AIを『最強の同僚』に変える 実践的スキルアップ術

自室のデスクでパソコンの画面を見るビジネスパーソン

「今の仕事がなくなるかもしれない」――ChatGPTの登場で、そんな不安を抱える人が増えています。しかし実際には、AIは私たちの「最強の同僚」となる可能性を秘めています。

本記事では、AIと共に成長するための具体的な戦略と、すぐに実践できるスキルアップ方法をご紹介します。

画像生成AI、音声AI、コード生成AIなど、次々と革新的なAIツールが登場し、ビジネスの現場に急速に浸透しています。これからもビジネスの第一線で活躍し続けるためには、時代に合わせてスキルや知識をアップデートしていくことが重要です。

AI時代の到来と働き方の変化

AIはすでに、スマートフォンの機能や自動運転技術など、さまざまなサービスに組み込まれています。特に2022年にリリースされたChatGPT以降、文章や画像を生成するAIが個人レベルでも普及し始めました。この変化は今後さらに加速すると予測されています。ガートナーの予測によれば、2028年までに日常業務の15%がAIエージェントによって自律的に行われるとされています。*0

この変化は、私たちの働き方を根本から変えようとしています。東京情報デザイン専門職大学教授の澁谷利行氏は、「工場での製造ライン作業や事務処理のデータ入力、解析など、一昔前まで人が手作業で行っていた多くの仕事が、今ではAIによって自動化が進んで」いると指摘します。しかし、これは単なる「仕事の喪失」ではなく、人間の役割の「進化」を意味しているのです。*1

つまり、繰り返し同じ作業をする仕事は、AIが得意とする分野であり、今後人間が担うことは減るのです。

一方で「人間関係のコミュニケーションや創造的な思考、そして柔軟な判断は、AIが苦手」な分野だと述べる澁谷氏。このようなAIの苦手な分野を人間が補完し、AIと共存することがこれからのビジネスパーソンには求められるでしょう。

【チェックリスト】あなたの仕事のAI活用度をチェック

□ 日常業務で同じような作業を繰り返すことが多い
□ データの入力や整理に1日の30%以上の時間を使っている
□ 定型的なメールや文書作成が業務の中心
□ レポートの作成や数値分析に多くの時間を費やしている
□ 標準的な手順やルールに従って判断を行うことが多い

3つ以上当てはまる方は、AI活用による業務効率化の余地が大きいと言えます。
しかし、これは危機ではなくチャンス。次のセクションで、あなたの仕事をアップデートするための具体的な方法をご紹介します。

ビジネスパーソンとAIを表す画像

AIとパートナーシップを深める

AIは情報分析やデータ処理の分野で特に威力を発揮しますが、そのすべてが自動で解決できるわけではありません。現場の課題解決において、AIの力を効果的に引き出すためにはAIと人間が対等なパートナーとしてともに働くことが求められます。

AIとの共存を成功させるために重要なのは、AIが得意とする部分と人間が得意とする部分を正しく理解し、適切にタスクを分担することです。

たとえば、AIは膨大なデータの高速な処理やパターン認識が得意ですが、創造的なアイディアや人間関係に配慮した判断力はまだまだ人間の強みです。そのため、AIにデータ分析やパターン抽出を任せ、最終的な意思決定は人間が行うという役割分担が大切です。

ノートパソコンが置かれたデスク上の様子

前出の澁谷氏は「AIと人間が協力して新しい価値を生み出す仕事が出現」していると述べ、医療業界で期待されている例を挙げています。「AIを使って病気の診断をサポート」しつつ、AIが苦手な「診断における最終的な判断や患者に寄り添ったコミュニケーション」は人間が行なうそうです。*1

AIが提示する結果をもとに、人間が意思決定できることもパートナーシップの要と言えるでしょう。

また、たとえばAIが市場のトレンド分析結果を示した場合に、単にデータを鵜呑みにするのではなくビジネスの文脈や過去の知見を踏まえて読み解く必要があります。データが示す「結果」をそのまま採用するのではなく、「どのように解釈すべきか」を判断し、それを具体的なアクションに結びつける意思決定力が、AI時代に活躍するためのカギとなるのです。

