「チームメンバーの態度が冷たくなった気がする……」
「なんだか嫌われている感じがして、仕事に集中できない……」
思い当たることもないのに、あなたがそう感じているのだとしたら、無自覚に雰囲気を悪くする行動をとっている可能性が。
「職場の仲間から嫌われてもいい」と思えるほど、強い心でいられる人は少ないはず。人間関係に傷をつけないためにも、うっかりやりがちなことを見直していきましょう。
今回は、チームの雰囲気を悪くする人の5つの特徴を指摘しながら、改善策をお伝えします。
1. 求められていないアドバイスをする
部下・後輩に対してはもちろん、同僚にも、仕事上のアドバイスをすることは珍しくないでしょう。しかし、よかれと思ってアドバイスしたはずなのに、相手に嫌な顔をされてしまった……そんな経験はありませんか?
精神科医の水島広子氏は、基本的にアドバイスはおすすめしないと言います。その理由は、アドバイスには「現状ではダメだから、こう直したら?」という、現状否定のニュアンスが必ず含まれてしまうから。
アドバイスをした側にたとえ否定の意図がなかったとしても、求めてもいないアドバイスをされた側にしてみれば、「自分のやり方を否定された」と感じ、不快になる可能性があるのだとか。
アドバイスの代わりに水島氏が提案するのは、教育(専門的助言)。ここで言う教育とは、現状を肯定したうえで必要な情報を伝えることだそう。
たとえば、「そのやり方も合っていると思う」といったん肯定し、「だけど、ほかにもこんな方法があるよ」と必要な情報をつけ加えてみましょう。相手のプライドを傷つけずに、さりげなくヒントを与えるようにすると、相手からの反発心もなくなるはずです。
2. 正論を振りかざしがち
「それは違います。正しくは……」と、取引先や上司など相手をかまわず、はっきり正論でぶつかること。それは強みではありますが、行きすぎて論破してしまうと、気まずい関係になる可能性があります。
心理学博士の榎本博明氏によると、人は理屈よりも感情で動くものだとか。特に他人に忖度せず個々の意見を発言する傾向にある欧米諸国とは違い、日本はいまだ人間関係や場の雰囲気を重視する文化が残っているもの。正論を振りかざしても、受け入れられることは少ないと榎本氏は言います。
とはいえ、相手に間違いがあるのに、おとなしくその場を濁してしまうのもビジネスにおいては害となりますよね。そこで榎本氏は、相手の体面を汚さないために、意見を述べる前には「なるほど」など、共感を示す言葉を挟むことを提案しています。
そのうえで、自分の意見を「〇〇はどうでしょうか?」と疑問形でやんわり述べると、角が立たなくなるのだそう。
とはいえ、なんでも相手を肯定する「イエスマン」になればいいわけではありません。理詰めではなく、共感を示しながら意見を述べる――こうすれば、場を乱すことも、相手を嫌な気持ちにさせることもなくなりますよ。
3. 保身が強い
何かトラブルが発生したとき、混乱するあまり「自分は関係ない」と逃げようとするクセはないでしょうか。自己保身が強い人も、チームメンバーから「残念な人」という印象をもたれてしまいます。
これを指摘しているのは、カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役で産業カウンセラーの片桐あい氏です。片桐氏によれば、逃げる人ほど追いかけたくなるのが人間の心理というもの。責任から逃げようとすればするほど、相手を残念な気持ちにさせ、信頼関係は崩れていく一方だと言います。自己保身ばかりしていると、「大事なときに逃げる人」という最悪な印象を周囲に強く与えてしまうのです。
これが当てはまるのは、リアルなコミュニケーションに限りません。片桐氏いわく、特にオンライン会議の場では、自己保身の強さが見透かされやすいのだそう。
なぜかと言うと、オンライン会議の参加者はおのずと画面に意識を集中することから、話し手の声・表情・言葉を充分に分析できるため。たとえ取り繕ったとしても、「自分は悪くない」と正当化するニュアンスは相手へ簡単に伝わってしまうのです。
逃げることは周囲の信頼を損ね、かえって自分自身を追い詰める行為。「自分は悪くない」という思いが現れたときこそ、問題を解決するために「自分にできることは何か」を考え、前向きな言葉を伝えるべきだと、片桐氏は言います。これで、周囲からのあなたに対する信頼度も変わってくるはずです。
4. 人の話を最後まで聞けない
相手が話し始めた案を終わりまで聞かず、異論を挟んだら口論になった。同僚の話の先が見えたので、被せるようにして自分の話を展開した……そんな経験はありませんか? もしあなたに、相手の話を最後まで聞けないクセがあるとしたら注意が必要です。
フリーアナウンサーの魚住りえ氏によると、嫌われる聞き方で多いのが、この「他人の話を最後まで聞かない」ケース。特に、頭の回転が速い人がやりがちだと言います。なぜなら、頭のいい人ほど話の先が読めてしまい、最後まで聞かなくともおよその内容がわかってしまうからです。
しかし、常に正確に人の考えを読めるとは限らないもの。相手の話が終わらないうちに、「理解した」と思い込むのは誤解につながりかねないうえ、「きちんと話を聞かない」姿勢は相手に不快感や不満を感じさせてしまう、と魚住氏は警告します。
魚住氏いわく、「聞く力」の基本は、相手の話を最後まで聞いてから、自分の話をすること。途中で遮らず、否定をせず、話を最後まで聞くよう心がけてみましょう。誠実に聞いている態度が相手に伝われば、あなたへの印象がよくなり、コミュニケーションも以前より深めることができますよ。
5. 感謝や謝罪を充分に伝えない
感謝や謝罪を伝えるのは人としての基本。そう理解していても、親しい間柄になるにつれ、ついおろそかにしがちです。必要なタイミングで感謝や謝罪をしない人は、傲慢だとさえ思われてしまいかねません。
ビジネス作家の臼井由妃氏は、大事な場面で感謝や謝罪をうっかり忘れたら、どんどん相手の心が離れていくと指摘します。チームの仲間と親しくなればなるほど、「ありがとう」「すみません」の基本を徹底するべきなのです。
また、社会心理学の研究者である二コラ・グエガン氏が、謝罪とは「社会の潤滑油」だと述べているそう。すれ違いがあったとしても、誠実に謝罪の言葉を伝えれば、人間関係は修復できるもの。感謝も同様でしょう。
臼井氏によると、伝えるタイミングを逸したり、儀礼的な言い方をしたりすると、謝罪も感謝も効果が半減するとのこと。適切なタイミングで的確に、心からの言葉を伝えるようにしましょう。感謝や謝罪は、人間関係を複雑にしないためにも大切なコミュニケーションなのです。
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やりがちなクセは誰しもあるもの。だからこそ、自分の言動や行動を一度見直し、チームとの信頼関係を築いていくことが必要です。あなたの本当の働きやすさにもつながるはずですよ。
(参考)
DIAMOND online|「機能するリーダー」は、アドバイスではなく教育をする
マイナビ転職|実は嫌われている……? あなたの正論振りかざし度をチェック
DIAMOND online|テレワークでバレる!職場の上司・部下・同僚から嫌われる人の「3つの特徴」
東洋経済 ONLINE|「嫌われる人の聞き方」よくある5つの共通点
東洋経済 ONLINE|「嫌われる人の相づち」よくある5つのNGは?
NIKKEI STYLE|気づいてる? 「なぜか嫌われる人」の5つの話し方
FIGARO.jp|あの人はなぜ、謝ることができないのか?
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。