対する感覚が研ぎ澄まされ、言葉の引き出しがスムーズになり、次第にアウトプット能力が磨かれていくことを実感できます。

そうしたアウトプット能力が磨かれていけば、仕事の上で「どうしてこのアイデアが有用なのか」を説明するときにも、人間関係で迷い「どうしたら伝わるのだろう」と悩んだときにも、「この映画をオススメしたい!」というときにだってスムーズに言葉が出てくるようになってくるでしょう。それだけではなく、自分の中で地に足を付いた言葉に促されるように、複雑で繊細な物事を扱うことに慣れてくることが実感できるはずです。

このようなトレーニングにはSNSも役立つかもしれません。
ちょっとした出来事をSNSに投稿するときにも、なるべく独自の言葉を使って、豊かな表現ができないかを常に考えるようにすることで、SNSはアウトプットのトレーニングに最適な場所になるはずです。

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言葉なんて伝われば良い、という考え方も確かに一理ありますが、そんな言葉にこだわりぬいてみることで、自分の内面を深く掘り下げることも可能となります。人間の知性の源とも言える「言語」の力を引き出して、ワンランク上の思考能力を手に入れてみてはいかがでしょうか。

(参考)
All About|「感動しました!」思考停止に陥る熱い言葉のワナ
TOSHO CONTENTS MARKETING|思考言語化で「考えているつもり」から卒業しよう
Bussiness Journal|『思考の整理学』外山滋比古氏が語る、思考力の低下を招く「知的メタボ状態」から抜け出すには?
電通報|「言葉にできない」ことは、「考えていない」のと同じである。
起業.tv|【アウトプットとは?】アウトプットの意味とポイントを簡単に解説!