「キャリアアップのために資格試験の勉強計画を立てても、いつも3日坊主になってしまう」 「意思が弱くて、読書の習慣化することを決意してもすぐに誘惑に負ける」
このように継続力がなくてお悩みの方も多いのではないでしょうか? 人は、理性を持っていてもやはり動物。目の前の誘惑には屈してしまうのがむしろ自然です。「やるぞ!」という燃え上がるような思いも、翌日考えてみると「何でこんなに熱くなってたんだろう」と思うようになり、感情が持続しにくいことも継続を難しくしています。
そこで重要なのは、動物的な欲求に逆らうためのスイッチを持つこと。今回は、せっかく立てた計画を机上の空論で終わらせないための、方法をご紹介いたします。
「可視化」せよ!
目標と計画を立てたら、カレンダーアプリの“毎日繰り返し設定”をして「目標と計画」という予定を入れましょう。1日の始まりに見れるように朝の時間に設定してください。
内容は、例えば「毎日1ページの読書」、「本の内容をちゃんと理解し、説明できる程度にする」など、有言実行したいことであれば何でも構いません。
同様に、カレンダーアプリの“毎日繰り返し設定”をして「実行できたこと、できなかったこと」という予定を入れましょう。これは、1日を振り返られるように寝る前など、夜の時間に設定してください。
そこに、その日の実際の行動と明日から心がけることを書きます。例えば「1ページ読むことは達成した」、「本の内容の説明を考えてみても思い浮かばなかった」という行動を記録した場合、説明ができなかった点において「有言実行」ができていませんよね。そこで、明日からの改善案も合わせて書きます。この場合は「簡単な本からトライする」などハードルを下げるのです。
このとき気をつけるのは、具体的な行動レベルで記録、改善案を書くこと。“説明できるように頑張る”だけでは不足しているため、具体的な名称を含めましょう。「簡単な本」、「~入門」(具体的な書籍名)など、今調べてわかる範囲で最大限具体的に書きます。
これを習慣化すれば、「目標に近づく」ことを日課にした上で毎日確認できるので、確実に達成に近づいている快感も得ることができます。
重要なのは、紙にただ書くのでなくカレンダーアプリに繰り返し設定として登録しておくことです。そうすると、毎日の予定を確認するときに嫌でも目に入るので、思い出して実行、反省することができ、3日坊主で終わるのを防ぐことができます。
達成できなかった時は、「達成できなかった」と記録することになるので罪悪感もあり、「明日はちゃんとやろう」と思えるはずです。また、「明日はやる」と書くことで “一貫性の原理” という、自分の行動に一貫性をもたせようとする心理的効果が働き、より次の日に目標を達成できる確率が高くなります。
尊敬する人になりきろう!
キャリアアップをするための方法論についてまとめられた、平井孝志著『キャリアアップのための戦略論』では、自己管理において「意識」と「行動」を変えるためにはまず形から入ることが有効だとした上で、以下のように書かれています。
「△△さんなら、この場合、どう振る舞うだろうか」「○○さんなら、この場合、どんな意思決定をするだろうか」といったように、その人になった気分で「振る舞う」と、意外と考え方の枠は広がるものです。
(引用元:平井孝志(2017), キャリアアップのための戦略論, 日本経済新聞出版社)
例えば、本屋で面白そうな漫画を見つけたとき。やらなければいけないことを犠牲にして漫画を読むことは、ダメだと思っていても抵抗できないことがありますよね。
そんなときは、「いつも冷静な同僚の佐藤さんだったらどうするだろう?」と考えてみてください。佐藤さんが自分に乗り移ったつもりで考えてみると効果的です。「もし漫画を購入しても、あとで後悔するのは嫌だから今はやめるべきだ」と佐藤さんの口調で脳内再生すると、実際に決断する後押しになります。
なりきるスタイルがなかなかうまくできないときは、漫画やアニメによく出てくる、天使と悪魔が頭の中でせめぎあう場面をイメージしてみてください。「自分の欲vs佐藤さんの冷静な判断」の構図を頭の中に作り、「戦わせる」感覚でやっても良いでしょう。
最終的に自分の欲が打ち負かされるまでいろいろな人の意見を連れてきて戦わせてください。この妄想自体が案外面白いので、何だかどうでも良くなってきて「漫画はもうどうでもよくなってきたから帰ってやるべきことをやろう」と思えることもあります。
そのときによって適切な人物を自分に乗り移らせたり、その人を自分の欲と戦わせることで自制心の助けになりますよ。
有言実行のカギはまずはしくみづくりから。精神力だけで乗り切ろうとするのではなく、工夫することを考えてみましょう。
(参考) 平井孝志(2017), キャリアアップのための戦略論, 日本経済新聞出版社 古川武士(2010), 30日で人生を変える 「続ける」習慣, 日本実業出版社 泉正人(2008), 最少の時間と労力で最大の成果を出す 「仕組み」仕事術, ディスカヴァー・トゥエンティワン ロバート・B・チャルディーニ(2014), 影響力の武器[第三版]:なぜ、人は動かされるのか, 誠信書房