長時間労働は知的好奇心を削ぐ。IQに並ぶほど重要な「CQ」とは

好奇心を育てる01

皆さんは、好奇心を失っていませんか? 

毎日同じ人と顔を合わせ、同じ人にメールを送り、同じ会議に出席し……。仕事に慣れるのはいいことですが、それと同時に楽しみや好奇心を失ってしまう事態は避けたいもの。

そこで今回は、「好奇心を失う」ことがどのようにワークライフに悪影響を及ぼすのか、そして、どうすれば失ってしまった好奇心を高められるのかについてご紹介します。

好奇心は、知能指数に並ぶほど重要な要素

コロンビア大学の経営心理学教授であるトマス・チャモロープリミュージク氏によると、テクノロジーが発展し、情報であふれている複雑な世の中でうまくやっていくには、CQ(curiosity quotient=好奇心指数)の高さが求められるのだとか。

同氏は、高いパフォーマンスを発揮するために必要な要素として、以下の3つを挙げています。

  1. IQ(intellectual quotient=知能指数)
    いわゆる頭の良さを測る指数。多くの人になじみのある言葉でしょう。容量が大きく処理速度が速いパソコンほど性能が高いのと同じように、知能指数が高い人ほど、複雑な問題を理解して処理することが得意とされています。
  1. EQ(emotional quotient=感情指数)
    感情指数の高い人は、対人関係に優れ、相手の感情を理解することや組織内での政治が得意とされています。また、ストレスや不安への耐性が高いため、複雑でストレスのかかりやすい環境に強い面も。
  1. CQ(curiosity quotient=好奇心指数)
    IQやEQに比べるとなじみのない言葉かもしれませんが、プリミュージク氏によると、これらに並んで重要な要素なのだとか。CQの高い人は、新しい経験にオープンで、興味を持ちやすいそう。
    また、答えのない問題など、あいまいなことに対しても落ち着いて対処できる素質を持っています。好奇心があるからこそ、複雑な問題にも地道に向き合えるのです。

「どうすれば売り上げが伸びるだろう?」「どうすればこのプレゼンが通るだろう?」
「どうすればこの会社で出世できる?」「今の仕事は、私に合っているだろうか?」

仕事やキャリアにおいては、明確な方程式や答えがあることは少なく、いくつもの複雑な問題が組み合わさっていることがほとんどでしょう。好奇心こそ、問題と真摯に向き合う能力かもしれませんね。

「自分には好奇心が足りない気がする」と感じる人に朗報です。プリミュージク氏によると、知能指数は生まれながらの能力で伸ばすのが難しいのに対し、EQとCQは、努力次第で伸ばせるそう。たとえ知性に恵まれなかったとしても、好奇心と努力があれば十分に補うことができるのだとか。

では、どうすればCQを高められるのでしょうか。

好奇心を育てる02

日本人は働きすぎている

働く時間が長すぎることは、好奇心を低下させる要因のひとつです。

OECDによる労働時間の国際比較調査によると、日本人の平日1日あたりの労働時間は年々増えており、残業時間においては、フランスの約3倍にものぼるそう。

また、世界最大級の総合旅行サイト エクスペディアの日本語サイト、エクスペディア・ジャパンの調査によると、日本人は他国に比べ、有給取得率が低いことも判明しています。

世界19ヶ国18歳以上の有職者男女計11,144名を対象とした調査によると、日本は3年連続最下位の50%という結果を出しているそう。また、「有給休暇の取得に罪悪感があるか」という質問に対しては、日本人の58%が「ある」と回答し、これは世界で最も高い割合なのだとか。

好奇心を育てる05

長時間労働は好奇心を削ぐ

働く時間が長すぎることは、私たちの好奇心にどのような影響を及ぼすのでしょう。OECD(経済協力開発機構)による働き盛りの労働時間と知的好奇心に関する調査によると、長時間労働が、知識への欲求(知的好奇心)を削いでしまっている可能性があるようです。

調査の対象となったのは各国の30〜40代の働き盛りの社会人。「新しいことを学ぶのが好きか」という質問に答えてもらい、回答者らの1週間の労働時間と比較したところ、労働時間が長い国ほど知的好奇心が低いというマイナスの相関関係が見受けられたそう。

