「即決する人」ほど成長が速い。重要なのは思考回数よりも試行回数

「判断」の遅れは、単なる性格の問題ではありません。そうなるのは、思考の設計が曖昧なままであることの表れといえるかもしれません。そしてもうひとつ、多くの人が見落としているのが、「経験は振り返らなければ資産にならない」という事実です。『できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者でありマーケティングコンサルタントの宮脇啓輔さんは、判断の早さと成長スピードは密接に結びついていると指摘します。即決できる人の思考プロセスと、成果を再現可能にする振り返りの習慣とはどのようなものでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
宮脇啓輔(みやわき・けいすけ)
1991年3月6日生まれ、滋賀県出身。株式会社unname 代表取締役。マーケティングコンサルタント。日経COMEMOキーオピニオンリーダー。立教大学卒。2014年、新卒で株式会社サイバーエージェントに入社。社会人としてのスタンス、コミュニケーション力、基礎動作などのソフトスキルを習得し、Web広告運用コンサルタントとして月間1.5億円の運用実績を挙げる。2017年、上場前のBASE株式会社に入社し、アプリマーケティングを担当。2018年、株式会社ペイミーにCMOとして参画し、BtoBマーケの立ち上げからビジネスチーム全体のマネジメントまで行う。2019年、株式会社unnameを創業。BtoB企業を中心に累計約50社のマーケティング支援を行う。現在は総合マーケティングカンパニーとして、支援業務以外に、研修事業、プロダクト事業などを展開している。社内Slackで情報発信をしていたところ、「外に発信しないともったいない」といわれ、Xとnoteで20〜30代向けに発信をはじめる。そのひとつである「『頭の回転が速い』を科学する」がnote社主催の創作大賞2024入選。

即決の鍵は「リスクとリターン」の言語化

仕事において「判断が早い人」は、それだけで評価されやすいものです。ただし、その違いは単なるスピードにあるわけではありません。重要なのは、「どう判断しているか」です。判断の質が高いからこそ、結果として意思決定が早くなるのです。

判断が遅くなる原因の多くは、選択肢ごとのリスクとリターンが整理できていないことにあります。なにが得られて、なにを失う可能性があるのか。それらが曖昧なままでは、どれだけ時間をかけても結論にはたどり着きません。考えているようで、実際にはただ迷っているだけという状態なのです。

一方、判断が早い人は、この整理を先に行っています。それぞれの選択肢を比較し、どの程度のリスクを取るのかを自分なりに決めているのです。判断基準が明確になっているため、迷う時間が最小限に抑えられるというわけです。

さらに重要なのは、「あと戻りできるかどうか」という視点です。すべてのリスクを同じ重さで捉えるのではなく、取り返せるものかどうかで分けて考えます。やり直しがきく判断であれば、過度に慎重になる必要はありません。むしろ、あと戻りできる選択肢ならば、早く決めて試したほうが合理的です。仮に失敗したとしても、その経験は次の判断の精度を高める材料になるでしょう。

このように、リスクとリターンを言語化し、あと戻りできるかどうかで判断する。このふたつの軸を持つことで、意思決定は格段にスムーズになります。即決できる人は、単に直感で動いているのではなく、こうした思考プロセスを踏んでいるのです。

選択肢を比較しているビジネスマン

重要なのは思考回数よりも試行回数

また、判断に時間をかけ過ぎる背景には、「失敗したくない」という意識も潜んでいます。しかし、「ビジネスの課題が複雑化している」ともいわれる現代においては、あらかじめ正解が見えているケースは多くありません。だからこそ、先述したように、考え続けるよりも試してみることのほうが重要になるのです。

思考だけでは、現実の結果にはたどり着くことができません。どれだけ頭のなかでシミュレーションを重ねても、実際にやってみなければ見えないことがあります。行動して初めて、なにがうまくいき、なにがうまくいかなかったのかが明らかになるのです。

その意味で重要なのは、思考回数よりも試行回数です。短いスパンで試し、結果を見て修正し、また試す。このサイクルをどんどん回すことで、学びは加速度的に増えていきます。一度の思考に長く時間をかけるよりも、複数回の試行から得られる情報のほうが、はるかに有効といえるでしょう。

また、時間の使い方という観点でも、この考え方はとても重要です。当たり前のことですが、私たちの時間には限りがあり、判断を先送りし続けることはそのまま機会を逃すことにつながります。早く試して、早く修正するほうが、結果として効率的なのです。

さらに、「決めない」という選択もひとつの意思決定だという認識を持っておいてほしいと思います。重要なのは、迷い続けることではなく、「まだ判断材料が足りない」「だからいまは決めない」と決めることです。判断のタイミングを自分でコントロールできるようになると、意思決定の負担は大きく軽減されるでしょう。

電球マークのイラスト振り返りが「知っている」を「できる」に変える

もうひとつ、成長に大きく影響するのが「振り返り」です。どれだけ早く意思決定をして経験を積んでも、それを振り返らなければ、実践的な知識として定着することはありません。経験をそのままにしているだけでは、資産にはならないのです。

学びには段階があります。それは、「知る、わかる、できる、教える」という4つのステップです。本を読んだり話を聞いたりするだけでは、「知る」で止まることがほとんどです。たとえば、読書をしてどれだけ陶芸の知識を得たとしても、初心者がいきなり上手にろくろを使うことはできませんし、まして人に教えることなど不可能でしょう。実際にやってみて、初めて「わかる」や「できる」に近づいていきます。

その差を生むのが、振り返りなのです。経験したことを言語化し、なにがよくて、なにが課題だったのかを整理する。このプロセスを経ることで、経験は再現性のある知識へと変わっていきます。

そして、振り返りにおいてまず重要なのは、「すぐに振り返る」ことにあります。完璧主義で真面目な人ほど「きちんと時間をとって振り返ろう」と考えがちですが、そこに落とし穴があります。なぜなら、時間が経つほど記憶は曖昧になり、学びの精度が下がるからです。

一方、ちょっと矛盾するようですが、「時間を置いて振り返る」ことも有効です。すぐに振り返ったときのメモなどを翌日や数日後に見返すことで、より客観的に冷静に自分の行動を捉えられます。当時は気づけなかった課題や改善点が見えてくることも少なくありません。

さらに、「うまくいったときも振り返る」ことも忘れないでください。振り返りというと「失敗の反省」だと捉える人も少なくありませんが、失敗だけでなく成功も分析することで、再現性のある行動パターンが見えてきます。好結果を偶然で終わらせず、次につなげることができるというわけです。

こうした振り返りを習慣化することで、経験は「知っている」から「できる」へと変わっていくでしょう。成長の差は、経験の量だけではなく、振り返りの質と回数によっても大きく左右されるのだと思います。

自身の書籍を手に持つ宮脇氏

宮脇啓輔さん ほかのインタビュー記事はこちら】

できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術

できる人が大事にしている 複利で伸びる仕事術

  • 作者:宮脇啓輔
  • ディスカヴァー・トゥエンティワン
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【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。