年1,000ページ資料をつくる “箇条書きのプロ” 直伝。相手を満足させる最強の項目数は〇個だ!

菅原大介さん「箇条書きの質を決めるロジック」01

日々のメールに企画書、各種の報告書などさまざまなビジネス文書に欠かせないものが「箇条書き」です。あまりに日常的に使っているものだけに、その良し悪しについて考えたことがないという人がほとんどではないでしょうか。

しかし、著書『新・箇条書き思考』(明日香出版社)が好評を得ているリサーチャーの菅原大介(すがわら・だいすけ)さんは、「ロジック」に着目することで格段によい箇条書きになると言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

ロジカル・シンキングの知識が招く箇条書きにおける失敗

ビジネスにおいて箇条書きをよりよく使うためには「ファクト」が大切です。ファクトとは、会議資料に使う販売データや顧客の行動データといった「事実情報」のこと。これらを適切に使うことが重要なのです(『あなたも絶対やっている「ダメな箇条書き」4パターン。直すには “これ” の扱い方に注意せよ』参照)。でもじつは、もうひとつ大事な要素があります。それが、ロジックです。

ロジックとは「論理」を意味する言葉であり、特にビジネスシーンにおいては「ロジカル・シンキング」や「論理的思考力」そのものを表すこともあります。そして、そのロジカル・シンキングにおいては、「要点は3つにまとめる」「必要な要素を漏れなくダブりなくそろえる」(MECE:「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive(漏れなくダブりなく)」の略)といった手法が広く知られています。

ただ、それらの手法を知っていてこだわってしまうがゆえに、箇条書きをする際に失敗を招いてしまうケースもあるのです。

【ロジカル・シンキングの知識が招く箇条書きの失敗例】

  • 「要点は3つにまとめる」
    →無理にひねり出した3つめの項目が弱い
  • 「必要な要素を漏れなくダブりなくそろえる」
    →膨大な連絡や報告をしてしまう

「要点は3つにまとめる」ことにこだわった結果、無理やり3つめの項目をひねり出すようなことになってしまうと、読み手には、「どうして先の2つと並んでこれが入っているのか?」と疑問をもたれることになります。それがなんらかの提案をするような場だったときには、「この提案は大丈夫か?」というネガティブな感想をもたれる可能性もあります。

また「必要な要素を漏れなくダブりなくそろえる」ことにこだわりすぎると、「あれもこれも!」と考えてしまい、「必要な要素」ではないものも入れ込んでしまうという失敗を犯します。

これはどちらもロジカル・シンキングにおける典型的な手法の「形式」にこだわった結果の失敗です。形式はあくまで形式と考え、箇条書きによって相手に何を伝えたいのか、相手にどうしてもらいたいのか、そしてそのために必要な項目とは何かを考えることがなにより大切です。

菅原大介さん「箇条書きの質を決めるロジック」02

共通のトピックスに関する項目を1カ所にまとめる「ハイライト」

そういう点でも、箇条書きにおけるロジックとは「相手の共感を呼ぶ論拠」だと私は考えています。ビジネスで重要となるのは、相手に共感してもらい、なんらかのアクションをしてもらうことです。では、相手の共感を呼ぶために重要なこととは何か。ここでは、具体的なシチュエーションを例に挙げつつ、ふたつの手法を解説しましょう。

【「相手の共感を呼ぶ」箇条書きの手法】

  • ハイライト:共通のトピックスに関する項目を1カ所にまとめる
  • コレクション:8個の項目を集める

ひとつめは、私がハイライトと呼んでいる手法。スポーツの試合におけるある選手のプレーに絞ったダイジェスト映像のように、共通のトピックスに関する項目を1カ所にまとめることです。これは特に、「情報量が多い長編資料の報告」といった場面で有効です。

会社で重要な決裁を行なうような場面では、さまざまな立場の人が納得できるように、販売情報に顧客情報、競合情報など数多くのデータが必要になります。もちろん、それらすべてを読み上げていては、読み終わる頃には重要なポイントを出席者が忘れてしまうということが起きてしまいます。

