習慣化はまず「10秒でできること」から始めなさい。

大平信孝さんインタビュー「習慣化のための10秒アクション」01

「今年こそきちんと勉強をする」
「定期的に運動をしてダイエットする」
こんなふうに目標を掲げたはいいものの、習慣化できないまま頓挫してしまった……そんな経験がある人は多いのではないでしょうか。

多忙な毎日を送るビジネスパーソンにとって、新たな習慣を身につけるのはそう簡単ではありません。では、どうすれば続けられるようになるのでしょうか。

「目標実現のスペシャリスト」でメンタルコーチの大平信孝(おおひら・のぶたか)さんは、「10秒アクション」をすすめてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

「頭の声」ではなく「心の声」に耳を傾ける

続けられないことにはいくつかの原因があります。

1つめは、意外に感じるかもしれませんが「本当は続けたいと思っていない」ということ。これは、私が「頭の声」と呼んでいるものに起因します。

たとえば、「しっかり勉強している同僚たちに取り残されたくないから、勉強をしよう」というような気持ちは、本心とは言えないこともあります。「こうしなければいけないな」と頭で考えた結果の望み――つまり、頭の声に耳を傾けて行動しようとしているわけです。

もちろん、締め切り効果という言葉があるように、短期的には外部からの力によって行動できることもあります。でも、中長期的に続けるには、本心から望んでいるものでないと、継続するのは簡単ではないのです。逆に言えば、頭の声ではなく「心の声」に耳を傾け、本心から「続けたい」と思っているものなら、たいていは継続することができます

頭の声に耳を傾けやすい人は、往々にして真面目な性格の持ち主です。なおかつ、「このままではいけない!」という危機感や向上心も持っている。だからこそ、「ビジネスパーソンとして成長するには、こういう習慣を身につけなければ……」というふうに頭で考えてしまうのです。

もちろん、ビジネスパーソンである以上、仕事などで必要な資格を取得するための勉強習慣を身につけることを要される場合もあるかもしれません。でも、本心では「続けたい」と思っていないことを習慣にするのは難しいと思いませんか? それを実現するための方法は、のちほどお伝えしましょう。

大平信孝さんインタビュー「習慣化のための10秒アクション」02

脳は成功体験より失敗体験を強く記憶する

続けられない2つめの原因は、「自分には続けられないと思い込んでいる」こと。これは、脳の防衛本能によるものです。

人間の脳は、同じ失敗を繰り返さないために、成功体験より失敗体験のほうをより強く記憶するようにできています。そのため、過去にはきちんと習慣化できたことがあったとしても、どうしても勉強やダイエットが続かなかったといった失敗体験ばかりが思い出され、「自分は習慣化できない人間だ」と思ってしまうのです。

そうであるなら、成功体験を思い出してあげればいいだけの話。とは言っても、ただ漫然と過去を振り返ると、それこそ強く記憶に刻まれている失敗体験ばかりを思い出して逆効果になってしまいかねません。ですから、どんな小さなことでもいいので、過去にうまくいったこと、なにかを続けられたことを丹念に振り返ることが大切になります。

習慣化が苦手だと思っている人も、よくよく考えてみれば、中学生のときには毎朝ジョギングをしていたとか、受験生のときには毎日本当によく勉強したとか、絶対に1つや2つは続けられた経験があるはずです。それらを思い出せれば、「自分には続けられない」という思い込みをくつがえし、新たな習慣を身につけるために動き出せるはずです。

続けられない3つ目の原因が、「見積もりが甘い」こと。何かを始めようとするときは、たいていの人が「今年こそしっかり勉強するぞ!」となどと意欲に燃えていて、モチベーションが非常に高い状態です。だからこそ、「これくらいのことはできるだろう」と高い目標を掲げてしまう

でも、いざ日常に戻ると……スケジュールは詰まっているし、日々の仕事や生活に追われて肉体的にも精神的にも疲れている。しかも、もともと人間は「できない理由」を並べることが得意な生き物です。結果的に、「今日はちょっと体調がよくないから……」「今日は忙しいから……」というふうに自分に言い訳をし、物事を続けられなくなるのです。

大平信孝さんインタビュー「習慣化のための10秒アクション」03

小さなアクションで達成感を味わう

そこで、続けたいことをきちんと習慣にするため、私が提唱する「10秒アクション」を試してみてください。やり方はとっても簡単。やりたいことを “10秒程度でできること” に細分化し、それらを少しずつでもいいのでやっていくのです。

そして、「細分化したパートのすべてをやらなくてもいい」と考えることも大切。たとえば、ジョギングを習慣にしたいとしましょう。でも、「決めたコースをきちんと走らないとジョギングしたことにならない」と考えてしまうと、先に挙げたような「今日はちょっと体調がよくないから……」「天気があまりよくないから……」といった言い訳をして腰が重くなり、続かなくなります。

そうではなく、ジョギングであれば「シューズを玄関に出す」「シューズを履く」だけでもいいのです。それでOKとしましょう。そうすれば、ほんの10秒でできる小さなアクションでも達成感を味わうことができます

そして、シューズを履いたなら、「玄関のドアを開ける」という次のアクションもごく自然にできるはずです。そのうち、「ジョギングの前に近所を散歩する」というアクションに続いて、気づいたら走っていたということにもなるでしょう。

勉強の場合なら、それこそ「机に向かう」「参考書を開く」ということから始めればいいだけのこと。そのように考え、すべてを最初から完璧にやろうとするのではなく、小さなアクションから始めて、いずれやりたいことの全体をやれるようになればいいのです。

大平信孝さんインタビュー「習慣化のための10秒アクション」04

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【プロフィール】
大平信孝(おおひら・のぶたか)
1975年生まれ、長野県出身。株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役。第一線で活躍するリーダーのためのメンタルコーチ。中央大学卒業。会社員時代、自身がキャリア構築や部下育成に悩んだ経験から、脳科学とアドラー心理学を組み合わせた独自の目標実現法「行動イノベーション」を開発。これまで1万人以上のリーダーの人材育成・セルフマネジメント・キャリア構築に関する悩みを解決してきた他、アスリート、トップモデル、ベストセラー作家、経営者など各界で活躍する人々の目標実現・行動革新サポートを実施。その功績により、メディアからの注目も増加中。メルマガを毎日執筆し、オンラインサロン「行動イノベーションLabo」も運営中。主な著書に「先延ばしは1冊のノートでなくなる」(大和書房)、『「やめられる人」と「やめられない人」の習慣』(明日香出版社)、『本気で変わりたい人の行動イノベーション』(だいわ文庫)、『たった1枚の紙で「続かない」「やりたくない」「自信がない」がなくなる』(大和書房)、『今すぐ変わりたい人の行動イノベーション』(秀和システム)、『指示待ち部下が自ら考え動き出す!』(かんき出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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