勉強が「続く人」と「続かない」人の分かれ道。 ”自己連続性”という心理学的要素が重要なワケ。

笑顔の女性

「勉強が続かない……」

資格試験の勉強を始めても3日で挫折。スキルアップのためにオンライン講座に登録したのに、結局放置。「疲れているから」「週末にまとめてやろう」と後回しにして、気づけば数ヶ月が経過……。

勉強が継続できない原因を探して、時間管理アプリを入れてみたり、カフェで集中する環境を作ったり。それでも「なかなか続かない」というのが現状ではないでしょうか。

実は、勉強が継続できない最大の理由は「今の自分」と「なりたい自分」が繋がっていないから

最近の研究で、この問題を解決する意外な方法が見つかりました。
それが「未来の自分との会話」です。

「未来の自分との会話」とは?

「未来の自分との会話」は、勉強のモチベーションを維持する新しい研究成果です。筑波大学人間系助教の千島雄太氏の研究によれば、勉強が続かない人の多くは「今の自分」と「未来の自分」が切れていると感じているそうです。

研究では、高校生に対して2つの実験グループを作りました。

  • 未来の自分に手紙を書くだけのグループ
  • 手紙を書いた後、未来の自分になりきって返信も書くグループ

結果、手紙の返信まで書いたグループの方が、学習意欲が大きく向上。勉強を継続できる時間が増え、目先の誘惑(スマートフォンなど)に流されにくくなりました。

この効果は他の研究でも確認されています。アメリカの心理学者Mark Travers氏も「自己批判より自己共感が学習継続に効果的」と指摘。特に「未来の自分からの応援メッセージ」が強い効果を持つと述べています。

なぜこれほど効果があるのでしょうか?

千島氏によれば、未来の自分と「会話」することで「自己連続性」が高まるからです。自己連続性とは「今の努力が未来の自分につながっている」という実感のこと。この感覚があると、勉強を継続する力が自然と身につくのです。

手紙を書いている様子

「自己連続性」を育めば、よりよい選択ができる

いまの自分と、未来の自分が繋がっているという感覚——。

この「自己連続性」を高めることは、未来の自分のためにより良い選択を選ぶ傾向を強めます。

この感覚が薄いと、私たちは「いま」の快適さを優先してしまいがち。勉強や自己投資よりも、目先の楽しみを選んでしまう。そして気づけば、予定していた学習は後回しになっています。

「自己連続性」を持つとは、言い換えれば「未来の自分の視点」を「今の自分」が持つということ。つまり、目標を達成した自分の立場で、いま頑張っていることの価値を認識できるようになるということです。

そうすれば当然、目の前の些細な誘惑よりも、未来の自分が喜ぶ選択を自然と選べるようになっていくのです。

この「未来の自分の視点」を効果的に取り入れる方法として、千島氏は「未来の自分に手紙を書き、それに対して未来の自分になりきって返事を書くという行動」を推奨しています。

実際に実践した様子を、次項で紹介します。

「未来の自分との会話」を実践してみた

勉強を継続するための「未来の自分との会話」。でも、未来といっても、どれくらい先を目安にすればいいのでしょうか。千島氏は、以下のタイミングをすすめています。

  • 環境の変化があるタイミング(卒業、転職などの転機)
  • 連続性を感じられるくらいの距離感

特にキャリアに関することを書くのであれば数年、短期的な目標がある人は、1か月~数か月単位がいいそうです。*1

筆者は現在中国語を勉強していて、3か月後の台湾旅行で実践してみようと考えています。そのため、3か月後、台湾旅行を終えたあとの自分に手紙を書くことにしました。その手紙がこちらです。

未来の自分に向けての手紙

2025年3月の自分へ

台湾旅行は楽しかった? 初めて台湾旅行のとき、買い物とかで会話できて嬉しかったよね。

3月の旅では、もっと会話してみたくて、今コツコツ勉強してるよ。(サボったりもしてるけど...)頑張ってるけど、なかなかスムーズが出てこなくてこまってるよ。3月頃はスラスラ言えるかな? そうできるといいな!

2024年11月

 

未来の自分に向けて、現在の勉強の様子を正直に書きました。自分宛なので、比較的素直に書けた気がします。

次に、3か月後の自分になりきって、この手紙に返事を書きました。

過去の自分への返事

2024年11月の自分へ

台湾、すごく楽しかったよ!! 前回行けなかった士林夜市も行ったよ! けっこう聞きとれることが増えてて、お店の人とちょっと雑談もできた!

11月からやってた、音読と言いたいことをパッとくみたてる練習が効いた気がする。 フレーズは、くりかえしているうちに、まあまあ覚えられたから、マイペースでOKだったよ!

ちゃんとスラスラ言えました!!

2025年3月

過去からの手紙に返事を書くと、自然と励ましの言葉が並んでいきました。

そのため、書いているうちに、いま行なっている勉強方法について「これでいいんだ」と思えるようになり、学習を継続する自信が湧いてきました。

過去から未来、未来から過去に向けた2通の手紙を書くことで、「いまの自分の頑張りが、未来の自分の喜びにつながっている」と実感できました。「いまの自分と未来の自分がつながっている」という自己連続性を強化できたのです。

また、手紙を書いたあとから、勉強のモチベーションが安定し、気が散ることが少なくなりました。「いまこのフレーズを暗記すれば、3か月後に楽しく会話できる」という確信が、勉強を継続させる力になったのです。

このように、「未来の自分との会話」をすることで、未来の自分のために、いまの自分がとれる最善の選択ができるようになります。積み上げていけば、自分にとっての理想を現実にしていくことも難しくないでしょう。

「勉強を継続する方法を見つけたい」「無理なく、自分にとって最善の選択をし続けたい」と考えている方は、ぜひ試してみてください。

***
未来の自分からの一通の手紙が、私に「勉強を続ける力」をくれました。「こんな未来にしたい」というあなたの思いを大切にするために、未来の自分との対話をしてみませんか? きっと新しい景色が見えてくるはずです。

※引用の太字は編集部が施した

(参考)

*1 note|【特別インタビュー】筑波大学千島雄太先生に聞く/研究から見えた、未来の自分への手紙の効果
*2 Yuta Chishima and Anne E. Wilson(2020), “Conversation with a future self: A letter-exchange exercise enhances student self-continuity, career planning, and academic thinking”, Self and Identity, Vol. 20, No. 5, pp.646-671.
*3 Forbes JAPAN|目標達成のカギは、未来の自分との「心のギャップ」を埋めること

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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