そこで、本編の内容を箇条書きで要約するまとめのパートが重要になります。しかし、順を追って長い資料をただ焼き直したようなものだと、そのまとめも長くなってしまうでしょう。そうではなく、資料のなかの特定のトピックスについての項目は1カ所にまとめるのです。いわば、箇条書きのグループをいくつかつくっていくのです。

たとえば、「食」に関する長編資料なら、食材の購入場所に食材に対するこだわり、外食の頻度、飲食店を選ぶ基準、自炊する頻度、調理にかける時間、デリバリーの利用経験や利用頻度、参考にしているメディアなど多岐にわたる情報が含まれるでしょう。それらをいかに要約しようとも、ただ順を負ってまとめただけでは、そのまとめは冗長でわかりづらいものになってしまいます。

そうではなく、たとえば「外食」に関すること、「調理」に関することというふうにグループ分けをするのです。そうすることで、そのまとめと箇条書きは格段にわかりやすくなり、読む相手の共感を呼ぶことにもつながります

菅原大介さん「箇条書きの質を決めるロジック」03

「8個」の項目でインパクトを生み出す「コレクション」

ふたつめの手法がコレクションです。これは「プレゼン」などなんらかの提案を行なう場面で有効な、8個の項目を集めるという手法です。企画の提案をするなら、8つの企画を提案するということになります。

企画を提案するのに、企画の数が2つや3つではいかにも少ないですよね。かといって、20個も30個も企画を立案するのは現実的に難しいですし、それらすべてが同じように力がこもった企画なのかどうか疑わしいとプレゼンの聞き手は感じるでしょう。

そこで、「8個」を目安にしてほしい。8個というのは、通常のフォントサイズでスライド1ページをきっちり埋めることができ、プレゼン資料の目次ページに入れたときに収まりがいい数字です。そんなことも手伝い、「こんなに考えてきてくれたんだ」とか「いい話をたくさん聞けそうだ」という期待感を聞き手にもたせることができます。

もちろん、「8個じゃなければ駄目」というわけではありません。8個を目指した結果、項目が7個になっても9個になってもいいでしょう。いずれにせよ、8個前後の数字を目安として目指すことをおすすめします。

箇条書きにおいて心がけるべきは、このコレクションにおける8個の項目のように、構成する項目の連なりでインパクトを生み出し、相手の心を動かすことです。ただ項目を並べるだけで終わるのではなく、その先でどうしたいのかということを常に意識してください。

菅原大介さん「箇条書きの質を決めるロジック」04

【菅原大介さん ほかのインタビュー記事はこちら】
長い文を区切るだけでは完全に無意味! 相手に伝わる「最高の箇条書き」の極意とは
あなたも絶対やっている「ダメな箇条書き」4パターン。直すには “これ” の扱い方に注意せよ

新・箇条書き思考

新・箇条書き思考

  • 作者:菅原 大介
  • 明日香出版社
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【プロフィール】
菅原大介(すがわら・だいすけ)
リサーチャー。上智大学文学部新聞学科卒業。マーケティングリサーチのリーディングカンパニー・マクロミルで外資系コンサル・大手広告代理店・シンクタンクチームに所属し、月次500点以上のファクトデータを収集するリサーチ業務に携わる。現在は国内通信最大手のグループ企業にて中期経営計画・ブランド策定など会社の意思決定に関わるロジックデータを手がけ、企画立案のために作成する資料は年間1,000ページに及ぶ。数字と言葉を駆使するプロフェッショナル職として、箇条書きを駆使した情報収集・情報発信に定評があり、アンケート・データ分析・資料作成などをテーマとしたnoteや講習会が好評を得ている。著書に『新・箇条書き思考』(明日香出版社)、『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』(明日香出版社)、『ウェブ担当者のためのサイトユーザー図鑑』(マイナビ出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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