たしかに、長時間働けばプライベートの時間も減りますし、体力や気力が低下する要因にもなりますよね。早朝に家を出て、夜遅くに帰宅する生活が続けば、睡眠時間も減り、新聞を読んだり読書をしたりする気力はなくなってしまうかもしれません。有給休暇を取れなければ、リフレッシュする機会も減ってしまいますよね。長時間労働の影響で、新しいことへの興味や、未知のことを吸収しようという意欲が低下してしまう……というのは、容易に考えられます。

自分も当てはまっていると感じる人は、働き方を見直したほうが、今度のキャリアや人生にプラスとなるかもしれません。

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「深掘り」すると好奇心が育つ

作家の石田衣良氏は、好奇心を高めるために、気になったことを半年ほどとことん調べることをすすめています。

掘り下げたいテーマを決めたら、それに関する本を10冊ほど読んでみるのがいいのだそう。たとえば、マラソンに興味を持ったのならば、マラソンに関する本を読むほかにも、実際に体験してみてもいいでしょう。マラソンサークルに入ったり、走り方教室で体に負担のかからない走り方を学んだりしてもいいですね。このように、好きなことや楽しいことに夢中になって取り組むことで、失われていた好奇心が湧いてくるのではないでしょうか。

石田氏は、このような「深掘り」を2〜3年続けてひとつのテーマをものにすることが、理想的な大人の勉強法であると語っています。たしかに、大人になると、仕事に関する勉強はしても、単純に好きなものを追求する機会は少なくなってしまう人が多いでしょう。

好奇心を育てる04

学びのための時間を作ろう

「仕事のために仕方なくやらなければならない学び」からは、たしかに仕事の達成感は得られるかもしれません。しかし、勉強すること自体に喜びを見出すのは難しいはず。自分で好きなテーマを選んで探求するからこそ、学ぶことの楽しさや、子どもの頃のように純粋に「新しいことを知りたい」という気持ちが芽生えてくるのではないでしょうか。

特に、先に述べたように、残業が多く有給取得率の低いビジネスパーソンの場合は、「深掘り」のための時間を作るのは難しいことでしょう。

前述したように、知的好奇心と働き方には相関性があります。会社と家の往復ばかりでくたくたになり、読書もしない、新聞も読まない、という場合は、視野が狭くなり、判断力も乏しくなってしまう恐れも。もしも全く休みが取れずに、仕事が終わっても帰りづらい空気があり、結局毎日残業している……などという場合は、転職を考えるのもひとつの方法かもしれませんね。

いまの職場には居続けたいけれど、仕事以外のことに手がつけられない状態の人は、ライフスタイルを見直してみるのをおすすめします。たとえば、朝20分だけ早起きをして本を読んでみてはいかがでしょう。「自分の力で自分の時間を作り、好きなことをしている」という実感が得られるのではないでしょうか。

また、有給が取りづらい場合は、2〜3ヶ月前から上司や同僚に相談し、有給を取ることを前もって周囲に知らせておくのがいいかもしれません。繁忙期などを除けば、前もって知らせておいた休暇を止める同僚はなかなかいないでしょうし、もしもそれでも出社を要求するようであれば、問題のある職場と考えていいでしょう。

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毎日が同じことの繰り返しで、言われたことをやり、帰宅するとへとへと……。このようなビジネスパーソンは、今後のキャリアを伸ばしていくのは難しいでしょう。

仕事には答えのない問題が山積みですが、CQ(好奇心指数)を育ててこそ、喜んで問題を解決する探究心や、仕事に興味を持ち楽しむ好奇心が養われていきます。ぜひ、自分から新しいことを学びたくなったり、先行きが不透明なことも興味をもって進めていけたりするような好奇心を高めてくださいね。

(参考)
Harvard Business Review|Curiosity Is as Important as Intelligence
YouTube|Why do so many incompetent men become leaders?
Newsweek|長時間労働で減退する、日本の働き盛りの知的好奇心
東洋経済オンライン|日本が「睡眠不足大国」に転落した3つの事情
Expedia|【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】 日本の有休取得率、有休取得日数、ともに世界最下位 「有給休暇の取得に罪悪感がある」と考える日本人は世界最多! 「上司が有給休暇の取得に協力的」と考える日本人は世界最少!
タウンワークマガジン|好奇心がない自分。どうしたら備わる?

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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