ノートパソコンを手にほほ笑むビジネスパーソン

すぐに始められるAI活用アクションプラン

Phase 1:基礎力の構築(最初の1ヶ月)

  • ChatGPTで業務効率化:
    • 定型メールの文章作成補助
    • 会議議事録の要約作成
    • データ分析のコード作成支援
  • セキュリティガイドラインの確認:
    • 社内のAI利用ポリシーの確認
    • 機密情報の取り扱い基準の理解

Phase 2:実践力の向上(2-3ヶ月目)

  • 業務プロセスの最適化:
    • 定型業務の20%をAI化
    • レポート作成時間を半減
    • データ分析の自動化
  • チーム内での共有:
    • 成功事例のドキュメント化
    • AIプロンプトライブラリの作成

Phase 3:発展的活用(4-6ヶ月目)

  • プロジェクトでの活用:
    • 市場分析の自動化
    • 提案書作成の効率化
    • 顧客フィードバックの分析
  • 効果測定と最適化:
    • 業務効率化の定量評価
    • AI活用プロセスの改善

*このアクションプランは、あくまで一例です。自身の業務内容や組織の状況に応じて適宜カスタマイズしてください。
*各フェーズの期間は目安であり、習熟度に応じて調整することをお勧めします。

セキュリティ対策とモラルを追求する

セキュリティ対策を万全に

AIツールの活用には、情報漏洩や誤った情報の取得といったリスクが伴います。コンサルティング企業のアクセンチュアのAI・アナリティクス部門によれば、特に「インプットの段階での情報漏洩」と「アウトプットの正確性」に注意が必要とされています。*3 では、具体的にどのような対策を取るべきでしょうか。以下、実践的な対策をご紹介します。

■ データ入力時の注意点

確認項目 具体的な対策
機密情報 ・個人情報を含むデータは必ずマスキング
・社内機密情報は入力しない
・製品開発情報は抽象化して記載
データ保存 ・AIツールの学習機能をOFFに設定
・チャット履歴を定期的に削除
・ログアウトを徹底

■ AIの出力内容を検証するステップ

Step 1:基本確認 ・事実関係の確認
・数値やデータの検証
・引用元の確認
Step 2:詳細チェック ・社内ガイドラインとの整合性
・法的問題の有無
・倫理的な問題の有無
Step 3:最終確認 ・上司・同僚のレビュー
・必要に応じて専門家に確認
・公開前の最終確認

※上記の対策は一般的な指針です。実際の運用では、各組織のセキュリティポリシーに従ってください。
※定期的に最新のセキュリティ情報をキャッチアップし、対策を更新することをお勧めします。

モラルを高める

人気歌手や声優の声を無断でAIに学習させ、無関係な歌を歌わせたり、朗読をさせたりするカバー動画などが問題となったことは、みなさんの記憶にも新しいでしょう。*4

生成AIを使い、無断で作成した音声・映像に対するルールづくりを訴える声優の団体「『NOMORE無断生成AI』有志の会」に参加する声優の山寺宏一氏や中尾隆聖氏などが、「『無断での商業利用はもっての外』『AIと良い意味で共存していく道を探らなければ』などの考えを示した」という報道を目にした方も多いと思います。*4

AIを使用すれば簡単に生成物をつくることができてしまいますが、商業利用を目的としたこうした行為は著作権の侵害にあたります。

自らのAI活用法が他者に損害や不利益を与えるものでないか、常に確認する姿勢が求められていると認識しましょう。

声優の方々の発表のように「AIと良い意味で共存していく道を探」りながら、良識のあるビジネスパーソンとしてモラルを高めていきたいものです。

ノートパソコンの画面を真剣な表情で見るビジネスパーソン

***

AI時代に求められるのは、テクニカルスキルだけでなく、人間ならではの判断能力やモラルです。一朝一夕にはいきませんが、できることから少しずつ始めていくことが重要です。

以下の3点を意識しながら、自分のペースでAIリテラシーを高めていきましょう:

・AIの特性を理解し、得意分野を活かす
・セキュリティとモラルを常に意識する
・人間ならではの創造性と判断力を磨く

AIは私たちの「最強の同僚」となる可能性を秘めています。本記事で紹介した考え方やポイントを参考に、AIとの効果的な協業を目指してください。

※引用部分の太字は編集部が施した

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。

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