たとえば人に自分の意見を述べたとき、ストレートに「それは違うと思います。わたしは○○と考えます」と言われるよりも、もっとソフトに「おっしゃる通りですね。ただ○○という見方もできると思うのですが、いかがでしょうか?」と言われたほうが、相手に対する印象はいいですよね。このように、同じような内容であったとしても、伝え方ひとつで印象はガラリと変わります。
どうせなら好感度の高い伝え方をしたほうがお得ですよね。そこで今回は、心地いい伝え方の方法を考えてみました。すぐに使えて効果抜群のフレーズを作るコツに迫っていきましょう。
(※記事中の人物の肩書は記事公開当時のものです)
好感度がアップする「アサーション」という技法
自分も相手もハッピーになれる、よりよい伝え方――そのヒントは「アサーション」にあります。日本カウンセリング学会理事の平木典子氏によると、アサーションとは、自分も相手も大切にした自己表現やコミュニケーションのこと。つまり、自分にとっても相手にとっても気持ちのいいコミュニケーションを目指す方法論といえます。
アサーションの実践には、以下の3つの要素が必要とされるそうです。
- 自分の気持ちや意見をはっきりさせる
まずは、言いたいことは何なのかを自分の中で明確にします。 - それを具体的に表現するスキルを身につける
言いたいことが決まったら、今度は適切な表現方法を選びます。 - 相手の思いを理解する
言いたいことを適切に伝えるだけでは不十分で、聞く力も必要です。
今回は、2つ目の「具体的に表現するスキル」に注目。角が立たない好印象な表現方法のポイントを3つご紹介しましょう。
好感度が高まる3つの技法
1. 非難を含んだ「なぜ」「どうして」は使わない
基本的に、「なぜ?」という言葉は理由を聞くために使われます。しかし、時に相手を非難する意味で「なぜ?」という言葉が使われることもありますよね。後者の場合、聞き手が「非難された」と感じ、要らぬ衝突が生まれてしまうことも。ですから、「なぜ」や「どうして」を使うときには要注意です。
平木氏は、もし理由を聞きたいときは「何か理由があったの?」「どんなふうにしてそうなったの?」などと言うことをすすめています。
2. アイメッセージを使う
コミュニケーション総合研究所代表理事であり、コミュニケーション本を約20冊も執筆している松橋良紀氏によると、自分の要求や要望を伝える方法は、2つあります。
- ユー(You)メッセージ:「あなた」が主語
- アイ(I)メッセージ:「 私 」が主語
下記の2つの言い方を比較してみてください。
- (あなたは)もっとわかりやすく説明してください。
- ( 私は )もっとわかりやすく説明してもらえるとうれしいです。
前者の主語は「you」で、後者の主語は「I」です。前者は命令されているような感じがする一方、後者は自分の気持ちをソフトに伝えているような印象を抱きますよね。つまり、主語を「あなた」にするか「私」にするかで、印象が大きく左右されるのです。
3. 変な前置きをしない
「あのー」「そのー」「えーと」などの余分な言葉が多すぎたり、「私が間違っているかもしれませんが……」などの自己否定的な前置きをしたりすると、「どうぞ無視してけっこうですよ」と暗に言っていることにもなり、相手から軽視される可能性があると、平木氏は指摘します。
確かに、無駄な言葉をはさんだり、わざわざ自分の発言の価値を下げるような言葉を使ったりする必要はないですよね。仮に前置きをするなら、否定的なものではなく、肯定的なものにしましょう。
「好感度がアップする方法」を実際に考えてみた
というわけで、上記3つのテクニックを使ってみましょう。好感度がダウンする言い方をどのように変えれば、好感度をアップさせられるのでしょうか。
少し言葉を変えただけで、劇的に印象が変わりましたね。
前者は、ストレートかつネガティブで、感じが悪く聞こえます。もしかすると、この言い方をする人は極端に正直なのかもしれませんね。もちろん、本音をストレートに伝えることも大切ですが……度が過ぎると、あまりいい印象を受けません。
反対に、後者はソフトかつポジティブで、何より感じがいいです。物腰が柔らかい人は、きっとナチュラルに、このテクニックを使えているのでしょう。
あなたの周りに人にも、意識的にアサーションを使っている、あるいは無意識的にアサーションを使えている人がいるはず。もし印象がいい人を見つけたら、いろいろ会話をしてみて、どういうテクニックを使っているのか観察するのもおもしろいでしょう。
相手の感情に配慮すると伝え方の印象は上がる
ここまでを踏まえると、好感度の高い言い方の大きな特徴として「相手の感情に配慮している」という点が挙げられるでしょう。反対に、好感度の低い言い方は、論理に傾倒しすぎています。
たとえば、お店で「クレジットカードは使えますか?」と聞いたとき、「使えません」とキッパリ即答されたらどうでしょう。「そんなにストレートに言わなくても……」と感じますよね。たしかに、聞かれた質問に対して、矛盾のない的確な回答をしていますが、相手に対する気遣いはあまり感じられません。一方で、「申し訳ございませんが、取り扱っておりません」と、少しでも感情に配慮した言葉があると、ガラッと印象は変わります。要するに、意味が伝わればいいというわけではなく、感情に配慮できているかが印象の決め手になるのです。
そのための伝達手段として、「なぜの言い換え」「肯定的な前置き」「主語は私」という3つのテクニックを、ぜひ意識してみてください。
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言葉の印象は、ちょっとした工夫をするだけで雲泥の差が生まれます。試行錯誤を重ねていれば、きっと自分にピッタリの言葉が見つかるはず。伝え方を工夫して、周囲から好かれる人を目指しましょう!
(参考)
JTUA本部サイト|第1回 自分も相手も大切にする、自他尊重の自己表現「アサーション」
JTUA本部サイト|第8回 上手に「質問」を使い、コミュニケーションを深める
JTUA本部サイト|第20回 言葉以外のアサーションを知ろう
リクナビNETジャーナル|人を動かしたいなら、「アイメッセージ」を使いこなせ
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