毎日の仕事に、もっと大きな可能性を感じていますか?
デスクに向かう時間が長くなるほど、仕事は単なる作業の繰り返しになり、あなたの中にある才能や創造性は眠ったままかもしれません。
しかし、それを解き放つ方法があります。仕事への没頭が最高の成果を生み出す瞬間があるはずです。時を忘れるほど集中し、新しいアイデアが次々と浮かび、想像以上の結果を出せる―――そんな状態を「フロー状態」と呼びます。
実はこの「フロー状態」の入り方は、学びによって段階的に身につけることができます。
その前に、このフロー状態とは具体的にどんなものなのか詳しく見てみましょう。
眠れる可能性を引き出す最高の集中力
心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏は、このフロー状態を研究し、重要な発見をしました。フロー状態とは、「人が何かに夢中になって取り組み、時間や自己意識さえも忘れるほどの高い集中を達成できる状態」のことです。
彼の研究によると、フロー状態に入った時、私たちの脳は最適な働きを始めます。集中力が高まり、創造性が解放され、普段以上のパフォーマンスを発揮できるようになります。仕事への没入が深まり、新しいアイデアが自然と湧いてくるのです。
そして最も重要な発見は、このフロー状態が「チャレンジとスキルのバランス」によって生まれるということです。タスクが自分のスキルに対して「少し難しい」と感じられる時、私たちはフロー状態に入りやすくなります。難しすぎると不安や挫折を感じ、簡単すぎると退屈してしまう。しかし、その中間、つまりちょうど背伸びをするくらいの課題に取り組む時、私たちは最高の集中力を発揮できるのです。
この「適度な目標」が設定された時、私たちは自然と課題に没頭し、能力を最大限に発揮できるようになります。
では、いよいよ本題です。私たちは「具体的に」どうすれば、このフロー状態に入ることができるのでしょうか? 実践方法を見ていきましょう。
実践方法A:環境
もっとも基本的な方法は、集中力を高めるための環境を整えること。
フロー状態に入るためには、集中できる環境を整えることが欠かせません。外部の邪魔やノイズをできるだけ排除し、作業に没頭できる時間と場所を確保することで、フローに入りやすくなります。
- 集中できる場所を選ぶ
たとえば、図書館や静かな会議室など、集中しやすい環境を選びます。また、オフィスでの集中が難しい場合、ヘッドホンを使用して周囲の雑音をカットすることも効果的です。 - 作業時間を区切る
長時間の作業よりも、短時間で集中して行なうほうがフロー状態に入りやすいことがわかっています。たとえば、ポモドーロ・テクニックを活用し、25分間集中し、5分間の休憩をとるサイクルを繰り返すことで、集中力を持続させます。順天堂大学医学部教授である小林弘幸氏も、ポモドーロ・テクニックによる適度な休憩が集中力を高めるために有効であることを述べています。*2 - デジタルデトックスを行なう
スマートフォンやメール通知など、集中を妨げる要因を取り除くことで、フローに入りやすい環境が整います。作業中は通知をオフにし、作業後に確認することで、より深い集中が可能になります。
実践方法B:明確化
目標を具体的に設定し、チャレンジを明確にします。
フロー状態に入るためには、自分が何を達成したいのかを具体的に設定することもまた重要な要素。目標を明確にすることで、目標達成に意識が集中しやすくなり、フロー状態に入りやすくなります。
たとえば、「今月の売上目標を達成する」という大まかな目標を立てるのではなく、「今月中に10件の新規顧客を獲得する」というように具体的な目標を設定します。さらに、目標達成のために必要な小さなステップに分解することで、より具体的な目標となるでしょう。
- 目標を細分化する
月間目標を「週に3件ずつ顧客を獲得する」という かたちで小分けにすることで、達成可能な小さな目標を毎週設定できます。これにより、達成感を得やすくなり、フローに入りやすくなります。 - 期限を設ける
期限を設けることで、意識が自然とそのタスクに集中します。たとえば、午前中に主要な顧客への提案を終わらせるという短期的な期限を設定し、目標達成に向けてペースを整えます。
実践方法C:自分を”少し”越える
自分のスキルを少し超えるタスクに取り組みます。
フロー状態に入るための最後の鍵は、いまの自分のスキルよりも”少しだけ”難しい課題に挑戦すること。この「少しだけ難しい」という要素が、集中力を引き出し、フローに入りやすい状況を作り出します。
達成できそうな目標を立てるためには、次のような手順が役立ちます。
- 現状のスキルを客観的に評価する
たとえばソフトウェア会社で営業の仕事をしていて、いまの仕事には慣れてきているとします。それであれば、既存の顧客への製品紹介ばかりではなく、これまで自社システムを使っていない新しいマーケットに対して営業をかけるなど、少しだけ高い目標にチャレンジします。この際、自分の得意分野を活かしつつも、足りない部分を少しずつ補っていけるようなタスクを選ぶことが重要です。 - 高いチャレンジに段階的に取り組む
いきなり大きな課題に取り組むのではなく、少しずつ自分の限界を引き上げていくことで、目標達成への道筋が明確になります。たとえば、1週間で10件の新規顧客を開拓する目標を「まずは3件、次に5件」と段階的に設定することで、達成感を味わいながらスキルを高めていけます。 - フィードバックを通じて適切なチャレンジを見つける
自分だけで判断が難しい場合、定期的に上司や同僚からフィードバックを受け、いまのチャレンジが適切かどうか確認します。もし難しすぎると感じる場合は調整することで、適切な目標を設定しやすくなります。
3つの実践方法から、時間や目標、期限を細かく区切ることによる「達成感の得やすさ」と「集中のしやすさ」がフローの入り口として重要であることがわかります。たしかに、締切間際になると、集中力が増したという経験はだれしも一度は経験があるのではないでしょうか。
そのような状況を意図的に作り出すことで、フロー体験への道は作られていくのです。
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フロー状態は、私たちの仕事に新しい可能性をもたらします。
25分の集中から始まり、具体的な目標設定を経て、少しずつ難しいタスクに挑戦していく。その過程で、時を忘れるほどの没頭や、思いがけないアイデア、新しい成果を体験するはずです。
それは、単なる「仕事術」を超えた、あなたの才能との出会いかもしれません。今日から、一歩ずつフロー状態に近づいてみませんか。
*1 TED|Flow, the secret to happiness
*2 女性セブンプラス|自律神経の名医が教える集中力を高める「ポモドーロ・テクニック」とは?
*3 Harvard Business school|Goals Gone Wild: The Systematic Side Effects of Over-Prescribing Goal Setting
髙橋瞳
大学では機械工学を専攻。現在は特許関係の難関資格取得のために勉強中。タスク管理術を追求して勉強にあてられる時間を生み出し、毎日3時間以上勉強に取り組む。資格取得に必要な長い学習時間を確保するべく、積極的に仕事・勉強の効率化に努めている。